宿泊・ホテル業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

宿泊・ホテル業界のシステム開発は、PMSを中心に予約・チェックイン・客室管理・OTA連携を整理し、要件定義から本番稼働まで段階を踏んで進めます。

  • 業務整理:宿泊予約・客室・フロント・料金管理の流れを明確にする
  • 連携設計:PMS・予約エンジン・OTA・決済の接続条件を整理する
  • 段階導入:テスト・移行・本番稼働の手順と現場教育を計画する

宿泊・ホテル業界のシステム開発を成功させるには、多言語対応やOTA連携、決済などの業界特有の業務フローを理解したうえで、各フェーズを一つずつ確実に進めることが欠かせません。

全体像をさらに詳しく知りたい方は、完全ガイドの記事をご覧ください。

宿泊・ホテル業界のシステムの全体像と種類

宿泊施設を中央に置き、PMSや予約管理など5つの主なシステム機能を周囲に示した図。
予約から客室管理まで、異なる機能が宿泊業務を支えます。

主な機能(PMS・予約管理・チェックイン・客室管理等)

宿泊施設の予約から会計、客室の清掃管理までを支える主な機能は、次の5つです。

  • PMS(プロパティ・マネジメント・システム):予約・宿泊者・客室稼働・料金設定・会計を管理する基幹システムです。
  • 予約管理システム:自社サイトからの直販予約を受け付けるWeb予約エンジンで、日程・人数・プラン・部屋タイプの選択から決済まで、ゲストが自分で完結できます。
  • チェックイン・チェックアウト管理:フロント業務のデジタル化を支え、モバイルやセルフの端末との連携が標準となっています。
  • 客室管理・ハウスキーピング:客室の清掃状況とメンテナンス状況をリアルタイムで管理し、フロントとハウスキーピングスタッフの情報共有を効率化します。
  • レベニューマネジメント:需要予測や競合比較をもとに料金の設定を行い、ADR(平均客室単価)とRevPAR(客室収益指数)を最大にするシステムです。

PMSには、Opera・PROTEL・宿まわりなど、多くの製品が市場にあります。また、チェックイン管理は、非接触や省人化の観点からも重要性が高まっています。

クラウド型とオンプレミスの違い

宿泊・ホテル業界のシステムは、大きくクラウド型とオンプレミス型の2種類に分けられます。クラウド型PMSは、インターネット経由で使うSaaS形式で、初期費用が低く、複数拠点のホテルチェーンでも一元管理しやすいのが特徴です。

クラウド型は月額費用制が一般的で、アップデートも自動的に行われます。一方で、オンプレミス型は自社サーバーにシステムをインストールする従来型で、カスタマイズの自由度が高く、セキュリティ管理を自社で完結できる利点があります。

ただし、初期投資が大きく、保守やバージョンアップの手間もかかります。大規模ホテルチェーンや特殊な業務フローを持つ施設ではオンプレミス、中小規模の旅館・ホテルではクラウドが選ばれる傾向にあります。

ポイント

主要機能の範囲と提供形態は、業務の特殊性と施設の規模を見て決めます。大規模や特殊な業務フローの施設はオンプレミス、中小規模の旅館・ホテルはクラウドが選ばれる傾向にあります。

宿泊・ホテル業界のシステム開発の工程と流れ

要件定義から設計・開発を経て、テスト・移行・本番稼働へ進む3工程の図。
可用性の条件も、要件定義の段階で整理します。

要件定義フェーズ(宿泊業特有の要件:多言語対応・OTA連携等)

要件定義は、宿泊・ホテル業界のシステム開発で最も重要な工程です。このフェーズでは、現行の業務フローをAS-IS(現状)として一覧にし、課題と改善点を特定します。宿泊業特有の要件として特に大切なのが「多言語・多通貨対応」です。

インバウンド需要を取り込むには、英語・中国語・韓国語などの多言語対応と、ドル・ユーロなどの多通貨決済機能が必須となります。さらに、OTA(Booking.com・Expedia・じゃらん・楽天トラベル等)との連携要件も、要件定義の段階で明確にする必要があります。なかでも、在庫・料金をリアルタイムで同期するチャネルマネージャー連携の仕様と、各OTAのAPI仕様の確認が必須です。

また、PCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ標準)への準拠要件や、個人情報保護法・旅館業法などの法規制への対応要件を整理します。さらに、システムの可用性要件(24時間365日稼働・障害時の許容ダウンタイム)も洗い出します。

設計・開発フェーズ(PMS・予約エンジン・フロントシステムの連携設計)

設計フェーズでは、PMS・予約エンジン・フロントシステム・チャネルマネージャー・CRMの各システム間で、データの流れと連携仕様を設計します。特に、PMS(在庫・料金マスタの正とする情報源)とチャネルマネージャー(各OTAへのリアルタイム在庫配信)の連携設計は、在庫オーバーブッキングを防ぐうえで最も重要です。

開発フェーズでは、バックエンドAPI(予約処理・在庫管理・料金計算)、フロントエンド(予約エンジンのUI・管理画面)、外部連携(OTA API・決済PG・鍵システム等)を並行して進めます。また、多言語対応はi18nフレームワーク(react-i18next等)を活用し、フロントエンドとメールテンプレートの両方で多言語化を徹底します。

決済処理は、Stripe・GMOペイメントゲートウェイ等のPCI DSS準拠の決済代行サービスを活用するのが基本です。カード情報を自社システムで保持しない設計にします。

テスト・移行・本番稼働

テストは「単体テスト」「結合テスト(OTA API・決済PG・PMSとの連携含む)」「システムテスト」「負荷テスト(繁忙期を想定した同時予約処理)」「ユーザー受入テスト(UAT)」の順で実施します。特に、OTAとのサンドボックス環境でのAPI連携テストは、本番接続の前に十分な期間を取っておく必要があります。

データ移行では、既存PMSの予約データ・顧客データ・マスタデータを新システムへ正確に移すための移行計画を立て、移行リハーサルも実施します。そのうえで、本番稼働は繁忙期を避けた閑散期に設定し、旧システムとの並行稼働期間を設けてリスクを抑えます。

ポイント

要件定義で多言語・OTA連携などの要件を先に固め、設計では在庫連携を最優先にします。テストは外部連携まで含めて段階を追って行い、本番稼働は閑散期に設定するのが目安です。

宿泊・ホテル業界のシステム開発の重要ポイント

クレジットカード情報を中央に置き、PCI DSS準拠やトークン化など4つの対策で囲んだ図。
カード情報を自社で保持しない設計も、保護の要になります。

OTA(Booking.com・じゃらん等)との連携設計

OTA連携は、ホテル・旅館のシステム開発における最重要課題の一つです。Booking.com・Expedia・Hotels.com・じゃらん・楽天トラベル・一休.comなどの主要OTAは、APIや連携仕様がそれぞれ異なります。そのため、チャネルマネージャー(SiteMinder・Channex・ねっぱん等)を間に挟み、複数のOTAをまとめて管理する設計が一般的です。

チャネルマネージャーとPMSの連携では、在庫の二重販売(オーバーブッキング)を防ぐため、予約が入った瞬間に全OTAの在庫を減算するリアルタイム同期が必須です。また、各OTAのキャンセルポリシー・手数料体系・支払い条件の違いを吸収する設計も必要です。

セキュリティとPCI DSS対応

宿泊業界のシステムは、クレジットカード情報や旅券番号、個人情報を扱うため、高水準のセキュリティ対策が不可欠です。PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)への準拠は、クレジットカード決済を扱う全てのホテル・旅館に求められます。

開発では、カード情報を自社サーバーで直接処理・保存せず、トークン化する設計が基本方針です。決済代行サービス(Stripe・GMOなど)を活用します。また、通信の暗号化(TLS 1.2以上)、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)の設置、定期的なセキュリティ診断・ペネトレーションテストの実施も欠かせません。

個人情報保護法に対応するには、宿泊者データの取得目的の明示、保存期間の設定、削除手順の整備を、開発要件に含めておく必要があります。

ポイント

OTAとの連携は、チャネルマネージャーで在庫を同期させる設計が基本です。カード情報は自社で保持せず、個人情報の扱いも開発要件に含めます。

開発手法の選び方

ウォーターフォール vs アジャイル

業務要件が比較的明確で、OTA連携仕様も固まっている場合は、ウォーターフォール型が向いています。たとえば、PMSのリプレースや大規模な基幹システム刷新では、全体設計を固めてから開発に入るため、安定したプロジェクト管理につながります。

一方で、新しいゲスト体験機能(モバイルチェックイン・AIコンシェルジュ・パーソナライズ提案等)を段階的に追加していく場合は、アジャイル型(スクラム)が有効です。2〜4週間のスプリントで機能をリリースし、実際のゲストや現場スタッフのフィードバックを早い段階で得ることで、投資対効果を高めることができます。

パッケージ活用 vs スクラッチ開発

既存のPMSパッケージ(Opera・PROTEL・宿まわり等)や予約エンジンパッケージを活用すると、開発コストと期間を大幅に削減できます。特に、標準的な機能で業務が賄えるホテル・旅館には、パッケージ導入が適しています。

一方で、自社独自の料金体系や特殊な予約フロー、既存基幹システムとの深い連携が必要な場合は、スクラッチ開発またはパッケージのカスタマイズ開発が有効です。ハイブリッド型として、PMSはパッケージを活用しつつ、独自の予約エンジンや顧客管理システムはスクラッチで開発するアプローチも広く採用されています。

ポイント

開発手法は業務要件が固まっているかで、パッケージかスクラッチかは標準機能で業務が賄えるかで選びます。独自の料金体系や深い基幹連携が必要な場合は、スクラッチも検討します。

まとめ

宿泊・ホテル業界のシステム開発は、業界特有の複雑な要件を、OTA連携・多言語対応・セキュリティ対応と同時に進める高度なプロジェクトです。

株式会社riplaでは、要件定義から設計・開発・運用までワンストップで支援しています。宿泊・ホテル業界のシステム開発に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。