人事評価システムの開発は、SaaSからフルスクラッチまでの5つの方式から選びます。フルスクラッチは特殊な条件が重なる場合に限られ、オーダーメイドは既存のパッケージを土台に独自要件を改修する方式です。多くの企業では、SaaSを軸に必要な部分だけを独自開発する構成が現実的です。
▼全体ガイドの記事
・人事評価システム開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
人事評価システムの開発手法の全体像

人事評価システムは、周期的に繰り返される評価業務をワークフロー化するシステムです。MBO(目標管理制度)やOKRの目標設定から、進捗管理、期末の達成度評価、360度評価までを対象にします。評価会議でのキャリブレーションを経て、評価結果を昇給・賞与へ反映する業務も含みます。
なお、社員の氏名や所属などの変わりにくい基盤データ(社員マスタ)は、人事管理システムが管理します。人事評価システムは、連携されたマスタをもとに自社固有の制度を運用します。
方式の違いは、初期費用、月額や保守費用、自由度に表れます。自由度が高いほど費用と期間が膨らむ傾向があります。そのため、各方式の費用幅と保守条件を比べると、導入後の負担まで含めて選べます。
- SaaS:初期費用は無料〜数十万円程度(設定・データ移行費など)で、月額は1名あたり300円〜1,500円程度、または定額で数万〜数十万円です。
- パッケージ・オンプレミス:初期費用は数百万円〜数千万円規模で、年間保守は初期導入費用の10%〜20%程度です。
- オーダーメイド:ベース費用に加えて、数十万〜数百万円程度の改修費と、カスタマイズ部分の保守費が必要です。
- ノーコード・ローコード:初期費用は数百万円程度からで、月額利用料や保守費が発生します。
- フルスクラッチ:初期費用は1,500万円〜数千万円以上で、年間保守費用に加えてインフラ維持費も必要です。
SaaSは、インターネット経由で提供され、導入が早く、初期費用を抑えやすい手法です。アップデートも自動で行われます。
パッケージ・オンプレミスは、自社サーバーにソフトウェアを導入する方式です。既存の業務フローに合わせて、柔軟に構成できます。
オーダーメイドは、パッケージを基礎に独自要件を改修する方式です。また、ノーコード・ローコードは既製のパーツを組み合わせるため、SaaSより自由度があります。
フルスクラッチは、ゼロから自社専用に開発するため、自由度が最も高い一方で、コストと期間も大きくなります。
方式を選ぶときは、まず評価制度の独自性が独自開発を必要とするほど特殊かを見極めます。そのうえで、SaaSの標準機能で足りるかも確認します。
フルスクラッチ・オーダーメイドの特徴と費用
独自開発を検討するときは、フルスクラッチ、オーダーメイド、ノーコード・ローコードの違いを押さえておく必要があります。要件と予算に照らすと、現実的な手法が絞れます。
フルスクラッチの特徴と費用
フルスクラッチは、既存のパッケージやSaaSを使わず、ゼロから自社専用に設計・開発する手法です。
- 自由度:複雑さを問わず、独自制度や多段階承認、キャリブレーションを実現できます。
- 初期負担:開発費が高額で、期間も長期化します。
- 継続負担:制度改定の改修を自社の責任と費用で担います。
初期費用は1,500万円〜数千万円以上に上り、年間保守費用は初期費用の10〜20%程度です。
保守費用に加えて、サーバーなどのインフラ維持費も継続して発生します。評価項目や等級制度、報酬テーブルを変えるたびに改修費用がかかり、その改修も自社の責任で行います。
オーダーメイド(パッケージ+カスタマイズ)
オーダーメイド開発は、パッケージやSaaSをベースに、独自要件に合わせて一部を改修する手法です。
- 改修範囲:標準機能を使い、独自ロジックや帳票、特殊な承認フローを加える部分。
- 導入効果:既存パッケージを土台に、開発リスク・費用・期間を抑えて独自要件を満たせます。
- 注意点:標準機能を活かし、独自化は必要な範囲だけにとどめます。
費用は、ベースの初期費用に加えて数十万〜数百万円程度の改修費用がかかります。保守費にも、改修部分の費用が上乗せされます。
ただし、カスタマイズが大きくなると、パッケージのバージョンアップに追従できないことがあります。改修部分の保守も、自社にとって重い負担になります。
ノーコード・ローコードという選択肢
近年注目されるノーコード・ローコードは、フルスクラッチとSaaSの中間にあたる開発手法です。
- 作り方:用意されたパーツを組み合わせ、プログラミングを最小限に抑えます。
- 自由度と速度:SaaSより自由度が高く、フルスクラッチより早く安く作れます。
- 向く要件:SaaSでは少し足りず、フルスクラッチほどの投資を望まない場合に合います。
- 選定条件:SaaSなど各方式と比べ、要件が表現力に収まるかや予算を確かめます。
初期費用は数百万円程度からで、月額のプラットフォーム利用料や保守費も発生します。
人事評価では、評価シートの項目や承認フローを比較的柔軟に組めます。ただし、プラットフォームの制約内でしか作れません。料金改定やサービス終了のリスクにも注意が必要です。
フルスクラッチを避けるべき理由と正当化されるケース

人事評価システムでは、原則としてSaaSやパッケージの活用が推奨されます。フルスクラッチを選ぶ場合は、慎重な検討が欠かせません。
原則SaaSが推奨される理由
人事評価システムでフルスクラッチを避ける大きな理由は、評価制度が頻繁に変わることです。
組織改編や報酬設計の見直しなどにより、制度は比較的短いサイクルで改定されます。
- 独自開発の負担:制度改定ごとの改修を自社の費用と責任で担います。
- SaaSの標準機能:評価シート、目標管理、360度評価、評価分布の可視化などを備え、ベンダーが改善します。
- 導入前の確認:極めて特殊な要件や数万名規模のコストメリットがない場合は、無料トライアルで適合度を検証します。
共通して必要な評価機能を自前で作り直し、保守し続けるのは「車輪の再発明」にあたります。
制度が未整備の企業向けに、評価制度のテンプレートや、評価者の基準をそろえる研修動画を提供する製品もあります。研修動画には、通常1回30万円ほどかかるような内容も含まれます。
候補には、HRBrain、カオナビ、ジンジャー人事評価、sai*recoがあります。自社の制度が既存SaaSでどこまで実現できるかは、フィット&ギャップで検証します。
フルスクラッチが正当化されるケース
フルスクラッチが合理的な選択になるのは、次のような条件に当てはまる場合です。
- 大規模利用:数千名〜数万名規模で、SaaSの従業員数課金が莫大になる場合。
- 特殊な評価ロジック:パッケージやSaaSでは対応できない独自要件が必須の場合。
- 深いデータ統合:既存システムと密結合し、評価データを人材情報と統合して分析する場合。
従業員10,000名がSaaSを月額1,000円/名で利用すると、年間1億2,000万円(1.2億円)になります。この規模では、数千万円をかけて開発し、自社保有で固定費化したほうが、数年でトータルコスト(TCO)が安くなる計算です。
特殊な評価計算や、他に例のない多段階・多面的な承認・調整の流れを完全に再現するには、フルスクラッチが必要になる場合があります。
既存の基幹システムやタレントマネジメントシステムとデータベースレベルで密結合し、高度な分析を行いたい場合も該当します。
条件に当てはまらない数百名規模までの企業や、一般的な評価制度の企業では、SaaSやオーダーメイドが合理的な選択になることが多いです。
自社が条件に本当に当てはまるかは、冷静に見極める必要があります。
メリット・デメリットとベンダーロックイン
選定時は、フルスクラッチとSaaSのメリット・デメリットに加えて、ベンダーロックインのリスクも押さえておく必要があります。
フルスクラッチのメリットとデメリット
フルスクラッチの最大のメリットは自由度で、自社の評価制度に合わせて仕組みを組み立てられる点にあります。
- メリット:複雑な評価や多段階承認・調整を再現し、既存の基幹・タレントマネジメントとも連携できます。
- 設計価値:自社の人事戦略の根幹を、思いどおりに設計できます。
- 適する企業:大企業や特殊な評価制度を持つ企業に価値があります。
- デメリット:初期費用に加え、制度改定などの保守を自社で担います。
初期費用は1,500万円〜数千万円以上で、開発期間も長くなります。さらに、制度改定やUI改善、他システムとの連携仕様の変更も、自社の責任と費用で続ける必要があります。
評価制度は変わり続けるため、保守負担は長期にわたります。特定のベンダーに開発を委託すると、その後の改修も同じ委託先に依存しやすくなります。
ベンダーロックインのリスク
SaaSとフルスクラッチでは、依存先や移行時の課題が違うため、それぞれのリスクに合わせた備えが必要です。
- SaaS:値上げやサービス終了で、別システムへの乗り換えを迫られる可能性があります。
- フルスクラッチ:委託先独自の技術やコードに依存し、他社への移行が難しくなる恐れがあります。
リスクを抑えるには、評価データをCSVで出力できるか、API連携で取り出せるかを確かめます。
数年後に別の開発会社へ改修を頼んでも、システムがブラックボックス化して対応が難しくなり、技術負債となる恐れがあります。そのため、開発ドキュメントの整備や、他社への引き継ぎやすさも確かめておきます。
現実解としてのハイブリッド構成

多くの企業にとって現実的なのは、SaaSやパッケージを中心に置き、独自要件だけを開発で補うハイブリッド構成です。両者の利点を組み合わせると、フルスクラッチかSaaSかの二択を避けられます。
SaaSをコアにした独自要件のアドオン
基本はSaaSやパッケージをコアにし、標準機能で対応できない部分だけを独自開発します。
- 独自開発する部分:独自ロジック、特殊な連携、社内独自の帳票など。
- 組み合わせ方:アドオン、ノーコード、小規模開発を、API連携で結びます。
- 標準機能に任せる部分:評価シートや360度評価、評価分布の可視化など。
独自要件を安価に補い、一般的な機能の保守をベンダーに任せることで、自社の保守負担を抑えられます。
機能の大半が共通し、一部だけが自社固有の人事評価システムでは、バランスの取れた現実解となることが多いです。
スモールスタートによる段階的な拡張
評価シートの運用が定着してから追加要件を判断すると、開発の優先順位を現場の利用状況に沿って決められます。
- 「評価シートのデジタル化」など必須機能(Must Have)に絞ってSaaSを導入します。
- 現場での運用が定着してから、上位プランへの切り替えや連携機能の追加を検討します。
- 必要な独自要件を見極め、アドオン開発で段階的に広げます。
無駄な開発コストを防ぎ、現場が使い慣れてから機能を増やせます。その結果、定着に失敗するリスクを下げられます。
反対に、最初から独自機能を盛り込みすぎると、費用が膨らみ、現場で使いこなせず形骸化する恐れがあります。
まずシンプルに始め、本当に必要だと分かった独自要件だけを後から追加します。コストを抑え、着実な定着につなげます。
まとめ
人事評価システムの開発方式は、SaaSからフルスクラッチまでの5つです。自由度が高いほど費用と期間が膨らみ、フルスクラッチは初期費用が1,500万円〜数千万円以上で、制度改定のたびに自社で改修を担います。
フルスクラッチが正当化されるのは、従業員10,000名でSaaSが年1.2億円になるような大規模な場合や、SaaSでは困難な複雑な独自評価、基幹・タレントマネジメントとの密結合が必要な場合などに限られます。
原則はSaaSの無料トライアルで適合度を確かめます。候補はHRBrain、カオナビ、ジンジャー人事評価、sai*recoです。
ベンダーロックインは、SaaSとフルスクラッチで形が異なります。契約前に、データの持ち出しやすさ、開発資料、引き継ぎやすさを確かめておきます。
多くの企業では、SaaSをコアに独自要件をアドオンで補う構成が現実的です。必須機能から段階的に広げると、コストと定着の面で理にかないます。
自社の評価制度の独自性と従業員規模を整理し、複数の会社に相談することをお勧めします。
▼全体ガイドの記事
・人事評価システム開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
