事故管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

事故管理システムの発注・外注は、単に事故報告フォームを作るのではなく、報告・重大度判定・原因分析・対策・承認・再発防止までの業務を定義してから、導入方式と契約を選ぶことが成功の近道です。

紙やExcelで管理している事故情報をシステム化したい一方で、「SaaSを契約するのか、開発会社へ委託するのか」「RFPには何を書けばよいのか」「見積金額をどう比較すればよいのか」と迷う担当者は少なくありません。この記事では、事故管理システムを発注・外注する際の進め方を、発注形態の選び方、要件整理、契約形態、費用相場、委託先の選定、見積比較のポイントまで順番に解説します。

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発注前に事故管理システムの対象範囲を固めます

事故管理システムの発注範囲を整理する担当者

事故管理システムの発注では、最初に「事故」を何として扱うかを決める必要があります。製造業や建設業なら労働災害・設備事故・ヒヤリハット、運送業なら交通事故・違反・運行中の危険事象、医療や介護ならインシデント・アクシデント、保険業なら事故受付・保険金支払いを指す場合があります。同じ事故管理という言葉でも、必要な画面、権限、帳票、保存期間は大きく異なります。

事故の定義と対象業界を最初にそろえます

要件定義の冒頭では、事故、インシデント、アクシデント、ヒヤリハットを区別し、登録対象を文章で定義します。例えば「負傷者が出た事象だけを事故とする」のか、「設備停止や顧客クレームにつながった事象も含める」のかで、報告件数と承認ルートが変わります。報告対象を狭くしすぎると予兆を集められず、広くしすぎると現場の入力負担が増えるため、重大度別に必須項目と任意項目を分ける設計が現実的です。

また、誰が利用するかを現場作業者、拠点責任者、安全衛生部門、本社管理者、経営層、委託先などに分けます。医療や労災では負傷内容・健康情報などの要配慮個人情報を扱う可能性があり、運送では運転者、車両、位置、顧客情報が紐づくことがあります。最初からすべての利用者を同じ画面に入れるのではなく、入力者には短いフォーム、管理者には分析と承認の画面を用意する考え方が大切です。

報告から再発防止の確認までを業務フローにします

発注前には、現在の業務を「発生」「一次報告」「重大度判定」「上長承認」「原因分析」「是正処置」「再発防止策の実施」「効果確認」「クローズ」に分けて図にします。各段階で、担当者、期限、入力情報、次の承認者、差し戻し条件を確認します。システムの画面一覧から考え始めると、報告画面は完成しても対策の期限切れや承認待ちが見えない状態になりやすいためです。

厚生労働省の労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針でも、事故の原因調査、問題点の把握、改善の手順を定めて実施することが示されています(出典: 厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」)。したがって、事故管理システムの発注要件は「報告を電子化すること」だけでなく、原因と対策の実行状況を追跡し、次の安全衛生活動へ反映できることまで含めると、導入目的がぶれにくくなります。

事故管理システムの発注形態を選びます

事故管理システムの発注形態を比較する場面

発注形態は、SaaSを導入する方法、ローコードやクラウド基盤で構築する方法、開発会社へ受託開発を委託する方法に大別できます。判断軸は初期費用の大小だけではありません。現場に合わせて変更できる範囲、既存システムとの連携、データの持ち出し、監査や多言語への対応、導入後の運用責任まで比較する必要があります。

SaaS・パッケージは早く小さく始めたい場合に向いています

単一拠点で利用者が少なく、標準的な事故報告、写真添付、承認、検索、集計ができればよい場合は、SaaSやパッケージが候補になります。初期開発を抑え、アカウントを作成して試せる点が強みです。一方で、自社固有の重大度判定、複雑な承認経路、行政様式、既存の勤怠・車両・設備システムとの連携が必要になると、追加設定や個別開発が発生します。

公開価格の一例として、運送業向けのSafeDrive AIは、無料プランのほか、Standardが月額9,800円、Goldが月額19,800円、Platinumが月額29,800円の税抜価格で案内されています(出典: SafeDrive AI公式料金ページ、2026年8月確認)。ただし、これは運送業向けサービスの公開料金であり、製造・建設・医療などを含む事故管理システム全体の相場ではありません。無料枠や試用期間で、現場が本当に報告できるかを確かめてから有料契約へ進むと安全です。

ローコード・クラウド基盤は変更の多い組織に適しています

ローコードやクラウド業務基盤は、フォーム、一覧、ワークフロー、権限、通知を比較的短期間で組み合わせられます。制度や社内ルールが変わりやすく、現場ごとに入力項目を微調整したい企業では有力な選択肢です。開発会社には、画面を作る技術だけでなく、権限設計、データモデル、監査ログ、バックアップ、性能限界を含めて提案してもらいます。

注意点は、部署ごとにアプリを増やしすぎることです。拠点ごとに事故分類や重大度の定義が変わると、全社集計ができなくなります。共通のデータ辞書と必須項目を先に決め、変更できる範囲を管理者権限で制御します。契約時には、退会時のデータエクスポート、APIの利用条件、追加アカウントの料金、サービス障害時の連絡方法も確認します。

受託開発は独自業務や複数連携がある場合に選びます

多拠点・多言語運用、独自の重大度判定、医療や労災に関する権限、既存の人事・車両・設備・保険システムとのAPI連携が必要なら、開発会社への受託開発が適しています。自社の業務に合わせられる反面、要件定義の不足がそのまま追加費用や納期遅延につながります。そのため、最初から全機能を作り込むのではなく、1拠点または1事故種別で標準機能を稼働させ、利用状況を見て拡張する段階開発が有効です。

2026年3月に日立ソリューションズが公表した住友商事の事例では、グループ全体の労災事故情報を「GENSAI」に一元管理し、63カ国125拠点で同一基準による管理を実現しています(出典: 日立ソリューションズ、2026年3月)。このような大規模案件でも、入力項目の統一や標準機能から始めた段階的な拡張が参考になります。会社規模だけを見て発注形態を決めず、必要な統制と現場定着の難しさで判断します。

RFPと要件整理で発注内容を具体化します

事故管理システムのRFPと要件を整理する場面

RFPは、開発会社に「何を、なぜ、どの条件で作ってほしいか」を伝える資料です。機能一覧だけではなく、事故が発生してから対策を完了するまでの業務、利用者、データ、制約、希望する導入時期を記載します。候補会社が同じ前提で見積もれる状態にすると、価格だけでなく提案内容やリスクも比較しやすくなります。

現状課題と達成したい成果をRFPに書きます

まず、紙やExcelのどこに負担があるかを具体化します。「報告が遅い」ではなく、「現場から管理部門への提出に平均何日かかる」「月末に担当者が複数の台帳を転記している」「対策の期限切れを一覧で把握できない」と書くと、必要な機能と効果指標が見えます。可能であれば、直近の事故報告書、ヒヤリハット記録、月次集計、承認メール、行政提出用帳票を匿名化して添付します。

成果指標も先に定めます。例えば、現場報告の完了率、発生から一次報告までの時間、重大事故の初動時間、対策期限内の完了率、類似事故の横展開数、月次報告の作成時間などです。「事故を減らす」とだけ書くと、景気や業務量などの影響を切り分けられません。導入直後は報告件数が増える場合もありますが、これは報告しやすくなった結果である可能性があるため、報告率と対策完了率を合わせて評価します。

機能要件と非機能要件を分けて記載します

機能要件には、スマートフォンやPCからの報告、写真・動画・添付ファイル、音声入力、オフライン時の一時保存、事故区分、重大度、原因分類、承認、差し戻し、対策担当者と期限、リマインド、検索、類似事故検索、ダッシュボード、CSV・Excel出力を記載します。すべてを必須にするのではなく、重大度や業界に応じて入力項目を変える条件も書きます。

非機能要件には、利用者数、拠点数、想定報告件数、対応時間、スマートフォンの通信環境、認証方式、権限、監査ログ、バックアップ、障害復旧目標、データ保存期間、API、データ移行、個人情報の保護を含めます。個人情報保護委員会のガイドラインでは、委託先の取扱状況を定期的に監査することや、再委託先の安全管理を確認することが望ましいとされています(出典: 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」)。RFPに監査・再委託・データ返却の条件を入れることが、後からの認識違いを防ぎます。

PoCで現場入力と承認フローを検証します

本開発の前に、現場がスマートフォンで短時間に報告できるか、管理者が重大度を判断できるか、対策の期限を追えるかを小さく検証します。PoCでは高機能な分析より、報告者が迷わない画面、写真添付、通知、承認、差し戻し、検索の一連の流れを優先します。1拠点、1部署、または1種類の事故に絞ると、実際の入力時間と運用ルールの問題を発見しやすくなります。

PoCの判定基準は、「使えそう」という感想だけにしません。例えば、現場作業者が報告を完了するまでの時間、必須項目の未入力率、承認者の処理時間、通知の到達状況、写真の画質、電波が弱い場所での再送、権限外データが見えないことを確認します。検証結果をRFPの追加条件と受入基準へ反映すると、本契約後の手戻りを抑えられます。

契約形態は要件の確定度と変更リスクで選びます

事故管理システムの契約条件を確認する場面

事故管理システムの開発では、請負契約と準委任契約の違いを理解しておくことが重要です。契約形態によって、成果物の完成責任、作業時間の扱い、仕様変更の費用、受入れの考え方が変わります。契約名だけで判断せず、どの工程をどの条件で発注するかを分けて整理します。

請負契約は成果物と完成条件を明確にします

請負契約は、要件定義書、設計書、プログラム、テスト結果、操作マニュアルなどの成果物を完成させ、発注者が検査・受入れを行う契約です。画面や帳票、権限、API、データ移行の範囲が固まっている場合に向いています。受入れ条件には、正常系だけでなく、重大度別の承認、差し戻し、権限エラー、重複報告、添付ファイルの容量、障害時の復旧、CSV出力などを含めます。

請負では、発注時点で不明点を少なくすることが重要です。現場ヒアリング後に「思っていた操作と違う」「この帳票も必要だった」と判明すると、変更管理の対象になり、追加費用や納期変更につながります。変更が発生した場合の見積方法、承認者、納期への影響、無償修正の範囲を契約書や個別契約書に定めます。

準委任契約は調査や伴走型の開発に適しています

準委任契約は、受託会社が専門家として調査、設計、開発支援、プロジェクト管理などの業務を行い、作業時間や体制に応じて精算する契約です。事故の定義や承認ルートが拠点ごとに違い、要件を整理しながら進める場合に適しています。発注者側も業務担当者を継続的に参加させ、週次の確認や優先順位の決定を行う必要があります。

準委任では完成品の保証が請負と同じ形で付くとは限らないため、作業範囲、稼働時間、担当者、会議体、成果物、報告方法を細かく確認します。NotebookLMの業務システム調査では、一般的なエンジニア単価は月額60万〜120万円程度、請負は仕様変更リスクが価格に反映され、準委任より1.3〜1.5倍高くなる傾向が示されています。ただし、これは事故管理システム固有の公的統計ではなく、類似する業務システム開発の目安です。

要件定義と開発を分ける段階契約も有効です

発注前の不確実性が大きい場合は、要件定義・現状調査・PoCを準委任で発注し、その成果をもとに本開発を請負で契約する方法があります。最初から大きな請負契約を結ぶより、対象範囲、画面、データ、移行量、連携先を確認してから開発費を確定しやすくなります。反対に、要件定義の成果物が曖昧なままだと、次の開発見積もりが比較できないため、業務フロー、データ辞書、画面一覧、優先順位、未決事項を納品物に含めます。

契約には、知的財産権の帰属、第三者サービスの利用、OSSの扱い、ソースコードの引き渡し、再委託の条件、秘密保持、個人データの取扱い、事故発生時の報告、サービス終了時のデータ返却を記載します。システムを外注しても、個人情報や安全情報を管理する責任が発注者からなくなるわけではありません。法務、情報システム、安全衛生部門を早い段階から契約確認に参加させます。

事故管理システムの費用相場と見積内訳を確認します

事故管理システムの費用と見積書を確認する場面

事故管理システムの費用は、利用者数、拠点数、業界固有の帳票、既存システム連携、過去データ移行、多言語、モバイル対応、権限、監査ログ、AI機能によって大きく変わります。公開価格のあるSaaSと、受託開発の見積金額を同じ土俵で比べないことが重要です。以下のレンジは、リサーチノートに記載された公開価格および類似業務システムからの推定であり、特定企業への発注金額を保証するものではありません。

SaaSの初期費用と月額は公開価格を基準に見ます

小規模SaaSを1拠点、10〜30人程度で使う場合は、初期費用が0〜30万円程度、月額が1万〜3万円程度という価格帯が一つの目安になります。ただし、初期設定、帳票の追加、権限設定、データ移行、導入教育が別料金の場合があります。SafeDrive AIのように月額9,800円〜29,800円の公開料金があるサービスでも、登録人数や分析機能、複数拠点対応によってプランが変わります(出典: SafeDrive AI公式料金ページ、2026年8月確認)。

月額を見るときは、利用者数だけでなく、管理者アカウント、保存容量、写真・動画の容量、API、帳票、サポート、バックアップ、障害対応を確認します。例えば月額が安くても、事故写真を長期間保存するためのストレージ料金や、既存システムと連携するAPI料金が別にかかる場合があります。3年程度の利用期間を仮定し、初期費用、月額、追加開発、教育、データ移行、解約時の作業まで含めた総額で比較します。

受託開発は規模別のレンジで捉えます

製造・運送向けSaaSの初期設定、帳票、権限設定であれば、初期費用30万〜150万円程度、月額3万〜15万円程度、期間1〜3カ月程度が目安になる場合があります。複数拠点のWebシステムにワークフロー、集計、API連携、データ移行を含める場合は、初期開発300万〜1,000万円程度、期間3〜8カ月程度が一つの推定レンジです。これは事故管理に特化した公的な価格調査ではなく、類似する業務システムの工数から算出した目安です。

業界固有のスクラッチ開発にモバイル、多言語、複数連携を組み合わせると、1,000万〜3,000万円程度、期間6〜12カ月程度となる可能性があります。グローバルな安全データ基盤やAI分析まで含める場合は、3,000万円超、9〜18カ月程度の個別見積もりになることもあります。いずれも機能数だけで決まるものではなく、画面数、権限の複雑さ、連携方式、テストケース、移行データの品質が工数を左右します。

保守・連携・教育を含めた総額で比較します

受託開発では、年間保守費用を初期開発費の10〜20%程度とする見積もりが目安になる場合があります。例えば、初期開発費が300万〜1,000万円程度なら、年間保守は30万〜200万円程度という計算になりますが、サーバー費、クラウド利用料、監視、問い合わせ、軽微な改修、障害対応がどこまで含まれるかで変わります。特定金額として断定せず、見積書の項目を分解して確認します。

別途費用になりやすいのは、紙やExcelからの過去データ移行、既存の人事・車両・設備・BIとのAPI連携、写真や動画の大容量保存、多言語化、24時間対応、脆弱性診断、操作研修、拠点展開です。見積書に「一式」とだけ書かれている項目は、対象範囲、数量、前提条件、除外事項、追加時の単価を質問します。初期費用だけで最安の会社を選ぶと、後から必要な費用が追加され、総額で高くなることがあります。

委託先の選定と見積比較で確認するポイントです

事故管理システムの委託先と見積を比較する場面

委託先は、開発実績の数だけでなく、自社と似た業界・規模・運用の経験で選びます。事故管理システムは、医療、金融、運送、製造、建設などで求められる知識が違います。提案書に書かれた機能が自社の業務に合うか、実際の担当者が現場ヒアリングを行うか、導入後の教育と改善を支援できるかを確認します。

同業界の実績とプロジェクト体制を確認します

実績確認では、会社名や導入件数だけでなく、事故の種類、利用者数、拠点数、スマートフォン入力、承認、帳票、API連携、データ移行まで自社と近い案件を質問します。可能であれば、画面デモだけでなく、導入前後の業務フロー、移行方法、稼働後の問い合わせ件数、保守体制を説明してもらいます。医療や金融などでは、個人情報、監査、権限、保存年限に関する経験も評価対象です。

体制は、営業担当だけでなく、業務コンサルタント、プロジェクトマネージャー、設計者、開発者、テスト担当、運用支援担当を確認します。再委託がある場合は、どの工程をどの会社が担当し、データへアクセスするのかを明確にします。住友商事のように63カ国125拠点を対象とする事例では、機能だけでなく、拠点間の基準統一や多言語での運用設計が重要になります(出典: 日立ソリューションズ、2026年3月)。

見積書は同じ前提にそろえて比較します

複数社へ見積を依頼する際は、同じRFP、同じ想定利用者数、同じ拠点数、同じ連携先、同じ移行データ量を渡します。見積書は、要件定義、設計、開発、テスト、移行、教育、導入支援、保守、クラウド、ライセンス、追加機能に分けてもらいます。金額の大小だけでなく、含まれる作業と除外される作業が揃っているかを確認します。

比較時は、要件の理解度、提案の具体性、担当者の経験、納期の妥当性、品質保証、保守、契約条件を点数化すると、価格だけの判断を防げます。特に「標準機能で対応」「設定で対応」「追加開発」「将来対応」「対象外」を分けて書いてもらいます。最も安い見積もりに対象外が多い場合、後から追加費用が発生するためです。逆に高い見積もりでも、移行、研修、運用改善まで含まれていれば、比較の前提が異なります。

セキュリティとSLAを契約前に確認します

事故管理システムには、氏名、所属、けがの状況、健康情報、車両情報、顧客情報などが入る可能性があります。認証、多要素認証、役割別権限、拠点別の閲覧範囲、通信・保存時の暗号化、操作・変更履歴、バックアップ、脆弱性対応、ログ保存期間を確認します。AI機能を使う場合は、入力データが学習に利用されるか、国外のサービスへ送られるか、匿名化できるかも質問します。

障害時のSLAでは、稼働率、受付時間、重大障害の初動時間、復旧目標、計画停止、バックアップからの復元、連絡経路、補償の有無を確認します。個人情報保護委員会のガイドラインは、委託先だけでなく再委託先の取扱状況を確認し、契約に必要な安全管理条項を盛り込む考え方を示しています(出典: 個人情報保護委員会、2024年改訂ガイドライン)。契約書、SLA、セキュリティチェックシート、データ処理に関する合意書を相互に確認します。

発注から稼働までの進め方を決めます

事故管理システムを導入して稼働させる流れ

委託先が決まった後は、要件定義、設計、開発、テスト、移行、教育、試験運用、本稼働、改善の順に進めます。契約を結んだだけで現場に定着するわけではないため、発注者側の意思決定者、業務責任者、現場代表、情報システム担当、法務・安全衛生担当の役割を明確にします。

提案依頼と選定の判断基準を決めます

提案依頼では、RFPを渡してから質問受付、回答、提案、デモ、見積説明、最終確認の期限を設定します。提案内容は、業務理解、要件への適合、導入方式、体制、スケジュール、費用、リスク、保守を同じ評価シートで採点します。デモでは、事故を登録してから重大度を判定し、承認、差し戻し、対策登録、期限通知、検索、集計までを実際に操作してもらいます。

選定会議では、「高機能だからよい」ではなく、現場が報告を続けられるか、管理者が期限を追えるか、データを将来活用できるかを議論します。AIによる報告書の下書きや類似事例検索は便利ですが、重大度判定や原因確定をAIだけに任せない設計が必要です。安全に関わる判断は、担当者が根拠を確認して承認するフローにします。

データ移行と教育を受入れ条件に含めます

過去のExcelや紙の記録を移行する場合は、何年分を対象にするか、重複や欠損をどう扱うか、個人名や拠点名の表記をどう統一するかを決めます。全履歴を完璧に移行するより、分析に必要な期間だけ構造化し、古い原本は参照用に保管する方法が適する場合もあります。移行後は件数、日付、事故区分、重大度、添付ファイル、閲覧権限をサンプル検査します。

教育では、管理者向けの設定・承認・集計研修と、現場向けの短い報告研修を分けます。マニュアルを配るだけではなく、実際のヒヤリハットを登録してもらい、報告後に誰が何をするかを説明します。試験運用では、現場の質問、入力にかかった時間、報告しなかった理由、通知の見落とし、承認の滞留を収集し、本稼働前にフォームとルールを調整します。

本稼働後のKPIと改善会議を設計します

導入後は、事故件数だけで成否を判断しません。報告率、発生から一次報告までの時間、重大度判定のリードタイム、対策の期限内完了率、未完了対策の滞留日数、類似事故の横展開数、月次集計の作業時間を確認します。報告しやすい環境になると、初期にはヒヤリハットの件数が増えることがあります。その変化を事故増加と決めつけず、予兆を拾えるようになったか、対策までつながったかを見ます。

月次または四半期の改善会議では、データの欠損、分類の偏り、拠点間の差、期限切れ、権限申請、現場の入力負担を確認します。新機能を追加する前に、使われていない項目を削減し、重大度や原因分類を見直します。厚生労働省の指針が示す安全衛生活動の点検・改善という考え方に沿って、システムを固定された帳票ではなく、現場の学びを次の対策へつなげる仕組みとして運用します(出典: 厚生労働省、労働安全衛生マネジメントシステム関連資料)。

よくある質問(FAQ)

事故管理システムの発注に関する質問へ回答する場面

事故管理システムを発注・外注するときに、担当者からよく寄せられる質問をまとめます。自社の業界、拠点数、事故情報の種類、既存システムとの連携を前提に、RFPと見積比較へ反映してください。

事故管理システムはSaaSと受託開発のどちらがよいですか?

単一拠点で標準的な報告・承認・集計ができればよい場合は、SaaSを小さく試す方法が向いています。多拠点、多言語、複雑な権限、独自帳票、既存システム連携が必要なら、受託開発または段階契約を検討します。利用者数ではなく、業務の独自性と統制要件で判断することが大切です。

RFPに最低限入れるべき項目は何ですか?

事故の定義、対象業務、利用者と拠点、現行フロー、報告項目、重大度、承認、原因分析、対策期限、帳票、検索・集計、既存システム連携、データ移行、セキュリティ、非機能要件、導入希望時期、予算の考え方を記載します。現行の帳票や匿名化したデータを添付し、標準機能、設定、追加開発、対象外を分けて提案してもらいます。

費用見積もりで特に追加費用が出やすい項目は何ですか?

過去データの移行、既存システムとのAPI連携、写真・動画の保存、多言語化、独自帳票、複雑な権限、脆弱性診断、操作研修、拠点展開、24時間対応が追加費用になりやすい項目です。見積書の「一式」をそのまま受け取らず、数量、前提、除外事項、追加単価、保守に含まれる範囲を確認します。初期開発費だけでなく、月額・保守・クラウド・ライセンスを含む総額で判断します。

事故管理システムの委託先に個人情報を渡しても問題ありませんか?

委託する情報の範囲、利用目的、アクセス権限、保存場所、再委託、監査、漏えい時の報告、データ返却・削除を契約で明確にし、委託先を適切に監督します。特に負傷情報や健康情報を扱う場合は、必要最小限の権限、暗号化、ログ、バックアップ、従業者教育を確認します。委託先へ渡すこと自体で責任がなくなるわけではないため、自社の個人情報保護担当と法務担当にも確認します。

まとめ

事故管理システムの発注計画をまとめる場面

事故管理システムを発注・外注するときは、まず自社における事故の定義と対象業務を決めます。そのうえで、報告から重大度判定、原因分析、対策、承認、再発防止の確認までを業務フローにし、現状課題と達成したい成果をRFPへ落とし込みます。SaaS、ローコード、受託開発のどれを選ぶかは、初期費用だけでなく、独自要件、連携、権限、監査、データ返却、運用体制で判断します。

発注成功のポイントは要件・契約・運用を分けて確認することです

費用は、公開価格のある小規模SaaSと、類似業務システムから推定した受託開発レンジを分けて見ます。複数社には同じRFPを渡し、要件定義、設計、開発、テスト、移行、教育、保守、クラウド、追加開発を分解した見積もりを依頼します。最安値ではなく、除外事項が少なく、同業界の実績と現場定着までの体制が明確な委託先を選ぶことが、結果的に手戻りと総費用を抑えます。

小さく検証し、KPIを見ながら段階的に広げます

最後に、1拠点や1事故種別でPoCを行い、現場入力、承認、通知、対策期限、検索、権限を確認します。本稼働後は報告率、初動時間、対策完了率、類似事故の横展開、集計工数などを継続的に測定します。事故管理システムは導入して終わりではなく、現場の報告を安全施策へ変えるための業務基盤です。RFPと契約にその目的を反映し、委託先と改善を続けることが、事故の再発防止につながります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。