情報共有システム開発の開発期間・スケジュール・納期について

情報共有システムの導入は、形態の選定、権限の設計、データ移行、試験運用の順に進めると、無理のない日程で全社定着を目指せます。

期間は導入形態によって大きく変わります。全体像は、情報共有システム開発の完全ガイドでも確認できます。

▼全体ガイドの記事
・情報共有システム開発の完全ガイド

情報共有システム開発における期間・スケジュールの全体像

開発期間は、導入形態だけでなく、自社仕様にする機能の範囲によっても変わります。対象になる機能は、フォルダ構造、アクセス権限、版管理です。

また、共同編集、大容量転送、全文検索も対象に含まれます。どこまで作り込むかが、期間を左右します。

共有基盤の構築・刷新を検討する、情報システム部門や総務・経営企画の担当者に向けた内容です。ベンダーに相談中の方も、現実的な日程と社内の合意形成を考える材料にしてください。

導入形態のうちSaaS型には、Box、Google Workspace、Microsoft 365(SharePoint)があります。アカウント発行と基本設定だけなら、最短で即日から数日で利用を始められます。

ただし、データ移行や初期設定、従業員への説明を経て組織に定着するまでには、一般に1〜3ヶ月程度かかります。一方で、オンプレミス型やフルスクラッチ型は、要件定義に加えて、サーバー構築、独自の権限設計、カスタマイズを含むため、半年から1年以上を要します。

対象は特定の部門ではなく全社員で、日々増えていく膨大なファイルを扱います。ITに慣れた人も不慣れな人も保存・検索・共有するため、運用ルールや研修、社内への浸透にかかる時間も見込んでおく必要があります。

定着やルール設計を軽く見ると、基盤が使われず、情報が個人PCや旧ファイルサーバーに残ってしまいます。そのため、開発期間と定着期間の両方を計画に入れておくことが大切です。

情報共有システムの位置づけ(ファイル・ドキュメント共有基盤)

情報共有システムは、スケジュール共有・掲示板・ワークフロー承認を束ねるグループウェアや、Q&A・Wikiで暗黙知を蓄積するナレッジ管理とは、役割が異なります。経営発信やSNS交流で一体感をつくる社内ポータルとも、担う範囲が違います。この基盤は、ファイル保管とアクセス制御に特化しています。

  • 保管と権限:Word、Excel、PDF、図面、画像をオンラインで集約し、部署・役職ごとに閲覧・編集・ダウンロードを制御します。
  • 編集と転送:過去版の復元、リアルタイム共同編集、数GB規模の安全なファイル転送に対応しています。
  • 検索と共有:本文の全文検索と、社外ゲストへのアクセスを限定した共有。

情報共有システムでは、営業資料、契約書、請求書、設計データなどを、クラウド上の単一の拠点に置きます。情報共有システムは、フォルダ構造と権限で守る、ファイルサーバーを発展させたクラウドストレージ層にあたります。

どの機能をどこまで自社仕様にするかは、工数と期間に直結します。そのため、必要な機能の優先順位を先に決めることが、見積もりの第一歩です。

導入形態別(SaaS型 vs フルスクラッチ・オンプレミス型)の期間の目安

Google Workspace、Microsoft 365(SharePoint)、Boxは、いずれもSaaSです。アカウント発行と基本設定だけなら、各サービスとも最短で即日から数日で利用を始められます。一方で、導入形態によって全社稼働までの期間は異なります。

  • SaaS型:基本設定のみなら即日から数日、全社定着までは1〜3ヶ月程度です。
  • オンプレミス型:専用サーバーの調達・構築、設計、インストール、カスタマイズを行い、稼働まで半年から1年以上かかる場合があります。
  • フルスクラッチ型:開発工数が加わるため、最低でも8ヶ月から1年半以上を要します。

既存データの移行、フォルダや権限の初期設定、多要素認証、従業員への説明会を行う場合は、SaaSでも即日導入だけでは完了しません。

早く、安く共有基盤を整えたいなら、SaaS型が候補になります。現場の反応を見ながら育てられる点も特徴です。方向性を決めることが、現実的な日程の出発点です。

基幹システムとの密なファイル連携や、機密性の高い閉域網の要件がある場合は、オンプレミス型やフルスクラッチ型を検討します。また、独自の権限体系に合わせた作り込みも、判断材料になります。

ポイント

期間は導入形態と自社仕様にする機能の範囲で大きく変わります。日程を立てる前に、形態と機能の範囲を決めておくことが判断の出発点になります。

要件定義から本番稼働までの工程別スケジュール

要件定義・設計、初期構築、データ移行・テスト・教育、本番稼働の順を矢印で示した図解。
移行・テスト・教育が稼働前のまとまった工程です。

導入は、要件定義・設計から初期構築へと進みます。その後、データ移行・テスト・教育を経て、本番稼働に入ります。全体の目安は、SaaS型で1〜3ヶ月、フルスクラッチ型で8ヶ月〜1年半です。

ファイル共有基盤ならではの論点も、各工程のなかで押さえる必要があります。工程ごとに何を決めるか、期間を左右する要因を先に把握しておくと、自社に合った全体スケジュールを立てられます。

要件定義・フォルダ構造/アクセス権限設計フェーズ

要件定義・設計にかかる期間の目安は、SaaS型でおおむね1〜3週間、フルスクラッチ型で1.5〜2ヶ月です。この段階では、必要な機能と、Active Directory連携の有無を確かめます。

特に重要なのは、業務フローに沿ってフォルダ構造とアクセス権限を設計することです。部署や役職ごとに、どこまでの操作を許すかを定めます。

  • フォルダと権限:誰がどの資料を閲覧・編集できるかを決めます。
  • 情報の置き場:共有基盤、チャット、基幹システムのどこに何を置くかの線引き。

設計が甘いと、機密情報が全社に見えてしまったり、必要な人が資料を見つけられずに混乱したりします。そのため、この工程には時間をかける価値があります。置き場のルールも、この段階で合意しておきます。

フルスクラッチ型では、基幹連携や独自の権限の要件に加え、データベース、UI/UX、インフラの設計に2〜3ヶ月かかるのが一般的です。

データ移行・テスト・教育から本番稼働までのフェーズ

設計が終わると、環境の構築に進みます。SaaS型では、この構築に1〜2週間程度かかります。

続く移行・テスト・教育は、SaaS型でも2週間から2ヶ月と幅があり、全体の日程を大きく左右します。作業は、次の順に進みます。

  1. 初期構築として、アカウント、フォルダ、権限、セキュリティを設定します。
  2. 既存ファイルを移し、現場の代表者がトライアルで操作を行います。
  3. 操作マニュアルの配布と説明会を経て、本番稼働に入ります。

フルスクラッチ型では、プログラミングと全文検索インデックス構築に3〜5ヶ月かかります。大容量転送と脆弱性テストに1.5〜2ヶ月を見込み、旧環境からの移行と本番環境へのデプロイにも1〜2ヶ月を要します。

いずれの形態でも、テストや教育・移行を短く見積もると、稼働後に問い合わせが集中します。そのため、後半に十分な余裕を持たせておくことが、納期を守る基本です。

ポイント

移行・テスト・教育の期間を短く見積もると、稼働後の問い合わせや納期の遅れにつながりやすくなります。後半に十分な余裕を持たせて計画を立てることが、納期を守る基本です。

ファイル共有基盤特有の期間を左右する要因

大容量データ移行、全文検索インデックス構築、権限連携、外部共有の4要因が中央の共有基盤につながる図。
移行データと検索対象の規模が、準備の重さを左右します。

ファイル共有基盤は、他の業務システムのように機能を一から作るだけでなく、何年分も蓄積された数万〜数百万のファイル資産を扱う点が特徴です。

既存ファイルサーバーからの大容量データ移行

既存ファイルサーバーからの大容量移行は、期間を最も読みにくくする要因です。数TB〜数十TBに及ぶCAD、設計データ、動画は、帯域の制限があると、転送だけで数週間かかることがあります。

重複ファイルをそのまま移すと、新しい基盤が最初から散らかった状態で始まります。移行前に資料を洗い出して整える作業が、日程を左右します。また、丁寧に整理しておけば、移行後の検索性は格段に高まります。

  • 事前整理:不要な資料を捨てる期間を設けると、準備に数週間から数ヶ月が上乗せされます。
  • 移行方式:休日に一括で移すか、部署ごとに段階的に移すかを選びます。

段階移行と一括移行では、現場にかかる負荷も異なります。そのため、移行計画は早い段階で具体化しておきます。

全文検索インデックス構築と外部ゲスト共有・セキュリティ設定

数百万ファイルの本文まで検索できるようにするには、インデックス構築が欠かせません。その作業時間は、ファイル数に比例して増えます。

  • 権限連携:Active DirectoryやAzure ADとの統合、組織階層に応じた権限の設定と移行。
  • 外部共有:DLP(データ損失防止)、法的保全(eDiscovery)、ゲスト制限の設計。

Microsoft 365のSharePointなどでは、認証基盤との連携が必須になる企業もあります。複雑な組織階層では、役職別の権限設定と移行にも時間がかかります。

外部取引先との共有を前提にする場合は、厳格なポリシーが必要です。その設定も、期間に影響します。

これらは後回しにできる細部ではなく、情報漏えいでプロジェクトが止まるおそれもある最重要の要件です。そのため、要件定義の段階から日程に組み込みます。

ポイント

大容量データの移行、全文検索、権限連携、外部共有の設定が、ファイル共有基盤の日程を左右します。要件定義の段階でこれらを日程に組み込んでおくと、後の手戻りを防ぎやすくなります。

スモールスタートで進める段階展開スケジュール

パイロット導入、評価と改善、段階展開、全社定着を4枚のパネルで示し、最初の3段階に本文記載の期間を添えた図解。
一部門での試行から、利用部署を順に広げます。

全社員が毎日使うファイル基盤のため、情報システム部門だけで一斉に展開すると、現場の混乱や頓挫を招くおそれがあります。そこで、一部門で課題を洗い出し、運用ルールを固めてから広げるスモールスタートで進めるのが基本です。

パイロット導入→評価改善→段階展開→全社定着の流れ

段階展開では、試験運用で出た使い勝手や操作の疑問を集め、ルールを直してから利用部署を増やしていきます。

  1. 1部署や1チームで1〜2ヶ月のパイロット導入を行い、アップロード、検索、共有を試します。
  2. ヒアリングとアクセスログをもとに、置き場やフォルダ構造、権限を見直します。評価と改善には2〜3ヶ月を充てます。
  3. 固めたルールと成功事例をもとに、3〜6ヶ月かけて利用部署を順に広げます。
  4. 全社導入後は、利用率を見ながら操作教育を続け、定着を図ります。

全体では、半年から1年程度が目安です。最初のパイロットで見つけた問題を全社展開の前に直しておくと、大規模な手戻りを防げます。また、導入後に誰も使わない事態を避けられるため、結果的に最短距離で定着できます。

開発手法(アジャイル・ウォーターフォール)による期間差

フルスクラッチやカスタム開発では、要件の明確さや現場での検証の必要性に応じて、開発手法を選びます。

  • ウォーターフォール型:要件や権限体系が固まっている場合は、計画を立てやすく、納期を見通せます。
  • アジャイル型:権限や画面を試したい場合や、連携仕様が不確実な場合に、短いサイクルで優先機能から順に出していく形です。

アジャイル型は、初期に完成形が見えにくい一方で、パイロットと相性がよく、現場の声を取り入れて軌道修正できます。

そのため、現場で使われない基盤を作るリスクを下げられます。なお、SaaS型は本体開発がほぼなく、設計・移行・定着に集中できます。

開発手法を比べる必要があるのは、カスタム開発を伴う場合です。

ポイント

全社展開の前に一部門でパイロットを行い、運用ルールを固めてから広げると、大規模な手戻りを防ぎやすくなります。パイロットは1〜2ヶ月を目安に、現場の声を改善に生かします。

納期遅延の典型要因と対策

スケジュールの遅れや、導入後に使われなくなる原因は、技術的な難しさより、進め方や合意形成の甘さにあります。代表的な失敗のパターンを把握しておけば、遅延や失敗の多くは事前の段取りで避けられます。

現場ヒアリング欠如とファイルの置き場ルール未整備

最も多い失敗は、業務フローを聞かないままツールを選んで設計してしまうことです。その結果、実際の業務に合わず、個人PCや旧サーバーに情報が戻ることがあります。

  • 営業の利用場面:外出先からスマートフォンで見積書を確認したいというニーズがあります。
  • 設計の利用場面:大容量のCADデータを、頻繁に更新する業務です。

ファイル共有基盤、チャット、基幹システムの置き場が決まらないままだと、情報が分散し、後から作り直す手戻りが起きます。対策としては、要件定義の段階で各部署のキーマンに業務を聞き、フォルダ構造、命名規則、置き場のルールを文書にまとめて、全社の合意を取ります。

各部署のキーマンを巻き込んで置き場ルールに合意することは、遅延と形骸化を同時に防ぐ、最も大きな予防策です。

セキュリティ設定の後回しと既存システム連携の考慮不足

アクセスやIPアドレスの制限を後回しにしたまま稼働すると、不正アクセスや誤操作による漏えいで、プロジェクトが止まるおそれがあります。

  • 連携要件:既存の業務システムとの連携を考慮し、情報の所在を明確にします。
  • 導入検証:パイロットを省かず、問い合わせが集中しやすい一斉導入は避けるのが基本です。

機密ファイルを扱うため、セキュリティは初期設計の段階から含めておく前提の要件です。

全社への展開を急ぐあまり一斉導入に踏み切ると、問い合わせが殺到して本来の業務が回らず、運用停止に追い込まれる例もあります。そこで、要件定義の初期にセキュリティと既存連携を確定させ、テストを省かずに段階展開します。日程を急いで縮めると、かえって手戻りで遅れることがあります。

ポイント

納期の遅れや定着の失敗は、技術より進め方や合意形成の甘さから起きやすいものです。現場ヒアリング、置き場ルールの合意、セキュリティの初期設計を先に済ませると、遅れを避けやすくなります。

まとめ

情報共有システムは、ファイルの保管とアクセス制御を担う基盤です。期間・スケジュール・納期を左右するのは、導入形態と、自社仕様にする機能の範囲です。

目安は、SaaS型で定着まで1〜3ヶ月、オンプレミス型で半年〜1年、フルスクラッチ型で8ヶ月〜1年半以上です。ただし、要件や作り込みの程度によって変わります。

特に日程に響くのは、フォルダと権限の設計、大容量データの移行です。また、全文検索や外部共有の設定も、日程に組み込む必要があります。導入は、パイロットから段階的に全社へ広げるのが基本です。

まず、現場ヒアリングと置き場のルール、セキュリティ設定、既存連携を、早い段階で決めておきます。そのうえで、複数の会社に相談して、現実的なスケジュール案を確認します。

▼全体ガイドの記事
・情報共有システム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。