情報共有システム開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

情報共有システムをフルスクラッチのオーダーメイドで作るかどうかは、まず既製SaaSで要件を満たせるかを確かめて決めます。固有要件を洗い出し、必要な部分だけを段階的に独自開発すると、過剰な投資を避けられます。

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情報共有システムをフルスクラッチで開発する意味と全体像

フルスクラッチ開発は、既製SaaSやパッケージを使わず、自社の要件に合わせてファイル共有基盤を設計・開発する方法です。

対象となるのは、Word、Excel、PDF、図面、画像などのファイルをオンラインでまとめて保管する基盤です。従来のファイルサーバーを進化させた、クラウドストレージの層にあたります。

この基盤は、フォルダとアクセス権限で管理しながら、共同編集や大容量転送、外部共有を可能にします。全文検索にも対応します。

ファイル基盤は、スケジュール共有や稟議承認をまとめるグループウェアとは役割が異なります。また、ナレッジ管理は、ノウハウをテキスト化して蓄積・活用するものです。社内ポータル(社内SNS)は、経営発信や社内交流で一体感を醸成します。

独自の権限体系や基幹連携、閉域網での運用にも対応できます。その一方で、開発費用と期間は大きく膨らみます。

Box、Google Workspace、Microsoft 365は、ファイル基盤に必要な機能を高度に備えています。保管や共有、検索、権限管理がその代表例です。

フルスクラッチを選ぶ前に、既製品で自社の要件を満たせないかを丁寧に確かめ、独自開発の必要性を見極めます。

既存SaaSパッケージとフルスクラッチの違い

既存SaaSとフルスクラッチを比べるときは、基盤をどう持つかと、運用の責任を誰が負うかに注目します。

  • 既存SaaS:完成済みの基盤を借りて使う形です。
  • Microsoft 365:裏側に大規模なファイルサーバーのSharePointを持っています。
  • SharePoint:利用者が意識しなくても、版管理や権限、監査ログ、外部共有を自動で制御します。
  • Google Workspace:リアルタイムの共同編集と、ファイル本文の横断検索を備えています。
  • フルスクラッチ:自社専用の基盤を設計・開発・保守し、自由度と引き換えに費用と運用の負担を負います。

既製SaaSは、世界中の企業の要件を取り込みながら継続的に進化しています。そのため、部門別フォルダやファイル共有のような一般的な用途なら、自社開発より高機能で安価に使え、保守の手間も抑えられます。

この違いを踏まえて、「借りる」で足りるのか、それとも「所有する」必要があるのかを判断します。

既存SaaSで足りるケースとフルスクラッチが必要になるケース

既存SaaSで十分なケースは多く、独自開発が必要になるのは、次のような条件に当たる場合に限られます。

  • 複雑な固有業務:独自の基幹システムや特殊な承認フローと連動します。
  • 完全な自社管理:厳格なセキュリティ要件があり、インターネットから遮断したオンプレミス環境が必要になります。

Microsoft 365、Google Workspace、Boxでは、部門別フォルダや役職別の権限に対応できます。さらに、バージョン管理や共同編集、安全な外部共有、全文検索も利用できます。

金融や医療、防衛関連などでは、機密性の高い情報を扱うため、完全自社管理のサーバー環境が必要になることがあります。ただし、固有要件が明確でないままフルスクラッチを選ぶと、費用やリスクに見合わない過剰投資になりがちです。そのため、自社の要件を洗い出して既製品の限界を本当に超えるかを確かめることが、後悔の少ない選択につながります。

ポイント

既製SaaSで足りるか、独自開発が必要かは、基盤を借りるか所有するかの違いで考えます。独自の権限や基幹連携、閉域網での運用が固有要件に当たるかどうかで、必要性が決まります。

フルスクラッチ・オーダーメイドで実現できる機能

独自のアクセス権限設計を企業・役職、閲覧・操作、期間・案件の3つの軸に分けた図。
組織・操作・利用期間に応じて権限を細分化できます。

フルスクラッチなら、自社の業務やセキュリティ要件に合わせて、既製SaaSでは実現できない価値を引き出せます。

独自のアクセス権限設計ときめ細かい閲覧・ダウンロード制限

独自の権限設計なら、既製品の標準機能では表しにくい組織階層や業務ルールにも対応できます。

  • 企業・役職別:親会社、子会社、関連会社や役職ごとに権限を変えられます。
  • 閲覧・操作別:機密文書は閲覧だけを許可し、ダウンロードや印刷は禁止します。
  • 期間・案件別:特定のプロジェクトメンバーだけに、期間を限ってアクセスを付与します。

複数のグループ企業をまたぐ複雑な階層にも、それぞれ異なる権限ルールを設定できます。

既製SaaSでも一定のカスタマイズはできます。ただし、商習慣や組織構造に合わない場合は、独自開発で要件を実装することになります。

権限が複雑になるほど開発工数と保守の負担は増えます。そのため、業務上必要な要件に絞り込むことが欠かせません。

基幹/業務システムとのファイル連携と完全オンプレミス・閉域網要件

独自開発なら、業務システムとのファイル連携や、閉域網での運用も実現できます。

  • 業務システム連携:人事、会計、生産管理などのシステムとファイル基盤を結びます。
  • 処理後の保管:業務処理のあとに関連ドキュメントを自動で作成し、所定の場所に収めます。
  • 閉域網:インターネットから遮断した環境で、大容量データを安全に保管・共有できます。

たとえば、受注処理が終わると注文書や納品書を所定のフォルダに整理でき、契約締結後は契約書を適切な権限で保管できます。業務システムと密にファイルを連携する仕組みは、汎用SaaSでは難しく、オーダーメイド開発ならではの領域です。

クラウドへのデータ配置が認められない業界では、完全自社管理のオンプレミス環境が必須になります。そのため、独自開発が合理的な選択になります。

オーダーメイド開発を選ぶかどうかは、これらの連携や環境要件が本当に不可欠かどうかで決まります。

ポイント

独自開発で得られるのは、権限の細かな設計、業務システムとのファイル連携、閉域網での運用です。ただし、どれも業務上の必要性に照らして要件を絞ることが、保守負担を抑えるうえで大切です。

費用感・開発期間の比較

SaaS、パッケージ、フルスクラッチの初期費用の目安を並べた図。
導入形態によって初期投資の規模が大きく異なります。

SaaS、パッケージ、フルスクラッチでは、費用と期間に大きな差があります。それぞれの目安を比べると、投資判断の前提をつかむ手がかりになります。

SaaS導入・パッケージ導入・フルスクラッチのコスト比較

SaaS、パッケージ、フルスクラッチの導入形態を比べると、コストには大きな差があります。見るべきは、初期費用と継続費用の両方です。

  • SaaS:初期費用は基本0円で、1ユーザーあたり月額800円〜1,000円台が中心です。
  • パッケージ:オンプレミスの基本ライセンス費は数十万〜数百万円です。100ユーザーで50万円程度の例もあり、翌年からは購入費用の約20%が年保守費用になります。
  • フルスクラッチ初期費:要件定義からリリースまでの開発費は、数千万円規模です。
  • フルスクラッチ継続費:毎年15〜20%程度の保守費用に加えて、サーバー運用やセキュリティ対策の人件費もかかります。

SaaSでは、Business Starterが月額800円からで、保守はベンダーが担います。

フルスクラッチは初期費用に加えて保守も毎年かかるため、総保有コストで比べても大きな差が生じます。

独自開発を選ぶかどうかは、この大きなコスト差に見合う固有要件があるかで決まります。理由があいまいなままでは、投資を回収できないおそれがあります。

開発期間の違いと工程別の目安

導入形態によって、利用開始までの期間は変わります。独自開発では、各工程の期間も見積もりに含めます。

  • SaaS:アカウント発行のみなら最短即日から数日。全社展開と定着には1〜3ヶ月程度かかります。
  • パッケージ(オンプレミス):サーバーの調達・構築・インストールを含め、要件定義から本格稼働まで半年〜1年以上です。
  • フルスクラッチ:要件定義からリリースまで、最低8ヶ月〜1年半以上が必要です。
  • 設計・開発:基幹連携や独自権限の要件定義は1.5〜2ヶ月、データベース・UI/UX・インフラ設計は2〜3ヶ月、プログラミングと全文検索の構築は3〜5ヶ月です。
  • テスト・移行:大容量転送と脆弱性のテストは1.5〜2ヶ月、旧環境からのデータ移行と本番デプロイは1〜2ヶ月です。

開発中も既存の仕組みで業務を続けるため、完成するまでは新しいシステムの効果を得られません。期間の面では、スピードを重視するSaaSと、作り込みを重視するフルスクラッチのどちらを優先するかを踏まえて選びます。

ポイント

フルスクラッチは初期費用と期間が大きく、その差に見合う固有要件があるかが判断の基準です。費用だけでなく、期間と保守の負担も合わせて見積もることが大切です。

オーダーメイド開発の進め方と契約形態

課題と目的の整理、現場の巻き込み、パイロット導入、PDCAの順に進む開発手順の図。
小さな導入で得た評価を改善のサイクルにつなげます。

開発を成功させるには、進め方と契約形態を適切に選ぶことが欠かせません。投資額が大きく期間も長いため、目的の設定が成否を左右します。

課題の整理・現場の巻き込み・スモールスタートの進め方

目的が曖昧なままオーダーメイド開発を始めると、失敗につながります。まずは、現状の課題と目的を明文化することから始めます。

  1. 課題と目的を整理する:情報共有の課題、解決したいこと、独自開発でなければ実現できない要件を書き出します。
  2. 現場を巻き込む:情報システム部門だけで進めず、現場のキーマンを要件定義やプロトタイプの評価に加えます。
  3. 小さく導入する:全社一斉ではなく一部の部署でパイロット導入を行い、PDCAを回して形骸化を防ぎます。

机上の検討では見えにくい使いやすさや運用上の課題も、現場の声を聞くことで早い段階に把握できます。さらに、パイロットで運用ルールを練り上げ、成功事例として社内に横展開すれば、「作ったのに使われない」事態を避けやすくなります。

多額の投資を無駄にしないためには、この順番で進めることが条件になります。

契約形態(ラボ型・請負・準委任)の選び方

契約形態には複数の選択肢があり、プロジェクトの性質に応じて選びます。判断の基準になるのは、仕様の固まり具合と、予算管理の優先度です。

  • ラボ型開発:顧客専属の技術者チームを一定期間確保し、継続して開発します。機能追加や段階的に固まる仕様に合います。
  • 請負契約:成果物の完成を約束します。要件が明確なら向いており、予算を見通しやすいのが特徴です。
  • 準委任契約:実際の工数に応じて費用が発生します。使い勝手を試すアジャイル開発や、柔軟な仕様変更に適しています。

請負は仕様変更で追加費用がかかりやすく、準委任は最終的な費用が変動するリスクがあります。たとえば、現場の反応を見ながら権限や画面を調整する案件では、準委任やラボ型でのアジャイル開発が適することがあります。

一方で、予算管理を重視する場合は、請負との組み合わせも検討します。自社の優先順位に応じて、契約を設計します。

契約前に十分すり合わせておけば、開発会社との認識のずれやトラブルを防げます。

ポイント

目的を明文化し、現場を巻き込みながら一部から導入するのが基本です。契約形態は、仕様の固まり具合と予算管理の優先度で選びます。

リスクと代替アプローチ(ハイブリッド活用)

フルスクラッチには価値がある一方で、相応のリスクもあります。そのため、リスクを理解し、ゼロから作らない代替策も視野に入れると、より賢明に選べます。

スコープクリープ・技術的負債・自社運用の負担

独自開発では、開発の途中から開発後の運用まで、注意したい点があります。

  • スコープクリープ:開発中に要望が増え、納期と予算が当初計画を超過します。
  • 技術的負債:独自コードが複雑になり、保守や機能追加のコストと時間が増えます。
  • 自社運用(見落としやすい):サーバーやセキュリティを自社で管理し、退職時にブラックボックス化するおそれがあります。

OSSや自社サーバーを使う場合は、構築やバックアップ、セキュリティ対策、バージョンアップまで自社で担います。専任エンジニアがいない企業では、こうした運用の負担が見えにくいコストとなり、導入のハードルも高くなります。

独自開発では、SaaSならベンダーが担う作業も自社で続けることになります。開発後の運用に疲れ、「作らなければよかった」と感じるおそれもあります。

独自開発の価値が負担を上回るかどうかは、開発後の体制も踏まえて慎重に判断します。

ノーコード/ローコード・アドオンによるハイブリッド活用

既存のプラットフォームを組み合わせるハイブリッド活用は、独自要件を満たしながら、フルスクラッチの大きな費用とリスクを避けられる現実的な方法です。

  • ノーコード/ローコード:kintone(月額10,000円〜)や楽々Webデータベース(オンプレミス版180万円〜)を使います。
  • アドオン:Google WorkspaceやMicrosoft 365を基盤に、足りない機能をrakumoなどで補います。

ノーコード基盤なら、インフラの保守はベンダーに任せたまま、独自のアプリや業務プロセスを柔軟に作れます。

完成済みの基盤を使い、自社固有の部分だけを組み立てる方法です。アドオンは機能別の課金で、組織階層やワークフローの不足を補えます。

ハイブリッドなら、既製SaaSの安定性と保守の手軽さに、独自開発の柔軟性を組み合わせられます。特に、「既製品では少し足りないが、フルスクラッチは重い」企業にとって、費用対効果の高い選択肢になり得ます。

独自開発を決める前に、ハイブリッドで要件を満たせないかを検討する価値があります。

ポイント

フルスクラッチのリスクは、要望の膨張、保守の難化、自社運用の負担です。独自開発を決める前に、ノーコード基盤やアドオンで要件を満たせないかを比べることが、判断の材料になります。

まとめ

情報共有システムの独自開発を、ファイルや文書を共有する基盤の視点から振り返ります。

Box、Google Workspace、Microsoft 365は、ファイルの保管や共有、検索、権限管理を高度に備えています。一般的な要件であれば、既製SaaSを利用できます。

独自開発が必要になるのは、既製品では対応できない複雑な業務や権限、基幹連携、閉域網でのオンプレミス運用などに、明確な固有要件がある場合です。

費用の目安は、SaaSが初期0円・月額800円台から、パッケージが初期数十万〜数百万円と年20%の保守費用です。フルスクラッチは初期数千万円と年15〜20%の保守費用がかかり、開発期間も8ヶ月〜1年半以上です。一方、SaaSの全社展開は1〜3ヶ月が目安です。

スコープクリープや技術的負債、自社運用の負担も考慮に入れ、kintoneなどのノーコード基盤やrakumoなどのアドオンを使う方法とも比べてみてください。

独自開発では、課題と目的を明確にし、現場を巻き込んで小さく導入して、PDCAを回します。優先順位に合う契約を選び、丁寧に進めることが成功の条件です。

構築方法を決める際は、複数の会社に相談し、既製品、ハイブリッド、フルスクラッチを比べることから始められます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。