ITシステムの保守監視は、内製か委託か、固定型か従量型か、保証型か努力目標型か、OSSかSaaSかの四つの選択で決まります。
どれも一長一短で、見るべき点は自社の事業影響度と、自社で確保できるリソースです。費用や契約形態の全体像を知りたい方は、まずITシステム保守監視の完全ガイドからお読みください。
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内製とMSP/SOC委託のメリット・デメリット
保守監視を自社で内製するか、MSP(マネージドサービスプロバイダ)やSOC(セキュリティ監視)に委託するかは、最初に決める大きな選択です。判断は、コストに加えて、人材の確保、属人化のリスク、対応スピードという複数の観点で行うことになります。それぞれの長所と短所を並べて比べることが、自社に合う選択への第一歩です。
内製の強みと、人件費・属人化という弱み
内製のメリットは、自社システムへの理解が深く、業務の文脈を踏まえた対応ができる点です。ノウハウが社内に蓄積し、外部とのやり取りの手間もない分、軽微な対応はスピーディーに進みます。一方で、内製の弱みは次の二つです。
- 人件費:監視オペレーターは人月単価60万〜80万円を複数人分、運用設計やインシデント分析ができる人材は80万〜120万円を抱える必要があります。
- 属人化:特定の担当者しか障害対応の手順を知らない状態では、その人が休んだり退職したりした途端に運用が立ち行かなくなります。
内製のデメリットとして特に無視できないのが人件費です。24時間365日の体制を内製で組もうとすると、シフトを回すのに最低でも数名が要ります。そのため、中小企業には重い負担になります。
JUASの「IT運用コストメトリックス調査2020」では、従業員1人あたりの運用役務コスト中央値が9万円、サーバー1台あたり140万円と示されており、内製の人的コストは決して小さくありません。内製は、自社理解の深さと引き換えに、人件費と属人化という二つの重荷を背負う選択です。
委託のメリットとROIの計算方法
MSPやSOCへの委託では、24時間365日の体制を、自社で人を抱えるより安く、穴なく確保できます。料金の一例は、フルマネージドで月20,000円/台、SOC運用支援で月9万円から、CECのSOCでは1,000台規模で月30万円からです。IT系BPO市場は、矢野経済研究所の調査で2024年度に3兆1,220億円規模に達しており、委託は今や一般的な選択肢です。
委託すると、自社の情シスは監視の実務から離れ、企画や業務改善といった本来の役割に集中できます。判断の決め手はROIの計算で、内製でフルタイムの人員を抱える場合の年間人件費(たとえば監視オペレーター複数名で数千万円規模)と、委託した場合の年間費用を並べて比べることです。多くの中小企業では、24/365を内製で組むコストより、委託のほうが圧倒的に安くなります。
一方で、委託のデメリットは、自社システムへの理解が外部に依存することと、やり取りの一手間です。そこで、「手を動かす実務は委託し、業務影響の判断と社内調整は自社で担う」と線を引いておけば、委託のメリットを活かしながら丸投げのリスクを避けられます。見るべき点は、「自社で24/365の人員を確保し続けられるか」「属人化を許容できるか」の二点です。
月額固定型と従量課金型の判断基準

委託すると決めたら、次は契約形態の選択です。月々定額を払う「月額固定型」と、稼働した量に応じて払う「従量・実働課金型」のどちらを選ぶかは、自社の障害の発生パターンと予算の組み方によって変わります。両者のメリットとデメリットを理解したうえで、自社の稼働量の増減に合わせて選ぶ必要があります。
月額固定型の安定と待機費
月額固定型のメリットは、費用が読みやすく、予算を立てやすいことです。障害が頻発する月でも追加請求がなく、いつでも一定水準の対応を受けられる安心感があります。さらに、運用・監視は月5万〜20万円、24時間の緊急対応込みなら月10万〜20万円といった定額で、対応の即応性が保証されます。
一方で、デメリットは、障害がゼロの月でも同じ金額を払う「待機費」が発生することです。「何もなかった月の固定費が無駄に感じる」という不満は、固定型につきものです。この不満への一つの解が、使われなかった工数を新機能開発や改善に振り替える「充填型保守」の考え方です。
この考え方なら、固定型でありながら余った工数を改善投資に充てられ、待機費の払い損感を解消できます。月額固定型が向いているのは、障害が止まると事業に致命的な影響が出るシステムや、予算を年間で安定させたい企業です。そのうえで、安定と引き換えに待機費を払う構造を理解し、その工数を改善に回せる契約にできれば、固定型のデメリットは大きく緩和できます。
従量課金型の無駄の少なさと変動リスク
従量・実働課金型のメリットは、使った分だけ払うので、障害が少ない月は費用を抑えられることです。待機費が発生しない分、稼働量にばらつきがある中小企業には合理的に映ります。また、スポットの障害対応は1件3万〜10万円が相場で、年に数回しか障害が起きないシステムなら、固定型より安く済む可能性があります。
安定したシステムで「滅多に止まらないが、止まったときだけ対応してほしい」というニーズには、従量型が適しています。一方で、従量型のデメリットは、費用が変動して予算が立てにくいことと、障害が頻発した月に請求が跳ね上がるリスクです。スポット1件3万〜10万円を何度も積み上げると、結果的に固定型より高くつくこともあります。
判断のポイントは、「障害の発生頻度が読めるか」「予算の安定を優先するか、無駄の削減を優先するか」です。障害が頻発する不安定なシステムなら固定型、安定していて障害が稀なシステムなら従量型、という使い分けが基本になります。両者を組み合わせ、たとえば監視は固定型・対応はスポットとするハイブリッドも選択肢になります。
保証型SLAと努力目標型SLAの判断基準

SLAをどう設計するかも、メリットとデメリットが伴う重要な判断です。未達時にペナルティのある「保証型」を求めるか、目標値にとどめる「努力目標型」で良しとするかを決める必要があります。
さらに、稼働率を99.9%にするか99.99%にするかという水準の選択も、コストと安心のどちらを取るかという問題です。過剰投資も過少投資も避けるには、事業影響度に照らして適切な水準を選ぶことが欠かせません。
保証型の安心と、跳ね上がるコスト
保証型SLAのメリットは、未達時にサービスクレジット(料金返金)などのペナルティがあるため、ベンダーに一定水準の対応を担保させられる点です。「重大インシデントに15分以内の一次対応を保証」といった条件は、保証型ならではの安心感を与えます。一方で、デメリットは、その保証を実現するための体制コストが高くつくことです。
稼働率99.99%(許容ダウンタイムは年52.6分・月4.38分)を保証型で求めると、冗長構成や即応体制が必要になり、運用コストは99.9%の場合より段階的に跳ね上がります。稼働率の「9」を一つ増やすたびに、コストは大きく上がります。そのため、過剰なSLAになっていないかを、事業影響度から見極める必要があります。
停止が直接売上や信用を損なう基幹システムなら、保証型・高稼働率の価値があります。ただし、影響の小さい社内システムに同じ水準を適用すると、待機費の無駄遣いになります。保証型を選ぶなら、その水準が事業影響度に見合っているかを必ず検証してください。
努力目標型で十分なケースの見極め
努力目標型SLAのメリットは、保証型より費用が抑えられることです。ペナルティ条項がない分、ベンダーは現実的な体制で対応でき、コストを下げられます。一方で、デメリットは、未達でも返金などの責任が生じないため、いざというときの担保が弱いことです。
判断のポイントは、やはり「そのシステムが止まったときの事業影響度」です。停止しても翌営業日の復旧で支障がないシステムなら、努力目標型・稼働率99.9%で十分なケースが多くなります。判断の参考として、ダウンタイムの損失額を見積もると客観的になります。
総務省の2025年版の統計では金融・医療・EC系で5分以上の停止1回あたり平均1,200万円の機会損失とされ、Gartnerの2024年の指標ではダウンタイム1分あたり約5,600米ドルとされています。この損失額が大きいシステムは保証型・高稼働率の投資が見合いますが、損失が小さいシステムは努力目標型で足ります。SLAの水準は、損失額とコストを天秤にかけて決めることで、過剰投資を防げます。
OSS監視とSaaS監視のメリット・デメリット

最後に、監視ツールにOSS(オープンソース)を使うか、SaaS(クラウド型サービス)を使うかを決めます。ツールの選択は、初期コスト、運用工数、拡張性の間で釣り合いを取るものであり、自社のエンジニアリングリソースによって最適解が変わります。それぞれの特性を理解して選ぶことが、長期的な運用コストを左右します。
OSS(Zabbix)のライセンス無料と工数負担
OSS監視の代表格であるZabbixのメリットは、ライセンス費が無料で、カスタマイズの自由度が高いことです。監視対象が多くても、ホスト数に応じたライセンス課金がないため、規模が大きいほどコスト面の優位が効きます。さらに、柔軟な設定ができ、自社の要件に細かく合わせた監視を組めます。
一方で、デメリットは、構築と維持に相応の工数とスキルが必要なことです。サーバーの用意、監視設定の構築、バージョンアップへの追従などを自社(または委託先)が担う必要があり、その人件費を含めると「無料」とは言い切れません。
OSSが向いているのは、エンジニアリングリソースがあり、監視を内製でしっかり作り込みたい企業や、監視対象が多くてSaaSの従量課金が高くつく企業です。逆に、構築・維持の工数を割けない企業がOSSを選ぶと、「無料のはずが、結局運用に手間がかかって割高だった」という事態になりかねません。判断は、導入費に加えて運用の人月まで含めた総コストで行います。
SaaS(Datadog/Mackerel)の即時性と従量課金
SaaS監視のDatadogやNew Relic、Mackerelのメリットは、サーバー構築が不要で、すぐに監視を始められることです。豊富なダッシュボードや連携機能が最初から用意され、運用・保守はサービス側が担うため、自社の工数負担は小さくて済みます。特に、立ち上げの速さと運用の手軽さは、エンジニアリングリソースが限られる中小企業にとって大きな魅力です。
一方で、デメリットは、ホスト数やメトリクス量に応じた従量課金で、中規模でも月数万〜数十万円かかり、規模が大きくなるほどコストが膨らむことです。SaaSが向いているのは、監視をすぐに始めたい企業、運用工数を割けない企業、そして監視対象がそれほど多くなく従量課金が許容範囲に収まる企業です。
見るべき点は、「自社に監視を構築・維持できる人材がいるか」「監視対象の規模はどのくらいか」の二点です。少人数で素早く監視を始めたいならSaaS、エンジニアがいて大規模に作り込むならOSSというのが基本の選び分けです。riplaは、フルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、こうしたツール選定を含め、自社の体制に合った監視の組み立てを一緒に判断することを重視しています。
まとめ
ITシステム保守監視の選択は、内製かMSP/SOC委託か、月額固定型か従量課金型か、保証型SLAか努力目標型SLAか、OSS監視かSaaS監視かという四つの選択に集約されます。内製は自社理解が深い反面、人件費と属人化を抱えます。
委託は24/365の体制を安く確保できますが、社内調整が要ります。固定型は安定する一方で待機費が出て、従量型は無駄が少ない代わりに変動リスクがあります。
保証型・高稼働率は安心できるものの、コストが跳ね上がります。努力目標型は安く済みますが、担保が弱くなります。OSSは無料でも工数がかかり、SaaSはすぐ使える反面、従量課金がかさみます。
どの選択にも共通する見るべき点は、「自社システムの事業影響度」と「自社に確保できるリソース」です。停止1回1,200万円という損失額や、人月単価60万〜120万円といった一次データを自社の数字に当てはめ、過剰でも過少でもない最適な組み合わせを選んでください。
riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守を組み合わせ、これらの判断を一緒に整理し、自社に合った保守監視の体制づくりを支援します。費用相場や契約形態を含む全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
