ITシステム維持運用の導入/開発事例や活用/成功事例について

ITシステムの維持運用を外部に委託しようと検討するとき、多くの情報システム担当者がまず知りたいのは「自社と同じように属人化や費用の高止まりに悩んでいた企業が、実際にどうやって維持運用の体制を立て直し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。維持運用は、開発のように完成して終わるものではなく、稼働後の数年〜十数年にわたって毎月コストが発生し続ける領域です。それだけに、自社の状況に近い導入事例・活用事例を知ることが、委託先選定や内製化判断の精度を大きく高めてくれます。

本記事は、ITシステム維持運用の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。ベンダー乗り換えで年間保守費を圧縮したTCO改善事例、障害件数をBefore/Afterで削減した監視強化の事例、ひとり情シスが運用サポートを委託して本来業務に集中できた事例、さらに保守移管に失敗しかけたところから立て直した軌道修正まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、ITシステム維持運用の全体像をまだ把握していない方は、まずITシステム維持運用の完全ガイドから読むことをおすすめします。

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ベンダー乗り換えで年間保守費を圧縮した事例

ベンダー乗り換えで年間保守費を圧縮したITシステム維持運用事例のイメージ

ITシステム維持運用の事例で、もっとも経営層に響くのが「ベンダー乗り換えによる年間保守費の圧縮」です。維持運用費は一度契約すると見直されないまま惰性で払い続けられることが多く、知らないうちに高止まりしているケースが珍しくありません。年間保守費は開発費の15〜20%が一つの目安とされますが(出典:ripla)、内訳が不透明なまま割高な金額を払い続けている企業ほど、乗り換えで大きな改善余地が生まれます。

保守費の内訳を可視化して割高分を削った事例

乗り換えに成功した企業がまず行ったのは、現行の保守費が何にいくら使われているかの可視化です。維持運用費の内訳は、定期保守20〜30%、監視15〜25%、障害対応25〜35%、問い合わせ対応10〜20%、軽微改修10〜15%、管理報告5〜10%といった構成が一般的です(出典:ripla)。この内訳を旧ベンダーに開示させたところ、実際にはほとんど発生していない障害対応の待機要員費が大きな割合を占めていた、というケースが見られます。

内訳を把握すると、自社の実態に合わない費目を交渉材料にできます。たとえば年に数回しか障害が起きないシステムに、常時待機の人月単価60万〜150万円分が固定で計上されていれば、その妥当性を問い直せます(出典:ripla)。事例では、こうした実態と乖離した費目を切り出し、必要な監視と障害対応だけに絞った契約へ組み替えることで、年間保守費を3割前後圧縮しています。重要なのは、値引き交渉ではなく「何にいくら払うか」を内訳ベースで再設計する姿勢です。

乗り換え前後のTCOをBefore/Afterで比較した事例

乗り換えの判断で見落とされがちなのが、移管そのものにかかる一時コストです。新旧ベンダーが並行稼働する期間の二重コストや、ドキュメント整備、引き継ぎ工数を含めて、数年単位の総保有コスト(TCO)で比較しないと、目先の月額が下がっても結果的に高くつくことがあります。成功事例では、移管初年度は一時費用でTCOが膨らむものの、2年目以降の月額削減でそれを回収し、3年トータルでは大幅にコストが下がる、という見取り図を最初に描いています。

規模別の月額相場(小5〜15万、中15〜50万、大50〜200万以上)を基準に、自社のシステム規模に対して現行費用が妥当かを照らすことも有効です(出典:ripla)。中規模システムなのに大規模相当の保守費を払っていれば、それ自体が乗り換え検討のサインになります。事例から学べるのは、「いくら安くなったか」を月額単体ではなく、移管コストまで含めた数年TCOで評価することが、経営判断として正しい意思決定につながるという点です。

障害件数をBefore/Afterで削減した監視強化の事例

障害件数をBefore/Afterで削減した監視強化のITシステム維持運用事例のイメージ

維持運用の成果としてもっとも経営に伝わりやすいのが、障害件数と障害影響の削減です。多くの企業では、障害が起きてから対応する「事後対応型」の運用になっており、ユーザーからの問い合わせで初めて障害に気づく、という状態が常態化しています。これを監視強化によって「予兆検知型」に転換すると、障害件数そのものと、障害発生時の影響範囲を大きく縮小できます。

予兆検知で重大障害を未然に防いだ事例

監視強化に成功した事例では、CPU使用率やメモリ、ディスク残量、レスポンスタイムといった指標に閾値を設け、異常の兆候を障害に至る前に検知する仕組みを整えています。たとえばディスク残量が一定を下回った段階でアラートを上げ、業務時間外に増設対応を行えば、満杯によるサービス停止という重大障害を未然に防げます。事後対応では数時間のサービス停止になっていた事象が、予兆検知によってユーザーに気づかれることなく解消される、という形で効果が現れます。

近年は、こうした監視に機械学習を組み合わせ、平常時の挙動から外れた異常を自動検知するAIOps的なアプローチも広がっています。国内のITインフラサービス市場は2024年の2兆2,685億円から2029年に3兆674億円へ、年平均6.2%で成長すると見込まれており(出典:IDC)、監視・運用の高度化への投資は市場全体としても拡大傾向にあります。事例が示すのは、監視は単なるコストではなく、重大障害による事業損失を防ぐ「保険」として機能するという点です。

SLAを定量管理して稼働率を改善した事例

障害削減の効果を「感覚」ではなく「数字」で語れるようにしたのが、SLA(サービス品質保証)の定量管理を導入した事例です。稼働率を99.9%(月43分の停止まで許容)と定め、初報応答を重大障害で15分以内・通常で2時間以内、復旧を重大障害で4時間以内・通常で8時間以内といった目標を契約に明記します(出典:ripla)。これにより、運用品質が約束された水準で維持されているかを毎月の報告で客観的に確認できるようになります。

SLAを設定した事例の効果は、数字の改善だけにとどまりません。稼働率や応答時間が可視化されることで、ベンダーと発注側が同じ指標を見ながら改善を議論できるようになり、運用の質をめぐる水掛け論がなくなります。Before/Afterで月次障害件数と平均復旧時間を並べて経営に報告できる体制が整うと、維持運用への投資が「なぜ必要か」を説明しやすくなります。監視強化とSLA定量管理は、障害削減という成果を再現可能な形に変える両輪だと言えます。

ひとり情シスが運用サポートを委託した事例

ひとり情シスが運用サポートを委託したITシステム維持運用事例のイメージ

中堅・中小企業の維持運用で典型的な悩みが、情報システム部門が一人、あるいは数人で複数システムを抱える「ひとり情シス」問題です。日々の問い合わせ対応や障害対応に追われ、本来やるべき戦略的なIT企画に時間を割けない、という状態に陥りがちです。この負荷を外部の運用サポートに委託することで、属人化を解消しつつ担当者を本来業務に戻した、という活用事例が増えています。

属人化したシステムを委託で標準化した事例

ひとり情シスの最大のリスクは、システムの知識がその担当者の頭の中だけにある「属人化」です。担当者が休職・退職すれば、誰も運用できなくなり事業が止まりかねません。委託に踏み切った事例では、まず外部のサポート事業者と一緒に運用手順書や構成情報を整備し、暗黙知を文書として外に出すところから始めています。サービス委託の相場は月20万〜50万円程度とされ(出典:ripla)、一人分の人件費を抱え続けるより、必要な範囲を委託したほうが結果的に安定する、という判断です。

標準化が進むと、問い合わせ対応や定型作業を外部に任せられるようになり、担当者は判断が必要な業務に集中できます。重要なのは、丸投げにせず「何を委託し、何を社内に残すか」を切り分けることです。事例では、日常の一次対応とルーティンの運用は委託し、システムの方針判断やベンダーとの調整は社内に残すという役割分担で、属人化の解消とコントロールの維持を両立させています。

担当者を戦略業務に戻して成果を出した事例

運用サポートを委託した効果は、コスト面だけでなく、社内人材の使い方の最適化に現れます。これまで日々の運用に追われていた情シス担当者が、DX推進や新システムの企画、業務改善といった、より付加価値の高い仕事に時間を使えるようになります。JUASの2025年の調査では、IT予算を増額する企業が49.5%にのぼっており(出典:JUAS)、攻めのIT投資が求められるなかで、限られた社内人材を運用の守りに張り付けておく余裕は多くの企業にありません。

活用事例が示すのは、運用サポートの委託が「コスト削減」ではなく「人材の再配置による価値創出」だという視点です。守りの運用を信頼できるパートナーに任せ、社内の貴重なIT人材を攻めの企画に振り向ける。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、作った後も継続して伴走し、ひとり情シスの負荷を分かち合う支援を重視しています。委託は人を減らすためではなく、人を活かすために行う、という発想が成功事例に共通しています。

保守移管の失敗から立て直した事例

保守移管の失敗から立て直したITシステム維持運用事例のイメージ

事例の価値は、成功談だけにあるのではありません。むしろ発注側がもっとも学べるのは、「なぜつまずいたのか」「どう立て直したのか」というリアルな経験です。維持運用では、ベンダーを変更する保守移管でつまずき、サービス品質が一時的に悪化する、という痛い経験をした企業が少なくありません。この失敗から得られる教訓は、これから移管を考える企業にとって何よりの保険になります。

ドキュメント不足で引き継ぎが難航した事例

保守移管がつまずく最大の要因は、ドキュメントの不足です。旧ベンダーが残した設計書や運用手順書が古い、あるいはそもそも存在せず、システムの仕様が現行ベンダーの担当者の経験にしか残っていない、というケースが頻発します。失敗事例では、移管を急ぐあまり現行システムの棚卸しを十分に行わないまま新ベンダーへ引き継ぎ、いざ障害が起きたときに誰も原因を特定できず、復旧が長期化しました。

この事例で立て直しの起点になったのは、移管スケジュールをいったん止め、現行システムのドキュメント整備を仕切り直したことです。新旧ベンダーが並行稼働する期間を設け、その間に旧ベンダーの知見を運用手順書や障害対応マニュアルとして文書化し、新ベンダーが実際の障害対応を旧ベンダー監修のもとで経験する。この丁寧な引き継ぎ期間を確保したことで、移管後の品質低下を最小限に抑えられました。移管は「契約を切り替える」作業ではなく「知識を移転する」プロジェクトだという認識が立て直しの鍵でした。

並行稼働期間を設けて段階移行した事例

立て直しに成功した企業に共通するのは、一気に切り替えるのではなく、並行稼働を前提とした段階移行を選んだことです。最初の数か月は旧ベンダーが主担当、新ベンダーが副担当として障害対応に同席し、徐々に主従を入れ替えていく。この移行方式により、知識の空白期間が生まれず、万一新ベンダーが対応しきれない事象が起きても旧ベンダーがフォローできる安全網が確保されます。

段階移行には、新旧ベンダーへの二重支払いという一時コストが発生します。しかし失敗事例の教訓を踏まえれば、この二重コストは「移管リスクを下げるための必要経費」だと割り切るべきです。移管を急いで品質を落とし、障害対応に追われてかえって余計な費用がかかった企業と比べれば、計画的な並行稼働のほうが結果的に安く済みます。事例が教えるのは、保守移管の成否は「いかに速く切り替えるか」ではなく「いかに知識を欠落なく移すか」で決まるという原則です。

まとめ

ITシステム維持運用事例のまとめイメージ

ITシステム維持運用の事例を振り返ると、成功も失敗からの回復も、結局は「保守費の内訳を可視化し、障害削減やSLAという定量指標で効果を語り、知識の移転を欠かさない」という一点に集約されます。ベンダー乗り換えでは内訳を再設計して年間保守費を圧縮でき、監視強化と予兆検知が障害件数をBefore/Afterで縮小し、ひとり情シスの運用サポート委託が属人化を解消して人材を戦略業務に戻します。一方で、ドキュメント不足のまま急いだ保守移管は品質悪化を招き、並行稼働による段階移行こそが立て直しの鍵になりました。

事例を読むときに大切なのは、「いくら削減したか」だけでなく「なぜ運用品質が維持・改善できたのか」という視点です。自社のシステム規模と運用実態に照らし、まずは保守費の内訳可視化や監視指標の整備といった、効果の測りやすいところから一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守を組み合わせ、作った後も継続して伴走する維持運用を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。