ITシステム運用管理の必要機能や標準機能の一覧について

ITシステム運用管理は、監視から障害対応、更新、AIOpsまでの機能を組み合わせて、安定稼働と復旧を支える仕組みです。

発注企業の視点から、機能ごとの役割とカバー範囲を確かめます。全体像をまだ把握していない方は、まずITシステム運用管理の完全ガイドから読むことをおすすめします。

  • 監視・バックアップ:基盤の状態の把握と、データの復旧に向けた備え
  • 障害対応・SLA管理:復旧時間と品質基準の管理
  • 更新・リリース管理:変更を安全に本番環境に反映する作業
  • AIOps:ログやメトリクスから異常の兆しを捉える仕組み

それぞれの範囲と契約時の確認点は、次のセクションで扱います。

▼全体ガイドの記事
・ITシステム運用管理の完全ガイド

監視・バックアップという基盤の機能

死活監視、性能監視、ログ監視を3層に並べた図。
3種類の監視を組み合わせると、稼働状態から異常の予兆まで確認できます。

ITシステム運用管理の基盤になるのが、監視とバックアップの二つの機能です。どちらも「何も起きていない平常時」に静かに働き、トラブルを未然に防いだり、被害を最小限に抑えたりします。さらに、保守費の内訳でも監視は15〜25%を占めており(出典:ripla)、運用管理のコストの中核に位置づけられます。

監視機能のカバー範囲(死活・性能・ログ)

監視機能といっても、見る対象によって複数のレイヤーに分かれます。死活監視は、サーバーやネットワーク機器が生きているかを確かめ、性能監視は、CPUやメモリ、ディスク使用率といったリソースや、アプリケーションの応答時間やエラー率を見ます。そして、ログ監視は、ログを収集・分析して異常の予兆をつかみます。

監視では、アラートを上げるだけでなく、「異常をどの基準で検知し、誰に、どのくらいの速さで通知するか」まで設計されているかが問われます。たとえば処理速度では、RFPで「全画面3秒以内」といった具体的な性能要件を置く例があります(出典:ripla)。こうした基準を監視のしきい値に反映すると、ユーザーが体感する前に劣化を検知できます。

どこまでカバーするかで、運用管理の品質と費用が変わります。そのため、監視機能を契約に含めるときは、対象(サーバー・ネットワーク・アプリ・ログ)、検知基準、通知の即時性をセットで確かめることが欠かせません。

バックアップと復旧(RPO・RTO)の機能

バックアップ機能は、データの喪失やシステム障害から事業を守る役割を担います。ここで見るべきは、「どのくらい前の状態まで戻せるか(RPO:目標復旧時点)」と「どのくらいの時間で復旧できるか(RTO:目標復旧時間)」という二つの指標です。たとえ毎日バックアップを取っていても、最悪1日分のデータが失われる前提で運用設計しているのか、リアルタイムに近い保護をしているのかで、機能の水準はまったく異なります。

バックアップは「取っている」だけでは不十分で、「正しく復旧できる」ことが定期的に検証されている必要があります。運用管理の機能として優れているのは、取得の確認にとどまらず、復旧テストまで定期メンテナンスに組み込んでいるものです。特に、いざ障害が起きてから「バックアップが壊れていて復旧できなかった」と気づくのは、運用管理の典型的な失敗です。

バックアップ機能を契約に含めるときは、取得頻度と保存期間に加えて、復旧テストまで範囲に入っているかを確認します。事業継続の観点から、この確認は必要です。

ポイント

監視は死活・性能・ログのどこまでを対象とするか、バックアップは復旧テストまで含むかを、契約範囲を判断する目安にします。RPO・RTOの水準も合わせて確かめます。

障害対応とSLA管理という品質の機能

SLA管理を中心に、稼働率、応答時間、復旧時間、未達時の対応を結んだ図。
基準値の報告に加え、未達後の動きまでそろえると品質管理が機能します。

運用管理の品質を、もっとも端的に表すのが障害対応とSLA管理の機能です。障害対応は、保守費の内訳で25〜35%と最大の費目を占めており(出典:ripla)、運用管理の価値が集まる領域です。また、その品質を契約として担保するのが、SLA(サービス品質保証)の管理機能です。

障害対応の機能(一次対応・恒久対応)

障害対応は、大きく「一次対応」と「恒久対応」に分かれます。一次対応は、障害を検知してから影響範囲を切り分け、暫定的にサービスを復旧させるまでの動きです。恒久対応は、根本原因を特定し、再発を防ぐための恒久的な修正を施す動きです。

この二段構えが整っていないと、同じ障害が何度も再発し、現場が疲弊します。障害対応で確かめたいのは、その速さの基準です。「迅速に対応します」という曖昧な表現ではなく、初報・復旧・恒久対応の時間が数値で定義されているかを、契約時に必ず確認してください。

たとえば一次データでは、初報応答が重大障害で15分・通常で2時間、エスカレーションが30分、回答が24時間、復旧が重大障害で4時間・通常8時間、恒久対応が5営業日という水準です(出典:ripla)。これらの時間がSLAに明記され、実際に管理されているかが、障害対応機能の実効性を左右します。

SLA管理と稼働率レポートの機能

SLA管理の機能は、約束した品質基準(稼働率・応答時間・復旧時間)を実際に測定し、達成状況を定期的に報告する仕組みです。稼働率は99.9%(月43分程度の停止許容)や99.5%といった水準が一般的で(出典:ripla)、この数値を毎月のレポートで実績として示すことが、SLA管理機能の中核になります。また、管理・報告は保守費の5〜10%を占める費目でもあります(出典:ripla)。

SLA管理の機能で評価したいのは、「数値が報告されるだけ」で終わらず、未達時にどうするかまで定義されているかです。たとえば、稼働率を下回ったときに保守費の何%を減額するといったペナルティの取り決めがあるか、改善策が提示される仕組みになっているかを確かめます。

SLA管理は、運用品質を「測り、見せ、改善につなげる」一連の機能であってはじめて意味を持ちます。レポートの体裁だけ整っていて、未達でも何も起きない形骸化したSLA管理では、品質は守られません。SLA管理機能を契約するときは、測定・報告・未達時の対応がワンセットになっているかを確認します。

ポイント

障害対応とSLA管理は、初報・復旧・恒久対応の時間が数値で定義され、未達時の対応まで決まっているかを判断の目安にします。

アップデート・リリース管理とAIOpsの機能

システムは、作った後も継続して変更を重ねることで、安全と利便性を保ちます。その中身は、OSやミドルウェアのアップデート、機能の追加リリース、軽微改修です。この継続性を担うのが、アップデート・リリース管理の機能です。

また、近年はAIを活用して異常を予兆段階で検知するAIOpsという機能も広がりつつあります。

アップデート・リリース・軽微改修の管理機能

アップデート対応は、OS・ミドルウェア・ライブラリのセキュリティパッチやバージョンアップを適用する機能です。これを怠ると、既知の脆弱性が放置され、セキュリティインシデントを招く原因になります。リリース管理は、新機能や修正を本番環境に安全に反映する機能で、影響範囲の確認、リハーサル、切り戻し手順の準備までを含みます。

本番環境への変更は、無計画に行わず統制をかける必要があります。というのも、適用の仕方を誤ると、アップデートやリリースが新たな障害を生むからです。優れた運用管理では、変更前のテスト、適用タイミングの調整(業務影響の少ない時間帯の選定)、問題発生時の切り戻し手順までが標準化されています。

軽微改修は保守費の10〜15%を占め(出典:ripla)、仕様変更やちょっとした使い勝手の改善に対応する枠です。これらの枠を運用契約に確保しておくことが、システムを安全に育てながら使い続けるための基盤になります。反対に、枠が不十分だと、小さな変更のたびに追加見積もりが発生し、結果的に塩漬けにつながります。

AIOpsによる異常の予兆検知という新機能

近年の運用管理で注目されるのが、AIを使ったAIOps(AI for IT Operations)という機能です。従来の監視は「しきい値を超えたらアラートを出す」という事後的な仕組みでした。これに対しAIOpsは、大量のログやメトリクスをAIが学習し、「いつもと違う」異常の予兆を障害になる前に検知しようとします。

これにより、ユーザーに影響が出る前に手を打てる可能性が高まります。ただし、AIを組み込んだ運用には相応のコストがかかります。たとえば、MLOps(機械学習システムの運用)の保守は月50万〜200万円という水準が示されており(出典:ripla)、AIを使う運用は通常の運用より費用が高くなる傾向があります。

また、AIが誤検知(ハルシネーションを含む誤判定)をすることもあり、出力は人が確認できる設計が必要です。AIOpsを使うかは、自社のシステム規模とリスクに見合うかを冷静に判断します。riplaは、フルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、システムの重要度に応じて機能を組み合わせ、必要に応じてAI活用も取り入れる、過不足のない運用設計を重視しています。

ポイント

アップデートとリリースの枠を運用契約に確保するかが、判断の出発点です。AIOpsを加えるかは、自社のシステム規模とリスクに見合うかで決めます。

問い合わせ対応と定期メンテナンスの機能

対応時間帯、回答までの目標時間、問い合わせ内容の記録・分析、実施記録を並べた確認カード。
窓口の応答条件と定期作業の記録を、契約範囲で見比べられます。

監視や障害対応のような目立つ機能の陰で、日々の運用品質を地道に支えるのが、問い合わせ対応と定期メンテナンスの機能です。また、問い合わせ対応は保守費の10〜20%、定期保守は20〜30%を占め(出典:ripla)、運用管理のコストの中で決して小さくない比重を持ちます。

問い合わせ対応(ヘルプデスク)の機能

問い合わせ対応は、利用者からの「操作が分からない」「動作がおかしい」といった問い合わせを受け付け、回答や切り分けを行う機能です。一見すると窓口業務ですが、システムの利用定着と障害の早期発見を支えています。さらに、利用者の声を吸い上げれば、軽微改修や仕様変更につなげる起点にもなります。

問い合わせ対応の機能で確認したいのは、対応時間帯(平日日中のみか、夜間・休日も含むか)、回答までの目標時間、そして問い合わせ内容の記録・分析の仕組みです。一次データでは、回答までの目標を24時間とする例が示されています(出典:ripla)。

問い合わせを記録・分類して傾向を分析できれば、「同じ質問が頻発している箇所はマニュアルを改善する」「特定の操作でつまずく利用者が多いならUIを改修する」といった、システム改善への好循環が生まれます。問い合わせ対応を契約に含めるときは、対応範囲と記録・分析まで含まれるかを確かめることが、機能を活かすうえで欠かせません。

定期メンテナンスの機能(予防保守)

定期メンテナンスは、障害が起きてから直す事後保守とは異なり、障害を未然に防ぐ「予防保守」の機能です。ログの定期確認、ディスク容量と不要データの整理、証明書の更新などを、計画的に実施します。さらに、バックアップの復旧テストや性能の定点観測も含まれます。

これらは派手な成果が出ない地味な作業ですが、怠ると小さな問題が積み重なり、ある日突然の大障害として表れます。そのため、定期メンテナンスでは、「何を、どの頻度で、どういう基準でチェックするか」を手順として定義し、実施記録を残すことが求められます。実際、手順が曖昧だと、担当者によって作業の質にばらつきが出たり、繁忙時に省略されたりします。

保守費の20〜30%(出典:ripla)を占める費目だからこそ、形だけにならず予防効果を生んでいるかを、実施記録から確かめることが大切です。優れた運用管理では、定期メンテナンスが「やったことにする」儀式ではなく、システムの健全性を保つ実効的な機能として運用されています。

ポイント

問い合わせ対応では対応時間帯と記録・分析の範囲を、定期メンテナンスでは手順と実施記録の有無を、契約時の判断の目安にします。

まとめ

ITシステム運用管理が提供する機能は、基盤を支える「監視・バックアップ」、品質を保証する「障害対応・SLA管理」、継続性を担う「アップデート・リリース管理・軽微改修・AIOps」の三層に分けられます。監視では死活・性能・ログまでの範囲を、バックアップでは復旧テストまで含むかを見ます。

障害対応では、初報15分・復旧4時間・恒久対応5営業日(出典:ripla)といった時間基準がSLAに明記され、未達時の対応まで定義されているかが品質を左右します。さらに、アップデートと軽微改修(保守費の10〜15%、出典:ripla)の枠を確保し、必要に応じてAIOpsを組み合わせることで、システムを安全に育て続けられます。

大切なのは、機能をすべて盛り込むことではなく、自社のシステムの重要度とリスクに見合った機能を、適切な水準で選ぶことです。監視15〜25%、障害対応25〜35%といった保守費の内訳(出典:ripla)を理解したうえで、必要な機能に予算を配分することが、過不足のない運用契約につながります。

riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守を組み合わせ、作った後も継続して伴走し、システムに合った運用機能の設計を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。