ITシステム維持管理の見積相場や費用/コスト/値段について

ITシステム維持管理の費用は、開発規模、運用体制、更新時期によって変わり、年間では50万円〜800万円程度が目安です。さらに、数年に一度は数百万円規模の更新費も発生します。

導入から廃棄までの総額(LCC)で見ると、費用の妥当性を判断しやすくなります。全体像は、ITシステム維持管理の完全ガイドでも確認できます。

ITシステム維持管理の費用をLCCで捉える全体像

ライフサイクルコストを初期構築費、運用費、保守費、更新・廃棄費の順に示した図解
導入時の費用から廃棄時の費用までを一続きで見渡せます。

運用費や保守費を単年度で見ると、導入から廃棄までの総コストを見誤ります。維持管理は、IT資産のライフサイクル全体を適切に保つ活動です。

維持管理の費用は、日常の運用や個別の保守に加えて、ハードウェアの更改やライセンスの洗い出しも含めて考えます。

ライフサイクルコストを構成する4つの費用

LCC(ライフサイクルコスト)は、初期から廃棄までの費用を4つの段階に分けると把握しやすくなります。

  • 初期構築費:システム開発や機器調達の一時的な投資
  • 運用費:監視・バックアップ・定時処理を続ける費用
  • 保守費:障害修正・OS更新・機能改善にかかる費用
  • 更新・廃棄費:更改・刷新・旧資産の処分に伴う費用

企業は見積もりの段階で、初期構築費と運用費に目が向きがちです。一方で、維持管理の負担は、運用を始めた後の保守費と更新費で大きくなることがあります。

システムは稼働期間が長いほど累積コストが膨らみ、たとえば5年間運用する場合は、5年分の運用・保守費が初期構築費を上回ることもあります。そのため、LCCで比べると、初期投資の安さだけで発注先を選ぶのは危ういといえます。

維持管理特有の費用項目

維持管理には、単なる運用・保守費とは別に、資産を管理するための固有のコストがあります。

  • 資産台帳:機器やライセンスの保有状況をまとめて管理する費用
  • ライセンス管理:ユーザー数やコア数に合わせて、利用の過不足を整える費用
  • 更新計画:経年劣化を見越して、更改の時期と金額を決める費用

資産台帳では、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアライセンスを管理します。保有状況、保証期限、減価償却の状態を常に把握しておかないと、保証切れ機器の高額交換や未使用ライセンスの無駄が生じます。

OSやミドルウェア、業務ソフトは、利用ユーザー数やコア数に応じて課金されることが多いです。また、組織の増減に合わせてライセンスを調整する作業が発生します。

更新計画は、突発的な障害対応のコストを抑えるための予防投資にあたります。固有のコストが見積もりに含まれているかどうかが、妥当性を判断する第一歩です。

ポイント

見積もりは、初期費用だけでなく、運用費・保守費・更新廃棄費と、資産台帳などの固有の費用を含めた総額で比べます。迷ったら、5年間で積み上がる費用を並べて確かめるとよいでしょう。

ITシステム維持管理の費用相場と15〜20%の目安

維持管理費を左右する対象資産の台数、稼働率、復旧スピード、夜間休日の監視体制を示す図解
求める稼働水準や復旧の速さが、必要な対応体制に結び付きます。

維持管理費の相場では、「開発費の15〜20%」がよく使われます。これは、年間の保守・運用費が初期開発費の15〜20%に収まるという経験則です。

金額に換算すると、年50万円〜800万円程度が一般的なレンジになります。ただし、LCCではこの比率を出発点として扱う必要があります。

15〜20%という相場の意味と限界

開発費2,000万円のシステムを例にすると、5年間の負担を具体的に比べられます。

  • 年間費用:維持管理費は300万円〜400万円が目安
  • 5年間の累計:維持管理費は1,500万円〜2,000万円
  • 総コストでの位置:維持管理費が半分近くを占める

この試算では、維持管理費が初期開発費とほぼ同等か、それ以上になります。ただし、15〜20%は運用・保守を中心とした目安で、更新費まで含めた比率ではありません。

ハードウェア更改費や大規模なライセンス追加は、別枠で考える必要があります。たとえばサーバー機器は、一般的に5年前後で更改時期を迎えます。

更改の年には、通常の保守費に加えて数百万円規模の更新費が上乗せされます。そのため、比率だけで予算を組むと、更新年度に予算が不足するおそれがあります。年次費用と数年に一度の更新費は、分けて把握しておくことが大切です。

システム規模別の費用レンジ

年間費用は、システムの規模や複雑さによって大きく変わります。

  • 小規模:Webシステムなどで、年間50万円〜150万円程度
  • 中規模:基幹システムや複数拠点のシステムで、年間150万円〜500万円
  • 大規模:年間500万円〜800万円、場合によってはそれ以上

小規模には単機能の業務システム、中規模には複数拠点の業務システムが含まれます。また、大規模には、ミッションクリティカルで24時間365日の稼働を求められるシステムがあります。

費用差を生む主な要因は、対象資産の台数、求められる稼働率、復旧スピードです。停止できない基幹システムでは、夜間休日の監視体制や冗長構成が必要になり、その分、人件費とインフラ費が積み上がります。

業務時間内だけ稼働するシステムなら、平日日中のみの保守体制で費用を抑えられます。

規模帯を把握しておくと、提示された額がレンジから外れていないかを確認できます。

ポイント

開発費の15〜20%は、年間の維持管理費を見る出発点です。更新年の費用は別枠で考え、提示額が規模帯のレンジから外れていないかを見比べるとよいでしょう。

費用の内訳とLCCを左右する要因

見積もりは総額だけでなく、何にいくらかかるかに分けて確認することが大切です。内訳が分かれば、削減できる費用と、安全のために確保すべき費用を分けて考えられます。

人件費・ツール費・インフラ費の比率

維持管理費は、人・ツール・インフラの3つの領域に分けると、契約の範囲を確認しやすくなります。

  • 人件費:監視・障害対応・定期メンテナンスを担う技術者の工数
  • ツール費:Zabbixやdatadogなどのライセンス・利用料
  • インフラ費:クラウド・データセンター・電力・通信の費用

内訳では、人件費が最も大きな割合を占めます。月額の委託費の多くは、監視や障害対応を担う技術者の工数に充てられます。

官公庁の仕様書には、電力料や通信費を受託者(指定管理者)の負担とする例があります。費用の負担者は契約によって異なるため、委託費に含まれるのか、別建てになるのかを確認しておく必要があります。負担区分が曖昧だと、後から追加請求や認識のずれが生じます。

稼働率・復旧時間要件によるコスト増

稼働率と障害復旧時間は、維持管理費を大きく左右するSLA(サービス品質保証)の要件です。要求水準が高いほど、見積もりに盛り込む対応体制も重くなります。

官公庁の維持管理業務委託仕様書には、次のような数値要件の例があります。

  • 現地到着・対処開始:障害発生から1時間以内
  • 内容・予想作業時間の報告:対応開始から1時間以内
  • 完全復旧:自治体案件では初期報告から原則4時間以内

厳格な要件を満たすには、待機要員や予備機材、夜間休日の対応体制が必要です。一方で、半日や翌営業日の対応でよいシステムなら、体制を簡素にして費用を抑えられます。

自社に必要な稼働率と復旧時間を見極め、過剰なSLAを避けることが重要です。官公庁仕様の数値は、その判断に使える具体的な基準になります。

ポイント

内訳は人件費・ツール費・インフラ費に分け、どこまでが委託費に含まれるかを見ておくとよいでしょう。稼働率や復旧時間の要件は、必要な水準に絞ると費用を抑えられます。

見積もりを取る際のポイントと注意点

見積もり比較の前に確認する対象資産、委託範囲、更新計画、作業記録のチェックリスト
前提条件が共通だと、各社の提示額を比べやすくなります。

見積もりは、提示額の安さだけでなく、LCCの視点で見た総コストで比べます。含まれる範囲と含まれない範囲を明確にすると、長期的な最適化につながります。発注前に条件をそろえておくことが、比較の前提になります。

対象範囲と記録義務の明文化

複数社の見積もりを比べるには、依頼前に維持管理の対象範囲を決めておく必要があります。

  • 対象資産:対象にする機器やソフトウェア
  • 委託範囲:運用と保守のどこまでを任せるか
  • 更新計画:ハードウェア更改計画を含めるかどうか
  • 作業記録:作業ごとの開始・終了時間、所要時間、理由、再発防止策

範囲が曖昧だと、見積額の前提が社ごとに異なり、比較できなくなります。想定外の作業のたびに追加費用が発生し、結果としてLCCが膨らみます。

官公庁の仕様書には、システムに手を入れた作業すべての記録提出を義務づける例があります。記録義務は、作業がブラックボックス化するのを防ぎ、委託先の実態を見えるようにします。

記録・報告の頻度や様式も、見積もりの段階で契約条件に盛り込んでおくことが大切です。コストを把握できれば、属人化や丸投げ体質の抑止にもつながります。

隠れコストと更新費の確認

定例の維持管理費に含まれない費用は、複数年の予算を大きく左右します。

  • ハードウェア更改:5年前後の機器更新でまとまった費用が発生
  • ライセンス追加:ユーザー数の増加に応じて費用が増える
  • セキュリティ対策:対策強化のための追加費用が生じる
  • 定期報告:仕様で定めた頻度に応じた作業費がかかる

年次費用だけを比べると、更新年度の負担を見落として予算計画が破綻しかねません。

官公庁の仕様には、定期保守を原則として年1回12月に行うとする例があります。また、定期報告を年4回、3・6・9・12月末に行う例もあります。

定例費用、突発費用、数年単位の更新費は、分けて提示してもらいます。そのうえで、複数社の内訳の粒度と前提条件をそろえると、妥当性を見極めやすくなります。

ポイント

見積もりは、対象資産・委託範囲・記録義務の前提をそろえてから比べます。更新費などの隠れコストが含まれているかも見ておくと、比較の誤りを減らせます。

ITシステム維持管理の関連情報と次のステップ

相場と内訳を理解したら、次は進め方、発注の手順、委託先の選び方へと検討を進めます。費用の妥当性は、進め方の設計や発注時の取り決め、パートナー選定と関わります。

関連テーマも合わせて確認すると、費用を判断する材料がさらに増えます。

進め方と発注方法の要点

中長期の進め方と発注条件を分けて確認すると、費用の前提をそろえられます。

  • 資産台帳:保有資産を整理し、管理の起点にする
  • 更新計画:ハードウェアの更改時期と費用の見通し
  • 発注条件:RTO・報告頻度・記録義務の取り決め

資産台帳の整備から、ライフサイクル全体の最適化までの流れは、ITシステム維持管理の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順で詳しく解説しています。

仕様書づくりやRTO・報告頻度・記録義務の決め方は、ITシステム維持管理の発注/外注/依頼/委託方法についてが参考になります。

委託先選びと全体像の把握

委託先は、資産管理とライフサイクル設計の強みを比べて選びます。

  • 会社選び:資産管理やライフサイクル設計の強みの比較
  • 開発会社の比較:おすすめ会社と選定基準の確認
  • 全体像の整理:進め方・費用・発注・会社選びのつながりの把握

おすすめの開発会社と選び方の基準は、ITシステム維持管理でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方で紹介しています。

維持管理の全体像は、ITシステム維持管理の完全ガイドを起点にすると把握しやすくなります。

ガイドでは、ISO/IEC 14764と実務の用語の違いまで整理しています。これらの関連情報を組み合わせると、費用相場を、より確かな基準で評価できます。

まとめ

ITシステム維持管理費は、開発費の15〜20%や年50万円〜800万円を出発点にして考えます。そのうえで、初期構築費・運用費・保守費・更新廃棄費をLCCで合計して見ることが大切です。

資産台帳、ライセンス管理、ハードウェア更新計画も、維持管理に固有の費用項目です。これらが見積もりに含まれているかどうかが、妥当性を判断する分かれ目になります。

見積もりでは、対象範囲と記録・報告の義務を文章で定めておきます。稼働率や復旧時間などのSLA要件が過剰になっていないかも確認します。官公庁仕様のRTOや報告頻度は、自社のSLAを設計するときの基準になります。

年次費用と数年に一度の更新費を分けたうえで、複数社を同じ条件で比べます。

LCCで総コストを見渡すと、目先の安さに惑わされず、長期的に納得できる発注判断につながります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。