ITシステム維持管理の保守・運用費用・ランニングコストについて

ITシステム維持管理の保守・運用費用(ランニングコスト)は、システムの規模、契約形態、SLA(サービスレベル合意)の水準によって、月額5万円〜100万円以上まで変わります。

2025年の崖や、担当者1人または2人への業務集中によって引き継げなくなるリスクは、ITシステム維持管理の完全ガイドで詳しく扱っています。

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ITシステム維持管理は、システムをIT資産として捉え、運用と保守を含めて管理する枠組みです。長期にわたって価値と適合性を保つために行います。

運用とは、稼働監視、バックアップ、ログ確認、再起動など、構造を変えずに行う定常的で予防的な日常作業です。

維持管理では、運用と保守に加えて、ハードウェアの更新計画、資産台帳、ライセンスも管理します。中長期のライフサイクルコスト(LCC)を最適化する考え方です。

ハードウェア領域では、定期点検と部品交換を行うほか、EOL(サポート終了)機器の更新計画と機器台帳の管理も担います。ソフトウェア領域では、バグ修正とログ管理のほか、バックアップのリストアや軽微な改修が発生します。ネットワーク領域では、トラフィックの監視、ファイアウォールの設定、IPアドレスの管理を行います。

ITシステム維持管理における保守・運用費用の全体像

小規模、中小規模の基幹システム、大規模の月額費用相場を並べた図。
規模帯を定めると、予算の置きどころを整理しやすくなります。

費用はシステムの規模や構成によって変わるため、予算を考える目安には、初期開発コストに対する比率と規模別の月額相場を使います。

保守運用費用の相場(初期開発費の年間15〜20%)

保守運用費用の一般的な目安は、初期開発費の年間15〜20%です。初期開発費が大きいほど、保守運用費も大きくなる構造です。

  • 開発費1,000万円の場合:年間150万〜200万円、月額12万〜17万円程度になります。
  • 外部委託の場合:開発費の月次5〜15%を目安とすることもあります。

金額は依頼先や契約内容によって幅が出ます。そのため、この比率はあくまで目安として見てください。

また、SLA(サービスレベル合意)の水準や、システムの老朽化の度合いによっても、費用は上下します。予算を組むときは、自社システムの特性をもとに個別に見積もる必要があります。

新規システムを企画する段階では、開発費だけでなく維持管理費も含めた総所有コストで投資を判断します。後年の予算不足を防ぐには、この視点が欠かせません。

規模別の月額費用相場

月額費用の目安は、システムの規模と、必要な対応体制によって変わります。

  • 小規模:Webシステムや社内ツールは月額5万〜20万円です。
  • 中小規模の基幹システム:ERPや販売管理は月額30万〜80万円です。
  • 大規模:24時間対応が必要な場合、月額100万円以上になることもあります。

特に、中小規模の基幹システムは、月額の目安を年額に直すと360万〜960万円になります。そのため、適正な予算を組むには、まず自社システムの規模帯を把握し、単月だけでなく年間と複数年の費用を試算しておきます。

稟議や予算申請で説明できる形に整理しておくと、経営層の合意を得やすくなります。

ポイント

予算の目安は、初期開発費の比率と規模別の月額相場の両方で確かめます。どちらか一方だけで決めると、稼働後に月額が想定を超えたとき、社内への説明が難しくなります。

保守費用の内訳

保守費用を構成するバグ・障害対応、セキュリティ対応、バージョンアップ・改修、監視・ログ管理、問い合わせ対応を示した図。
月額費用の対象範囲を、業務ごとに見積もりと照らせます。

見積もりの「月額○○万円」にどの作業が含まれるかを知ることは、契約内容が妥当かどうかを判断するうえで欠かせません。保守費用は、大きく5つの業務要素で構成されます。

バグ・障害対応とセキュリティ対応

保守費用の中心は是正保守とセキュリティ保守で、どちらにも突発的に発生する対応が含まれます。

  • バグ・障害対応:システムの不具合を調査して修正し、反映まで行います。故障部品の交換も含みます。
  • セキュリティ対応:脆弱性へのパッチ適用と、権限の洗い出しを行います。

セキュリティ対応では、OS・ミドルウェア・ライブラリの脆弱性について、優先度を判断したうえでパッチを適用します。なお、月額費用がどの対応時間と範囲をカバーするのかは、契約前に確認しておく必要があります。

バージョンアップ・改修と監視・ログ管理、問い合わせ対応

保守費用には、次の3業務も含まれます。

  • バージョンアップ・改修:仕様変更を伴わない設定や表示の変更、OS更新に伴う不具合の修正です。
  • 監視・ログ管理:ツールでシステムの状態を見守り、異常時のアラートやバックアップの確認などです。
  • 問い合わせ対応:利用者からの技術的な質問やトラブルを受けて、解決にあたる作業です。

監視には、ZabbixやDatadogなどのツールを使えます。また、バックアップからのリストア対応も、監視・ログ管理に含まれる作業です。

このように保守の作業は多岐にわたるため、5項目のうちどこまでが月額費用に含まれ、どこからが追加費用になるかを明確にしておくと、契約後のトラブルを防げます。なかでも、監視・ログ管理と問い合わせ対応は業務量に比例して工数が増えるため、契約時に監視対象と想定される問い合わせ件数を共有しておくと、後の費用交渉を避けやすくなります。

ポイント

契約書の月額にどの作業が含まれるかは、5つの業務要素に当てはめて確かめます。含まれない作業は追加費用になりうるため、契約前に一覧にして見積もりへ入れておきます。

オンプレミスとクラウドで異なるインフラ費用

人的な保守費用とは別に、システムを稼働させるためのインフラ費用が毎月かかります。オンプレミス型かクラウド型かで維持管理コストの前提が変わるため、まず両者の違いを押さえておくことが大切です。

オンプレミス型のインフラ費用

オンプレミス型は、サーバーやネットワーク機器を自社で保有して運用する形態です。

  • 初期導入:サーバーやネットワーク機器の購入費がかかります。
  • 設置と維持:設置場所のスペース代や電力費・通信費が続きます。
  • 機器更新:経年劣化に伴い、一定周期で更新投資が必要です。

自由にカスタマイズしやすく、既存システムとも連携しやすい点がメリットです。一方で、維持管理では初期費用と継続費用の両方がかさみやすい構成です。

クラウド型(IaaS/PaaS)のインフラ費用

クラウド型(IaaS/PaaS)は、サーバーやネットワークをクラウド事業者から従量課金で利用します。

  • 初期費用:ハードウェアを自社で保有しないため、初期費用を抑えやすくなります。
  • リソース調整:従量課金のため、需要に応じてリソースを柔軟に増減できます。
  • 費用管理:利用状況によっては、想定以上に費用が積み上がる場合があります。

オンプレミスとクラウドのどちらを選んでも、インフラ費用は保守・運用費用と合算して、総所有コストで評価します。初期投資を抑えたいか、既存資産とのカスタマイズ性や連携性を重視したいかによって、選ぶ形態は変わります。そのうえで、費用を試算する際には、自社の中長期的なIT戦略にも照らして判断するとよいでしょう。

ポイント

社内の既存システムと強く連携させる予定があるなら、オンプレミス型の初期投資と更新費用を先に試算します。初期費用を抑えたいなら、クラウド型の従量課金が想定以上に積み上がらないかを確かめます。

保守契約の形態とコストを左右する要因

契約形態と費用を左右する要因を理解しておくと、総額をより現実的に見積もれます。ここでは、代表的な3つの契約形態と、主な要因を順に見ていきます。

保守契約の3つの形態

保守契約は、費用の発生方法や確保する人員によって3つに分けられます。

  • 月額固定型:毎月定額で、費用を予測して予算に組みやすい契約です。
  • ラボ型:人員や工数の単位で契約し、専属のチームを一定期間確保する形です。
  • スポット型:障害や特定の更新のたびに、費用が発生する形です。

たとえば、ラボ型は継続的な改修や機動的な対応が必要なシステムに向いています。

なお、官公庁などが結ぶ維持管理業務の一括契約でも、仕様変更に伴う機能拡張は免責事項になる場合があります。また、天災によるデータ復旧やユーザーの過失への対応は、契約範囲外とされ、別途スポット費用が発生するのが一般的です。そのため、基本料金に含まれる範囲と、追加費用が発生する条件は、契約時に明確にしておく必要があります。

コストを左右する要因

保守・運用費用を見積もるときは、各要因が中長期のコストにどう影響するかを確認します。

  • SLA水準:対応時間や稼働率保証、24時間365日監視の有無が影響します。
  • 老朽化・ブラックボックス化:調査工数が増えると、保守費用が上がる傾向です。
  • 予防保守の不足:緊急対応が増え、ライフサイクルコストを圧迫します。

ドキュメントが未整備で担当者が属人化していると、障害調査に多くの工数がかかります。その結果、保守費用は年々右肩上がりに肥大化する傾向があります。

定期メンテナンスを減らすと、緊急の是正保守が高頻度で発生することがあります。

深夜・休日の対応費や代替機の調達費は、かさみやすい費用です。そのため、契約では目先の安さだけでなく、中長期のコスト構造を見て判断します。

ポイント

毎月の費用を予測して予算に組みたいなら月額固定型、継続的な改修や機動的な対応が必要ならラボ型が目安です。障害や更新が発生したときだけ払う形にしたい場合は、スポット型を検討します。

維持管理コストを最適化する方法

運用自動化、クラウド移行、MSPへの委託、社内業務の再配分を並べた図。
複数の手段をシステムの規模や重要度に合わせて組み合わせます。

保守・運用費用やインフラ費用は、工夫次第で抑えられる余地があります。ここでは、維持管理コストを抑える代表的な方法を紹介します。

運用自動化ツールの導入とクラウド移行

運用自動化とクラウド移行は、設備や作業にかかる費用を見直す方法です。

  • 運用自動化:ルーティン業務やアラート対応を標準化して、ツールに任せる形です。
  • クラウド移行:自社保有の設備から切り替えて、需要に応じて設備投資や維持費を抑えます。

たとえば、Kompiraのような運用自動化プラットフォームや、監視ツールを活用できます。また、自動化は人件費の削減と人為的ミスの防止につながります。

特に、老朽化した機器を抱えるオンプレミス型では、クラウド移行によって更新投資の時期を見直せる点が、維持管理コスト上の大きなメリットになります。

外部委託(アウトソーシング)の戦略的活用

もう一つは、外部委託(アウトソーシング)を戦略的に活用する方法です。24時間体制を自社だけで整える場合と比べて、人材の負担を抑えられます。

  • MSP(マネージド・サービス・プロバイダー)への委託:監視と保守を外部に任せ、教育費やインフラ費の削減を図ります。
  • 社内業務の再配分:情シス担当者が、DX推進などのコア業務に集中できます。

自社で24時間の監視と保守を整える場合、専門人材の採用や育成に高額な費用がかかります。

最適化の目的は、限られた資源を価値の高い業務へ振り向けることにあります。なお、自動化、クラウド化、外部委託は、一つに絞るよりも、規模や重要度に応じて組み合わせたほうが、より高い効果が期待できます。

ポイント

自社で24時間の監視と保守を整えるのが負担になるなら、外部委託を先に検討します。運用自動化やクラウド移行は、規模や重要度を見て、外部委託と組み合わせるかどうかを決めます。

まとめ

ITシステム維持管理の費用について、相場、内訳、インフラ費用、契約形態と費用要因、コスト最適化の方法を見てきました。

保守・運用費用の目安は、初期開発費の年間15〜20%です。規模別の月額相場は、小規模で5万〜20万円、中小規模の基幹システムで30万〜80万円、大規模では100万円以上になります。

保守費用は5つの業務要素で構成され、インフラ費用と合わせて総所有コストで評価します。

契約形態は月額固定型、ラボ型、スポット型の3つです。費用は、SLA水準や老朽化、予防保守の状況によって変動します。

自動化ツール、クラウド移行、外部委託は、いずれも維持管理コストを最適化する方法です。

維持管理を怠ると、業務停止やセキュリティインシデント、対応不能化を招くほか、ライフサイクルコストの肥大化につながるおそれがあります。総コストを見積もって計画的に予算化し、意思決定しておくことで、システムの長期的な健全性を保てます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。