ITシステム保守監視の保守・運用費用・ランニングコストについて

ITシステム保守監視の費用は、ツール方式や委託範囲によって、無料から月額30万円以上まで変わります。SLA(サービスレベル合意)の条件や監視対象の台数でも、費用は変わります。

情シス担当者には費用が読めないという悩みが多く、稟議や予算申請の前に相場を把握することが第一歩になります。

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ITシステム保守監視における費用の全体像

自社対応はツール費と人件費、外部委託はサービス利用料で示す保守監視費用の比較図
費用の発生先をそろえると、社内負担と委託料を比べやすくなります。

ITシステム保守監視とは、稼働中のシステムを常時監視し、異常を検知するとアラートを発報する実務です。

SLAに基づき、一次対応や復旧対応を行います。

保守監視の費用は、監視ツールのライセンス費用と、有人監視・障害対応の人件費で構成されます。自社でツールを導入して社員が対応する場合は、ライセンス費と人件費の両方を負担します。

外部委託では、ツール費用を含むサービス利用料として一括で支払う形が一般的です。

保守監視は、資産台帳やライセンス管理まで含む維持管理のうち、日々のランニングコストに直結する部分です。

経済産業省の「DXレポート(2018年)」は、IT関連費用の8割以上が既存システムの運用保守に充てられると指摘しています。

自社で24時間365日の体制を築くには、複数の専門エンジニアの雇用と教育が必要です。

そこで、採用コストや固定人件費をサービス利用料の変動費に切り替える動きが、中堅・中小企業で広がっています。人員を固定費として抱えるか、サービス利用料にするかが、コストを抑える最初の分岐点になります。

まず、ツール費と対応人件費の構造を分けて、相場を見ます。そのうえで、発注側の担当者は、アラートに誰が対応するかも体制と合わせて検討します。

監視ツールの費用は、SaaS型かOSSの自社構築かで構造が変わります。

監視ツールのライセンス費用相場

SaaS型とOSSでは、費用の出どころが次のように異なります。

  • SaaS型:利用料金が発生し、製品やホスト数で変わります。
  • OSS:ライセンス費用は無料ですが、自社で構築・運用します。

Datadogのインフラ監視は1ホストあたり月額18ドルで、年間契約なら月額15ドルになります。ログ管理には、別途月額0.10ドルがかかります。

10ホストでは月額180ドルで、1ドル140円で換算すると約25,200円です。40ホストの場合は、月額100,800円が目安です。

一方、Site24x7のSTARTERプランは10ホストまで月額2,800円、PROプランは40ホストまで月額9,800円です。Datadogと比べると、手頃な価格帯にあります。

Zabbixなどのツールは、ライセンス費用自体が0円です。一方で、サーバー構築や膨大な設定、アップデートを自社で行う必要があり、コマンド操作に慣れたエンジニアの人手と学習コストがかかります。

有人監視・アウトソーシング委託費用の相場

自社で24時間365日の監視体制を維持するには、専門エンジニアの採用と教育が必要です。委託では、採用コストや固定人件費をサービス利用料(変動費)に切り替えられます。

中堅企業向けに、内容別の費用目安を挙げます。

  • 死活監視:サーバー1台あたり月額数千円〜数万円。
  • 一次対応:障害時の原因切り分けと事前に定めた手順書(プレイブック)による一次復旧。月額10万〜30万円程度。
  • フルマネージド:日常の運用・保守まで含み、月額30万円以上が一般的。

セキュリティ監視を担うSOC(Security Operations Center)を外部に委託する形は、MSSPと呼ばれます。月額10.8万円から24時間監視を提供する事例もあります。

委託する範囲や求めるSLAが広がるほど、費用は段階的に積み上がります。

ポイント

自社で対応するか外部に委託するかで、費用の中身が変わります。まずは社内の人件費と委託料のどちらが大きくなりそうかを見積もると、比べる基準が定まります。

委託範囲別の費用内訳

死活監視のみから一次対応込み、日常運用業務込みへと委託範囲が広がる3段階の図
段階が上がるごとに、任せる作業も広がります。

月額費用が妥当かどうかを判断するには、契約に含まれる作業の把握が欠かせません。委託範囲は、通知のみの水準から日常運用まで任せる水準まで、段階に分けて考えられます。

死活監視のみ〜一次切り分け・復旧対応

委託範囲は、通知だけを任せるか、障害時の一次対応まで任せるかで分かれます。

  • 死活監視のみ:稼働状況を確認し、停止を検知したら通知。
  • 一次対応込み:障害原因を切り分け、手順書に沿って一次復旧。

死活監視は、サーバーやネットワークの稼働確認が中心で、Ping応答の確認などを行います。追加の分析やレポートを求めない分、導入しやすく、サーバー1台あたり月額数千円〜数万円が相場です。ただし、この水準では障害の切り分けや復旧作業を自社で行うため、社内に一定の対応体制が残っている企業に向いています。

一次対応込みは、その一段上の水準です。障害発生時は、原因を切り分けたうえで、事前に定めたプレイブック(手順書)に沿って一次復旧します。月額10万〜30万円程度が目安で、自社エンジニアが夜間・休日に呼び出される頻度を大きく減らせます。

水準を選ぶ際は、自社に残る対応力と、夜間・休日に外部へ任せたい範囲を基準にします。

日常運用業務込み(フルマネージド)

最も手厚いフルマネージドは、監視に加えて日常の運用・保守も委託する水準です。

  • 運用作業:OSやミドルウェアのパッチ適用、設定変更などを代行。
  • セキュリティ監視:SOCの外部委託(MSSP)はインシデントへの備えにもなる選択肢。

情シス担当者は、日々の作業からほぼ解放されます。その分、委託費用は、この節で紹介する水準のなかで最も高く、月額30万円以上が一般的です。セキュリティ監視をMSSP(SOCの外部委託)に切り出す選択肢もあり、月額10.8万円から24時間監視を提供する事例があります。

委託範囲は、情シスの人員と、停止時の事業インパクトを踏まえて判断します。

ポイント

見積もりを比べるときは、契約に含まれる作業の範囲をそろえて見ると判断しやすくなります。死活監視だけか、一次対応まで任せるかで、同じ月額でも意味が変わります。

費用を左右する要因

保守監視の委託費用は一律ではないため、予算を組む前に、どの要因で費用が変わるかを把握しておきます。

SLAの厳しさとシステムの技術的難易度

費用を左右する主な要因は、SLAと委託範囲の厳しさ、そして対象システムの規模や技術的難易度です。

  • SLA:監視時間や障害発生後の復旧時間などの条件。
  • 技術要件:クラウド環境や高度なセキュリティスキルの必要性。

24時間365日の有人監視や、障害から4時間以内の復旧を求めると、費用は増えます。厳しい時間制約や高い可用性には、より多くの人員と高いスキルが必要になるためです。

技術面の要件が加わると、担当エンジニアのスキル単価が高まります。特に、ハイブリッド環境で高いSLAを求めると、複数の要因が重なって費用を押し上げます。

発注側は、予算とシステムの重要度を照らし合わせて、必要なSLAの水準を見極めます。

料金体系・契約形態と「隠れコスト」

契約時には見えにくい「隠れコスト」も、費用を左右する要因の一つです。月額料金の決まり方と、契約外の作業の扱いをあわせて確認しておきます。

  • 料金体系:月額固定制か、対応件数・稼働時間に応じる従量課金制。
  • 契約形態:稼働時間で決まる準委任契約か、成果物基準の請負契約。
  • 追加費用:契約範囲外の依頼や緊急対応、追加ライセンスなど。

月額固定制は毎月の支払額が一定になるため、予算を組みやすい料金体系です。

追加請求の典型例は、スコープ外の新規システム連携や、夜間・休日の緊急対応です。ツールの追加購入も、契約外の費用になることがあります。

追加費用が発生する条件と見積もりの手順を事前に確認しておけば、予算超過のリスクを大きく減らせます。

監視対象台数の増加によるコストの積み上がり

もう一つの要因は、監視対象ホスト数(サーバー・機器台数)の増加です。台数が増えるほど、費用も積み上がっていきます。

  • Datadog:ホスト数に応じて費用が増えます。
  • Site24x7:ホスト数の上限に応じてプラン料金が上がります。

たとえば、Datadogは10ホストで月額約25,200円、40ホストでは月額100,800円です。一方、Site24x7は、10ホストまでのSTARTERが月額2,800円、40ホストまでのPROが月額9,800円です。

事業拡大やクラウド移行を予定している企業は、将来の監視台数を見通したうえで、ツールのプランや委託契約を見直す時期を検討します。

委託中に監視対象が増減すると、契約金額の見直しを交渉する材料になることもあります。定期的に契約内容を洗い出しておけば、無駄なコストを防ぎやすくなります。

ポイント

SLAの厳しさ、料金の決まり方、将来の監視台数は、見積もりの段階で一緒に見ておくと判断しやすくなります。追加費用の条件を先に把握すると、予算超過のリスクを抑えられます。

保守監視コストを最適化する方法

通知の絞り込み、水準分け、自動化、TCO比較を並べた保守監視コストの最適化策
通知設定から総保有コストまで、見直し箇所を順に確認できます。

ランニングコストを抑える代表的な方法を、通知の設定から費用の比べ方まで取り上げます。

アラート閾値のチューニングによる無駄の削減

まずは、通知の設定を見直すところから始めます。

  • 通知を絞る:業務影響のあるアラートだけを対象にする。
  • 水準を分ける:重要度に応じた監視対象とSLAの設定。

デフォルト設定のままでは、一時的な急増だけで通知が鳴る「アラート地獄」に陥ることがあります。さらに、不要な通知は対応工数を増やし、人件費や従量分の委託費用を膨らませます。

対策の一つは、一時的な急増を無視し、5分間続いたら通知する条件を設けることです。

重要度の低いシステムは死活監視のみにし、事業継続に直結するシステムはフルマネージドにできます。すべてのシステムに一律で高いSLAを適用するより、委託範囲にメリハリをつけたほうが無駄を抑えられます。

自動化ツールの活用とTCO(総保有コスト)での比較

月額料金だけでは見えない負担も考えるには、自動化の効果と総保有コストでの比較が役立ちます。

  • 一次対応を自動化:人が対応するアラートを減らす仕組み。
  • TCOで比較:ライセンス費に加えて、構築・運用工数も含めた比較。

監視ツールと連携させれば、情報の取得や、定めた復旧手順の実行を機械に任せられます。その分、有人対応の人件費や委託費用を抑えられます。

TCO(総保有コスト)は、アラート対応工数や人件費、委託費用などを合わせて見る考え方です。

情シス人員が限られる企業では、OSSの構築・運用に工数がかかるため、有料SaaSのほうが総コストを抑えられる傾向があります。自社の情シスリソースに合う選択をすることが、費用を抑えるうえでの要点になります。

選定後も、監視対象やSLAの変化に合わせて委託先やツールを定期的に見直せば、長期的なランニングコストを適正に保てます。

ポイント

通知の見直しは、委託範囲を変えるより手を付けやすい方法です。どの範囲を外部に任せるかは、自社に残る対応力に合わせて決めると迷いにくくなります。

まとめ

保守監視のツール費は、Datadogが1ホスト月額18ドル前後、Site24x7が10ホストまで月額2,800円からです。ZabbixなどのOSSは無料ですが、自社での構築と運用に人手がかかります。

委託費は、死活監視がサーバー1台あたり月額数千円〜数万円です。さらに、一次切り分け・復旧対応込みは月額10万〜30万円程度、フルマネージドは月額30万円以上が目安です。

費用は、SLAや技術的難易度によって変わります。料金・契約形態や監視台数、契約外の追加費用も、費用を左右します。そのため、契約前にこれらの条件をすり合わせ、増減要因を確認することが大切です。

アラートを絞る、SLAと委託範囲を段階に分ける、といった見直しは最適化に役立ちます。自動化やTCOでの比較も、見直しを進める助けになります。

費用の安さだけでなく、停止時の事業インパクトとの釣り合いを見て、適正な水準を選びます。見積もりを取る際は、現状の構成と求めるSLAを、複数の監視サービス会社や開発会社に提示します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。