ITシステム運用管理の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ITシステム運用管理の進め方は、運用設計から始め、インシデント管理と構成・設定管理を順に整え、SLAとSLMで見直しを回す流れです。

稼働後も安定性・安全性・コスト効率を保つには、属人化を防ぐ管理の仕組みを、この順序で作っておくことが欠かせません。

ITシステム運用管理の全体像と他概念との違い

運用計画、インシデント管理、構成・設定管理の3プロセスが運用管理を支える図。
3つの仕組みを連動させると、運用に再現性が生まれます。

ITシステム運用管理は、システムを安定して動かし続けるための日々の運用と、それを統制する管理プロセスやガバナンスを一体で捉える考え方です。よく似た言葉に「維持運用」「維持管理」「保守管理」がありますが、運用管理は、運用計画やインシデント管理、構成管理といった管理の仕組みづくりに重心がある点が特徴です。

まず、混同されがちな各概念の位置づけを押さえておきます。

運用・保守・維持管理・システム管理の違い

運用、保守、維持管理は、いずれもシステムの稼働に関わる言葉ですが、扱う範囲はそれぞれ異なります。

  • 運用:監視、バックアップ、定時処理などの定常業務
  • 保守:障害修正、OSアップデート、機器交換などの対応
  • 維持管理:IT資産のライフサイクル、ライセンス、更新計画までを含む範囲

運用と保守は、目的も発生頻度も異なります。一方の保守は、障害修正やOSアップデート、ハードウェア交換など、システムに手を加える突発的・計画的な変更業務です。そのため、ほぼすべての専門解説で明確に区別されています。

このほか、上位の概念として、ファイル管理やアクセス権調整など日常の構成・設定の維持を担う「システム管理」があります。

これらの中で運用管理は、運用と保守を含む日々のオペレーションを「計画・実行・評価・改善」のサイクルで律する管理プロセスに位置づけられます。つまり、個別の作業そのものではなく、それらを統制するガバナンスを担う点が、他概念との大きな違いです。

運用管理を支える3つの管理プロセス

運用管理を機能させる柱は、「運用計画プロセス」「インシデント管理プロセス」「構成・設定管理プロセス」の三つに整理できます。運用計画プロセスは、何をいつ誰が、どの基準で実施するかを定め、運用設計書や手順書に明文化する仕組みです。

インシデント管理プロセスは、障害やアラートを検知してから記録までの流れを標準化する仕組みです。その流れには、一次対応、原因切り分け、恒久対策が含まれます。構成・設定管理プロセスは、サーバーやネットワーク、ソフトウェアのバージョンや設定情報を台帳で管理し、変更履歴を追跡できる状態を保ちます。

経済産業省の「システム管理基準」でも、運用計画やインシデント管理の手続きを厳格に定めることが求められています。この三つが連動して初めて、属人化を排した再現性のある運用管理が実現します。これらを実際にどう構築し、運用するかは、次の節で順を追って見ていきます。

ポイント

運用と保守は目的も頻度も異なるため、分けて扱います。運用管理は、個別の作業ではなく、それらを統制するガバナンスとして捉えるのが目安です。

ITシステム運用管理の進め方とプロセス設計

運用設計書の策定からインシデント管理、構成・変更管理へ進む3段階の図。
設計を起点に、障害対応と構成管理を順に整えます。

運用管理を立ち上げるときは、ツールを入れる前に運用設計から始めるのが鉄則です。運用計画の策定から、インシデント管理体制の構築、構成・設定管理の整備まで、実務で進めやすい順に3つのステップで整えていきます。

それぞれの段階で残す文書を意識しておくと、属人化を防ぎ、外注時の引き継ぎもスムーズになります。

ステップ1:運用計画と運用設計書の策定

最初に行うのは、対象システムの運用要件を洗い出し、運用設計書として明文化することです。運用設計書では、監視対象(サーバー・ネットワーク・アプリケーション)と監視項目(CPU・メモリ・ディスク・プロセス死活・業務処理の成否)を定めます。そのうえで、実施タイミング、対応基準、エスカレーション先までを決めます。

経済産業省の「システム管理基準」では、運用計画の策定がプロセスの起点に位置づけられています。この段階を省くと、後工程がすべて場当たり的になります。この明文化が、属人化を防ぎ、運用品質を一定に保つことにつながります。

運用設計書には、平常時の定常業務だけでなく、異常時の判断基準も盛り込みます。たとえば「ディスク使用率が80%を超えたら警告、90%で緊急対応」といった閾値を数値で定めておくと、誰が見ても同じ判断ができます。あわせて、運用に必要なアカウント権限、バックアップ世代数、保存期間といったルールも、この段階で確定させます。

ステップ2:インシデント管理プロセスの構築

次に整備するのは、障害やアラートに対するインシデント管理プロセスです。検知から記録、一次対応、原因切り分け、恒久対策、再発防止までの流れを、一つの標準フローとして定めます。対応の優先度は、「影響範囲」と「緊急度」のマトリクスで判定し、優先度ごとに目標対応時間を決めておきます。

これにより、複数の障害が同時に起きても判断に迷いにくくなります。記録の徹底も、インシデント管理の要です。官公庁の維持管理業務委託仕様書では、すべての介入活動について「開始・終了時間、所要時間、理由、再発防止策」の記録提出を義務づけている例があります。

この記録は、ブラックボックス化を防ぐ強い仕組みです。また、民間でも同様に、対応履歴をインシデント管理台帳に残し、定期的に振り返ると、同じ障害の繰り返しを減らし、運用ナレッジを組織の資産として蓄積できます。

ステップ3:構成・設定管理と変更管理の整備

三つ目のステップは、構成・設定管理の整備です。まず、台帳には、サーバーのスペックやIPアドレス、OS・ミドルウェアのバージョンに加えて、アプリケーションの設定値も一元的にまとめます。台帳が整っていると、障害発生時の影響範囲の特定が格段に速くなり、原因切り分けの初動も短くなります。

逆に、台帳がなければ、障害のたびに現物を調べるところから始めることになり、復旧が遅れます。あわせて、変更管理のルールも定めておきます。設定変更やパッチ適用では、何をどう変えるか、影響がどこまで及ぶか、どう切り戻すか、誰が承認するかを事前に記録し、計画に沿って実施します。

無秩序な変更は新たな障害につながりやすいため、「誰が・いつ・何を・なぜ変更したか」を追跡できる状態を保つことが、安定稼働の前提です。これら三つのプロセスが回り始めれば、運用管理は受け身の対応から計画的な統制へと進化します。

ポイント

迷ったら、ツールを入れる前に運用設計書で監視対象と閾値を決めるのが目安です。インシデントの優先度と目標対応時間も、先に決めておくと判断が揃います。

SLA・SLMの設計とサービスレベルの可視化

運用管理をガバナンスとして機能させるには、SLA(サービスレベル合意)の設定と、SLM(サービスレベル管理)の運用が欠かせません。SLAは、提供する運用サービスの品質を数値で約束するものです。一方で、SLMは、その達成状況を継続的に測定・改善する管理活動を指します。

具体的にどの項目をどの数値で設定するか、外注時にどう取り決めるかも、あわせて押さえておきます。

SLAで設定すべき具体項目と数値の物差し

SLAで定める代表的な項目は、稼働率と障害一次対応時間、復旧目標時間(RTO)、データ復旧目標時点(RPO)です。稼働率は一般的に99.9%や99.99%といったレンジで設定され、99.9%なら年間の停止許容は約8.8時間、99.99%なら約53分が目安となります。業務の重要度に応じて、過剰品質にならない範囲で水準を決めることが大切です。

復旧時間の物差しとして参考になるのが、官公庁の仕様書です。ある自治体案件では、障害発生時に再委託先に「1時間以内に現地到着・対処開始」と「対応開始から1時間以内に内容と予想作業時間を報告」が定められています。さらに、「初期報告から原則4時間以内に完全復旧」も示されており、いずれも厳格な数値です。

こうした公的仕様の数値は、自社のSLA設計における現実的な上限値の参考になります。あわせて、定期報告の頻度(たとえば年4回、四半期末ごと)も取り決めておくと、運用状況の把握に役立ちます。

SLMによる定期見直しと未達ペナルティ

SLAは、SLMとして定期的に達成状況を見直し、改善につなげてこそ意味を持ちます。月次や四半期ごとに、稼働率、対応時間、インシデント件数を集計し、目標との差異を分析します。傾向として悪化が見られる項目は、原因を掘り下げて運用設計を見直し、そのサイクルを回すことが、ガバナンスとしての運用管理の核心です。

外注の場合は、SLA未達時の取り扱いを契約に明記しておくことが望ましいです。一定回数を超える未達に対して料金減額などのペナルティ条項を設けると、委託先の品質を保つ動機づけが働きます。

ただし、ペナルティを厳しくしすぎると、委託先が防御的になり報告を渋るリスクもあります。このリスクを抑えるには、ペナルティと改善協議をセットで設計するのが実務的です。なお、SLAの項目と数値は、利用状況やビジネス要件の変化に応じて定期的に見直す前提で運用します。

ポイント

SLAの数値は、業務の重要度に合わせて、過剰にならない水準で決めるのが目安です。外注では、未達時の扱いを契約に明記したうえで、改善協議とセットで考えてください。

運用自動化とツール導入による効率化

常時監視、復旧手順、ログ収集、定時バッチ確認を示す運用自動化の図。
定型作業を自動化すると、人は判断が必要な業務に集中できます。

管理プロセスが整ったら、次に取り組むべきは効率化です。24時間365日の監視やアラート対応を人手だけで続けると、担当者の疲弊と属人化を招きます。

監視ツールや自動化プラットフォームを適切に導入すると、人が判断すべき領域に集中できる体制をつくれます。ツールの選び方と、投資対効果(ROI)の考え方も、あわせて押さえておきます。

監視ツールと運用自動化の活用

監視の自動化には、ZabbixやDatadogといった監視ツールが広く使われています。これらは、サーバーやネットワーク、アプリケーションの状態を常時監視し、閾値を超えた場合に自動でアラートを発報します。さらに、RPAやスクリプトを組み合わせれば、定型的な復旧手順、ログ収集、定時バッチの実行確認などを自動化でき、夜間や休日の人的負荷を大幅に減らせます。

近年は、運用をソフトウェアエンジニアリングの手法で高度化するSREや、開発と運用が一体で継続改善するDevOpsの考え方も浸透してきました。また、蓄積した監視データを分析して障害の兆候を事前に捉える予測的な運用は、従来の「壊れてから直す」受け身の保守から、「壊れる前に手を打つ」攻めの運用への転換を可能にします。

こうしたアプローチは、クラウドネイティブなコンテナ・サーバーレス環境の運用管理においても有効です。

ツール導入のROIと経営層への説明

ツール導入を経営層に提案するときは、投資対効果を定量的に示すことが欠かせません。考え方はシンプルで、ツール導入費や運用費といったコストと、自動化で削減できる人件費や、障害ダウンタイムによる機会損失の低減効果を比べます。たとえば、夜間アラート対応に月40時間かかっていた作業が自動化で月10時間に減れば、その差分の人件費が削減効果として算出できます。

運用管理部門はしばしばコストセンターと見なされがちですが、安定稼働は売上機会の確保と直結します。そこで、障害による販売機会の損失や信用の低下を「防いだ損失」として示すと、運用管理が守りだけでなく価値の創出にも貢献していることを経営層に伝えられます。

ROIの試算と、稼働率向上による事業継続性のストーリーを、セットで示すことが大切です。そうすると、運用管理への投資判断を引き出しやすくなります。

ポイント

ツールは、人が判断すべき領域に集中できるかどうかで選ぶのが目安です。経営層には、コストと削減効果を数字で比べ、障害による損失を防いだ分として示します。

内製と外注の判断と委託先選びのポイント

運用管理体制を整えるときは、自社で内製するか、外部に委託するかが大きな判断になります。人手不足や24時間体制の負荷を背景に外注を選ぶ企業は多い一方で、丸投げによるブラックボックス化や情報漏洩のリスクといった注意点もあります。そこで、内製と外注の見極め方と、委託先選びで確認すべき実務的なポイントを押さえておきます。

内製と外注のメリット・デメリット

外注のメリットは、24時間365日の監視体制や、セキュリティ・クラウドに関する高度な技術力を、固定費で確保できる点です。さらに、コストの予測が立てやすく、自社の情報システム部門をDXなどのコア業務に集中させられる効果も大きいです。

一方で、運用ノウハウが社内に蓄積されにくく、業務がブラックボックス化しやすいという点があります。また、外部に情報を委ねることによる漏洩リスクもあります。

これらへの対策として有効なのは、SLAの明確化、運用対象範囲の明文化、ドキュメント整備の義務化です。そのうえで、委託先に運用手順書や構成管理台帳の作成・更新を契約上の義務として課すと、ブラックボックス化を防ぎ、将来の委託先変更や内製に戻す場合にも備えられます。現実的には、コア部分は内製で押さえつつ、定型的な監視や一次対応を外注するハイブリッド体制が、ノウハウの蓄積とコスト効率の両立に適しています。

委託先選定で確認すべきポイント

委託先を選ぶときは、提案書や見積のどこを見るかが、判断の出発点になります。具体的には、SLAの数値が明記されているか、運用体制が複数名で特定個人に依存していないか、ドキュメント整備の方針が示されているかを確かめます。これらが曖昧な提案は、丸投げ体質や低スキル要員の配置を示している場合があります。

あわせて、契約形態が準委任か請負かを確認し、責任分界点を明確にしておくことも欠かせません。クラウド事業者、アプリ開発会社、運用委託先が別々だと、責任の押し付け合いで初動が遅れやすいため、障害時の原因切り分けの主導権を誰が握るかを事前に取り決めておくことが大切です。なお、運用管理の進め方や費用相場、発注の手順は、関連記事で詳しく扱っています。

・ITシステム運用管理でおすすめの開発会社・ベンダー6選と選び方
・ITシステム運用管理の見積相場や費用・コスト・値段について
・ITシステム運用管理の発注・外注・依頼・委託方法について
・ITシステム運用管理の完全ガイドをご覧ください。

ポイント

内製と外注は、コア部分を社内に残せるかどうかで分けて考えるのが目安です。委託するなら、運用手順書と構成管理台帳を契約上の義務にし、委託先の体制が複数名かを確かめてください。

まとめ

ITシステム運用管理の本質は、運用計画、インシデント管理、構成・設定管理という三つの管理プロセスを中心に、再現性のある統制として設計することです。監視して障害を直すだけの受け身の運用から、計画的な統制へ進むには、この三つが連動することが欠かせません。

進め方は、運用設計書の策定から始め、インシデント管理プロセスを構築し、構成・変更管理を整備する順序です。この順序を踏むことで、属人化とブラックボックス化を防げます。さらに、稼働率やRTOといったSLAを具体的な数値で定め、SLMとして定期的に見直すことで、運用品質を継続的に高められます。

監視ツールや自動化の活用、ROIに基づく経営層への説明、内製と外注のハイブリッド設計まで含めて取り組めば、運用管理は守りのコストから、事業継続を支える価値創出へと進化します。そのうえで、この進め方を起点に、自社の運用管理体制を一段引き上げていただければ幸いです。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。