ITシステム定期メンテナンスの進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ITシステムの定期メンテナンスは、保守計画、作業時間の設定、告知、実施、報告の5ステップで進めると安定します。

作業内容と切り戻し条件は、事前に決めておくことが欠かせません。作業の時期や順番、告知方法が曖昧なまま進めると、予期せぬ停止やクレーム、想定外の追加費用につながりかねません。

ITシステム定期メンテナンスの全体像と目的

定期メンテナンスの作業を点検系、更新系、整理系に分けた図解
作業の目的に応じて、点検・更新・整理に分けて捉えます。

定期メンテナンスは、障害発生後の対応とは異なり、計画的にシステムの健全性を保つ運用活動です。計画した日時に点検・更新を行うことで、不具合の兆候を早く見つけられ、突発停止やデータ消失を防ぎやすくなります。

定期メンテナンスに含まれる作業の種類

定期メンテナンスの作業は、大きく分けて点検系・更新系・整理系の3つに分類できます。

  • 点検系:サーバーやネットワーク機器の死活、ディスク使用率とメモリ消費、ログの異常の確認
  • 更新系:OS・ミドルウェアのセキュリティパッチ、ウイルス定義ファイル、軽微なバージョン更新の適用
  • 整理系:不要ログや一時ファイルの削除、データベース最適化、バックアップの取得と世代管理

これらは、システムの健全性を保つために決まって行う定型作業です。ただし、どこまでを月額保守費用に含めるかは、契約で確認しておく必要があります。

大幅なデザイン変更や新機能の追加といったプログラムの根本修正を伴う作業は、定期メンテナンスの範囲外となり、別途制作作業として追加費用が発生します。

定期保守の範囲と追加費用の線引きを契約時に明確にしておくことが、後のトラブル防止につながります。

計画的に実施する理由

場当たり的にメンテナンスを行うと、利用が集中する時間帯と重なって業務を止めてしまうことがあります。また、複数の作業が同時に起きると、原因の切り分けが難しくなります。そのため、計画段階では、利用への影響と運用の継続性の両方を考慮しておく必要があります。

実務では、次の2点を計画に盛り込むと、安定した実施につながります。

  • 実施時期:利用が集中する時間帯を避け、業務への影響を小さくする
  • 手順の共有:標準化した手順を担当者間で共有し、不在でも作業を続けられる状態にする

ポイント

作業が定期メンテナンスに当たるかは、計画に沿った点検・更新か、障害後の事後対応かで見極めます。この区別が、以降の工程を組み立てる出発点になります。

ITシステム定期メンテナンスの進め方5ステップ

定期メンテナンスの5工程を計画から報告まで順に示す図解
計画と準備を整えてから実施へ進み、記録を次回に生かします。

定期メンテナンスは5つの工程で進みます。各工程の要点を社内とベンダーで共有すると、作業のばらつきを抑えやすくなります。

  1. 保守計画を作り、作業内容と担当を決める
  2. 利用状況を踏まえて作業時間を設定する
  3. 影響範囲に応じて利用者へ事前告知する
  4. バックアップと切り戻し手順を確認して作業する
  5. 結果と変更履歴を記録し、関係者へ報告する

ステップ1:保守計画の策定とスケジュール化

最初に、年間または半期単位の保守計画を立てます。作業内容と頻度を洗い出してカレンダーに記載し、全体の予定を一目で見られるようにします。

  • 点検・更新の頻度:セキュリティパッチは月次、データベース最適化は四半期ごと、ハードウェア点検は半年ごとが目安
  • 時期の調整:繁忙期や決算期と重ならないように日程を組む

この段階では、作業の優先度と業務への影響をあらかじめ評価しておくことが大切です。即座に適用すべき重大なセキュリティパッチと、急がない軽微な更新では扱いが異なるからです。

「適用しなかった場合のリスク」と「適用に伴う業務影響」を比べて判断する基準を事前に決めておけば、毎回の判断をスムーズに進められます。

ステップ2:メンテナンスウィンドウの設定

メンテナンスウィンドウとは、システムを停止または部分制限してメンテナンス作業を行う「許可された時間帯」のことです。多くの企業では、利用者が最も少ない深夜帯や休日に設定しています。

  • 利用実態の把握:1日平均300人のような数字に加えて、曜日・時間帯のアクセス傾向や特定ユーザーの利用パターンも調べる
  • 枠の選定:夜間バッチや海外拠点の稼働時間を確認し、利用者への影響が少ない枠を選ぶ

ウィンドウには作業時間のほかに、想定より長引いた場合に切り戻して通常運用へ戻すための余裕も含めておきます。

ステップ3:ユーザーへの事前告知

メンテナンスでシステムが利用できなくなる場合や、一部機能が制限される場合は、利用者への事前告知が欠かせません。

  • 記載事項:日時や停止範囲、想定される影響、問い合わせ先を含める
  • 連絡手段:社内向けは全社メールやポータル、対外サービスはサイトやアプリ内通知を使い分ける

告知の時期は、影響の大きさに合わせて決めます。短時間で影響が軽微なら数日前に、長時間の停止や決済機能の停止を伴う場合は1週間から2週間前に案内します。さらに、直前にもリマインドを送ります。

作業が予定より長引いたときの連絡経路も決めておけば、利用者の混乱を抑え、運用への信頼を保てます。

ステップ4:実施とバックアップ・切り戻し準備

本番作業は、手順書に沿って段階的に進めます。開始前から通常運用へ戻すまでは、次の順で確認します。

  1. 作業前の現状バックアップを取得する
  2. 可能であれば予備機やテスト環境で検証してから、本番作業に入る
  3. 主要機能とバッチ処理の動作を確かめたうえで、通常運用へ戻す

各工程の完了を確かめたうえで、異常時にどこまで戻すか、誰が切り戻しを判断するかを事前に決めておきます。判断者が明確であれば、問題が起きたときも対応を迅速に進められます。

作業の一連の流れを記録に残しておけば、次回以降の作業の精度向上にもつながります。

ステップ5:報告と変更履歴の記録

実施記録は、次回の計画や問題が起きたときの原因確認に役立ちます。報告書には、作業の経過と結果を整理して載せます。

  • 作業の経過:作業内容、開始・終了時刻、発生事象と対応
  • 検証結果:動作確認で得た結果を載せる

利用者やマネジメント層には、メンテナンスが予定どおり完了し、サービスが正常に再開したことを簡潔に伝えます。

変更管理では、設定やバージョンの変更内容と、その作業を行った理由を記録しておきます。変更履歴を一か所にまとめておけば、不具合が起きたときに原因をたどる手がかりになります。

加えて、設計書やソースコードの版も管理して、変更の経緯を残しておきます。記録がたまっていけば、特定の担当者しか分からない状態を防ぎ、運用品質を支える基盤になります。

ポイント

5ステップを進める際は、作業の優先度と影響を先に評価し、切り戻し条件を決めてから本番に入ります。判断に迷ったら、利用者への影響と切り戻しの余地を先に見ておくと判断が速くなります。

定期保守の範囲内と追加費用の線引き

現状維持・障害除去と機能追加・性能向上を定期保守内か別途見積もりかで対比した図解
作業の目的を契約時の線引きと照らし合わせます。

定期メンテナンスで最もトラブルになりやすいのが、「これは月額保守の範囲なのか、それとも別途見積もりが必要なのか」という線引きです。

この境界が曖昧なまま運用を始めると、当然含まれると思っていた作業に追加費用を請求され、不信感につながります。

保守内か別途見積かを判定する早見の考え方

判断の軸は、「現状維持・障害除去を目的とした作業か」「機能追加・性能向上を伴う作業か」の2つです。前者は定期保守の範囲内に、後者は別途見積もりになるのが一般的です。

この2つの軸を当てはめると、作業ごとの扱いは次のように分かれます。

  • 軽微な更新:OS・ミドルウェアのセキュリティパッチは、定期保守内に収まるのが一般的です。
  • 大規模な改修:OSのメジャー更新に伴う大規模な検証・改修や、法改正による機能・帳票変更は、別途見積もりとなることが多い項目です。
  • 判断が分かれる作業:ブラウザ表示の軽微な修正や、WordPressなどOSS更新後の不具合調査は、契約内容と影響範囲で判断します。

同じ「バージョンアップ起因の対応」でも、軽微な適用と大規模な改修では扱いが変わります。そのため、契約時にこの線引きをできるだけ具体的に取り決めておくことが大切です。

「OSメジャーアップデート時は別途協議」といった条項を盛り込んでおけば、いざというときに無用な対立を避けられます。

経理処理の観点(修繕費と資本的支出)

経理上は、改修が現状維持か、価値を高める投資かで費用処理の区分が異なります。

  • 修繕費:障害の除去や現状維持を目的とした修正は、その期の費用に計上できる
  • 資本的支出:新機能の追加や性能の大幅な向上を伴う改修は、資産計上して減価償却するのが原則

資本的支出を資産計上する際は、「既存部分の除却」を考慮できる場合があります。改修で従来の機能を作り直す場合は、建物の一部を取り壊して建て替えるときと同様に、既存の資産計上部分を除却したと捉えられることがあります。

その分を費用として処理できる余地もありますが、税務・会計の専門的な判断が必要です。そのため、対応内容を記録しておき、必要に応じて税理士などの専門家へ相談します。

また、情報システム部門と経理部門が連携すると、費用の性質を整理しやすくなります。

ポイント

迷ったときは、現状維持・障害除去か、機能追加・性能向上かで見分けます。費用の区分は経理処理にも関わるため、契約時の取り決めを経理部門とも共有しておくとよいでしょう。

定期メンテナンスを効率化・コスト適正化する方法

定期メンテナンスの費用が高止まりする主な原因は、手作業の多さとシステムのブラックボックス化です。逆にいえば、ここに手を入れることで、運用の効率化とコスト適正化を同時に実現できます。

定型作業のスクリプト化と標準化

自動化は、効果が見込める作業から始めるのが基本です。実務では、手順の標準化や外部移管も含めて運用全体で検討し、次の観点から整理します。

  • 自動化の候補:バックアップやログ削除、パッチ適用などが対象になります
  • 手順書の整備:手順を文書化して、担当者が替わっても同じ品質で実行できるようにする
  • 外部移管:クラウド事業者へ移せる作業を確認する

手作業だった作業を自動化すれば、作業時間が短縮されるだけでなく、人為的なミスも減らせます。特に、深夜のメンテナンスウィンドウに手作業で張り付く必要がなくなれば、担当者の負担も大幅に軽減されます。

ただし、自動化の仕組み自体にも保守コストはかかります。そのため、どの作業から自動化すれば投資に見合うかを見極め、効果の大きいところから着手するのが現実的です。

スポット保守への切り替えなどで削減した実例

民間企業や政府の情報システムで、保守費用の内訳や利用状況を調べて契約を見直し、削減した事例があります。

  • 契約形態の見直し:政府の情報システムでは、数年単位で保守契約を結んでいたが、故障率が低く利用も年数回だったため、スポット保守に切り替えました。
  • 低稼働・重複の整理:CPU使用率が低いサーバーの停止や、重複したテスト環境の統合・廃止も見直し策です。

たとえば民間企業では、保守費用の内訳を調べたところ、実際には利用していないサービスが含まれていると分かりました。

この契約を見直し、月額28万円の保守費用を20万円に抑えました。その結果、28.6%の削減となり、年間約96万円のコスト削減につながりました。

見直しにあたっては、費用の平均や合計だけで結論を出さず、現場の利用実態と契約内容を照らし合わせることが大切です。

「本当に必要か」「頻度は適切か」と、保守内容を一つずつ見直すことが、コスト適正化の第一歩です。

ポイント

保守内容を「本当に必要か」「頻度は適切か」と問い直し、自動化の投資は効果の大きい作業に絞ります。判断は、実際の利用状況と契約内容を照らし合わせて行います。

まとめ

ITシステムの定期メンテナンスは、保守計画、メンテナンスウィンドウの設定、利用者への告知、実施、報告の5つのステップで計画的に進めるのが基本です。

とりわけメンテナンスウィンドウの設定では、平均利用者数に加えて曜日差や利用パターンといった実態を観察し、影響の少ない時間帯を選ぶことが大切です。

バックアップと切り戻しの準備を整え、変更履歴を一か所にまとめて記録に残すことで、属人化を防ぎながら運用品質を継続的に高められます。

定期保守の範囲と追加費用の境界は契約時に決めておき、定型作業の自動化や保守費用の内訳の見直しで、コストを適正化します。

体制づくりやベンダー契約の見直しには、コンサルティングから開発・運用までを扱う発注・外注方法の解説記事も参考になります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。