IVRの導入/開発事例や活用/成功事例について

IVRの導入事例は、電話の一次対応の自動化、注文・予約の受付、督促・回収業務の改善の3つに大きく分かれます。導入を検討する担当者がまず知りたいのは、同じように電話の一次対応に追われていた企業が何を得たかです。

さらに近年は、音声認識やボイスボットと組み合わせて、業務そのものを電話で完結させる事例も増えています。

全体像をまだ把握していない方は、まずIVRの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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電話の一次対応をIVRで自動化した事例

電話の一次対応を中心に、用件振り分け、適切な担当、応答率、放棄呼を示す図。
入口で用件を分けると、担当者への接続と受電状況の把握を整理できます。

IVR導入でもっとも分かりやすい成果が出るのが、コールセンターやお問い合わせ窓口の「電話一次対応の自動化」です。電話が集中する時間帯は、オペレーターが用件のヒアリングと部署への取り次ぎに追われ、本来対応すべき相談に手が回らなくなります。こうした状態は、多くの企業が抱える課題です。

IVRで用件を入口で振り分ければ、適切な担当へ最短で繋ぎ、放棄呼(呼び出し中に切れてしまう電話)を減らせます。

用件振り分けで応答率と放棄呼を改善した事例

IVRの一次振り分けがもたらす効果は、受電の件数から見積もれます。たとえば自治体の窓口では、年間7.5万件の受電のうちIVRやボイスボットに70%が流入し、その60%が自動で解決すると想定すると、約2.5万件をシステム側で対応する計算になります。

これは神戸市が音声自動応答の調達要件として掲げた水準です。応答3秒以内(繋ぎ言葉があれば5秒以内)という応答速度の目標と組み合わせると、待たせない一次対応が実現します。

押さえたいのは、この効果を「漠然とした効率化」ではなく、自社の実際の入電件数に当てはめて定量化することです。入電件数に、IVRで完結できる定型問い合わせの割合とオペレーター1名あたりの処理単価を掛け合わせれば、削減できる人件費が概算できます。

効果を自社の数字で見るときは、指標と材料の2つに分けて考えます。

  • 評価の指標:応答率と放棄呼率を、自社のKPIとして扱う
  • 試算の材料:入電件数、定型問い合わせの割合、処理単価

24時間化と人員削減を両立した事例

IVRのもう一つの代表的な活用が、24時間対応の実現です。緊急度の高い案件は、SMSやコールバックで折り返す設計にすれば、機会損失も防げます。

有人のコールセンターを24時間体制で維持するのは人件費の負担が大きいため、定型的な一次対応をIVRに任せ、人間は判断が必要な対応に専念する分業が現実的です。人員削減の効果も具体的です。総務省の2024年の整理では、AIを活用した音声自動応答によって、オペレーターを40〜60%削減できる余地があるとされています。

たとえば、月1万通話の受電を20名で回している現場が、IVRとボイスボットの併用で8〜12名まで圧縮できれば、年間で3,200万〜4,800万円規模の人件費削減につながるという試算もあります。

IVRの一次対応は、利便性を高めるだけでなく、人件費を構造的に減らせるという経営上の意味を持ちます。この削減効果は、後述する督促や注文受付の自動化と組み合わせると、さらに大きくなります。

24時間化と人員削減の効果は、時間帯と人員の二つの面から見ます。

  • 時間帯:営業時間外の受付と、翌営業日の確実な折り返し
  • 人員:定型の一次対応をIVRに任せ、人は判断の要る対応に回す

自治体の窓口で住民サービスを止めずに省力化した事例

一次対応の自動化は、民間企業だけでなく自治体の窓口でも成果を上げています。住民からの問い合わせは、ごみの出し方、各種証明書の取得方法、手続きの受付時間といった定型的なものが多く、IVRや音声システムによる自動応答と相性が良い領域です。

職員が同じ説明を一日に何度も繰り返す負担を、システムが肩代わりすることで、職員は複雑な相談や窓口対応に集中できるようになります。

自治体の事例で参考になるのは、自動化率を一気に上げようとせず、段階的に引き上げる進め方です。神戸市の調達では、回答率を導入月50%、2ヶ月後60%、最終的に70%以上と段階的に高める計画が示されました。

住民サービスは止められないため、自治体の窓口では急に切り替えられない事情があります。サービス品質を維持しながら省力化を進める段取りは、失敗を避けたい組織にとって有効なモデルです。

省力化の進め方は、対象の広げ方と目標の置き方から見ていきます。

  • 対象の広げ方:確実に答えられる定型問い合わせから始め、運用しながら広げる
  • 目標の置き方:回答率を導入月50%、2ヶ月後60%、最終的に70%以上

ポイント

電話の一次対応を自動化するかは、応答率と放棄呼率を自社の入電件数に当てはめて試算してから決めると、効果の見通しを立てやすくなります。

注文受付・予約をIVRで自動化した事例

電話注文を自動化の対象と有人の対応に分け、定期注文の約8割とイレギュラーな2割を対比した図。
定型注文を自動化することで、人は例外対応や付加価値の高い業務に回れます。

IVRは取り次ぎだけのものではありません。近年は音声認識やボイスボットと組み合わせて、注文や予約という「業務そのもの」を電話で完結させる事例が増えています。

なかでも、定型的で繰り返しの多い受注業務は、IVRの自動化と相性が良く、人手をかけずに24時間注文を受け付けられるようになります。

宅配水の電話注文の8割を自動化した事例

注文受付の自動化で象徴的なのが、宅配水の電話注文の事例です。中京医薬品の取り組みでは、宅配水の電話による定期注文を、IVR・音声システムで自動化したと報告されています。

宅配水の追加注文は、「いつもの商品を、いつもの本数」という定型的なパターンが大半を占めるため、顧客の発話を音声認識で受け取れます。さらに、過去の注文履歴から候補を提示して確定する流れも組みやすいのです。

この事例の本質は、「すべての電話を自動化しようとしない」割り切りにあります。その線引きの仕方が、成功の鍵です。

注文業務に張り付いていたオペレーターは、自動化によって手が空き、解約防止やアップセルといった付加価値の高い対応に時間を使えるようになります。自動化は人を減らすためだけでなく、人の役割をより重要な業務へ移す手段でもあるのです。

この事例で押さえたいのは、自動化する範囲と有人で受ける範囲の分け方です。

  • 自動化の対象:定型的な定期注文のうち、約8割
  • 有人の対応:イレギュラーな残りの2割と、付加価値の高い対応

予約受付とオムニチャネル誘導を組み合わせた事例

予約受付の自動化も、IVRの効果が出やすい領域です。飲食店や医療機関、美容サロンなどでは、予約電話が特定の時間帯に集中し、その間は他の業務が止まってしまいます。

電話で受けた予約をシステムに連携させる仕組みにすれば、繁忙時間帯でも取りこぼしを防げます。こうして、電話に出られず逃していた予約を確実に拾えるようになれば、売上に直結します。

さらに進んだ事例では、IVRを起点にチャネルをまたいだ顧客誘導(オムニチャネル)を設計しています。たとえば電話で一次受付したあと、詳細な手続きはSMSで送ったWebフォームに誘導する、という流れです。

電話で完結させるべきものと、Webに誘導したほうが顧客にとって楽なものを切り分けることで、顧客体験(CX)を損なわずに自動化率を高められます。IVRをWebやチャットへの入口として位置づける視点が、現代の活用事例に見られる特徴です。

予約とWeb誘導の設計では、電話で完結させる範囲と誘導先を分けて見ます。

  • 予約の受付:日時と人数を音声で受け、空き状況を確定する
  • Webへの誘導:詳細な手続きを、SMSで送ったWebフォームに渡す

ポイント

注文や予約を電話で受けるかは、定型的な受付の割合を先に見極め、残りを有人で受けるかを決めておくと、導入後に迷いにくくなります。

督促・回収業務をIVRで改善した事例

IVRの活用は、受電(インバウンド)だけでなく、こちらから架電する発信(アウトバウンド)でも効果を発揮します。その代表が、支払い忘れの案内や督促といった「言いにくい連絡」の自動化です。

督促は心理的な負担が大きく、オペレーターの離職要因にもなりやすい業務です。一方、IVRによる自動音声であれば、感情的な摩擦を避けつつ、決まった文言で淡々と案内できます。

自動架電で回収率を改善した消費者金融の事例

督促業務の自動化で具体的な数値が出ているのが、消費者金融の事例です。ある消費者金融では、この取り組みによって回収率の改善が報告されています。

これは、オペレーターの稼働時間に縛られず、対象者がつながりやすい時間帯に網羅的に架電できるようになったことや、案内のトーンや文言を標準化できたことによる効果です。

督促のような業務でIVRが効くのは、件数が多く、内容が定型的だからです。一件一件は短い案内でも、対象者が数千・数万人規模になると、人手では網羅しきれません。IVRは対象リストに対して機械的に架電を続けられるため、抜け漏れなく案内を届けられます。

回収率の改善は、そのまま貸し倒れリスクの低減という財務効果に直結するため、ROIを稟議で説明しやすいのも特徴です。

自動架電の効果は、回収率の改善と財務への影響の2つで見ます。

  • 回収率:支払い案内の架電をIVRに切り替えて16.9%改善
  • 財務への影響:貸し倒れリスクの低減

費用と効果から投資回収を見極めた事例

事例を投資判断に活かすには、効果だけでなく費用感も押さえる必要があります。IVRやボイスボットの料金は、契約の型によって見方が変わります。

ある音声システムでは、初期30万円・月額15万円・通話料10円/分という料金体系が公開されています。一方、月2万通話規模の大規模受電を扱う場合は、初期200万〜400万円・月額80万〜150万円という水準になります。

こうした費用に対し、回収率16.9%改善や人件費の削減効果を金額に換算して比較すれば、投資回収の見通しが立ちます。加えて、フルスクラッチで業務に合わせて作り込む場合、外注の相場は、小規模で300万〜600万円、中規模で600万〜1,500万円、大規模では1,500万〜5,000万円以上が目安です。

事例を読むときは、自社の入電・架電のボリュームと、削減・改善の効果額を突き合わせ、どの規模の投資が妥当かを冷静に見極めることが大切です。費用対効果の判断軸については、メリット・デメリットを扱う関連記事もあわせてご覧ください。

費用と効果の釣り合いは、2つの料金の型に分けて見ていきます。

  • 従量課金型:1応答あたり約50〜200円
  • 固定型:月額1万〜35万円

ポイント

督促や回収の自動化は、件数が多く内容が定型的な業務から始め、回収率の改善を金額に換算して比べると、社内での説明がしやすくなります。

失敗から軌道修正したIVR導入事例

回答率の目標を導入月50%、2ヶ月後60%、最終的に70%以上へ段階的に引き上げる3段階の図。
運用とチューニングに合わせて、到達点を時期ごとに上げていきます。

事例の価値は、成功談だけでなく失敗の経緯にもあります。発注側がもっとも学べるのは、「なぜ失敗したのか」「どう立て直したのか」というリアルな経験です。IVRには、シナリオを作り込みすぎて顧客も現場も混乱した、という失敗が少なくありません。この失敗から得られる教訓は、これから導入する企業にとって何よりの保険になります。

多階層メニューで顧客が離脱した失敗の教訓

もっとも典型的な失敗が、IVRのメニュー階層を深く作り込みすぎたケースです。「1番を押してください」のあとに「1番から5番まで」が続き、さらにその先にも分岐がある多階層メニューは、顧客にとって苦痛でしかありません。

顧客は「結局オペレーターと話したい」とゼロ番を連打したり、しびれを切らして電話を切ってしまったりします。自動化率を上げるつもりが、かえって放棄呼を増やしてしまうのです。

この失敗の本質は、企業側の組織図や業務分担をそのままメニュー構造に反映してしまったことにあります。顧客は「自分の用件がどの部署の管轄か」を知りません。

にもかかわらず、社内の都合で細かく分岐させると、顧客は迷子になります。事例が教えるのは、メニューは顧客の用件を起点に、できるだけ浅く、少なく設計すべきだという原則です。

音声ユーザーインターフェース(VUI)の設計では、一度に提示する選択肢を3〜4個までに抑え、よくある用件を先頭に置く配慮が欠かせません。

メニューの階層を決めるときは、離脱の起きやすい場面と設計の原則を押さえます。

  • 離脱の起きやすい場面:目的の窓口にたどり着く前の分岐
  • 設計の原則:顧客の用件を起点に、浅く少なく作る

ログ分析とVUI改善で立て直した事例

失敗から立て直した事例に共通するのは、稼働後のログを分析し、VUIを継続的に改善したことです。通話ログを手がかりに、離脱の多い階層をフラットに作り直します。

この地道なチューニングが、自動化率を着実に引き上げます。最初から完璧なシナリオは作れないという前提に立ち、運用しながら磨く姿勢が成功と失敗を分けます。

立て直しに成功した企業は、回答率の目標も時期ごとに設定しています。神戸市の調達要件では、導入月に50%、2ヶ月後に60%、最終的に70%以上という形で、回答率を段階的に引き上げる目標が定められました。最初から高い自動化率を狙うより、運用とチューニングを重ねて到達点を上げていく進め方が現実的です。

riplaはフルスクラッチ受託と運用伴走の立場から、この「ログを起点にVUIを磨き、段階的に定着させる」進め方を一貫して重視しています。事例は、華やかな成果よりも「なぜ顧客に使われたのか」という視点で読むことが、失敗を避ける最大の近道です。

立て直しの進め方は、見るログと段階的な目標の2つで押さえます。

  • 見るログ:離脱したメニューと、ゼロ番が連打された分岐
  • 段階的な目標:導入月50%、2ヶ月後60%、最終的に70%以上

ポイント

立て直しを見据えるなら、最初から完璧なシナリオを目指すより、稼働後のログで離脱の多い階層を確かめながら、段階的に自動化率を上げる計画を立てておくことが大切です。

まとめ

IVRの導入事例・活用事例を振り返ると、成功も失敗からの回復も、結局は一点に集約されます。それは、顧客の用件を起点に浅く設計し、ROIが明確な定型業務の自動化から始めて、運用しながらVUIを磨くことです。

電話一次対応の自動化は応答率や放棄呼の改善として、宅配水注文の8割自動化や予約受付は機会損失の防止として、督促の自動架電は回収率16.9%改善として、それぞれ効果を定量化できます。

一方、メニュー階層を作り込みすぎた失敗は、自動化率を追うあまり顧客を置き去りにしてはいけないことを教えています。事例を読むときに大切なのは、「どこまで自動化したか」ではなく「なぜ顧客に使われたのか」という視点です。

自社の入電・架電のボリュームと業務の定型度に照らし、まずは効果の大きい一次対応や定型受付の自動化から、現場が使える一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と運用伴走を組み合わせ、業務から逆算した要件整理と、顧客に使われるVUI設計を一貫して支援します。

全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。