図書館管理システムの発注は、館種と規模に合う方式を選び、要件と移行範囲を定めたうえで、5年総額と保守体制を比べて委託先を決める流れで進みます。
各段階で誰が判断し、何を文書に残すかを決めておくと、提案の比較や契約の場面で手戻りを減らせます。
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図書館管理システムを発注・外注する前に知る全体像
図書館管理システムは、資料の登録や貸出だけでなく、利用者が必要な資料にたどり着くまでを支える業務基盤です。資料、利用者、職員業務、複数館、自治体や大学の外部サービスをつなぐ基盤だからこそ、発注時に業務の担当者とデータの保有期間も決めておく必要があります。
また、障害時にどうサービスを続けるかも要件に含めます。機能だけでなく運用とデータ管理まで定めることが、発注後のずれを小さくするうえで欠かせません。
発注対象になる主な機能
図書館管理システムには、館種ごとに優先度の異なる機能があります。発注範囲を決めるときは、次の機能を基準に考えます。
- 資料と利用者の管理:書誌、所蔵、除籍、利用者登録まで。
- 貸出業務:貸出、返却、延滞、更新、予約、蔵書点検。
- 選書・受入と集計:選書、発注、受入、統計、帳票。
- 利用者向け機能:OPAC、マイページ、予約通知、スマートフォン対応。
- 館種別の連携:公共図書館では横断検索、予約本の搬送、受取館指定を重視します。
学校図書館では、児童生徒と教職員の管理が優先されます。一方で、大学・専門図書館では、雑誌や研究資料、機関リポジトリとの連携も確かめる必要があります。
公共・学校・大学で変わる発注条件
館種ごとに、ネットワークや利用者情報の条件が違います。そのため、RFPを出す前に、該当する条件を整理しておきます。
- 公共図書館:自治体の情報セキュリティポリシー、複数館運用、住民向けWeb、LGWAN系ネットワークとの分離・連携。
- 学校図書館:学校間連携、児童生徒の個人情報、限られた職員時間で使える操作性。
- 大学・専門図書館:学術情報検索、電子ジャーナル、ILL、認証基盤、研究者向けサービスとの接続を確かめます。
館種が曖昧なままRFPを出すと、ベンダーの標準仕様と現場の期待がずれやすくなります。そこで、対象館種を明示して提案を求めます。
安さだけでなくサービス継続性の確認
図書館システムは導入後も、OS、ブラウザ、認証方式、外部API、法令、利用者端末の変化に対応し続ける必要があります。そのため、保守と更新を何年続けられるかを確認します。
初期費用が安くても、データ移行や機器更新が別料金になる場合があります。さらに、障害時の現地対応や契約終了時のデータ抽出にも、費用がかかることがあります。
初期費用に加えて保守費や運用費も並べ、5年程度の総額で比べます。追加開発費と機器費も同じ前提で含めると、長期的な負担を把握しやすくなります。
発注形態の選び方とパッケージ・クラウド・スクラッチの違い
図書館管理システムは、まず標準パッケージやクラウドを検討し、業務上必要な部分だけを追加開発する方法が現実的です。
独自の業務や密接なシステム連携が必要なら、スクラッチ開発も候補になります。その場合は標準機能を作り直すことになるため、将来の保守を誰が担うかも含めて判断します。
オンプレミスとクラウドの選択は、自治体ネットワーク、障害対応、データ所在、費用構造を並べて比べます。セキュリティの印象だけで決めると、ほかの条件を見落としかねません。
標準パッケージの強みと短期間での安定稼働
標準パッケージは、資料管理、貸出・返却、予約、OPAC、帳票など、図書館に共通する機能が検証済みです。さらに、導入館が多い製品には、法改正やブラウザ更新への対応、例外処理の知見も蓄積されています。
公共図書館向けでは、NECネクサソリューションズのLiCS-Re for SaaSや富士通JapanのiLisシリーズが、デジタル庁の導入事例ページに掲載されています。
ただし、掲載実績は候補を絞る材料にとどまります。自館と同じ館種・規模で同じ運用ができるかは、別途確かめる必要があります。
クラウドの特徴と運用負担の軽減
クラウド型は、館内にサーバーやバックアップを置かずに済みます。そのぶん、機器の老朽化や災害時の復旧を考えやすく、複数館も同じ環境で運用できます。
機能更新を保守契約の中で受けられる場合があります。一方で、月額・年額の利用料、利用者数や容量に応じた従量費、外部連携オプションの費用は継続してかかります。
クラウドを選ぶ場合は、データセンターの所在地や通信の暗号化、バックアップの頻度と目標復旧時間をRFPに明記します。加えて、障害通知と契約終了時の返却形式も記載します。
スクラッチの独自要件と保守体制の検討
スクラッチ開発は、独自検索や館内ルール、認証、研究データ連携に合わせて設計できます。ただし、標準機能から作る場合は、要件定義とテストに長い期間がかかります。
法令やブラウザへの対応、障害対応も稼働後に続きます。そのため、担当者が変わっても保守できるよう、設計書やソースコードの管理方法、引き継ぎ可能なデータ仕様を契約に入れておきます。
脆弱性対応は、発注者と委託先のどちらがどこまで受け持つかを定めます。独自要件が一部だけなら、まずパッケージのAPIや追加画面で解決できないかを確かめます。
図書館管理システムの発注・外注の進め方

現状把握と目的設定を先に済ませておくと、要件の書き方がぶれにくくなり、失敗を減らせます。そこから先の流れを、下に順に示します。
- 要件整理
- RFI・RFP
- 提案比較
- 契約
- 移行・テスト
司書や情報政策部門、調達担当、施設管理担当が参加し、必要に応じて利用者代表も加わります。製品の選定に加えて、運用を変えることへの合意も必要です。
現行業務とデータの洗い出し
洗い出しでは、規模・業務・帳票・データの4点を確認します。整理した情報は、要件と移行範囲の検討に使います。
- 規模と機器:館数・蔵書数・年間貸出点数・利用者数・同時アクセス数の規模と、端末台数、ICタグ、自動貸出機。
- 業務フロー:登録・選書・発注・受入、貸出・返却・延滞・予約、搬送・蔵書点検・除籍・統計作成の流れ。
- 帳票とCSV:毎日使うもの、月次で必要なもの、廃止できるものに分け、不要なカスタマイズを防ぎます。
- 現行データ:書誌・所蔵・利用者・予約・履歴・権限に分けて、データの状態を確かめます。欠損や重複、文字コード、旧コードも確認します。
更改の目的と業務指標
目的を「古いから新しくする」のままにすると、比べる観点が価格や画面の印象に偏ります。改善したい業務を指標に置き換えると、各社の提案を同じ観点で比べられます。
- 予約対応:受付から受取通知までの職員作業の削減。
- 蔵書点検:点検にかかる時間の短縮。
- 利用者サービス:スマートフォンから予約できる利用者の拡大。
- 障害対応:障害時にも貸出を止めない状態。
予約処理時間、手入力件数、月間問い合わせ数、点検日数、復旧目標時間を現状値として記録します。導入後に測れる指標なら、提案と効果を結び付けられます。
RFIによる市場把握とRFPによる条件提示
候補が多く製品差が分からない場合は、先にRFI(情報提供依頼)を出します。館種、規模、クラウド方式、移行実績、連携機器、保守体制を聞き、候補を絞ります。
RFP(提案依頼書)では、各社に同じ条件を示します。目的や対象範囲、機能・非機能要件、現行データを記載します。希望日程や予算枠、提出様式、評価基準も、あわせて示します。
松茂町の2026年調達では、機能要件一覧、機器仕様、ホームページ機能仕様、見積書作成要領などを分けて公開しています。要求を文書に書き出しておくと、提案比較に役立ちます。
同じシナリオで行うデモ
日々の操作の差は、提案書の文面からは見えにくいものです。そこで、候補各社に同じ業務を同じ順番で実演してもらいます。
- 基本操作:利用者登録、資料検索、貸出、返却、延滞、予約を試します。
- 館内運用:受取館変更、蔵書点検、帳票出力を確認します。
- 障害時:障害発生時の代替運用を実演してもらいます。
司書が実業務に近いサンプルを使い、操作回数、入力項目、権限ごとの表示、エラー案内を確認します。例外処理とデータ追跡性も見ておくと、導入後の手戻りを減らせます。
RFPと要件整理で必ず確認する項目

RFPでは、機能一覧に対する回答だけでなく、対応方法と費用・納期への影響も示してもらいます。機能ごとに、標準、設定対応、追加開発、対象外のどれかを明らかにしてもらうと、提案を比べやすくなります。
非機能要件では、可用性と性能、バックアップを中心に整理します。監査ログや権限、暗号化、脆弱性対応、障害通知、運用時間も、同じ枠で定めます。データの正確さと利用者情報の扱いも、重要な論点になります。
データ移行の範囲と責任者
移行対象は、事前に確定しておく必要があります。書誌と所蔵、状態、利用者、貸出中資料の情報に分けます。予約、購入・受入、雑誌の継続情報、権限も、対象として分けて整理します。
過去の貸出履歴や検索履歴は、サービス上の必要性と個人情報保護の観点から、保持するかを判断します。日本図書館協会のガイドラインは、必要最小限の情報を必要最短期間保持する原則を示しています。
さらに、同ガイドラインは、貸出・検索履歴を活用するサービスについて、オプトインと利用停止時の情報破棄を求めています(出典:公益社団法人日本図書館協会「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」、2025年更新)。
外部連携のデータ項目と障害時の動作
外部連携では、連携先を一覧にして、送受信するデータや障害時の対応を決めておきます。想定される連携先には、次のものがあります。
- 自治体・利用者向け:自治体サイト、認証基盤、LINE、電子図書館。
- 書誌・資料:デジタルアーカイブ、国立国会図書館書誌データ、MARC。
- 館内機器:ICタグ、自動貸出機、返却ポスト。
連携の仕様では、項目、頻度、認証、個人情報の有無を定義します。再送や重複防止、停止時の手作業も、あわせて決めておきます。「API連携可能」と書かれていても、必要な項目を送れるとは限りません。
サンプルデータを使って接続を試し、回線断や相手サービス停止時の運用も契約前に確かめます。
図書館の責任で決めるセキュリティ要件
クラウドを外注しても、利用者情報を管理する責任は委託先に移りません。そのため、権限を管理者、職員、委託先で分け、認証やデータ保護の要件を図書館が決めます。
- アクセス管理:強固な認証、権限分離、操作ログを求めます。
- 保護と復旧:通信・保存データの暗号化、脆弱性診断、バックアップと復元テスト。
- 事故対応:インシデント報告の期限と連絡方法。
日本図書館協会は、図書館がデータの所有者であることや、暗号化、第三者提供の制限、日本法と国内裁判所への留意を示しています(出典:公益社団法人日本図書館協会、2025年更新)。
読書履歴をAIやレコメンドに使う場合は、同意、目的外利用の禁止、削除方法もRFPに含めます。
契約形態と役割分担の決め方
要件定義、開発、導入支援、保守、機器賃貸借、クラウド利用は、それぞれ性質が異なります。そのため、完成品として納めるもの、専門家が行う作業、継続して受けるサービスを分けて考えます。
契約方式と検収条件は、互いに合わせておく必要があります。また、納品の責任と、運用での協力の責任を明確にすることが大切です。
要件が固まった部分に向く請負型
画面や帳票、連携、移行仕様のように、完成の形と条件を定められる部分は、請負型で発注しやすい領域です。
納品物、検収期間、瑕疵対応、遅延時の扱い、仕様変更の手続き、再委託の可否を契約に記載します。
業務が整理される前に開発全体を固定すると、仕様変更による追加費用や納期遅延が起きやすくなります。そのため、要件定義を先行の契約に分ける段階方式も選択肢になります。
調査・伴走・運用支援と準委任型
発注者と受託者が協力して進める支援業務では、準委任型が合う場合があります。
- 対象業務:現状調査、要件整理、データクレンジング支援、PMO、職員研修、運用改善など、作業時間や役務の提供を評価する業務。
- 発注者側の対応:委託先に完成品だけを求めず、意思決定、資料提供、レビュー期限を計画に入れます。
作業時間だけでなく、会議の体制、課題管理、成果の確認方法も定めておくと、支援の効果を評価する材料がそろいます。
SaaS利用・保守・機器賃貸借の内訳と総額
利用契約、保守契約、機器借受では、対象となるサービスと責任が異なります。そのため、見積の内訳を分けて確かめます。
- SaaS:月額・年額の利用料。
- 保守:受付・対応時間、現地派遣。
- 機器賃貸借:端末、サーバー、IC機器。
札幌市が2025年に公開した調達では、図書館システム機器借受の落札金額が税込月額6,456,868円でした。これは41施設規模で、機器・ソフトウェアの賃貸借と保守を含む調達です。
開発費だけの相場ではありませんが、複数施設のTCOが大きくなり得る事例です(出典:札幌市「札幌市図書館システム機器借受の一般競争入札について」、2025年)。
図書館管理システムの費用相場と見積の内訳

図書館管理システムは定価を一律に公開していないことが多く、費用は館数や蔵書数、利用者数といった規模によって変わります。機器、移行、連携、保守の範囲でも差が出ます。
ここで示すのは、公開された調達実績と業務システムの構成から、記事の執筆にあたって整理した推定レンジです。同じ金額で特定の製品を導入できるという意味ではありません。RFPで予算の抜け漏れを確かめる目安として使えます。
規模別の推定レンジ
推定費用は館種や規模によって異なります。次の金額は、公開定価ではなく要件による目安です。
- 学校・単館:標準パッケージやクラウドは初期100万〜500万円、年額50万〜300万円程度。
- 小規模自治体の公共図書館:移行、OPAC、周辺機器、研修、保守込みで1,000万〜3,000万円程度。
- 複数館・中規模自治体:3,000万〜8,000万円程度のケースがあります。
- 大規模自治体・大学:機器、複数施設、電子資料、冗長化、長期保守込みで8,000万円〜数億円の可能性。
松茂町は、2026年の町立図書館システム等更新業務で、税込3,850万円を提案上限額に設定しました。履行期間は、契約締結日の翌日から2027年1月31日までです(出典:松茂町「松茂町立図書館システム等更新業務プロポーザルの実施について」、2026年5月)。
これは単館の例で、機能や機器、移行、ホームページ、導入支援などを含む調達上限です。ただし、標準パッケージの価格表とは性質が異なります。
初期費用と運用費の項目別の内訳
見積書は、費用項目ごとに分け、作業範囲と照らし合わせます。含まれる内容が分からない項目は、委託先に内訳を求めます。
- 設計・利用料:要件定義・設計、ライセンスまたはSaaS利用料。
- 機器・環境:サーバー、ネットワーク、端末、ICタグ、自動貸出機。
- 移行・連携:データ整備と移行、外部API連携、テスト。
- 運用準備:研修、保守、監視、バックアップ。
追加開発の費用は、要件や工数、テスト、将来の保守への影響を確かめて判断します。移行費が「一式」と書かれている場合は、抽出、変換、検証、リハーサル、本番切替、切戻しのどこまでが含まれるかを質問します。
5年TCOと契約終了時の費用
5年TCOには、初期費用と5年分の利用料・保守料を含めます。さらに、機器更新や通信費、追加開発、研修のほか、移行や障害対応、電子図書館などのオプションも加えます。
SaaSでは、利用者数や館数が増えたときの料金を確かめます。一方で、オンプレミスでは、数年後のサーバーやバックアップ装置の更新費も見込んでおく必要があります。
契約終了時のデータ抽出や形式変換、媒体提供、移行支援の料金も確かめておきます。終了後の費用と手順を先に決め、ベンダーロックインを避けます。
委託先選定と見積比較のポイント
委託先は、導入社数の多さだけでなく、同じ館種・規模での経験で比べます。加えて、移行実績、司書業務の理解、外部連携、地域の保守体制、データ返却の方法を確かめます。
デジタル庁の2026年7月更新ページには、図書館分野の導入事例が掲載されています。そこでは、LiCS-Re for SaaSが約350団体、iLisシリーズが約640団体と紹介されています。
導入団体数は候補を知る材料にとどまるため、自館への適合性とは分けて評価します(出典:デジタル庁「マイナンバーカードを活用したサービス/システムと導入事例」、2026年7月更新)。
同規模・同館種の実績の深掘り
実績を聞くときは、公共図書館での横断館数や蔵書数、利用者数、移行データ、切替後の課題まで尋ねます。図書館への導入経験の有無は、比べるための入口にすぎません。
可能であれば、同規模の導入先を訪問するか、オンラインで聞き取りをします。そこで、操作性や問い合わせ解決までの時間、障害時の連絡経路を確かめます。
大学向けに実績のある会社を公共図書館で採用する場合などは、得意領域のずれについても説明を求めます。
保守・障害対応・教育体制の確認
保守範囲では、窓口や受付時間、一次回答、復旧目標、現地派遣を確かめます。さらに、計画停止、セキュリティパッチ、更新、バックアップ復元、代替運用についても、対応の範囲を確認します。
24時間365日の受付と、実際の復旧時間は別のものです。そのため、重大障害や個人情報事故、連携先障害の訓練、報告書の提出も確かめます。
研修は、一度の操作説明で終わらせないことが大切です。管理者や窓口職員、異動者向けの教材と、稼働後の質問対応を見積に含めます。
同じ前提と5年総額での見積比較
総額を比べる前に、対象範囲をそろえておく必要があります。含まれない項目は別欄に分け、提案条件の違いを把握します。
- 費用範囲:移行・連携・機器・研修・保守のほか、ライセンス、税、交通費。
- 終了時の費用:契約終了時のデータ返却にかかる費用。
- 追加開発:標準との差、開発・テスト工数、将来保守費、納期への影響。
評価表では、機能適合や移行計画、セキュリティ、保守、操作性に配点します。費用と実績も、評価の項目に加えます。価格だけで結果が決まらないよう、配点の内訳を先に決めておきます。
発注で失敗しやすいポイントと対策
失敗の多くは、製品選びそのものより、発注者と委託先の認識差から生まれます。たとえば、現場合意の遅れ、移行の後回し、機能の増やしすぎ、契約外の作業への期待などが典型です。そのため、リスクは先に洗い出し、誰がいつ判断するかをプロジェクト計画に入れておきます。
データ移行を後回しにしない進め方
移行では、ファイルを渡すだけでは足りません。書誌の重複や所蔵場所コード、貸出状態、利用者の有効期限、予約順位を確かめ、文字化けや欠損も見ておきます。
移行後は、件数と内容を照合します。契約前にサンプルを抽出し、移行対象外の履歴や削除対象も決めておきます。
テスト移行、本番前のリハーサル、本番切替後の照合を計画に入れます。切替に失敗した場合に備えて、旧環境や手作業へ戻す条件も決めておきます。
AIや新機能の目的と検証方法
生成AI検索やレコメンド、AI蔵書点検は、利用者の使い勝手や職員の負担を改善する可能性があります。一方で、採用するときは課題と検証項目を確かめておく必要があります。
- 誤案内:訂正の方法。
- 検索結果:偏りや検索精度の確認。
- 著作権と履歴:著作権上の扱いと学習利用の範囲。
- 推薦と運用:説明しにくい推薦や利用率、職員の確認時間を評価します。
- ログ:保持と削除の方法。
KCCSは久喜市立図書館で、2025年5月から生成AI蔵書検索の実証実験を開始したと公表しています。同社は、対話検索やレコメンドを検証しています(出典:京セラコミュニケーションシステム「公共図書館システム ELCIELO」、確認日2026年8月)。
契約と設計によるベンダーロックインの抑制
契約終了時には、データの返却形式や項目定義、文字コードを決めておきます。画像や添付資料、利用者情報の削除証明、API仕様、移行支援の単価も、契約に含めます。
独自仕様を追加する場合は、標準機能との差分を台帳で管理します。あわせて、将来の更新で影響を受ける範囲も把握しておきます。
再委託先や外部サービスを変える場合は、事前の通知を求めます。また、設計書や運用手順、障害履歴を発注者側にも残し、担当者の経験だけに頼らないようにします。
よくある質問(FAQ)
発注の場では、費用や館種、移行、保守、個人情報、契約終了後の扱いについて質問が多く寄せられます。提案依頼や社内検討で確認される内容を、まとめて紹介します。
図書館管理システムはパッケージとスクラッチのどちらがよいですか?
資料管理、貸出・返却、予約、OPAC、蔵書点検が中心なら、実績のあるパッケージやクラウドが適しています。
独自の研究データ連携や複雑な認証など、標準機能で満たせない部分だけを追加開発します。それでも解決できない場合に、スクラッチを検討します。
費用に加えて、法令対応や担当者が替わったあとの保守も比べて決めます。
クラウド型の図書館管理システムは安全ですか?
クラウドだから安全、オンプレミスだから安全とは一概に言えません。自館の情報セキュリティポリシーに照らして判断します。
確認するのは、通信・保存データの暗号化や権限分離、ログ、バックアップです。さらに、脆弱性対応、復旧、委託先の守秘義務、データの所在、終了時の返却も見ておきます。
利用履歴は必要最小限とし、保存期間も最短にします。AIやレコメンドに使う場合は、同意と削除の手続きを設計して、図書館利用のプライバシーを守ります。
図書館管理システムの発注費用はいくらですか?
費用は要件や対象範囲によって異なります。次の金額は公開価格ではなく、機能や館数、移行、機器に加えて、連携・研修・保守を含めた目安です。
- 学校・単館:初期100万〜500万円、年額50万〜300万円程度。
- 小規模自治体:更改費用1,000万〜3,000万円程度。
- 松茂町の調達:2026年に税込3,850万円の提案上限額を設定。
- 札幌市の調達:2025年に税込月額6,456,868円の落札額を公表。
公開事例は対象範囲が異なるため、自館の5年TCOに置き換えて比べます。
古いシステムやExcelからデータを移行できますか?
多くの場合は移行できますが、すべての履歴や項目を移せるとは限りません。抽出形式や、書誌・所蔵・利用者・予約の項目、コード変換を確認します。
重複や欠損、個人情報の保持期間も確かめたうえで、テスト移行と本番前のリハーサルを行います。Excelから移す場合は、列の意味や更新者を整理し、文字コードや不要な個人情報も確かめてから委託先に渡します。
まとめ
図書館管理システムの発注では、まず館種と改善したい業務を明らかにします。そのうえで、標準パッケージやクラウドを中心に、必要な追加開発を選びます。
RFIで市場を把握し、RFPで同じ条件を各社に示します。次に、同じ業務シナリオでデモを行い、移行、連携、セキュリティ、保守、職員教育まで確かめます。
契約後の運用まで含めた委託先の決め方
検収条件や保守窓口、障害時の連絡先、データ返却、再委託、利用履歴の削除は、契約と運用手順の両方に記載します。
稼働後の効果を測る指標と定例会議を決めておけば、導入後の改善や次回の更改の判断にもつながります。
発注前に確認する項目
契約と運用の抜けを防ぐため、発注前に次の項目をそろえておきます。
- 5年TCO:利用料、保守、機器の費用を含め、連携や研修、追加開発、移行の費用も入れます。
- 履歴情報:収集目的、保持期間、匿名化、オプトイン、削除、委託先のアクセス権を定めます。
- 契約終了と継続運用:データ返却の形式と費用、障害復旧、担当交代後も使える文書と教育。
これらを確かめておくと、価格だけでは見えない発注リスクを抑えられます。
図書館管理システムは、利用者サービスと司書業務を支える基盤です。自館に必要な機能、継続できる運用、将来のデータと契約の自由度を踏まえて、委託先を選びます。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
