畜産業向け飼養管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

畜産業向け飼養管理システムの発注・外注は、畜種と現場課題を起点に、SaaS、センサー特化型、個別開発、ハイブリッド型を選び、RFPと段階導入でリスクを抑える進め方が適しています。

「紙台帳やExcelから移行したい」「発情・分娩・疾病の通知を使いたい」「複数の開発会社から見積もりを取りたい」と考えていても、何を要件に書き、どの契約で委託し、どの金額を比較すればよいかは判断しにくいものです。本記事では、発注形態の選び方、RFP・要件整理、請負と準委任の使い分け、2026年時点の費用目安、委託先選定、見積比較、PoCの進め方までを順番に解説します。

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畜産業向け飼養管理システムを発注するときの全体像

畜産業向け飼養管理システムの発注全体像

発注の成否は、開発会社の知名度や見積金額だけで決まりません。自社の課題に合う導入形態を選び、現場で使う人が続けられる仕様に落とし込み、導入後の運用責任まで契約前に確認できるかが重要です。

発注形態は4つから課題に合わせて選びます

選択肢は、既存のクラウドサービスを導入するSaaS・パッケージ型、発情・分娩・健康など特定課題に強いセンサー・AIサービス型、自社業務に合わせて作る個別開発型、複数のサービスをAPIやCSVでつなぐハイブリッド型の4つです。紙やExcelを置き換えることが第一目的であればSaaSが候補になり、既存機器や独自の飼養ルールを深く連携したい場合は個別開発が候補になります。

最初からすべてを一つのシステムへ集約する必要はありません。例えば個体管理はSaaS、発情検知はセンサー、経営分析と会計連携は個別開発という組み合わせも可能です。ただし、個体識別番号、群、畜舎、飼料、出荷ロットなどの共通マスターを揃えないと、外注先が増えるほどデータが分断されます。そのため、発注時には機能だけでなくデータ連携の責任範囲も決めます。

畜種・頭数・現場環境を先に分けます

酪農では乳量・乳成分・搾乳設備・繁殖、肉牛繁殖では授精・妊娠・分娩予定、肉牛肥育では給餌・日増体量・枝肉成績が中心になります。養豚や養鶏では、個体より群単位の給餌、飼育環境、死亡率、出荷ロットの管理が重視されます。畜種が違えば、同じ画面や入力項目をそのまま使えないため、RFPに対象畜種と管理単位を明記します。

頭数や拠点数が増えると、登録件数だけでなく、権限管理、通知の優先順位、検索性能、バックアップ、通信機器の台数も変わります。山間部や放牧地など電波が不安定な場所では、スマートフォンやゲートウェイにデータを一時保存して後で同期するオフライン対応が必要です。発注前に畜舎ごとの電波、電源、防水・防じん、設置場所を確認すると、後からの追加工事を抑えやすくなります。

発注前にRFPと要件を整理する方法

畜産業向け飼養管理システムのRFPと要件整理

RFPは、開発会社へ「この条件で提案と見積もりをください」と伝える提案依頼書です。詳しい画面仕様を最初から完成させる文書ではなく、背景、対象範囲、業務上の課題、必要な機能、制約、納期、評価方法を同じ条件で伝えるための文書です。候補会社が同じ前提で提案できるため、金額だけでなく提案の質も比較しやすくなります。

現状業務とKPIを一緒に書き出します

最初に整理するのは「何を管理したいか」だけではなく、「今どこで時間や損失が発生しているか」です。紙台帳、Excel、個人のスマートフォン、既存の機器やサービスを業務フローに沿って並べ、入力者、入力のタイミング、確認者、次の作業を確認します。例えば発情見逃し、分娩時の夜間見回り、疾病発見の遅れ、給餌量のばらつき、過去データの検索時間などを具体的な課題にします。

効果を確認する指標もRFPに入れます。見回り回数、現場入力にかかる時間、アラートへの対応率、発情から授精までの時間、受胎率、疾病発見までの日数、死亡・事故、飼料費、出荷成績などです。検知率だけをKPIにすると、通知が多すぎて現場が見なくなる問題を見落とします。導入前の基準値を1か月程度記録し、導入後に同じ条件で比べられるようにします。

機能要件と非機能要件を分けて記載します

機能要件には、個体・群管理、給餌、飼料在庫、繁殖、健康・投薬、分娩、搾乳、出荷、帳票、通知、権限、データ出力を記載します。畜種ごとに必須・できれば必要・将来検討を分け、初期リリースの範囲を狭めると、過剰な開発を防げます。通知については、誰に、どの条件で、どの手段で、何分以内に届くかまで書くと、提案会社の解釈差が小さくなります。

非機能要件には、スマートフォン・タブレット対応、オフライン入力、表示速度、稼働時間、バックアップ、障害時の復旧目標、アクセス権限、多要素認証、監査ログ、暗号化、データ返却、API、CSV、問い合わせ対応時間を含めます。IoT機器は初期パスワードの変更、ファームウェア更新、通信の暗号化、端末紛失時の無効化、機器故障時の手動運転も要件にします。

データ移行と畜舎での現地検証を要件にします

紙やExcelから移行する場合は、個体識別番号、出生、導入・移動、授精、分娩、治療、投薬、出荷などの項目を先に棚卸しします。表記揺れ、重複、欠損、廃用済み個体、日付の形式違いを直さないまま取り込むと、アラートや分析の精度が下がります。全期間を移行するのか、現役個体と直近数年に絞るのか、データの正しさを誰が確認するのかもRFPに記載します。

センサーやカメラを使う場合は、デモ室ではなく、実際の畜舎で電波、砂ぼこり、雨水、温度変化、電池、装着状態、ゲートウェイの位置を確かめます。農林水産省の「スマート農業技術カタログ(畜産)」は導入候補を探す資料になりますが、掲載技術の効果を同省が確認・認定したものではないと明記されています(出典:農林水産省「スマート農業技術カタログ(畜産)」、令和6年7月更新)。したがって、最終判断は自社環境でのPoCに基づいて行います。

飼養管理システムの発注・外注はどのように進めますか?

畜産業向け飼養管理システムの発注手順

結論として、企画と現状把握、RFP作成、提案・見積比較、PoC、契約、本開発、現場展開の順で段階を分けると、発注側と受託側の認識を合わせやすくなります。いきなり全拠点の本開発を発注するより、現地検証を契約上の成果と判断材料に分ける方が、畜舎特有の不確実性を扱いやすくなります。

1. 企画と現状ヒアリングで対象範囲を決めます

経営者だけで決めず、牧場長、現場作業者、獣医師や授精師、情報システム担当、経理・出荷担当など、データを入力・確認する人をヒアリングに参加させます。朝夕の作業、給餌、見回り、治療、分娩対応、出荷準備などを観察し、入力できる時間と端末の持ち方を確認します。現場で片手入力が必要なのか、手袋をしたまま使うのか、写真を残すのかによって画面設計は変わります。

この段階で、初期導入する畜種、拠点、頭数、ユーザー、対象工程、連携機器、KPI、予算上限、希望時期を決めます。例えば「全社の飼養管理をデジタル化する」では広すぎるため、「A牧場の肉牛繁殖で、分娩予定と授精履歴をスマートフォン入力し、夜間対応を減らす」のように絞ると、提案と見積もりが具体化します。

2. RFPを配布して提案条件をそろえます

RFPには、背景と目的、対象畜種・拠点・頭数、現行業務、必須機能、非機能要件、既存データ、連携対象、現地調査の条件、希望スケジュール、予算の考え方、納品物、保守範囲、提案書の提出形式、質問期限、評価基準を記載します。開発会社には、標準機能で対応する部分、追加開発する部分、対応できない部分を分けて回答してもらいます。

候補は、畜産向けのSaaS事業者、センサー・カメラの専門会社、業務システムに強いSI会社、IoTとクラウドを組み合わせられる開発会社から、目的に応じて3社前後に絞ると比較しやすくなります。受託開発会社だけでなく製品ベンダーも候補にする場合は、個別カスタマイズ、API、データ返却、導入支援の範囲を同じ質問票で確認します。

3. PoCで現場適合性と効果を確認します

発情・分娩・疾病兆候の検知、カメラ画像、給餌、オフライン入力など不確実性が高い機能は、1棟、1群、1ラインに対象を絞ったPoCで試します。期間はセンサーや対象業務によって変わりますが、リサーチノートで整理した一般的な目安では、センサーを含む検証は0~3か月程度です。機器購入・設置・教育・データ整備を含むかどうかで費用と期間は変わるため、契約前に範囲を分けます。

PoCの合否は、検知率だけでなく、入力時間、誤通知数、通知を受けてから確認する時間、通信停止時の復旧、機器の装着負担、作業者の利用率、見回り回数、受胎率や疾病発見までの時間などで判定します。合格条件、データの扱い、機器の返却・買い取り、本開発へ移行する場合の費用、移行しない場合の終了条件を契約書に書いておくと、PoCが単なるデモで終わりません。

4. 本開発と段階展開を契約します

PoCで確認できた範囲をもとに、MVPとして個体登録、日々の活動記録、繁殖予定、健康・投薬履歴、最低限の通知、権限管理を先に本番化します。給餌分析、出荷・販売、複雑な帳票、複数拠点の統合、カメラAIなどは、利用状況とKPIを見ながら第二段階へ回す方法が現実的です。要件を小さく分けると、現場からのフィードバックを次の開発へ反映しやすくなります。

期間の目安は、既存SaaSの初期設定・データ取込・教育で2週間~2か月、MVPや個別開発で6~12か月、複数拠点展開やERP統合で13~36か月程度です。これは案件の要件を単純化した目安であり、畜種、機器、データ品質、現場試験の回数で変動します。開発会社には、全体期間だけでなく、要件定義、PoC、設計、開発、受入テスト、教育、本番移行の各期間を示してもらいます。

契約形態は請負と準委任をどう使い分けますか?

畜産業向け飼養管理システムの契約形態

契約形態は、作るものと作業範囲がどこまで確定しているかで選びます。請負は合意した成果物の完成を受託側が担う契約、準委任は調査・企画・設計・開発支援などの業務を実施し、その作業に対して報酬を支払う契約として整理すると分かりやすいです。実際の責任や報酬条件は契約書で変わるため、以下は発注判断の一般的な考え方として確認します。

要件定義・PoC・企画支援は準委任が向いています

畜舎の現地調査、業務整理、RFP作成支援、センサー選定、技術検証、プロトタイプ、データクレンジングなどは、開始時点で作業量や到達点が変わりやすいため、準委任で期間と体制を定める方法があります。発注側と開発側が一緒に現場を見て、仮説を検証しながら要件を固める場合にも適しています。

準委任では完成したシステムが納品されること自体を当然の前提にできない場合があるため、成果物、作業報告、会議体、レビュー、知見の共有、途中解約、再委託、時間単価または月額、上限工数を契約で確認します。PoCであれば、検証レポート、ログ、評価結果、課題一覧、次段階の提案を成果物として明記すると、支払対象が曖昧になりにくくなります。

仕様が確定した開発は請負を検討します

要件、画面、データ項目、外部連携、テスト条件、受入基準、納期が合意できた開発工程は、請負契約で成果物と検収条件を定める方法があります。ただし、センサーの精度や現場運用が未検証なのに、全機能を固定価格の請負で発注すると、仕様変更のたびに追加費用や納期延長が発生しやすくなります。前段の準委任やPoCで不確実性を減らしてから、請負範囲を切り出すと安全です。

IPAは2025年4月更新の「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」で、受託開発、保守運用、パッケージ・SaaS活用、セキュリティ仕様などの資料を公開しています。請負・準委任の選択だけでなく、プロジェクトマネジメント義務、ユーザー企業の協力義務、複数契約の関係、再構築への対応なども確認できます(出典:IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」、2025年4月更新)。実契約は自社の法務担当や専門家と確認します。

SaaS・機器・保守は利用条件を分けて確認します

SaaSは利用規約やサービス契約、センサーは機器の売買・レンタル・保守契約、個別開発は開発契約というように、複数の契約が並行することがあります。障害が起きたときに、クラウド、通信回線、ゲートウェイ、センサー、アプリのどこまで誰が対応するかを、契約書や責任分界表に落とします。月額に含まれるユーザー数、データ容量、通知、サポート、機器交換、訪問支援も確認が必要です。

特に重要なのは、解約時のデータ返却形式、返却期限、バックアップの削除時期、API利用、第三者サービスの利用、知的財産権、再委託、損害賠償の範囲、契約不適合への対応、検収・支払条件です。動物の個体情報だけでなく、従業員情報、獣医師の指示、飼養ノウハウ、経営データも扱う可能性があるため、権限とデータの所有・利用範囲を曖昧にしません。

畜産業向け飼養管理システムの費用相場はいくらですか?

畜産業向け飼養管理システムの費用相場

費用は、既存SaaSの月額利用、機器を含むPoC、専用システムの個別開発、複数拠点のデータ統合で大きく分かれます。畜産全体を対象にした統一価格表は少ないため、公開価格のあるサービスと、類似するIoT連携業務システムから引き当てた推定レンジを分けて判断します。ここで示す開発費は固定価格の断定ではなく、要件・機器・拠点によって変わる発注前の目安です。

公開SaaSは月額4,000円台から数万円が比較基準です

公開価格の例では、Farmnote Cloudの個体管理プランは1~49頭で月額4,000円、50~99頭で月額8,000円です。牛群管理プランは1~49頭で月額6,500円、100~149頭で月額19,500円、250~299頭で月額39,000円、300頭以上は問い合わせとなっています。公式料金ページには税込価格と30日間の無料トライアルも記載されています(出典:株式会社ファームノート「料金」、2026年8月確認)。

これは牛の個体・牛群管理をクラウドで使う際の比較基準であり、すべての畜産システムに当てはまる金額ではありません。センサー、カメラ、ゲートウェイ、通信、設置、既存データの大量移行、個別API、訪問教育が別料金になる場合があります。発注時は月額だけでなく、初期設定費、追加ユーザー、機器費、通信費、保守費を含む3年程度の総額で比較します。

センサー連携のPoCは50万~300万円程度が目安です

1棟、1群、1工程に対象を絞り、センサー、アプリ、通知、簡易ダッシュボードを試すPoCは、50万~300万円程度が一つの目安です。このレンジは畜産向けの統一された公開料金ではなく、リサーチノートに整理された一次Q&A由来の推定と、類似するIoT業務システムの検証規模をもとにしたものです。機器の購入・レンタル、設置工事、通信、データ整備、教育、効果測定のどこまで含むかを見積書で確認します。

PoCを安くするために対象を狭めすぎると、異なる畜舎や季節の条件で使えないことがあります。一方で全拠点を対象にすると、本番化前に大きな費用が発生します。代表的な畜舎と作業者を選び、通信状態や作業ピークも含む検証条件を決めると、費用と学習効果のバランスを取りやすくなります。

個別開発は300万~2,000万円程度が推定レンジです

個体・群管理、給餌、繁殖、健康・投薬、出荷、権限管理を備えた専用システムは、初期300万~2,000万円程度が発注前の目安です。これは畜産専用の公定相場ではなく、一般的な業務システムやIoT連携案件の相場を畜産向けの要件に引き当てた推定です。畜種が一つで対象拠点が少なく、既存の機器や標準クラウドを活用できる場合は下限に近づきやすくなります。

複数畜種・複数拠点を同じ基盤で扱う、既存ERP・会計・販売・牛群検定・気象・電子指示書と連携する、センサーやカメラを多数接続する、DWHや経営ダッシュボードまで作る場合は上限を超える可能性があります。データ基盤・統合の推定レンジは200万~1,500万円程度ですが、データクレンジング、API、マスター統一の有無で大きく変わります。見積書では、ソフトウェア、機器、連携、移行、教育、保守を分離してもらいます。

ランニングコストは通信・機器・保守まで含めます

運用費には、SaaS利用料、センサーやカメラの保守、電池・タグ・ゲートウェイの交換、通信回線、クラウドのデータ容量、バックアップ、監視、問い合わせ、訪問支援、追加機能、障害対応が含まれます。機器は導入時に買って終わりではなく、故障や汚れ、電池切れ、通信障害が発生したときの交換時間と費用も必要です。

見積比較では、初期費用、月額費用、従量課金、1頭あたりの費用、1拠点あたりの費用を同じ期間で並べます。例えば月額が安くても、頭数が増えたときの段階料金、ユーザー追加、データ出力、API、訪問教育が別料金なら、3年総額は変わります。契約期間、値上げ条件、解約時のデータ返却費用も確認しておくと安心です。

委託先の選び方と見積比較のポイント

畜産業向け飼養管理システムの委託先選定と見積比較

委託先は、会社名や価格だけでなく、畜産現場への理解、機器とクラウドの接続力、データ移行、導入後の支援、契約の透明性を総合的に確認します。製品ベンダーは現場機器と標準機能に強く、SI会社は業務や既存システムとの統合に強いなど、得意領域が異なります。RFPの評価項目を先に決めてから提案を比較すると、安さだけに引っ張られにくくなります。

畜種・現場・連携の実績を確認します

実績は「畜産向けシステムを作ったことがある」という一文だけで判断しません。酪農、肉牛繁殖、肉牛肥育、養豚、養鶏のどの畜種か、個体と群のどちらを管理したか、センサー・カメラ・体重計・搾乳機など何を接続したか、オフラインや現地保守に対応したかを確認します。可能であれば、提案会社に導入後の担当者へ確認できる事例や、匿名化した画面・運用資料を示してもらいます。

既存データの取り込みと外部連携も、実績の重要な評価軸です。家畜改良センター、牛群検定、乳検、飼料在庫、販売・会計、気象、電子指示書など、必要なデータをどの形式で受け渡すかを確認します。連携先のAPIがない場合にCSVや中継処理で対応できるか、エラー時に誰が再送するかまで説明できる会社は、発注後のトラブルを抑えやすくなります。

提案は標準機能・追加開発・対象外を分けて読みます

提案書では、要望に対して「標準機能で対応」「設定変更で対応」「追加開発で対応」「外部サービスを利用」「今回は対象外」を分けてもらいます。すべてを「対応可能」と書く提案は、後で追加費用になる可能性があります。画面のモックアップ、現場の操作手順、権限、通知、データ移行、障害時の対応を具体的に示しているかを確認します。

提案内容が高機能でも、現場で毎日入力できなければ投資効果は出ません。提案会社に、入力回数を減らす方法、片手操作、写真や音声の利用、オフライン時の挙動、教育の回数、問い合わせ窓口、導入後の定着確認を説明してもらいます。経営者向けダッシュボードだけでなく、作業者が最初に開く画面を評価することが重要です。

見積書は同じ条件と3年総額で比較します

見積書は、要件定義、設計、開発、機器、通信、設置、テスト、データ移行、教育、保守、旅費、予備費を分け、数量、単価、工数、前提条件、除外事項を確認します。「一式」とだけ書かれた項目が多い場合は、何人日を想定しているのか、どの成果物が含まれるのか、追加変更の単価はいくらかを質問します。価格差が大きいときは、機能の不足ではなく、含まれる作業範囲の違いである場合があります。

比較表には、初期費用、月額・年額、機器と通信のランニング費、3年総額、保守の時間、障害時の復旧目標、データ返却条件、追加開発単価を並べます。費用が安くても、データ移行や現地教育が含まれず、発注側の作業が膨らむことがあります。見積金額だけでなく、社内担当者の工数と、導入後に必要な運用負担も含めて意思決定します。

セキュリティと導入後支援を評価に入れます

個体データだけでなく、従業員情報、獣医師の指示、経営ノウハウを扱う場合は、アカウント管理、最小権限、多要素認証、通信・保存時の暗号化、バックアップ、監査ログ、脆弱性対応、端末紛失時の停止、再委託先の管理を確認します。2026年2月に更新されたIPAの「IT製品の調達におけるセキュリティ要件リスト」第2.1版と活用ガイドブックは、IT製品を安全に調達する担当者向けの参照資料です(出典:IPA「IT製品の調達におけるセキュリティ要件リスト」、2026年2月更新)。

また、契約時点で研修、操作マニュアル、問い合わせ窓口、障害時の連絡網、機器交換、定期レビュー、利用率やKPIの確認を決めます。導入後に現場が使わなくなった場合の追加研修や画面改善が保守に含まれるのか、含まれない場合の単価はいくらかを確認します。2025年4月から畜産分野の電子指示書システムが運用されているため、投薬履歴や獣医師の指示を扱う案件では、既存業務との関係と連携可能性も確認します(出典:農林水産省「電子指示書システムの利用申請をお考えの皆様へ」、2026年3月更新)。

よくある質問(FAQ)

畜産業向け飼養管理システムの発注に関するよくある質問

発注前によくある疑問を、費用、契約、現場導入の観点から回答します。自社の畜種、頭数、拠点、既存データ、現場の通信環境に当てはめて確認してください。

畜産業向け飼養管理システムの発注費用はどのくらいですか?

既存SaaSの公開価格は月額4,000円台から数万円、センサー連携のPoCは50万~300万円程度、個別開発は300万~2,000万円程度が一つの目安です。ただし、PoCと個別開発の金額は公開された統一料金ではなく、類似するIoT業務システムの要件から推定したレンジです。機器、通信、設置、移行、教育、保守を含むかで変わるため、必ず自社条件で見積もりを取り、3年総額で比較します。

SaaSと個別開発はどちらを発注すべきですか?

紙やExcelから早く移行したい、標準業務で足りる、まず小さく始めたい場合はSaaSが向いています。複数畜種・複数拠点、独自の飼養ルール、既存ERPや機器との深い連携、独自の経営分析が必要な場合は個別開発を検討します。判断できない場合は、標準SaaSを使いながら不足部分だけを連携開発するハイブリッド型から始める方法もあります。

RFPには何を書けばよいですか?

背景と目的、対象畜種・頭数・拠点、現行業務、課題とKPI、必須・任意機能、非機能要件、既存データ、機器・外部連携、通信環境、希望納期、予算の考え方、保守範囲、データ返却、提案期限、評価方法を記載します。画面の細部を決め切れない場合でも、現場で困っている作業と、提案会社に確認したい前提を明確にすれば、提案の比較材料になります。

紙台帳やExcelのデータは移行できますか?

移行できますが、表記揺れ、重複、欠損、日付形式、廃用済み個体などを整理してから取り込む必要があります。全履歴を移行するか、現役個体と直近数年に絞るかで費用が変わるため、対象項目・件数・確認担当者を発注時に決めます。移行後に検索、予定、通知、帳票が正しく動くかを受入テストの項目に含めます。

畜舎の電波が弱くても利用できますか?

オフライン入力と後同期に対応したアプリや、畜舎内のゲートウェイに一時保存する構成で利用できる場合があります。ただし、通知が即時に届かない、同じ個体を複数端末で更新すると競合する、機器の電源が落ちるとデータが欠けるといった制約があります。発注前に畜舎ごとの電波調査を行い、通信停止時の保存期間、同期エラーの表示、復旧手順、手書き運用への切り替えを確認します。

まとめ

畜産業向け飼養管理システムの発注外注まとめ

畜産業向け飼養管理システムを発注するときは、機能の多さや初期費用の安さだけで委託先を決めないことが大切です。畜種、頭数、拠点、現場課題、通信環境、既存データを整理し、SaaS、センサー特化型、個別開発、ハイブリッド型のどれが合うかを判断します。

発注時はRFP・契約・総額をそろえて比較します

RFPには、現状業務とKPI、必須機能、非機能要件、データ移行、外部連携、セキュリティ、保守、データ返却を記載します。要件定義やPoCは準委任、本番の仕様確定部分は請負といった段階的な契約を検討し、成果物、検収、責任分界、変更方法を明確にします。見積もりはソフトウェア、機器、通信、設置、移行、教育、保守に分け、3年程度の総額で比べます。

最初は1棟・1群・1工程のPoCから始めます

発情、分娩、疾病、給餌、入力負担など、最も損失が大きい課題を一つ選び、代表的な畜舎で現地検証します。検知率だけでなく、現場の入力時間、誤通知、対応率、見回り回数、受胎率、疾病発見、飼料費などを測定し、本番化の条件を決めます。現場で使われる小さな仕組みから始めて、効果とデータ品質を確認しながら拠点や機能を広げることが、外注の失敗を抑える現実的な進め方です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。