MES開発の発注/外注/依頼/委託方法について

MES開発の外注は、要件を整理して発注し、ベンダーを選んで契約したあと、開発中も現場が進捗と品質を確認して進めます。

準備が足りないと、要件のすり合わせが難しくなり、現場に合わない工程管理につながることがあります。製造業は工程や設備仕様が企業ごとに異なり、IoTやPLCとの連携も必要なため、段階ごとの確認が欠かせません。

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MES開発を外注する前に押さえる前提

発注前に整理する製造工程フロー、課題と改善目標、既存設備の仕様、システム連携を示す図解
4つの情報をそろえると、発注内容を具体化しやすくなります。

外注で失敗する典型的なパターン

MES開発の外注で失敗するケースには、共通のパターンがあります。最も多いのは、製造現場の業務フローや設備仕様を十分に整理しないまま発注することです。製造工程はラインごと・品番ごとに細かいルールがあり、それをベンダーが正確に把握しないまま開発を進めると、実際の生産ラインで使えないシステムができあがります。

次に多いのは、IoT・PLC連携の技術要件を発注仕様に含めないパターンです。既存設備との通信プロトコル(OPC-UA、Modbus、MQTTなど)を確認せずに発注すると、連携開発フェーズで大幅な追加費用と工期延長が発生します。製造業務と制御技術の両方を理解するベンダーを選ぶことが、成功の鍵です。

発注前に社内で整理すべき事項

MES開発を外注する前に、社内で整理しておくべきことがあります。まず、現状の製造工程フロー(As-Is)を、受注から出荷までの一連の流れとして工程図と作業標準書にまとめます。工程は、受注から生産指示、材料投入、加工、検査を経て出荷までの順に続くため、この順番どおりに書き出します。

次に、課題と改善目標を明らかにします。現状のどこに問題があるか(手書きの実績、Excel管理のタイムラグ、トレーサビリティの欠如など)を洗い出し、MESでどう改善するかを具体的な目標値で定めます。

さらに、既存設備・システムの仕様も事前に確かめておく必要があります。具体的には、生産設備のメーカー・型番・通信インターフェース仕様と、ERPや品質管理システムとのAPI連携の可否です。

ポイント

社内で工程の流れと設備・システム連携の仕様を説明できない段階では、連携開発での追加費用や工期延長を防ぐために、発注を急がない方が安全です。

発注準備(工程フロー整理・設備仕様確認・RFP作成)

受注・生産計画から完成品検査・出荷判定までの製造工程を順に示す図解
工程を順に並べると、記録や確認が必要な場所を見渡せます。

製造工程フローの整理と文書化

生産ラインの工程ごとに、工程名や担当者、使用設備を整理し、作業時間と品質チェックポイントも書き加えます。次の流れに沿って、その内容を工程フロー図(As-Is)にまとめます。

  1. 受注・生産計画(ERPからの生産指示取込)
  2. 材料・部品の投入管理(ロット番号・数量確認)
  3. 各加工工程の実績収集(設備稼働状況・加工パラメータ)
  4. 中間検査・品質記録
  5. 完成品検査・出荷判定
  6. トレーサビリティ情報の記録・保管
  7. 実績データのERP連携

各工程で、誰が何を、どのシステムやツールで、何分かけて記録しているかを確かめると、MESで自動化や効率化を進めるべき領域が見えてきます。

設備・外部システム連携の要件定義

MES開発では、設備との連携要件の定義が特に重要です。生産設備との連携では、各設備のメーカーと型番、対応する通信プロトコル(OPC-UA、Modbus TCP、MQTT、RS-232Cなど)を整理します。さらに、収集するデータ項目(稼働状態、生産数、アラーム情報、品質測定値など)と、データ収集頻度も決めておきます。

また、センサーやPLCからデータを直接収集する場合は、エッジコンピューティングの構成も検討が必要です。ERPとの連携では、生産指示データの取込タイミングとフォーマット、実績データの連携仕様(リアルタイムかバッチか)を確認します。

品質管理システムや倉庫管理システムとの連携がある場合は、それぞれのAPIインターフェース仕様も事前に入手しておきます。こうしておくと、RFPの精度が高まります。

RFP(提案依頼書)の作成ポイント

MES開発のRFPには、まずプロジェクトの背景・目的と目標値を書きます。目標値の例は、実績入力工数50%削減やトレーサビリティ100%確保です。さらに、製造工程の概要と対象ライン・設備一覧も盛り込みます。

必須機能要件では、生産実績収集や品質管理を求めるほか、設備稼働監視やトレーサビリティ等も必要です。また、設備・外部システム連携仕様と、非機能要件(可用性・レスポンスタイム・セキュリティ)も盛り込みます。開発期間と予算感も書きます。

評価基準には、製造業実績や技術力、保守体制、費用を入れます。特に「設備との連携仕様書」を別紙として添付することで、ベンダーからの提案精度が大幅に向上します。RFPの配布から提案の受領までに2〜3週間、提案内容のヒアリングと評価に1〜2週間を見込んでスケジュールを組むのが一般的です。

ポイント

RFPの内容が現場の実態に合っているかは、工程フロー図と設備・外部システムの連携仕様がそろっているかで判断できます。

ベンダー選定と契約(相見積もり・評価・契約)

相見積もりの取り方と評価基準

MES開発では3〜5社への相見積もりが標準的です。評価軸は6点で、製造業やMES開発の実績、技術力(設備連携・IoT対応)、提案内容の具体性を見ます。残りは、費用の妥当性、保守・運用体制、コミュニケーション品質で、これらを総合して評価します。

製造業への理解度は、ヒアリングの段階で測れます。たとえば、「御社の製造業での具体的な開発事例を教えてください」「OPC-UAやModbusの実装経験はありますか」「工場ネットワーク(OTネットワーク)のセキュリティ対応実績はありますか」と聞いてみます。その回答から、実務対応能力を見極められます。

費用は総額だけで比べず、各フェーズの内訳を見ることが大切です。対象は、要件定義・設計・開発・テスト・設備連携・保守の各フェーズです。

ベンダーの製造業理解力を見極める方法

MES開発ベンダーを選ぶ際に最も見るべきなのは、製造現場への深い理解力です。技術力が高くても、製造業務の実態を知らないベンダーは、現場の複雑なルールをシステムに落とし込む段階で何度も手戻りが発生します。

提案書に製造工程への具体的な理解が示されているか、同業種・同規模の製造業でのMES開発実績があるかを確認します。加えて、要件定義で工場現場へのヒアリングを重視しているか、設備ベンダーや制御システムベンダーとの協業実績があるか、試運転や定着支援の対応方針が明確かも見ます。可能であれば、過去の導入先企業への参照確認(リファレンスチェック)を行い、現場に定着した実績を把握することも有効です。

契約形態(請負・準委任)の選び方

MES開発の契約形態は、プロジェクトの特性に応じて「請負契約」と「準委任契約(SES・ラボ型)」を使い分けることが重要です。要件が明確で開発スコープが固まっている場合は、成果物の完成責任がはっきりした請負契約が適しています。

一方、製造工程の分析や要件定義のフェーズ、アジャイル的に機能を広げていく段階では、仕様変更に柔軟に対応できる準委任契約が向いています。実際のMES開発では、要件定義を準委任契約で進め、開発を請負契約に切り替えるハイブリッド形式が多く採用されています。また、設備連携の実証実験(PoC)フェーズを準委任契約で先行実施し、接続可否を確認してから本開発を発注する進め方も、リスク低減に有効です。

ポイント

ベンダーに迷ったときは、製造現場への理解力を最も重く見るのが目安です。契約は、要件が固まっているかどうかで請負と準委任を分けて考えます。

開発中の進捗管理とリリース・定着支援

プロジェクトオーナー、プロジェクトマネージャー、業務担当者、設備担当者の4役割を並べた図解
業務と設備の担当者を加えることで、現場の視点が体制に入ります。

プロジェクト管理体制の構築

MES開発プロジェクトでは、発注者側(製造業)とベンダー側の双方で体制を組むことが重要です。発注者側には、プロジェクトオーナー(工場長や製造部長など)とプロジェクトマネージャー(情報システム部門)を置きます。

このほか、業務担当者と設備担当者(生産技術・保全部門)を加えた4役割が理想的です。特に業務担当者は、各工程の現場キーユーザーとして、要件定義や受入テストに深く関わってもらう必要があります。

週次の進捗会議に加えて、設備連携テストや現場確認のフェーズでは工場への立ち合い確認を設けます。実際の生産環境でシステムの動作を早期に検証することが、リスク軽減につながります。また、課題管理表を共有ツール(Redmine、Backlogなど)で一元的に管理し、未解決の課題を放置しない体制を作ります。

テスト・品質管理のポイント

MES開発のテスト工程で特に押さえたいのは、通常のWebシステムとは異なる「設備連携テスト」と「現場オペレーションテスト」です。まず、設備連携テストでは、実際の生産設備との通信テスト(データ収集の正確性・タイムラグ・通信断時の挙動)を実施します。

可能であれば本番設備での実機テストを行い、シミュレーターだけでの確認に頼らないようにします。次に、現場オペレーションテストでは、実際の現場作業員がシステムを操作するシナリオテストを実施します。

作業員がハンディターミナルやタッチパネルで直感的に操作できるかを確認し、UI/UXの改善点を洗い出します。さらに、本番移行前には、旧システムや手作業と並行稼働(パラレル運用)の期間を設け、データ整合性と業務継続性を確認します。これにより、移行リスクを大幅に低減できます。

リリース後の定着支援と改善サイクル

MESのリリース後には、現場への定着支援が成否を大きく左右します。リリース直後の1〜3ヶ月は、ベンダーの担当者が工場に定期的に常駐または訪問し、操作方法の個別指導やトラブル対応、軽微な改善対応を迅速に行う体制を確保します。

現場作業員向けの操作マニュアルは、画面キャプチャと実際の作業手順を対応させた「作業別手順書」形式で作成することで、定着を促進します。次に、リリース後3〜6ヶ月の運用データを分析します。生産実績データの品質やシステム稼働率、ユーザーからの改善要望を集めて、次のバージョンアップ計画を立てる「継続改善サイクル」を仕組み化することが、MES投資対効果の最大化につながります。

ポイント

体制や進め方に迷ったときは、現場の業務担当者を要件定義や受入テストに関わらせられているかが目安です。リリース直後の1〜3ヶ月に、支援の体制を確保できるかも見ます。

riplaへのご相談

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。