MES(Manufacturing Execution System・製造実行システム)の開発は、工場の製造工程をリアルタイムで管理・制御するシステム構築プロジェクトとして、製造業のDX推進において最も重要な取り組みの一つです。IoT/PLCとの連携、トレーサビリティ管理、品質管理、作業指示の自動化など、MESに求められる機能は多岐にわたり、製造現場の業務プロセスと深く連動します。適切な開発プロセスを踏まなければ、現場に合わないシステムが生まれ、多大なコストと時間を無駄にするリスクがあります。
本記事では、MES開発の進め方・やり方・流れや手順について、現場調査・要件定義から基本設計・詳細設計・開発・テスト・試運転・本番稼働まで、実務に役立つ情報を体系的に解説します。これからMES開発を検討している製造業の担当者・工場長・情報システム部門の方に向けて、失敗しない開発の進め方を詳しくご紹介します。
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MES開発の全体像

MES(製造実行システム)とは何か・なぜ必要か
MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)とは、工場の製造工程をリアルタイムで管理・制御するシステムです。ERPが「計画」の管理を担うのに対し、MESは「実行」の管理を担い、製造指示・実績収集・品質管理・トレーサビリティ管理・設備稼働監視などを現場レベルでリアルタイムに処理します。製造業においてMESが必要とされる背景には、多品種少量生産の対応・トレーサビリティ強化・品質管理の厳格化・製造コスト削減・IoT化による設備データ活用といったニーズの高まりがあります。特に自動車・電子部品・食品・医薬品などの業種では、トレーサビリティ要件や品質基準への対応としてMESの導入が不可欠となっています。
MESの主要機能と製造業務との関係
MES開発で実装すべき主要機能は大きく7つに分類されます。①製造指示管理(ERP/生産計画システムからの指示を現場に展開)、②実績収集・進捗管理(各工程の作業開始・完了・不良数をリアルタイムで把握)、③品質管理(検査結果の記録・合否判定・トレーサビリティ情報の管理)、④トレーサビリティ管理(原材料ロットから完成品までの追跡情報の管理)、⑤設備稼働管理(PLCやIoTデバイスからの稼働データ収集・OEE算出)、⑥作業標準・手順書管理(電子的な作業指示・マルチメディア手順書の配信)、⑦分析・レポーティング(生産実績・品質データ・設備稼働率のダッシュボード)です。これらの機能を製造工程の特性に合わせて設計・実装することがMES開発の核心です。
開発工程の全体フローと期間目安
MES開発の全体工程は「現場調査→要件定義→基本設計→詳細設計→開発→結合テスト→試運転→本番稼働」の8フェーズで進みます。期間の目安は規模にもよりますが、中規模のMES開発(工程数10〜30、連携設備10〜50台程度)で12〜18か月程度が一般的です。特にMES開発は現場調査と試運転フェーズに十分な時間を確保することが重要です。試運転では実際の製造ラインを停止せずにシステムを並行稼働させ、現場オペレーターの操作確認と問題抽出を行います。期間短縮を急ぐあまり試運転を省略・短縮すると、本番稼働後に重大なトラブルが発生するリスクが高まります。
MES開発の進め方

業務分析・要件定義の進め方
MES開発の要件定義は、製造現場の徹底的な業務分析から始まります。まず工場の製造プロセス全体をフローチャートで可視化し、各工程の作業内容・使用する設備・品質チェックポイント・管理データ項目を詳細に把握します。現場オペレーター・品質管理担当者・工場長・情報システム部門など、関係者全員からのヒアリングを通じて「現状の課題」と「システム化で解決したいこと」を整理します。要件定義では必須機能・優先機能・将来機能を区別して整理し、PLCやIoTデバイスとの連携要件・ERPとのデータ連携仕様・品質基準・トレーサビリティ要件を明確にします。この工程を丁寧に行うことが、後工程での手戻りを防ぐ最大のリスク対策です。
設計・データモデリングのポイント
MESの設計フェーズで最も重要なのは、トレーサビリティを担保するデータモデル設計です。製造ロット・製造実績・検査結果・使用部品・作業者情報を正確に紐付けるデータ構造を設計することで、後からのトレース追跡が容易になります。設備連携設計では、各PLC・センサーからどのデータを何の周期で収集するかを明確にし、リアルタイム処理と蓄積処理の分離設計を行います。UI設計では、製造現場での使いやすさを最優先に、大型タッチパネル・ハンディターミナルでの操作性を考慮した画面設計が必要です。また、製造ラインの特性上、システム停止が製造停止に直結するため、高可用性・フェイルセーフ設計の考慮も設計段階から必要です。
開発・テスト・リリースの注意点
MES開発フェーズでは、製造ラインへの影響を最小化するため、本番環境とは独立したテスト環境を構築することが重要です。PLCやIoT機器との結合テストは、実機を使ったテストが必須となるため、工場との調整スケジュールを早めに確定させることが必要です。試運転フェーズでは、実際の製造ラインで現行システム(または手作業)とMESを並行稼働させ、データの整合性・操作性・パフォーマンスを確認します。試運転期間中に発見された問題は、本番稼働前に必ず修正します。リリース(本番移行)は週末や生産休止日を利用してリスクを最小化し、移行直後はエンジニアが工場に常駐してサポートできる体制を整備することが推奨されます。
スクラッチ開発・パッケージ・クラウドの選択基準

スクラッチ開発が適しているケース
スクラッチ開発は、自社固有の製造プロセスや特殊な品質管理要件に完全に対応したMESを構築できる反面、開発期間が長く費用も高くなる傾向があります。スクラッチ開発が適しているのは、①自社独自の複雑な製造工程・品質管理ルールがある場合(既存パッケージでは対応できない業種固有の要件)、②特殊な設備・PLCとの密な連携が必要な場合、③将来的な機能拡張・カスタマイズの柔軟性を最大限確保したい場合、④自社のノウハウをシステムに組み込み競争優位性を高めたい場合です。ソースコードの完全な所有権を持てるため、長期的な運用・改修コストをコントロールしやすいメリットがあります。
パッケージ・クラウドMESが適しているケース
MESパッケージ(Infor Mongoose・Opcenter Execution等)やクラウド型MESは、標準機能を活用することで開発期間とコストを削減できます。この方式が適しているのは、製造プロセスが比較的標準的で業種標準に近い場合、スピーディな導入を最優先にしたい場合、社内のIT保守リソースが限られている場合です。特にクラウド型MESはSaaS型のため初期投資を抑えられ、バージョンアップも自動で行われるメリットがあります。ただし、設備連携のカスタマイズ制限・日本語対応の品質・国内サポート体制・自社の特殊な製造プロセスへの対応度を慎重に評価することが必要です。
ハイブリッドアプローチの考え方
MES開発においては、スクラッチとパッケージのハイブリッドアプローチも有効な選択肢です。例えば、製造指示管理・実績収集といった標準的な機能はパッケージをベースに構築し、自社固有の品質管理ロジックや特殊設備との連携部分はスクラッチで開発するという組み合わせです。このアプローチにより、コストと柔軟性のバランスを取りながら、自社の要件を満たすシステムを構築できます。ハイブリッドアプローチを成功させるためには、パッケージ標準機能とスクラッチ部分の「つなぎ方」(インターフェース設計)を慎重に設計することと、パッケージのバージョンアップ時にスクラッチ部分への影響が最小になるよう疎結合な設計を心がけることが重要です。
MES開発を外注する際の注意点

発注先選定で確認すべき5つのポイント
MES開発の発注先を選定する際に確認すべき5つのポイントを整理します。第一に「製造業務への深い理解と開発実績」です。同業種・同規模のMES開発実績があり、製造プロセスの特性を理解した提案ができるかを確認します。第二に「設備連携(PLC・IoT)の技術力」で、実際の工場設備との連携経験があるかを問い合わせます。第三に「要件定義から定着支援までの一気通貫対応力」で、コンサルとエンジニアが同一チームで動けるかを確認します。第四に「試運転・現場定着支援の実績」です。工場での試運転フェーズを経験した会社は、現場でのトラブルシューティング能力が高い傾向があります。第五に「保守・運用体制」で、リリース後の長期サポートが可能かどうかを確認します。
要件定義で失敗しないための準備
MES開発の要件定義で失敗しないための準備として、以下の3点が特に重要です。第一に「現場キーパーソンの巻き込み」です。システム仕様の決定に際して、実際の製造ラインのオペレーターや班長クラスのベテランが要件定義に参加することで、「机上の空論」にならない実践的な要件が固まります。第二に「As-Is/To-Beの明確な整理」です。現状の業務フロー(As-Is)と目標とする業務フロー(To-Be)を可視化し、変更点と維持する点を明確に区別します。第三に「段階的なスコープ設定」です。一度に全機能を作り込もうとせず、最初のフェーズでは最も重要な課題を解決する機能に絞り込むことで、プロジェクトリスクを低減できます。
開発コストを適正化するためのアプローチ
MES開発コストを適正化するためのアプローチを3点ご紹介します。第一に「MVPアプローチによる段階開発」です。最初のフェーズでは製造実績収集と可視化(ダッシュボード)機能に絞り込み、効果を確認してから品質管理・トレーサビリティ機能を追加するアプローチにより、初期投資リスクを軽減できます。第二に「設備連携コストの精査」です。全設備を一度にシステム連携しようとするとコストが膨大になります。費用対効果の高い主要設備から順次連携を拡大するロードマップを設定することが有効です。第三に「既存システムとの役割分担の明確化」です。ERPや既存の品質管理システムと機能が重複しないよう、MESの担当範囲を明確にすることで、不要な開発を排除できます。
riplaにご相談ください
riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる企業です。製造・業務システム分野のDX化に深い知見を持ち、業務分析から設計・実装・定着支援まで一貫して対応しています。MES開発の進め方・費用・発注方法についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。プロジェクト開始前の現状分析から始まり、As-Is/To-Beの整理、要件定義、開発、リリース後の定着支援まで一気通貫でサポートするため、スムーズなDX推進が実現できます。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
