MicroSoft Azure導入・構築の必要機能や標準機能の一覧について

Microsoft Azureの導入・構築を検討するとき、「Azureには結局どんな機能があり、自社のシステムでどれを使えば効果が出るのか」が分からず、製品名の多さに圧倒されてしまう担当者は少なくありません。Azureは数百を超えるサービス群から成り立っていますが、業務システムやWebサービスを構築するうえで本当に押さえるべき機能は、それほど多くありません。自動スケーリング、高可用性、サーバーレス、CI/CD、監視、IaC、API連携といった「クラウドが提供する基幹的な機能」を理解すれば、構成の設計判断は一気にしやすくなります。

本記事は、Microsoft Azure導入・構築で使われる必要機能・標準機能を、発注企業の視点から体系的に整理する「機能特化」の解説です。負荷に応じて自動で増減するスケーリング、ダウンタイムを最小化する高可用性構成、サーバー管理を不要にするサーバーレス、デプロイを自動化するCI/CD、障害を早期に捉える監視、構成をコード化するIaC、そしてシステム同士をつなぐAPI連携まで、一次データの料金感とあわせて解説します。なお、Azure導入・構築の全体像をまだ把握していない方は、まずMicroSoft Azure導入・構築の完全ガイドから読むことをおすすめします。

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自動スケーリングと高可用性を支える機能

Azureの自動スケーリングと高可用性を支える機能のイメージ

クラウドがオンプレミスと決定的に違うのが、負荷に応じてサーバー資源を自動で増減できる「自動スケーリング」と、障害が起きても止まりにくくする「高可用性」の機能です。オンプレミスではピーク時に合わせてサーバーを過剰に用意せざるを得ませんでしたが、Azureではアクセスが増えたときだけ自動でリソースを追加し、減ったら減らせます。これがコスト最適化と安定運用の両立を可能にする、クラウド構築の中核機能です。

仮想マシンスケールセットと自動スケーリング機能

Azureで自動スケーリングを担うのが、仮想マシンスケールセット(VMSS)やApp Serviceのスケールアウト機能です。CPU使用率やリクエスト数などのメトリクスにしきい値を設定し、それを超えたら自動でインスタンスを増やし、下回ったら減らす、というルールベースの制御ができます。これにより、キャンペーンや月末処理でアクセスが急増しても、人手でサーバーを増設することなく性能を維持できます。

料金の観点でも、自動スケーリングはコスト最適化の要です。一次データの整理では、仮想サーバー(Linux 2コア・約8GB)の従量課金はAzure B2msで月$79.6ですが、3年契約のリザーブドインスタンスにAzureハイブリッドBenefitを組み合わせると月$29.9まで下がります。常時必要な最小限の台数はリザーブドで安く確保し、ピーク時の上乗せ分だけ従量課金で自動スケールする、という設計が定石です。機能を理解したうえで料金プランを使い分けることが、無駄のないAzure構築につながります。

自動スケーリングの設計では、しきい値の決め方とスケールのスピードが運用品質を左右します。CPU使用率だけでスケールルールを組むと、メモリ枯渇やキュー滞留といった別の負荷要因に反応できないため、リクエスト数やキュー長など複数のメトリクスを組み合わせるのが実務上の定石です。また、急なアクセス増に対してインスタンスの追加が間に合わないと一時的な性能劣化が起きるため、最小インスタンス数を一定数確保しておく「ウォームスタンバイ」の考え方も重要になります。機能としてのスケーラビリティは、ルール設計まで含めて初めて効果を発揮します。

可用性ゾーンによる高可用性構成の機能

高可用性を実現する機能が、可用性ゾーン(Availability Zones)です。Azureのリージョン内に物理的に離れた複数のデータセンター群があり、システムをこれらに分散配置することで、片方のゾーンに障害が起きてももう片方で稼働を続けられます。AWSのマルチAZ構成に相当する考え方で、止まると業務に重大な影響が出る基幹システムでは、この冗長化が必須要件になります。

ただし、高可用性には相応のコストがかかる点も機能として理解しておく必要があります。可用性を高めるほどサーバーやデータベースを二重化することになり、月額費用は増えます。中規模で可用性を確保する構成(仮想サーバーやDBを各2台+ロードバランサー+WAF)の構築相場は50万〜60万円が目安で、大規模になればさらに上がります。重要なのは、すべてのシステムに最高水準の可用性を求めるのではなく、業務影響度に応じて可用性のレベルを設計することです。この判断軸を機能の段階で持っておくことが、過剰投資を防ぎます。

サーバーレスとCI/CDによる開発効率化の機能

AzureのサーバーレスとCI/CDによる開発効率化の機能のイメージ

開発と運用の効率を大きく左右するのが、サーバーレスとCI/CDの機能です。サーバーレスはサーバーの管理そのものを不要にし、CI/CDはコードの変更を自動でテスト・デプロイする仕組みを提供します。この二つを組み合わせると、開発者はインフラの管理から解放され、アプリケーションの価値づくりに集中できます。Azureはこれらの機能を標準で備えており、構築の初期段階から取り入れる価値があります。

Azure Functionsとサーバーレスの課金機能

Azure Functionsは、イベントをきっかけにコードを実行するサーバーレスの中核機能です。サーバーの起動・停止やOSの管理を一切意識せず、関数単位で処理を書くだけで動かせます。課金は実行された分だけで、一次データの整理では、API呼び出しは月100万回まで無料、超過分は100万回あたり$0.2、コンピューティングは100万GB秒あたり$16です。アクセスがないときは課金されないため、間欠的な処理ではコストを最小化できます。

サーバーレスはコンテナサービスのAzure Container AppsやAKS(Kubernetes)と組み合わせることもでき、処理特性に応じて使い分けます。短時間の軽い処理はFunctions、常時稼働する複雑なアプリはコンテナ、というように適材適所で選ぶのが定石です。サーバーレスの機能を理解すると、「常に動かす必要のない処理を、必要なときだけ動かす」という発想でコスト構造そのものを見直せるようになります。

一方で、サーバーレスには「コールドスタート」という特性も理解しておく必要があります。一定時間アクセスがないと関数の実行環境が休止し、次の呼び出し時に起動待ちが発生する現象です。レスポンス速度がシビアな画面向けの処理ではこれが問題になることがあり、その場合は常時起動のプランやコンテナへ寄せる判断が必要です。サーバーレスは万能ではなく、応答速度・実行時間の上限・状態の持ち方といった制約を踏まえて適用範囲を見極めることが、機能を正しく使いこなす条件になります。

Azure DevOpsとCI/CDパイプラインの機能

CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)は、ソースコードの変更を自動でビルド・テストし、本番環境へ安全にデプロイする一連の自動化機能です。Azureでは、Azure DevOpsのパイプラインやGitHub Actionsを使って実現します。手作業のデプロイは人為ミスの温床ですが、CI/CDを整えると、コードをマージするだけでテストとデプロイが自動で走り、リリースの品質とスピードが両立します。

CI/CDやDevOps系のSaaS(パイプライン、コード管理、セキュリティスキャン)の費用は、一次データの整理では月数万円程度が目安です。初期投資としては小さく、開発体制が大きいほど自動化による工数削減効果が上回ります。CI/CDは単なる効率化ツールではなく、頻繁な改善とリリースを安全に回すための土台です。Azure構築の機能要件を考えるときは、開発・運用の自動化までを最初から設計に含めておくことが、長期的な運用品質を左右します。

CI/CDをさらに強化する機能として、デプロイの安全性を高める仕組みも押さえておきたいところです。新しいバージョンを一部のユーザーにだけ先行公開する「カナリアリリース」や、本番と同等の環境を別に用意して問題なければ切り替える「ブルーグリーンデプロイ」は、App Serviceのデプロイスロットなどで実現できます。これにより、不具合があってもすぐに切り戻せるため、リリースのリスクを大幅に下げられます。CI/CDは「速く出す」だけでなく「安全に戻せる」までを含めて設計するのが、運用品質を担保する勘所です。

監視・IaC・API連携を担う運用機能

Azureの監視・IaC・API連携を担う運用機能のイメージ

システムを安定して運用し続けるために欠かせないのが、監視・IaC・API連携の機能です。監視は障害や性能劣化を早期に捉え、IaCは構成をコードで管理して再現性を担保し、API連携はシステム同士をつないで業務を自動化します。これらは「作って終わり」ではなく「運用し続ける」フェーズを支える機能であり、Azure構築の品質を中長期で左右します。

Azure Monitorと監視ツールの機能

監視機能の中核がAzure Monitorです。仮想マシンやアプリ、データベースのメトリクスとログを集約し、しきい値を超えたらアラートを発報します。Application Insightsを使えば、アプリ内部のレスポンス時間やエラー率まで細かく可視化でき、障害の予兆を早期に掴めます。監視がないと、ユーザーからの問い合わせで初めて障害に気づく、という後手の運用に陥ります。

監視の選択肢にはサードパーティ製のツールもあり、一次データの整理では、代表的な監視ツールDatadogはホストあたり月$15〜$23が目安です。Azure標準のMonitorで足りる規模か、複数クラウドを横断する統合監視が必要かで使い分けます。運用代行(監視・障害の一次対応)を外部に委託する場合、初期・月額とも数万円程度が相場とされており、監視機能と運用体制をセットで設計することが、安定運用への近道です。

監視機能を活かすうえで重要なのが、「何をアラートとして上げるか」の設計です。あらゆる指標に通知を設定すると、重要でないアラートに埋もれて本当の障害を見逃す「アラート疲れ」が起きます。サービスの可用性に直結する指標(応答時間・エラー率・リソース枯渇)に絞ってしきい値を設定し、それ以外はダッシュボードで傾向を追う、という階層化が実務の定石です。監視は単にツールを入れるだけでなく、運用チームが行動につなげられる形に整えて初めて機能します。

IaC(Bicep/ARM)とAPI連携の機能

IaC(Infrastructure as Code)は、インフラ構成をコードで定義し、同じ環境を何度でも再現できるようにする機能です。AzureではBicepやARMテンプレート、あるいはTerraformを使います。手作業でポータルから構築すると、開発・検証・本番の環境差や設定漏れが起きがちですが、IaCで管理すれば構成がコードとして残り、変更履歴の追跡やレビューも可能になります。CCoEがクラウド標準を全社展開するときの土台にもなる重要機能です。

IaCはCI/CDと組み合わせることで真価を発揮します。インフラの変更もアプリのコードと同じようにレビューとテストを経てから適用できるため、「誰かがポータルで手動変更して、その記録が残っていない」という属人化や事故を防げます。さらに、災害復旧の観点でも、構成がコード化されていれば別リージョンに同じ環境を短時間で再構築でき、事業継続性が高まります。IaCは目に見える機能ではありませんが、Azure構築の再現性・追跡性・復旧力を底上げする基盤的な機能だと位置づけられます。

API連携を担うのがAzure API ManagementやLogic Appsです。API Managementは社内外のAPIを安全に公開・管理する入口となり、Logic Appsはコードをほとんど書かずにシステム間の連携フローを組めます。これらを使うと、基幹システムとSaaS、外部サービスをつなぎ、データ転記や通知を自動化できます。サーバーレスAPI構成はアクセスが少〜中規模なら月数百円から運用でき、無料枠内に収まることも多いため、小さく始めやすいのが利点です。監視・IaC・API連携という運用機能までを設計に含めることが、Azureを「作って終わり」にしない鍵になります。

ID基盤・セキュリティとコンテナを支える機能

AzureのID基盤・セキュリティとコンテナを支える機能のイメージ

スケーリングや開発自動化と並んで、Azure構築の土台を支えるのがID基盤・セキュリティとコンテナの機能群です。誰がどのリソースにアクセスできるかを制御するID管理、通信やデータを守るセキュリティ、アプリの可搬性を高めるコンテナは、いずれも業務システムを安全かつ柔軟に動かすための基幹機能です。これらは派手さこそありませんが、欠けると運用品質とセキュリティに直結します。

Entra IDとアクセス制御・セキュリティの機能

AzureのID基盤を担うのがEntra ID(旧Azure AD)です。利用者の認証、多要素認証、条件付きアクセス、ロールベースのアクセス制御(RBAC)をまとめて提供し、「誰が・どのリソースに・どこまでアクセスできるか」を細かく制御できます。Microsoft 365をすでに使っている企業なら、同じID基盤を業務システムにも横展開でき、シングルサインオンで利便性とセキュリティを両立できる点がAzure特有の強みです。

セキュリティ機能としては、ネットワークを保護するNSG(ネットワークセキュリティグループ)やAzure Firewall、機密情報を安全に保管するKey Vault、脅威を検知するMicrosoft Defender for Cloudなどがあります。これらは「最小権限の原則」「すべてのアクセスを検証するゼロトラスト」という設計思想を実装するための部品です。機能を個別に導入するだけでなく、ID基盤を中心にアクセス制御の方針を定めることが、堅牢なAzure構築の出発点になります。

コンテナ(AKS/Container Apps)のポータビリティ機能

コンテナは、アプリと実行環境をひとまとめにパッケージ化し、どこでも同じように動かせるようにする技術です。AzureではAKS(Azure Kubernetes Service)やContainer Appsで利用できます。コンテナ化の最大のメリットは、開発環境と本番環境の差をなくし、デプロイの再現性を高められる点にあります。さらに、コンテナはクラウド事業者に依存しにくいため、特定クラウドへのロックインを和らげ、将来のマルチクラウドや移行の選択肢を残せます。

ただし、Kubernetesは機能が豊富な分だけ運用の難度も高く、小規模なシステムにはオーバースペックになりがちです。常時稼働する複雑なマイクロサービス群ならAKS、シンプルなコンテナを手軽に動かしたいならContainer Apps、というように規模と体制に応じて選ぶのが現実的です。コンテナという機能を理解しておくと、サーバーレスとIaaSの中間に位置する選択肢として、可搬性と運用コストのバランスを取った構成設計ができるようになります。

まとめ

MicroSoft Azure導入・構築の機能まとめイメージ

Microsoft Azure導入・構築で押さえるべき機能は、自動スケーリングと高可用性、サーバーレスとCI/CD、監視・IaC・API連携の三つの軸に整理できます。仮想マシンスケールセットや可用性ゾーンで安定性とコストを両立し、Azure Functions(API呼び出し月100万回無料・コンピューティング100万GB秒$16)とCI/CDで開発と運用を自動化し、Azure MonitorやIaC、API Managementで運用品質を担保する。この機能群を、業務影響度と利用パターンに応じて適材適所で組み合わせることが、Azure構築の成否を分けます。

機能を選ぶときに大切なのは、「使えるから入れる」のではなく「自社の要件に対して何が必要か」から逆算することです。過剰な高可用性やオーバースペックは無駄なコストを生みます。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、要件に合わせてAzureの機能を取捨選択し、過不足のない構成を設計・構築します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。