MVP開発の必要機能や標準機能の一覧について

MVPの機能は、検証したい事業仮説に直結するコア価値1機能を見極め、Mustを絞ったうえで、市場投入に最低限必要な周辺機能を加えて決めます。

今回は作らない機能も先に決めると、開発費と検証の焦点を保ちやすくなります。全体像はMVP開発の完全ガイドで確認できます。

MVPで検証するコア価値1機能の見極め方

MVPで検証するコア価値1機能の見極め方のイメージ

MVPの機能スコープを定義する出発点は、「このプロダクトで検証したい事業仮説は何か」を一文で言い切ることです。仮説が「中小企業の労務担当者は、煩雑な手続きをWeb上で完結できれば対価を払う」であれば、MVPに必要なのはその手続きを完結させる機能だけになります。

デザインの作り込みや周辺機能は、この検証には不要です。つまり、検証する価値を一点に絞り込むことが、コア価値1機能を見極める第一歩になります。

事業仮説からコア機能を逆算する考え方

コア機能は、検証したい仮説から逆算して導き出すものです。機能の一覧を眺めて選ぶやり方とは発想が異なり、次の順で決めます。

  1. 仮説を立てる:検証したい事業仮説を立てる
  2. 最短行動を描く:その仮説が正しければユーザーが必ず行う「一連の最短行動」を描く
  3. コア機能を選ぶ:その行動を成立させるのに不可欠な機能だけをコア機能とする
  4. それ以外を分ける:「あれば便利だが、なくても検証できる」機能に分類する

この線引きが曖昧だと機能は際限なく増えるため、MVPの機能設計は足し算ではなく引き算で進めることが、検証を最速にする秘訣です。

たとえば、名刺管理のEightは、「名刺をスマホで撮影してデータ化する」という一点に絞り、利用者180万人・名刺3億枚まで成長しました。成長した理由は、ユーザーがもっとも困っていた価値を見抜き、それだけを最小プロダクトにしたことです。反対に、連絡先共有やメッセージ機能まで最初から作り込んでいたら、開発は長引き、何がユーザーに刺さったのかも曖昧になっていたでしょう。

なお、コア機能を要件定義書やRFPにどう落とし込むかは、別記事『MVP開発のRFP/要件定義書/提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

PoCやプロトタイプの検証対象との違い

機能スコープを正しく定義するには、MVPとPoC・プロトタイプの違いを理解しておく必要があります。PoCが検証するのは「技術的に作れるか(技術精度)」で、AIの認識精度や外部システムとの連携可否といった技術リスクを潰すための最小機能だけを備えます。

一方、プロトタイプが検証するのは「使いやすいか(UI/UX)」で、画面遷移や操作感を確かめるための見た目重視の試作であり、必ずしも市場に投入されません。MVPが検証するのは「市場で使われるか・売れるか(事業価値)」です。したがって、技術や操作感の確認だけでは足りず、実際のユーザーが価値を受け取り、対価を払う(あるいは継続利用する)ところまで成立させる必要があります。

同じ「最小限」でも、PoCは技術の最小、プロトタイプは体験の最小、MVPは事業検証の最小と、検証対象が異なります。この違いを取り違えると、「動くけれど市場では誰も欲しがらない機能」を作り込んでしまうため、MVPの機能は事業仮説の検証から逆算して決めてください。

ポイント

判断の目安は、検証したい事業仮説を一文で言い切れるかどうかと、その仮説を確かめる行動に不可欠な機能かどうかです。

MoSCoW法によるMust機能の選定

MoSCoW法でMust機能を選定するイメージ

コア価値を確かめるため、MoSCoW法で機能を4段階に分類します。

  • Must(必須):検証の成立に欠かせない機能
  • Should(重要):重要だが、初回検証には必須ではない機能
  • Could(あれば良い):余裕があれば追加する機能
  • Won’t(今回は作らない):今回の対象外として関係者と合意する機能

MVPでは、Mustを先に確定して残りを後回しにします。そうすることで、スコープの肥大化を防ぎやすくなります。

Must(必須)を絞り込む基準

Mustに分類すべきは、「これがなければ検証そのものが成立しない機能」だけです。判断基準は明快で、「その機能を削ったら、検証したい仮説を確かめられなくなるか?」と問い、答えがイエスならMust、ノーならMust以外です。たとえばマッチングサービスのMVPなら、登録・検索・申込みの一連の最短導線がMustで、レビューやお気に入り、高度なフィルタはMustではありません。

Mustの絞り込みでよくある失敗は、「念のため」という言葉で機能を追加してしまうことです。「念のため通知機能も」「念のため管理画面も充実させて」と積み上げるうちに、MVPは肥大化し、リリースは遅れ、費用は膨らみます。反対に、Mustを最小限に保つほど、開発は速く、安く、検証も明快になります。

検証段階では、運用を回すための最小限の管理機能はあっても、作り込んだダッシュボードや高度な分析機能はまず不要です。また、WebアプリのMVPは小規模で100〜300万円が相場ですが、Mustを正しく絞れば、この下限に近づけられます。つまり、Mustの定義は、予算とスピードを直接左右する意思決定です。

「Won’t(作らない機能)」の先行明示

MoSCoW法でもっとも見落とされがちで、かつ最も重要なのがWon’t、つまり「今回は作らないと明確に決める機能」の定義です。何を作るかを決めるのと同じくらい、「何を作らないか」を関係者で合意しておくことが、スコープの暴走を防ぎます。逆に、Won’tを言語化せずに進めると、開発の途中で「やっぱりこの機能も」という追加要望が次々に出て、当初の予算と期間を簡単に超えてしまいます。

Won’tの明言は、開発会社との契約面でも効果を発揮します。「作らないもの」を要件定義書やRFPに明記しておけば、後から追加機能を求める際の費用ルールも事前に取り決められ、想定外の追加費用を防げます。Won’tの取り扱いは要件定義の核心でもあるため、関連記事もあわせてご覧ください。

MVPは「作らない決断の集合体」と言っても過言ではありません。あれもこれも入れたくなる気持ちを抑え、Won’tリストを堂々と掲げることが、市場投入までの時間を短縮し、検証を最速にします。

ポイント

判断の目安は、その機能を削ったら検証したい仮説を確かめられなくなるかどうかです。Mustを最小限に保ち、Won'tを先に明言しておくと、スコープの肥大化を防げます。

市場投入に最低限必要な機能群

市場投入に最低限必要な機能群のイメージ

コア価値1機能だけでは、市場に投入して検証を回すことはできません。ユーザーがその価値にたどり着き、体験し、結果を計測できるようにするには、「最低限の周辺機能」が必要になります。ただし、これらもコア価値の検証を成立させるための最小限にとどめ、作り込みは厳禁です。

ログイン・決済など基盤機能の費用感

多くのMVPで必要になるのが、ユーザー認証(ログイン)と、価値検証に必要な決済機能です。ただし、これらは「お金が動くか」を検証する場合に限って必須で、無料で使ってもらって利用率を測るタイプの検証なら、決済は後回しにできます。費用感としては、ログイン機能は開発会社に依頼すると20〜40万円、決済機能は50〜100万円が目安です。

一方、個人フリーランスに依頼すれば、ログインは5〜10万円、決済は15〜30万円と、会社の2〜5分の1程度に抑えられる場合もあります。こうした基盤機能は、ゼロから自前で作るより、既存の認証サービスや決済代行サービスを組み合わせるほうが、はるかに速く安く済みます。MVP段階では、独自の認証基盤や決済システムを作り込む必要はほとんどありません。

SmartHRが半日のLPと約2万円の広告で需要検証を済ませた事例が示すように、検証の目的によっては、ログインも決済も不要なケースすらあります。したがって、基盤機能を入れるかどうかも、「その機能がないと検証が成立しないか」という基準で判断してください。

検証データを取るための計測機能

MVPで絶対に削ってはいけないのが、検証データを取るための計測機能です。MVPの目的は仮説検証なので、ユーザーが何人登録し、何人がコア機能を使い、どこで離脱したかが分からなければ、検証そのものが成立しません。せっかく市場に投入しても、データが取れなければ次の意思決定ができず、MVPの意味が失われます。

アクセス解析ツールの埋め込み、主要なユーザー行動のイベント計測、コンバージョン(登録・購入・継続利用)の記録は、コア機能と同格のMustとして扱うべきです。計測機能を軽視すると、「リリースしたものの、何が良くて何が悪かったのか分からない」という最悪の事態に陥ります。

製造業のFAQシステムが、利用率95%という明確な指標で本格展開を判断できたのは、利用率を計測できる仕組みがあったからです。特に、検証指標を事前に決め、それを測る計測機能をMVPの必須機能に含めておくことが大切です。この一手間が、MVPを「ただ作っただけ」で終わらせない決定的な分かれ目になります。

ポイント

基盤機能は、その機能がないと検証が成立しないかどうかで判断します。計測機能は、コア機能と同格のMustとして必ず入れます。

ノーコード・生成AIによる機能の低コスト実装

ノーコード・生成AIで機能を安く実装するイメージ

MVPの機能を絞り込んだら、次は「その機能をいかに安く速く実装するか」を考えます。近年は、ノーコード/ローコードツールや生成AIを活用することで、MVPの実装コストを大きく圧縮できるようになりました。

検証段階のプロダクトに、本番品質の作り込みは必ずしも必要ありません。機能を絞ったうえで実装手段も軽くすると、検証のスピードと費用対効果はさらに高まります。

実装コストを50〜75%削減する選択肢

ノーコードツールを使えば、MVPは50〜200万円程度で構築できる場合があります。さらに、生成AIを活用して7割を自作し、残り3割を専門家が支援する体制を組めば、従来200〜500万円かかっていたMVPを50〜150万円(50〜75%減)で実現できるケースもあります。加えて、生成AIツールの利用料は月20〜50ドル程度で、これらを組み合わせれば、検証フェーズの費用を劇的に抑えられます。

こうして軽く作れば、限られた予算でも複数の仮説を検証できます。ただし、ノーコードや生成AIにも限界があります。複雑なビジネスロジックや、既存システムとの密な連携、高い性能・セキュリティが求められる機能は、ノーコードの標準機能では実現しきれないことがあります。

また、検証後に本開発へ移行する際、ノーコードで作ったものをそのまま本番に使えるとは限りません。だからこそ、「どの機能はノーコードで足り、どの機能は作り込みが必要か」を、コア価値の検証目的に照らして見極めることが大切です。実装手段の選択も、機能スコープ定義と一体で考えるべき論点です。

本開発への移行を見据えた機能設計

検証がうまくいけばMVPは本開発へ進むため、機能を最小化しても本開発への接続は外せません。その際、MVPで得た知見やデータ構造が、本開発にスムーズに引き継がれる設計になっているかが問われます。また、MVPと本開発の体制が分断され、知識が断絶すると、本開発で一から作り直しになり、せっかくの検証コストが無駄になります。

そのため、機能設計の段階でも「この検証で何を学び、それを本開発にどう活かすか」という次フェーズの視点を持っておくことが望まれます。コア価値1機能に絞りながらも、検証で得たデータや要件は、本開発に引き継げる形で残しておく必要があります。これは、MVPから本開発・本番移行までを一気通貫で見られる伴走型のパートナーであれば、自然に担保できる部分です。

riplaは、フルスクラッチ受託と伴走型開発の立場から、MVPの機能絞り込みから本開発への接続までを、知識を断絶させずに支援しています。つまり、機能のスコープ定義は、検証の最速化と本開発への橋渡しを両立させる設計判断です。

ポイント

どの機能をノーコードで足りるか、どこを作り込むかは、コア価値の検証目的に照らして決めます。本開発への移行を見据え、データや要件は引き継げる形で残しておきます。

まとめ

MVP機能スコープ定義のまとめイメージ

MVPに盛り込む機能は、網羅性ではなく「検証したい事業仮説に直結するか」で選びます。検証したい仮説からコア価値1機能を逆算し、MoSCoW法でMust(なければ検証できない機能)とWon’t(今回は作らない機能)を先に確定します。そのうえで、市場投入に最低限必要な導線と計測機能だけを備えます。

これがMVPの機能スコープ定義の鉄則です。また、ノーコードや生成AIを活用すれば、従来200〜500万円のMVPを50〜150万円(50〜75%減)で実装できる場合もあります。機能の最小化と実装手段の軽量化を組み合わせれば、検証のスピードと費用対効果を大きく高められます。

機能設計の核心は、足し算ではなく引き算です。「何を作るか」と同じ熱量で「何を作らないか」を決めることが、検証を最速にし、MVP開発を成功に導きます。

riplaは、フルスクラッチ受託と伴走型開発を組み合わせ、機能の絞り込み・スコープ定義から本開発への接続までを、知識を断絶させずに支援しています。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。