介護・福祉業界のシステムの保守・運用費用は、提供形態・規模・機器連携の範囲によって、月額5,000円から数百万円規模まで幅があります。
稼働後の保守費はTCOの大部分を占めるため、初期費用だけで選ぶと予算がずれやすくなります。
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介護・福祉業界のシステムの保守・運用費用の全体像

介護・福祉業界のシステムは、記録や請求に特化したツールとは役割が異なり、複数の業務を一つの基盤で支える総合型の基幹業務システムです。
見積もりを取る前に、自社がどこまで保守するかを関係者間で認識をそろえておく必要があります。記録アプリ単体と複数領域を連携するシステムでは、保守する業務ロジックやデータ連携の数が異なるためです。
現場職員、ケアマネジャー、事務担当者が入力したデータは、最終的にレセプト請求へつながります。このつながりが、一般的な業務システムにはない複雑さを生み、保守費用の一因にもなっています。
保守費は、単一機能への上乗せだけでは見積もれません。そのため、領域ごとの費用と、領域同士をつなぐ連携の費用に分けて見積もる必要があります。記録・請求・シフト・家族共有には、それぞれ独立した費用がかかります。さらに、3年ごとの報酬改定への対応も続きます。
記録・シフト管理特化ツールとの違い―総合型基幹システムとしての位置づけ
特化ツールと総合型システムでは、連携する範囲が大きく異なります。そのため、保守費用を見積もるときは、対象となる業務と接続先を先に確認しておく必要があります。
- 介護記録アプリ:日々の記録入力を効率化する機能に絞っています。
- シフト管理ツール:職員の勤務表作成に特化しています。
- 総合型基幹システム:記録・ケアプラン、請求、シフト、家族共有を一つにつなぐ役割を担っています。
- 外部システムとの接続:国保連伝送や給与計算とAPIでつなぐハブです。
総合型では、連携先の仕様が変わるたびに、自社側の改修と再テストが発生します。導入費が300万円規模でも、周辺の連携インターフェースは保守の対象に含まれます。そのため、予算を立てる段階で関係者と共有しておく必要があります。
月額利用料・初期費用・インフラ費用という3つの基本費目
現在はクラウド型(SaaS型)が主流です。サーバーを自社で構築・保守する費用は原則不要なため、事業所側で準備するのは、インターネット環境とパソコン・タブレット端末などです。
一般的には、初期費用を抑えたうえで、月額または年額の利用料を支払う形になります。初期費用が0円のサービスは多い一方で、契約事務手数料として18,000円程度かかる場合もあります。
サービスごとに料金の単位や条件が異なるため、月額と年額の例を並べて見積もりに反映させておくと比べやすくなります。
- カイポケ:月額5,000円〜です。
- まもる君クラウド:サービスごとの固定月額制で、月額7,800円〜です。
- ナーシングネットプラスワン:月額8,000円〜の料金体系です。
- かんたん介護ソフト:月額10,780円〜、または一律月額9,800円〜です。
- カイビズプラットフォーム:訪問系に特化し、月額24,000円です。
トリケアトプスは1名あたり月額200円ですが、上限価格5,000円など、プランによって条件が異なります。ワイズマンセカンドラインは小規模向けで、1事業所あたり月額1,500〜2,500円です。また、楽すけは年額90,000円で、ライセンス料が別途かかります。
費用の幅は、事業所の規模や対応するサービス種別によって大きく変わります。そのため、比べるときは、1名あたり・1事業所あたり・年額といった単位をそろえることが欠かせません。
提供形態別(クラウド型SaaS/オンプレミス買取/フルスクラッチ)のコスト構造
提供形態が違えば、費用構造も変わります。初期費用と運用費の比率や、長期のTCOも形態ごとに異なります。
初期費用だけで決めると、5年・10年後に想定外の費用を抱える可能性があります。形態ごとに費用の出方が異なるため、それぞれの構造を確認しておきます。
クラウド型(SaaS)介護ソフトの費用相場とTCOの考え方
クラウド型は初期費用を抑えて利用を始められます。ただし、費用と保守の範囲を確認したうえで、長期のTCOを見積もることが欠かせません。
- 利用料金:初期費用は0円〜数万円程度、月額は5,000円〜数万円程度です。
- 保守負担:インフラ保守や法改定への対応をベンダーが担い、中小事業所でも運用の負担を軽くできます。
- 更新・サポート:まもる君クラウドやケア樹などでは、法改定時の対応費が月額に含まれ、自動更新は無償です。
オプションや連携サービスを追加するほど、月額課金も増える傾向があります。特に、見守りセンサーやバイタル機器をつなぐと、当初の想定より費用が膨らむ場合があります。
将来追加したい機能も含めて、5年・10年分の費用を試算します。そのうえで、初期費用の安さだけでなく、長期のTCOで比べる必要があります。
オンプレミス買取型・フルスクラッチ型の保守費用構造
提供形態によって、初期費用と稼働後の負担は大きく異なります。そのため、標準機能で運用できるか、独自要件への対応が必要かを、まず見極めます。
- オンプレミス買取型:初期費用は高めですが、保守費用を一定に抑えられます。標準機能なら5年・10年のTCOが有利になりやすい形態です。
- フルスクラッチ型:独自業務や加算算定ロジックに合わせる完全オーダーメイドで、初期費用は数千万円規模です。
- フルスクラッチ型の保守:自由度は高い一方で、制度改定やLIFE変更に伴う独自改修費がかさみ、中小事業所には非現実的な場合が多くなります。
- ハイブリッド構成:記録・請求はパッケージ、家族共有は専用アプリとし、スクラッチより大幅に費用を抑える選択肢です。
オンプレミス型では、別途サーバーの維持費がかかります。さらに、数年に一度、有償のバージョンアップ費がまとめて発生するため、あらかじめ見込んでおきます。
事業所規模別に見る5年間トータルコスト(TCO)の目安

TCOは、初期費用と5年分の運用費用を合算したものです。初期費用だけで高い、安いを判断すると、実際の負担を見誤るおそれがあります。
提供形態別の構造を踏まえると、自社が負担する金額を規模別の5年間TCOで見積もれます。ただし、下の目安は一般的なもので、形態やオプションの範囲によって上下します。
| 事業所規模・タイプ | 月額目安 | 初期費用 | 5年TCO目安 |
|---|---|---|---|
| 小規模・機能特化型(居宅介護支援等) | 月額5,000円程度 | 0円 | 約30万円 |
| 中規模・総合型(訪問系のシフト・請求一元管理等) | 月額24,000円程度 | 0円〜数万円 | 約144万円 |
| 大規模・複合型(特養・老健等、IoT機器連携含む) | 月額数万円〜 | 要見積もり | 数百万円規模 |
小規模〜大規模事業所の5年TCOの読み方
事業所の規模帯によって、月額と5年TCOの目安は異なります。したがって、目安の金額と合わせて、必要な機能や連携範囲も確認しておくことが大切です。
- 小規模・機能特化型:居宅介護支援等は月額5,000円程度、初期費用0円、5年TCO約30万円です。
- 中規模・総合型:訪問介護のシフト・請求一元管理等は月額24,000円程度、5年TCO約144万円です。
- 大規模・複合型:特養・老健等でIoT連携を含む場合、月額数万円〜、初期費用は要見積もり、5年TCOは数百万円規模です。
小規模では、オプションを絞って標準機能に業務を合わせると、費用対効果を得やすくなります。一方、複数サービスを運営する特養・老健等では、センサーやバイタル機器の連携が加わるぶん、費用が一段と上がります。
いずれの規模でも、5年分の運用費は初期費用と同等かそれ以上を占めます。だからこそ、稼働後5年間で支払う総額を基準に選定します。
複合型施設・IoT機器連携がTCOに与える影響
規模別TCOの幅を大きく左右する最大の要因は、外部機器との連携範囲です。そこで、要件定義の段階で、自動連携が必要な機器と手入力で足りる範囲を分けておくと、初期費用と運用費を抑えられます。
- 連携機器:ナースコール、ベッドセンサー(見守り機器)、バイタル測定機器があります。
- 費用:月額オプションに加え、機器本体の購入・設置費用も必要です。
- 大規模法人:複数の施設やサービスの情報をまとめて管理すると、連携機器やシステムが増え、TCOを読みづらくなる傾向があります。
機器連携は、職員の巡回負担を減らし、記録も自動化できます。一方で、費用も積み重なるため、負担軽減の効果が大きい機器に絞って投資し、それ以外は標準機能で運用するとよいでしょう。
介護保険法改正・LIFE対応にかかる維持費用と中核領域の保守コスト
総合型では、制度対応の維持費と、領域ごとの追加保守費を分けて見ておく必要があります。介護報酬改定は3年ごとに行われ、LIFEなど国主導の基盤刷新も定期的にあるため、制度対応の費用は繰り返し発生します。
介護記録・ケアプラン、レセプト請求、シフト管理の保守コストも確認しておくと、ランニングコストを見積もりやすくなります。
介護報酬改定・LIFE刷新対応の維持費用
制度対応の維持費は、月額に含まれる更新と、基盤が変わるときに現場で発生する作業とに分けて確認します。
- クラウド型の通常改定:まもる君クラウドやケア樹などは、多くが更新・サポート費を月額内に含み、自動更新は無償です。突発の改修費も生じにくい形です。
- LIFE刷新時の引き継ぎ:令和8年度(2026年度)に予定されるクラウド化では、アカウントなどが引き継がれます。
- 利用者情報の移行:基本情報は自動で移行されないため、再入力やCSV取り込みに伴う人件費・残業代が生じる可能性があります。
- 作業工数:ライセンス費が無償でも、現場の移行作業時間を予算に含めておく必要があります。
介護記録・ケアプラン、レセプト請求、シフト管理の保守コスト
中核領域ごとに保守の内容は異なります。そのため、問い合わせ対応や制度変更、外部システムとの連携まで含めて見積もることが大切です。
- 記録・ケアプラン:入力に関する問い合わせ対応やマニュアル更新が続きます。
- レセプト請求:伝送仕様や加算要件が変わるたびに、チェックロジック、単価テーブル、算定ルールの改修が必要です。
- 返戻対応:伝送後の不備に備えて、ログ確認と修正機能を保守しておきます。
- シフト管理:夜勤配置や資格要件が変わるたびに、マスタデータを更新します。
- 給与計算との連携:双方がバージョンアップするたびに、連携の再検証を行います。
ITに不慣れな職員が多い事業所では、操作サポートの問い合わせ窓口が、機能保守以上に負担になることがあります。また、レセプトの返戻が起きた場合は、再請求の作業も発生します。
TCOを押し上げる隠れコストとコスト抑制のポイント

月額・初期・インフラ費や、制度・中核領域の保守費に加えて、見積書に出にくい隠れコストがあります。特に教育費と機器連携費は、抑え方まで含めて確認しておく必要があります。
デジタル格差による教育コスト・IoT機器連携費用という隠れコスト
最も見落とされやすい隠れコストは、職員のデジタル格差による教育費です。もう一つは、外部機器との連携オプションの費用になります。
- 調査結果:40〜50代の介護関係者で、ICTを知らない人は74%、理解がある人は6%でした。
- 教育工数:操作説明やマニュアルの作成、定着までの教育に、人件費がかかります。
- LIFE刷新時の支援:「電話問い合わせ不可(フォーム対応のみ)」となるため、職員の学習や対応のコストが増えることが懸念されます。
- 機器連携費:ナースコール、ベッドセンサー、バイタル機器は負担軽減に有効ですが、追加料金や機器の購入費が見積もりに含まれない場合があります。
保守・運用費用を抑えるための実践的アプローチ
隠れコストを抑えるには、教育や機器連携を計画に組み込む必要があります。初期費用だけで判断せず、3つの施策を組み合わせることで、総コストを抑えられます。
- TCOを明示するベンダーを選ぶ:法改定対応が料金に含まれるか、利用範囲を広げたときの費用の増え方を確認します。
- 教育・定着支援:デジタル格差があることを前提に、導入前から現場向けのマニュアルや研修を用意し、問い合わせや入力ミスの手戻りを減らせます。
- 段階導入:効果の高い見守り機器から順に連携し、必要な機能を段階的に統合すると、スクラッチより費用を大きく抑えられます。
法改定対応や利用範囲の拡大で変わる費用も含めて、5年・10年の累積額を明示する開発会社を選ぶと、予算のずれを防ぎやすくなります。
まとめ
費用は、基本費目と提供形態による違いを押さえたうえで、規模別の5年TCOで比べるのが基本です。加えて、介護報酬改定・LIFE対応、中核領域の保守、教育や機器連携の隠れコストも、長期の費用に含めて考えます。
月額費用は、カイポケの5,000円〜からカイビズプラットフォームの24,000円まで幅があります。5年TCOも、小規模の約30万円から大規模・複合型の数百万円規模まで変わります。
クラウド型は制度対応が月額に含まれて手軽ですが、機器連携を広げると費用が増える場合があります。フルスクラッチは中小事業所には非現実的な場合が多いため、ハイブリッド構成も選択肢に入ります。
まずは業務の範囲と、許容できる保守費用を整理しましょう。そのうえで、TCOを明確に示す複数の開発会社に相談すると、比べやすくなります。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
