OMSの導入/開発事例や活用/成功事例について

OMS(注文管理システム)の導入事例では、受注の一元化、出荷の自動化、在庫の一元管理、繁忙期への対応が主な成果として見えてきます。チャネルごとにバラバラだった受注を一本化できるかが、欠品や二重販売、出荷遅延を解消できるかの分かれ目になります。

OMSは、複数チャネルの受注を一つにまとめ、在庫を引き当てて倉庫のWMSへ出荷を渡す仕組みです。この記事は、OMSの導入・開発・活用・成功の事例に特化し、発注企業の視点から掘り下げた解説です。全体像はOMSの完全ガイドでご確認ください。

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Excel・手作業の受注管理から脱却した事例

OMS導入による受注の一元化、受注処理時間、誤出荷、問い合わせへの効果を4つのパネルで示した図。
転記の削減は、受注後の確認や顧客対応にもつながります。

OMS導入で、もっとも分かりやすい成果が出るのが、Excelや紙、複数の管理画面を行き来していた受注業務の一元化です。多くの通販・EC事業者は、自社ECや楽天のRMS、Amazonのセラーセントラル、電話・FAXの注文を、それぞれの管理画面で別々に確認し、Excelに転記して在庫を手で引き当てています。

この分断された受注処理が、人的コストとヒューマンエラーの温床になっています。OMSは、これらの受注を一画面に集約して注文ステータスを統一管理するため、転記と確認の往復を丸ごとなくせます。

チャネル横断の転記をなくし受注処理を短縮した事例

OMS導入事例でまず目を引くのは、受注処理時間の短縮です。複数モールと自社ECの注文を一覧に自動で取り込み、出荷先・配送方法・同梱物のルールも自動判定すると、画面の切り替えと転記がなくなります。試算では、受注情報の手作業を1件あたり数分から十数分削減できるケースがあり、月数千件規模の事業者では合計で正社員1〜2名分の作業時間に相当します。

また、受注が増えても人を増やさずに捌ける点は、稟議でも説明しやすい効果です。削減効果は、自社の実際の受注件数に当てはめて数字で示すことが大切です。月の受注件数、1件あたりの転記・確認時間、人件費単価を掛け合わせれば、年間で削減できる金額を概算できます。

OMSのクラウド型は、初期0〜100万円、月額3〜30万円が相場で、受注件数に応じた従量課金が中心です。削減できる人件費が月額を上回るかで投資回収が決まるため、事例は自社の数字で損益分岐を確認してください。削減した時間を、顧客対応の質向上や新規チャネルの開拓、販促企画に回した企業ほど、売上成長につなげています。

誤出荷・問い合わせ削減で顧客満足も向上した事例

受注のデジタル化による双方向の効率化こそ、OMS導入の第一歩です。OMSは社内工数を減らすだけでなく、誤出荷と問い合わせを減らして顧客満足と売上機会の両方に効きます。特に通販・ECでは、頼んだものと違う商品が届くトラブルが、レビューの低下やモールのペナルティに直結します。

  • 誤出荷の減少:注文データを倉庫側のWMSへ出荷指示として正確に渡し、商品違い・数量違い・住所転記ミスを減らします。
  • 問い合わせの減少:注文ステータス(受注・出荷準備・出荷済み・配送中)を一元管理し、「いつ届きますか」といった問い合わせにも即座に正確な状況を返せます。
  • 工数の削減:問い合わせ対応の工数が減り、カスタマーサポートを提案・販促活動に回せます。

誤出荷が一件起きると、正しい商品の再送料や返品の回収費がかかり、謝罪対応の人件費も必要になります。モールでの評価低下は将来の売上減につながり、こうした損失は表に出ないまま積み上がります。

事例を分析すると、導入前に受注ミスや出荷ミスの後処理へ相当な工数を割いていた企業ほど、導入後の改善幅が大きく出ています。導入効果を見積もるときは、削減できる作業時間に加えて、減らせるミスの後処理コストも含めると、現実的なROIの把握につながります。

ポイント

自社の受注件数と1件あたりの作業時間から、削減できる人件費と誤出荷のコストを概算します。それがOMSの月額費用を上回るかどうかが、導入を判断する目安になります。

RPA・自動化で出荷を自動化した生産性向上事例

自動判定ルール、定型注文の自動化、全注文の約90%の自動出荷、例外注文への人の判断を並べた図。
自動化率を支えるのは、例外を人が扱う切り分けです。

OMS事例のなかでもインパクトが大きいのが、受注から出荷指示までを自動化し、人手をほぼゼロに近づけた生産性向上の事例です。OMSは、注文を受けて在庫を引き当て、出荷指示を出すという受注フローの中核を担います。そのため、ここを自動化できれば効果が連鎖的に広がります。

特に、EC物流自動化サービスのLOGILESSでは、RPAの活用により全注文の約90%を自動出荷している事例が公表されています。受注処理のほとんどを無人化できることを、この数字が示しています。

受注の自動判定で出荷指示を無人化した事例

受注の自動出荷を実現する鍵は、注文の「自動判定ルール」をどこまで作り込めるかです。配送方法や同梱チラシ、ギフト指定の判断は、OMS側のルールエンジンで自動的に処理できます。複数モールにまたがる注文の名寄せや、与信・決済の確認まで自動判定できれば、人が見るのは例外注文だけになります。

言い換えると、前述の約90%という自動出荷率は、残り約10%の例外に人の判断を集中させた設計の成果でもあります。定型注文は自動化し、例外に人を割り当てる切り分けが、生産性向上の事例に共通する考え方です。この自動化は、倉庫側の作業効率とも連動します。

OMSが正確な出荷指示をWMSへ渡せば、倉庫ではピッキング・梱包・出荷の作業がスムーズに進みます。さらに先進的な事例では、倉庫でAI画像検品を導入して生産性を大きく高め、NTTロジスコでは約60%の向上が報告されています。OMSによる受注の自動化とWMS側の検品・出荷の自動化を組み合わせると、受注から出荷までの一連の流れ全体を省人化できます。

例外注文に人を集中させ品質を保った事例

自動化を進めた事例ほど、実は「例外処理の設計」を丁寧に行っています。バックオーダー(取り寄せ)や分納、住所不備といった例外のほか、決済保留やギフト配送も、自動化の対象から外して人が確実に判断します。この切り分けを曖昧にしたまま自動出荷を急ぐと、本来人が止めるべき注文がそのまま出荷され、かえってクレームが増えてしまいます。

一方で、約90%を自動化しつつ品質を保てた事例は、残り約10%の例外をどう拾うかを設計の主役に据えていました。この観点は、OMSを評価するときの実務的なチェックポイントになります。自動化率の高さだけでなく、例外をどう検知し、誰がどう処理するかのワークフローを柔軟に組めるかで、現場で使い続けられるOMSかどうかが決まります。

生産性向上の事例から学べるのは、自動化の数字そのものよりも、その裏にある例外設計の緻密さです。自社の受注のうち例外がどれくらいの比率を占めるかを把握したうえで、自動化と人手のバランスを設計することが、現実的なROIにつながります。

ポイント

自動出荷をどこまで任せるかは、定型注文と例外注文を切り分けられるかで決まります。例外の比率を把握して、人を割り当てる範囲を決めておきます。

複数モールの在庫を一元化し二重販売を防いだ事例

実在庫をOMSで各チャネルへ配分・同期し、売り越しや機会損失を抑える流れ図。
注文と在庫の連動で、最後の1点まで販売しやすくなります。

OMSが真価を発揮するのが、複数の販売チャネルにまたがる在庫の一元管理です。自社EC・楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなど複数チャネルで同じ商品を売る場合、各チャネルが別々に在庫を持っていると、片方で売れた商品をもう片方でも売ってしまう「二重販売(売り越し)」が起きます。

OMSは、実在庫を一つにまとめて各チャネルへ在庫数を配分・同期します。そのため、この二重販売を構造的に防げます。これはチャネルを増やすほど深刻になる問題で、OMS導入の最大の動機の一つです。

在庫同期で売り越し・機会損失を同時に減らした事例

在庫一元化の事例で目を引くのは、売り越しと機会損失を同時に防いでいる点です。各チャネルに在庫を固定配分すると、片方は在庫が余る一方、もう片方は早々に在庫切れ表示になって売り逃します。OMSで実在庫を共有し、注文が入った瞬間に全チャネルの在庫数を更新すれば、最後の1点まで全チャネルで販売できます。

これにより、在庫を眠らせることなく、売り越しもしない理想的な販売が可能になります。ただし、注意したいのがOMSとWMSの在庫情報の同期タイミングです。OMSが持つ「販売可能な引当在庫」と、WMSが持つ「倉庫の実在庫」の間にタイムラグがあると、OMS上では在庫ありなのに倉庫には実物がないという不整合が起きます。

事例を見ると、成功している企業は情物一致(情報上の在庫と物理的な在庫の一致)にこだわり、入出庫のたびに在庫をリアルタイムに反映する設計を採っています。OMSの在庫一元化は、WMSとの連携精度とセットで初めて効果を発揮するのです。

3PL・複数拠点の受注を一元化した事例

在庫一元化のメリットは、複数倉庫や3PL(物流委託先)を使う事業者で特に大きくなります。受注はOMSで一元的に受けて入り口を統一し、最適な拠点へ振り分けることで、顧客に近い倉庫から出荷して配送リードタイムを短縮できます。

3PLに物流を委託する事業者では、荷主側のOMSと委託先のWMSをどうAPI連携させるかが要点になります。受注データを委託先へ即時に渡し、出荷実績や在庫を即時に受け取れれば、委託していても自社で受注を完全にコントロールできます。一方で、この連携が日次バッチなどで遅いと、在庫の反映が遅れて売り越しの温床になります。

3PLから学べるのは、物流を委託しても「受注と在庫の司令塔はOMSで握る」という設計思想の大切さです。3PL側では、荷主のOMSやECモールとすぐつなげられる柔軟さが、新規荷主を獲得する強みであり、選ばれる理由にもなります。荷主なら委託先の連携対応力を、委託先なら自社の連携の柔軟性を、選定や営業の評価基準にすると、長期的な成果につながります。

ポイント

チャネルを増やすほど二重販売の損失が膨らむため、在庫の一元化は優先度の高い検討項目です。あわせて、OMSとWMSの在庫がリアルタイムに同期できるかを確かめておく必要があります。

繁忙期の受注急増にスケールで対応した事例

通販・ECの受注は、セールやテレビ放映、季節要因で一気に跳ね上がります。この繁忙期の受注急増にどう対応したかも、OMS事例の重要なテーマです。

手作業の受注管理では、急増した注文を捌ききれず、出荷遅延やキャンセルが多発します。一方で、OMSで受注を自動取り込み・自動判定できれば、注文が何倍になっても人を増やさずに処理を続けられます。スケーラビリティこそ、OMSがピーク対応に強い理由です。

臨時スタッフでも即戦力化できたUI設計の事例

繁忙期対応の事例で見落とされがちなのが、臨時スタッフの教育コストです。受注が急増する時期は短期スタッフを投入することが多く、彼らがすぐに業務をこなせるかどうかが現場の生死を分けます。直感的なUIで、受注一覧から出荷指示までの操作が数クリックで完結するOMSであれば、臨時スタッフも短時間で即戦力になります。

逆に操作が複雑なシステムでは、教育に時間を取られ、繁忙期にかえって生産性が落ちます。現場操作性の高さが、繁忙期の実戦力を左右するのです。事例を見ると、繁忙期を乗り切った企業は、平常時から「誰が操作しても同じ品質で受注を処理できる」標準化を進めています。

たとえば、属人的な判断をルール化してOMSに組み込み、例外だけを熟練者が見る体制にしておくと、人員が入れ替わってもオペレーションが崩れにくくなります。繁忙期は、平常時に積み上げた標準化と自動化の成果が試される本番です。OMS導入は、ピーク時の処理能力を底上げする投資としての側面も持ちます。

TCO・ROIで投資判断した導入事例

OMS導入を成功させた事例は、TCO(総保有コスト)とROIをもとに判断しています。クラウド型OMSは5年TCOで180〜1,800万円が相場とされ、削減できる人件費や減らせる誤出荷コスト、防げる機会損失を積み上げると、回収期間が見えてきます。一般的に、クラウド型のROI回収期間は1〜3年が目安で、受注量が多くチャネルが分散している事業者ほど効果が大きく出ます。

一方で、受注量が将来大きく伸びる見込みの事業者や、独自の受注フローが多い事業者は、従量課金のクラウド型ではコストが膨らんだり要件に合わなかったりします。そのため、セミスクラッチやフルスクラッチを選ぶ事例もあります。フルスクラッチは初期3,000万円〜と高額ですが、自社の受注フローに完全適合させられる強みがあります。

事例を読むときは、この回収期間を自社の数字で計算してみることが欠かせません。事例から学ぶべきは、「安いか機能が多いか」よりも、自社の受注量・チャネル数・将来の伸びに照らして最適な構築形態を選ぶ判断の基準です。riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、こうしたTCO・ROIに基づく形態選定と要件整理を一貫して支援しています。

ポイント

注文が増えても人を増やさずに処理できるか、臨時スタッフがすぐ操作できるかが、繁忙期に備える判断の目安です。TCOとROIは、5年の総保有コストで見積もります。

まとめ

OMSの導入事例を振り返ると、成功の共通点は、複数チャネルの受注を一元化し、定型注文は自動化しつつ例外に人を集中させ、在庫を一つにまとめて二重販売を防ぐ設計にあります。Excel・手作業からの脱却で受注処理時間と誤出荷を減らし、RPA活用で全注文の約90%を自動出荷している(LOGILESS事例)。

また、AI検品で生産性が約60%向上したと報告されています(NTTロジスコ事例)。これらの一次データが、その効果を裏づけています。複数モールの在庫一元化は売り越しと機会損失を同時に防ぎ、繁忙期には標準化と現場操作性が処理能力を支えます。

事例を読むときに大切なのは、「どのOMSが安いか」よりも、「なぜ受注フローが回ったのか」という視点です。OMSは在庫・倉庫側のWMSと連携して初めて情物一致が実現するため、受注の司令塔としてのOMSと、物理の倉庫を担うWMSの役割分担を意識して設計する必要があります。

自社の受注量・チャネル数・将来の伸びに照らして、まずは効果の大きいチャネル統合と自動化から着手してください。riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、受注フローから逆算した要件整理と、現場に定着するシステムづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。