OMS開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

OMS開発は、受注業務の現状分析と要件定義から始め、設計、開発・テスト、リリース、運用体制の整備へと進みます。

  • OMS開発の全体像
  • OMS開発の進め方
  • OMS開発で重要な技術的考慮点
  • 開発方式の選択(スクラッチ・パッケージ・クラウドOMS)

OMS開発は、自社ECサイト・モール・実店舗など複数チャネルからの受注を一元管理する、ECビジネスの根幹を支えるシステムへの投資です。EC・通販業務への深い知見を持つ開発パートナーを選ぶことが、成功の鍵になります。EC事業者や通販会社の担当者、プロジェクトマネージャーにとって、失敗を避けるには工程ごとの進め方を押さえておくことが役立ちます。

OMS開発の基本を知りたい方は、次の全体ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・OMS開発の完全ガイド

OMS開発の全体像

OMSを中心に注文情報、在庫、物流、決済がつながるハブ図
受注情報を複数の業務領域へつなぐ構成です。

OMSの定義と役割

OMS(Order Management System)は、顧客からの注文情報を一元的に管理し、受注から出荷、顧客への通知までの流れを自動化・効率化するシステムです。EC・通販では、自社サイトに加えて、楽天やAmazon、Yahoo!ショッピングといったモールの注文も統合します。その注文を在庫や物流、決済と連携させ、CRMとも結びつけます。

そのことで、業務効率と顧客体験の両立を実現します。近年はマルチチャネル化やオムニチャネル化が進み、OMSの役割はますます重要になっています。適切に設計されたOMSは、企業の競争優位性に直結します。

OMSの主要機能

OMS開発で実装すべき主要機能は、大きく7つに分けられます。受注取込・チャネル統合は、各販売チャネルの注文を自動で取り込み、形式をそろえる機能です。受注ステータス管理は、受付・与信・引当・出荷指示・出荷完了・キャンセルまでの状態を追う機能です。

3つ目以降は、在庫引き当て・在庫管理連携、決済処理・与信審査連携、出荷指示・WMS連携(物流倉庫への指示)です。残る2つは、顧客通知・問い合わせ対応(自動メールやSMS送信)と、受注分析・レポーティングです。これらの機能を、ビジネスの規模や特性に合わせて設計・実装することが、OMS開発の核心です。

EC・通販における受注管理の重要性

EC・通販でOMSが重要なのは、受注管理の精度がそのまま顧客体験に表れるからです。注文確認メールの遅れや在庫切れによる受注キャンセルは、顧客満足度の低下と直接つながります。誤配送や、配送状況が分からないことも、顧客満足度を下げる要因です。

特にセール・キャンペーン時は、通常の何倍もの注文が集中するため、システムの処理能力と自動化の精度が試されます。これに応えるには、適切に構築されたOMSが必要です。こうしたOMSは、ピーク時も安定して運用でき、顧客対応コストの削減、リピート購入率の向上、クレーム件数の減少につながります。

ポイント

OMSの機能を決めるときは、受注から顧客通知までの業務フローを基準にすると、社内の業務に合った機能の範囲を見極めやすくなります。

OMS開発の進め方

OMS開発を要件定義、設計、開発・テスト・リリース、運用体制整備の順に示す工程図
運用開始後も工程の一部として体制を整えます。

受注業務分析・要件定義

OMS開発の第一工程は、受注業務の分析と要件定義です。まず、注文の受付から発送完了までの受注フローを一覧にします。そのうえで、どのチャネルからどれだけ受注があるかを把握し、手作業の多さやエラー、特定チャネルの対応の遅れといった課題を整理します。

要件定義では、必須機能、優先機能、将来機能を分けて整理します。あわせて、EC構築プラットフォームやWMSとの連携、決済・配送業者APIとの連携の要件を明確にします。

特に重要なのは、注文キャンセル・返品・交換のフローと、在庫引き当てのルール(先着順や店舗在庫優先など)の詳細設計です。これらは後工程での手戻りを防ぐため、要件定義の段階で徹底して洗い出す必要があります。

設計・外部連携設計

要件定義が終わったら、設計フェーズに入ります。中心になるのは、システムアーキテクチャ設計とデータモデル設計です。

OMSのデータモデルでは、注文テーブル、注文明細テーブル、注文ステータス履歴テーブルの設計が要になります。後の分析やレポーティングの要件も見据えて、データ構造を組む必要があります。

外部連携設計では、各連携システムのAPI仕様書を確認し、内部のインターフェースを設計します。特に押さえたいのは、楽天やAmazonなど各ECプラットフォームの注文データの形式の違いを吸収する「データ正規化レイヤー」と、在庫の二重引き当てを防ぐ「在庫ロック機構」の設計です。これらを適切に設計すると、後の開発・テスト工程で品質が格段に上がります。

開発・テスト・リリース

開発フェーズでは、まずコア機能の受注取込、ステータス管理、在庫引き当てを実装します。その後、機能を順に広げていくアジャイル的な進め方が有効です。

テストでは、OMS特有のシナリオテストが欠かせません。特に、注文量ピーク時の負荷テストと、複数チャネルからの同時注文に対する在庫整合性テストは必ず実施します。さらに、キャンセル・返品処理の複数パターンテストや、外部システム(WMS・決済)とのデータ連携テストも行います。

リリースは、リスクを分散するためフェーズに分けることを推奨します。まず特定のチャネルだけに公開し、その後に全チャネルへ広げます。リリース後の最初の2〜4週間は、運用チームとのホットラインを確保し、迅速に対応できる体制を保つことが大切です。

運用体制の整備

OMS本稼働後の運用体制は、システムの安定稼働と継続的な改善に欠かせません。主な要素は4つです。

システム監視では、エラー発生の自動検知とアラート通知を行います。定期メンテナンスでは、データベースのパフォーマンスチューニングやログ管理を行います。

残りの2つは、各ECプラットフォームのAPI仕様変更への追従と、カスタマーサポートとのエスカレーションラインを含む問い合わせ対応フローです。セール・キャンペーン前には、事前に負荷テストを実施し、必要に応じてインフラをスケールアップできる体制を整えておきます。そうすることで、ピーク時のトラブルを未然に防げます。

ポイント

各工程の終わりに、キャンセル・返品のフローや在庫引き当てのルールが決まっているかを確かめると、設計や開発での手戻りを防ぎやすくなります。

OMS開発で重要な技術的考慮点

在庫を中心に排他制御、安全在庫数、キューイングシステムを配置した過剰受注防止の図
在庫の二重引き当てや注文集中に複数の仕組みで備えます。

マルチチャネル対応の実装方法

マルチチャネル受注対応は、OMS開発で最も複雑な実装課題の一つです。販売チャネル(自社EC・楽天・Amazon・Yahoo!・実店舗POSなど)ごとに注文データの形式が違い、APIの仕様や更新の頻度も異なります。こうした違いを吸収する仕組みとして、「チャネルアダプターパターン」が有効です。

各チャネル専用のアダプターがデータ変換を担い、OMS内部では統一されたデータモデルで処理します。これにより、新しいチャネルを加えるときも、コアロジックを変えずにアダプターを追加するだけで対応でき、拡張性が高まります。楽天やAmazonはAPIの仕様変更が比較的多いため、アダプター層を独立させる設計は、保守性の向上にもつながります。

在庫連携と過剰受注防止の設計

在庫連携は、OMSの品質を大きく左右する技術テーマです。複数チャネルの注文が同時に入っても在庫を二重に引き当てないよう、データベースで排他制御を行い、在庫引き当て処理のトランザクションを管理することが不可欠です。また、WMS(倉庫管理システム)との在庫同期では、リアルタイム同期と非同期バッチ処理のどちらを採るかを、性能要件とWMS側の対応能力から判断します。

過剰受注の防止には、「安全在庫数」を設定する機能も有効です。安全在庫数は、チャネルに公開する在庫数を実在庫より少なく設定しておくバッファです。セール時は注文の集中が予想されるため、RabbitMQやAmazon SQSなどのキューイングシステムの導入も検討に値します。

決済・配送連携の実装ポイント

決済連携では、クレジットカードやコンビニ決済など、複数の決済手段に対応する設計が必要です。後払いや代金引換も対象に含めます。

各決済代行会社のAPIを統一的に扱う「決済アブストラクションレイヤー」の設計は、保守性の向上に有効です。加えて、決済エラー発生時の注文ステータス管理(与信失敗、決済タイムアウトなど)も、丁寧に設計する必要があります。

配送連携では、ヤマト運輸や佐川急便、日本郵政などの配送業者APIと連携します。そのうえで、送り状番号の発行や配送状況の取り込み、お届け予定日の通知を自動化します。複数の配送業者を使い分ける場合は、商品属性、配送先地域、サービスレベルに応じた自動振り分けロジックの実装も、重要な機能要件となります。

ポイント

マルチチャネル対応と在庫連携は、チャネルごとの違いを吸収する仕組みと、二重引き当てを防ぐロック制御を、設計段階で決めておけるかが判断の目安です。

開発方式の選択(スクラッチ・パッケージ・クラウドOMS)

スクラッチ開発の特徴と向いているケース

スクラッチ開発は、自社固有の業務フローや複雑な要件に完全に対応したOMSを作れる反面、開発期間が長くなり、費用も高くなる傾向があります。向いているのは、業界特有の受注ルールや価格計算ロジックがある場合と、既存の社内基幹システムと密に連携する必要がある場合です。将来の機能拡張の柔軟性を最大限確保したい場合にも向いています。

開発費用の相場は機能規模によりますが、中規模のOMSで1,000万〜3,000万円程度が目安です。ソースコードの完全な所有権を持てるため、長期的な運用や改修のコストを管理しやすいという利点があります。

パッケージ・クラウドOMSとのカスタマイズ開発

市販のOMSパッケージやクラウドサービス(nexOMS、CROSS MALL、シップスなど)をベースに、カスタマイズして作る方式もあります。標準機能を活用するため、開発期間とコストを削減できます。この方式は、受注管理の業務フローが比較的標準的で、スピーディな導入を求める場合に適しています。

ただし、カスタマイズの範囲が広がると、パッケージ本来のメリットが薄れ、バージョンアップ時の影響も大きくなるリスクがあります。クラウドOMSはSaaS型のため初期投資を抑えられますが、データの所有権、外部連携の柔軟性、業務への適合度を慎重に評価する必要があります。どの方式を選ぶかは、要件と予算、内製化の方針を総合して判断します。

ポイント

スクラッチ・パッケージ・クラウドの選択は、自社の業務の複雑さ、既存システムとの連携の深さ、長期の改修コストの見通しを合わせて見ると絞り込みやすくなります。

まとめ

OMS開発を成功させるには、まず受注業務の現状分析と課題の明確化から始めます。次に、チャネル統合、在庫連携、決済・配送連携の要件を詳しく定義します。そのうえで、マルチチャネル対応、在庫の二重引き当て防止、ピーク負荷対策といった技術面の考慮点を設計に組み込みます。

さらに、スクラッチ、パッケージ、クラウドの開発方式から、自社の要件に合うものを選びます。最後に、リリース後の運用体制と継続的な改善サイクルを整えます。

こうしたプロセスを着実に進めることが大切です。OMS開発はECビジネスの根幹を支えるシステムへの投資であり、EC・通販業務への深い知見を持つ開発パートナーを選ぶことが成功の鍵となります。

受発注管理Box|SaaSでは合わない受発注業務を早く・合理的にシステム化

受発注業務のシステム化の検討

「メール・FAX・Excelでの注文管理」「受注・発注・在庫の二重入力」「独自商流でSaaSが合わない」——そんな課題は、受注・発注・在庫・出荷・請求を一元化する受発注管理Boxで解決できます。SaaSとフルスクラッチの“ちょうどいい中間”を、短期間・低コストで実現できます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。