PaaS活用の導入/開発事例や活用/成功事例について

PaaS(Platform as a Service)の活用を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「同じようにオンプレミスやIaaSで重い運用負荷を抱えていた企業が、実際にどうやってPaaSへ移行し、どれだけコストや工数を削減できたのか」という具体的な事例ではないでしょうか。PaaSはOSやミドルウェア、ランタイムの管理をクラウド事業者に任せ、アプリケーション開発に集中できる仕組みですが、その効果は導入の進め方によって大きく変わります。だからこそ、自社の状況に近い導入事例・活用事例こそが、投資判断とPoCの設計精度を高めてくれます。

本記事は、PaaS活用の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。オンプレミスからの移行でインフラ費用を約3分の1に削減した事例、サーバーレス基盤の活用でアイドルコストをゼロに近づけた事例、API連携で業務を自動化した事例、さらに社内に内製文化を根づかせるCCoE(Cloud Center of Excellence)立ち上げまで、一次データとあわせて具体的に解説します。なお、PaaS活用の全体像をまだ把握していない方は、まずPaaS活用の完全ガイドから読むことをおすすめします。

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オンプレミス脱却でインフラ費用を圧縮した事例

オンプレミス脱却でインフラ費用を圧縮したPaaS活用事例のイメージ

PaaS活用でもっとも分かりやすい成果が出るのが、オンプレミスや手組みのIaaS構成からの脱却によるインフラ費用の圧縮です。自社でサーバーやOS、ミドルウェアを抱えていると、調達・パッチ適用・冗長化・監視といった運用作業に常時人手がかかります。マネージドなPaaS基盤に載せ替えることで、これらの運用負荷が事業者側に移り、人件費とインフラ費の双方を構造的に削れます。

マネージド活用でインフラ費を約3分の1にした事例

従業員50〜100名規模の企業がオンプレミスからクラウドへ移行する場合、設計・構築で100万〜400万円、データ移行で20万〜80万円、トータル150万〜500万円前後が一次データ上の相場です。ここで重要なのは、移行後の運用フェーズです。マネージドなデータベースやアプリケーション実行環境を使い、サーバー管理を事業者に任せることで、月額のインフラ費用を従来比で大きく下げられた事例があります。一次データでは、マネージドサービスの活用によってインフラコストを約3分の1まで圧縮できたケースが報告されています。

この削減効果は、単なる料金の比較だけでは測れません。オンプレミスでは、サーバーの保守契約、データセンターの電源・空調、ハードウェアの定期更改といった目に見えにくいコストが積み上がっています。PaaSに移すと、これらが従量課金または定額のサービス料金に置き換わり、コスト構造が透明になります。事例を読むときは、自社の現状のインフラ運用にかかっている人月と設備費を棚卸しし、PaaS移行後の料金と比較することで、削減幅を定量化してください。

運用工数の削減を人件費換算で示した事例

PaaS化の効果は、インフラ料金だけでなく運用工数の削減にも表れます。クラウド開発は費用の約8割が人件費を占めると言われ、運用フェーズでも同様にエンジニアの稼働が最大のコストです。OSのセキュリティパッチ適用、ミドルウェアのバージョン管理、冗長構成の維持といった作業をPaaSが肩代わりすれば、その分の運用工数がそのまま削減されます。保守運用費は年で開発費の10〜20%(開発500万円なら年50万〜100万円)が目安ですが、PaaS活用でこの比率を抑えられた事例があります。

成功事例に共通するのは、削減した運用工数を「コスト減」だけで終わらせず、新規開発や改善活動に再配分している点です。インフラの面倒を見ていたエンジニアが、アプリケーションの機能改善やデータ活用に時間を使えるようになることで、PaaS移行はコスト削減と開発スピード向上を同時に実現します。事例を評価するときは、削減した工数がどこに振り向けられ、どんな付加価値を生んだかまで読み解くと、自社の投資判断に役立ちます。

サーバーレス活用でアイドルコストをゼロに近づけた事例

サーバーレス活用でアイドルコストをゼロに近づけたPaaS活用事例のイメージ

PaaSの一形態であるサーバーレス(FaaS)を活用した事例は、コスト最適化の観点でとくに示唆に富みます。サーバーレスは、リクエストがあったときだけ処理が実行され、アイドル時には課金が発生しないため、アクセスに波があるシステムでコスト効率が際立ちます。常時稼働の仮想サーバーを抱える構成と比べ、待機時間のコストを構造的にゼロへ近づけられるのが最大の特徴です。

無料枠内で運用しコストを抑えた小規模APIの事例

サーバーレスの料金体系は、一次データで具体的に示されています。API呼び出しは、AWS・Azureが月100万回まで無料・超過分は100万回あたり0.2ドル、GCPは月200万回まで無料・超過分は100万回あたり0.4ドルです。コンピューティングは、100万GB秒あたりでAWSが16.7ドル、Azureが16ドル、GCPが2.5ドルと差があります。アクセスが少〜中程度のサーバーレスAPI構成(関数+APIゲートウェイ+マネージドDB)は、月数百円程度、あるいは無料枠内に収まることも珍しくありません。

こうした料金体系を活かし、社内向けの問い合わせ集計や、特定時間帯だけ動くバッチ処理をサーバーレスで構築し、運用コストをほぼゼロに抑えた事例があります。常時起動のサーバーを立てれば月数千円〜数万円かかる処理が、サーバーレスなら実行回数分しか課金されないため、小規模・低頻度の用途では圧倒的に有利です。事例を読むときは、対象システムのアクセス頻度と無料枠の上限を照らし合わせ、自社のワークロードが本当にサーバーレス向きかを見極めることが重要です。

アクセス急増に自動スケールで耐えた事例

サーバーレスやマネージドなコンテナ基盤のもう一つの強みが、アクセス急増への自動対応です。キャンペーンや季節要因で一時的にトラフィックが跳ね上がるシステムでは、従来は将来のピークを見越して過剰にサーバーを用意し、平常時は遊ばせるという無駄が生じていました。サーバーレスやマネージドな実行環境では、需要に応じてリソースが自動で増減するため、ピーク時の処理能力と平常時のコスト効率を両立できます。

成功事例では、突発的なアクセス集中があっても自動スケールでサービスを止めずに乗り切り、かつ平常時はコストを最小化できたことが報告されています。この「ピークに合わせた過剰投資をしなくてよい」という点こそ、PaaS・サーバーレス活用の本質的な価値です。一方で、サーバーレスは長時間・高負荷の連続処理には不向きな領域もあるため、事例から「どんなワークロードで効果が出たか」を切り分けて学ぶことが、適用範囲の見極めにつながります。

PaaSとAPI連携で業務を自動化した事例

PaaSとAPI連携で業務を自動化したPaaS活用事例のイメージ

PaaSの価値は、コスト削減だけでなく、API連携によって複数のシステムやSaaSをつなぎ、業務を自動化できる点にあります。PaaSが提供するAPIゲートウェイやマネージドな連携基盤を使えば、自社システムと外部サービスをスムーズに接続し、これまで人手で行っていたデータ転記や処理を機械化できます。ここでは、API連携を軸に業務効率を高めた事例を見ていきます。

AI系マネージドAPIで内製を加速した事例

PaaSの大きな利点は、AIや機械学習といった高度な機能を、自前でモデルを構築せずにマネージドAPIとして使える点です。一次データでは、画像認識APIの料金として、AWSが月5,000枚まで無料・超過1,000枚あたり1.3ドル、Azureが月5,000件まで無料・超過1,000件あたり1ドル、GCPが月1,000ユニットまで無料・超過1,000ユニットあたり1.5ドルといった水準が示されています。少量の利用であれば無料枠内に収まり、低コストでAI機能を試せます。

こうしたマネージドAPIを活用し、書類のOCR読み取りや画像分類を自社業務に組み込んだ事例では、専門のAIエンジニアを抱えずとも高度な機能を実装できました。PaaSが提供する機能をAPI経由で呼び出すだけで済むため、開発期間も短縮されます。事例から学べるのは、「すべてを自前で作る」のではなく、「PaaSのマネージド機能を組み合わせて素早く価値を出す」という発想です。これがPaaS活用の真骨頂だと言えます。

CI/CDパイプラインでリリースを高速化した事例

PaaS活用の事例では、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の整備も成果に直結します。PaaSはデプロイ環境がマネージド化されているため、コードをコミットすると自動でビルド・テスト・デプロイが走るパイプラインを組みやすく、リリースのリードタイムを大幅に短縮できます。CI/CDやDevOps系のSaaSは月数万円程度で利用でき、投資対効果も見合いやすい領域です。

パイプラインを整えた事例では、これまで手作業で行っていたデプロイ作業が自動化され、人的ミスが減り、リリース頻度が上がったことが報告されています。新機能を素早く本番に届けられるようになることは、事業のスピードそのものを左右します。PaaSの恩恵は、インフラの隠蔽だけでなく、こうした開発プロセスの近代化にも及びます。事例を読むときは、コスト削減と並んで「開発のリードタイムがどれだけ短くなったか」という観点も評価してください。

内製文化を根づかせたCCoE立ち上げ事例

内製文化を根づかせたCCoE立ち上げのPaaS活用事例のイメージ

PaaS活用の成否を長期的に左右するのが、社内に運用・開発のノウハウを根づかせられるかどうかです。外部委託だけに頼ると、本業に集中できる一方で、ノウハウが自社に蓄積されないというデメリットがあります。これを乗り越えた事例に共通するのが、CCoE(Cloud Center of Excellence)と呼ばれる横断組織を立ち上げ、内製化を計画的に進めた点です。

外部委託からスキルトランスファーした事例

内製化に成功した事例では、最初から自社だけで構築するのではなく、PaaSに詳しい外部パートナーと協働しながら、計画的にスキルを移管しています。具体的には、構築時にパートナーと並走し、設計の意図や運用手順をドキュメント化しながら、自社メンバーが徐々に主担当を引き継いでいく進め方です。これにより、委託のメリット(早期立ち上げ)と内製のメリット(ノウハウ蓄積)を両立できます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、こうした「並走しながらスキルを移管する」進め方を重視しています。単に作って納めるのではなく、お客様の社内に運用できる体制が残ることを前提に設計することで、PaaS移行後の自走を支援します。事例から学べるのは、内製化はゴールではなくプロセスであり、外部の知見を借りながら段階的に進めるのが現実的だという点です。

PoCで効果を検証してから本格導入した事例

堅実な成功事例に共通するもう一つの要素が、PoC(概念実証)で効果を検証してから本格導入に進んでいることです。いきなり全システムをPaaSに載せ替えるのではなく、まず一部の業務やシステムで小さく試し、「想定したコスト削減や性能が本当に得られるか」「自社の運用体制で回せるか」を確認します。PoCでは、何をどこまで検証し、何をもって合格とするかという評価軸をあらかじめ決めておくことが肝心です。

PoCを丁寧に行った事例では、本番移行で想定外のコスト増や性能不足に陥るリスクを大きく減らせています。逆に、PoCを省いて一気に本番化した結果、転送量の急増やワークロードの不適合で追加費用が発生する失敗も後を絶ちません。事例を読むときは、成功企業がどんな指標でPoCの合否を判断したか、その評価軸に注目すると、自社の導入計画に活かせます。PaaS活用は、検証と段階的拡大を組み合わせてこそ、安定した成果につながります。

まとめ

PaaS活用事例のまとめイメージ

PaaS活用の事例を振り返ると、成果の核心は「マネージドな機能に運用を委ね、削減した工数と費用を付加価値の創出に再配分する」という一点に集約されます。オンプレミス脱却ではマネージド活用でインフラ費を約3分の1に圧縮でき、サーバーレスはアイドルコストをゼロに近づけ自動スケールでピークに耐えます。さらにAPI連携やAIマネージドAPIで業務を自動化し、CCoE立ち上げとPoCによる検証で内製文化を根づかせることが、長期的な定着の鍵になります。

事例を読むときに大切なのは、「どのPaaSを使ったか」だけでなく「どんなワークロードで、どう段階的に導入したか」という視点です。自社のシステムのアクセス特性とコスト構造に照らし、まずはPoCで効果を検証できる範囲から、PaaS活用の一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、PaaSの強みを引き出す設計と、社内に運用が残る内製化支援を一貫して行っています。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。