PaaS活用の導入/開発事例や活用/成功事例について

PaaS活用の事例は、インフラ費の圧縮、アイドルコストの削減、業務の自動化、内製化という4つに分けると見やすくなります。本記事は、PaaS活用の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。

PaaS(Platform as a Service)の活用を検討するとき、効果は導入の進め方で変わります。だからこそ、自社の状況に近い導入事例・活用事例が、投資判断とPoCの設計精度を高めてくれます。全体像はPaaS活用の完全ガイドで先に確認できます。

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・PaaS活用の完全ガイド

オンプレミス脱却でインフラ費用を圧縮した事例

マネージドなPaaS基盤と、データベース、実行環境、人月、設備費の関係を示す図
運用負荷と設備費を同時に見ると、移行後の費用構造を捉えやすくなります。

PaaS活用でもっとも分かりやすい成果が出るのは、オンプレミスや手組みのIaaS構成からの脱却によるインフラ費用の圧縮です。自社でサーバーやOS、ミドルウェアを抱えていると、調達・パッチ適用・冗長化・監視といった運用作業に常時人手がかかります。そこで、マネージドなPaaS基盤に載せ替えると、これらの運用負荷が事業者側に移り、人件費とインフラ費の双方を構造的に削れます。

マネージド活用でインフラ費を約3分の1にした事例

オンプレミスからクラウドへ移行するには、まず移行そのものの費用がかかります。ただし、見るべきは移行後の運用フェーズです。マネージドなデータベースやアプリケーション実行環境を使い、サーバーの管理を事業者に任せることで、運用にかかっていた手間が減ります。

オンプレミスには、保守契約、データセンターの電源・空調、ハードウェアの定期更改といった、見えにくいコストが積み上がっています。PaaSに移すと、これらが従量課金または定額のサービス料金に置き換わり、コスト構造が透明になります。

この削減効果は、単なる料金の比較だけでは測れません。事例を読むときは、自社のインフラ運用にかかる人月と設備費を洗い出し、PaaS移行後の料金と比べることで、削減幅を数字で把握できます。

移行費の目安と、削減の実績を数字で押さえておきます。

  • 移行費の目安:従業員50〜100名規模で、設計・構築100万〜400万円、データ移行20万〜80万円。合計150万〜500万円前後が一次データ上の相場です。
  • インフラ費の削減:マネージドなサービスの活用で、インフラコストを約3分の1まで圧縮できたケースが報告されています。

運用工数の削減を人件費換算で示した事例

PaaS化の効果は、インフラ料金だけでなく、運用工数の削減にも表れます。クラウド開発は費用の約8割が人件費を占めると言われ、運用フェーズでもエンジニアの稼働が最大のコストです。

運用の作業をPaaSが肩代わりすれば、その分の運用工数がそのまま減ります。PaaS活用で、保守運用費の比率を抑えられた事例もあります。

成功事例に共通するのは、削減した運用工数を「コスト減」だけで終わらせず、新規開発や改善活動に振り向けている点です。インフラの面倒を見ていたエンジニアが、アプリケーションの機能改善やデータ活用に時間を使えるようになることで、PaaS移行はコスト削減と開発スピード向上を実現します。

事例を評価するときは、削減した工数がどこに振り向けられ、どんな付加価値を生んだかまで読み解くと、自社の投資判断に役立ちます。

保守運用費の目安と、削減の対象を押さえておきます。

  • 保守運用費の目安:年で開発費の10〜20%です。開発500万円なら、年50万〜100万円が目安になります。
  • 削減の対象:OSのセキュリティパッチ適用、ミドルウェアのバージョン管理、冗長構成の維持などの作業です。

ポイント

インフラ費の効果は、移行費用だけでなく、移行後の運用にかかる人手と設備費まで含めて比べると、自社の判断材料として使えます。

サーバーレス活用でアイドルコストをゼロに近づけた事例

サーバーレスを中心に、処理実行、アイドル時の課金、自動スケール、無料枠を配置した図
待機が多い処理では、アイドル時間の扱いが費用差につながります。

PaaSの一形態であるサーバーレス(FaaS)を活用した事例は、コスト面で特に示唆に富みます。

サーバーレスは、リクエストがあったときだけ処理が実行され、アイドル時には課金が発生しません。そのため、アクセスの増減が大きいシステムでコスト効率が際立ちます。常時稼働の仮想サーバーを抱える構成と比べると、待機時間のコストを構造的にゼロへ近づけられる点が最大の特徴です。

無料枠内で運用しコストを抑えた小規模APIの事例

サーバーレスの料金体系は、一次データで具体的に示されています。アクセスが少〜中程度のサーバーレスAPI構成(関数+APIゲートウェイ+マネージドDB)は、月数百円程度、あるいは無料枠内に収まることも珍しくありません。

社内向けの問い合わせ集計や、特定の時間帯だけ動くバッチ処理をサーバーレスで構築し、運用コストをほぼゼロに抑えた事例もあります。

常時起動のサーバーを立てると月数千円〜数万円かかる処理も、サーバーレスなら実行回数分しか課金されません。そのため、小規模で低頻度の用途では大きく有利になります。

事例を読むときは、対象システムのアクセス頻度と無料枠の上限を照らし合わせ、自社のワークロードが本当にサーバーレス向きかを見極める必要があります。

API呼び出しとコンピューティングの料金を、主要な事業者ごとに並べます。API呼び出しの超過分は、AWS・Azureが100万回あたり0.2ドル、GCPが100万回あたり0.4ドルです。

  • API呼び出しの料金:AWS・Azureは月100万回まで無料、GCPは月200万回まで無料です。
  • コンピューティングの料金:100万GB秒あたりで、AWSは16.7ドル、Azureは16ドル、GCPは2.5ドルです。

アクセス急増に自動スケールで耐えた事例

サーバーレスやマネージドなコンテナ基盤のもう一つの強みは、アクセス急増に自動で対応できる点です。

従来は、将来のピークを見越して過剰にサーバーを用意していたことで、平常時は遊ばせるという無駄が生じていました。一方で、サーバーレスやマネージドな実行環境では、需要に応じてリソースが自動で増減するため、ピーク時の処理能力と平常時のコスト効率を両立できます。

成功事例では、突発的なアクセス集中があっても自動スケールでサービスを止めずに乗り切り、平常時はコストを最小化できたことが報告されています。ピークに合わせて設備を増やさなくてよい点こそ、PaaS・サーバーレス活用の本質的な価値です。

事例から「どんなワークロードで効果が出たか」を切り分けて学ぶことが、適用範囲の見極めにつながります。

向く場面と向かない場面を並べておきます。

  • 向く場面:キャンペーンや季節要因で、一時的にトラフィックが跳ね上がるシステムです。
  • 向かない場面:長時間・高負荷の連続処理には、サーバーレスが不向きな領域もあります。

ポイント

サーバーレスを使うかどうかは、アクセス量の増減と処理の性質で判断できます。待機が多い小規模な処理か、長時間の連続処理かを見ると、効果が出る場面が分かります。

PaaSとAPI連携で業務を自動化した事例

PaaSの価値は、コスト削減だけでなく、API連携によって複数のシステムやSaaSをつなぎ、業務を自動化できる点にあります。PaaSが提供するAPIゲートウェイやマネージドな連携基盤を使えば、自社システムと外部サービスをスムーズに接続できます。また、これまで人手で行っていたデータ転記や処理も機械化できます。

ここでは、API連携を中心に業務効率を高めた2つの事例を取り上げます。

AI系マネージドAPIで内製を加速した事例

PaaSの大きな利点は、AIや機械学習といった高度な機能を、自前でモデルを構築せずにマネージドAPIとして使える点です。少量の利用であれば無料枠内に収まり、低コストでAI機能を試せます。

マネージドAPIを活用し、書類のOCR読み取りや画像分類を自社業務に組み込んだ事例では、専門のAIエンジニアを抱えずとも高度な機能を実装できました。PaaSが提供する機能をAPI経由で呼び出すだけで済むため、開発期間も短縮できます。

事例から学べるのは、PaaSのマネージド機能を組み合わせて、素早く価値を出すという発想です。これがPaaS活用の真骨頂といえます。

画像認識APIの料金は、無料枠と超過分の二つの面から見ておきます。

  • 無料枠:AWSは月5,000枚、Azureは月5,000件、GCPは月1,000ユニットまで無料です。
  • 超過分の料金:AWSは1,000枚あたり1.3ドル、Azureは1,000件あたり1ドル、GCPは1,000ユニットあたり1.5ドルです。

CI/CDパイプラインでリリースを高速化した事例

PaaS活用の事例では、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の整備も成果に直結します。PaaSはデプロイ環境がマネージド化されているため、コードをコミットすると自動でビルド・テスト・デプロイが走るパイプラインを組みやすく、リリースのリードタイムを大幅に短縮できます。

パイプラインを整えた事例では、これまで手作業で行っていたデプロイ作業が自動化され、人的ミスが減り、リリース頻度が上がったことが報告されています。

新機能を素早く本番に届けられることは、事業のスピードそのものを左右します。PaaSの恩恵は、インフラを意識せずに済む点にとどまらず、開発プロセスの近代化にも及びます。

事例を読むときは、コスト削減と並んで「開発のリードタイムがどれだけ短くなったか」という観点も評価してください。

費用の面では、利用料と投資対効果を見ておきます。

  • 利用料の目安:CI/CDやDevOps系のSaaSは、月数万円程度で利用できます。
  • 投資対効果:費用に対して成果が見合いやすい領域です。

ポイント

API連携の効果は、転記や処理がどれだけ機械化できたか、AIのマネージドAPIで機能を素早く使えたか、リリースが速くなったかで測れます。

内製文化を根づかせたCCoE立ち上げ事例

PoCによる効果検証から外部パートナーとの協働、スキル移管、主担当の引き継ぎへ進む図
検証と引き継ぎを順に重ねると、社内に運用の知見が残ります。

PaaS活用の成否を長期的に左右するのが、社内に運用・開発のノウハウを根づかせられるかどうかです。外部委託だけに頼ると本業に集中できる一方で、ノウハウが自社に蓄積されないというデメリットがあります。この課題を乗り越えた事例に共通するのが、CCoE(Cloud Center of Excellence)と呼ばれる横断組織を立ち上げ、内製化を計画的に進めた点です。

外部委託からスキルトランスファーした事例

内製化に成功した事例では、最初から自社だけで構築するのではなく、PaaSに詳しい外部パートナーと協働しながら、計画的にスキルを移管しています。これにより、委託のメリットである早期の立ち上げと、内製のメリットであるノウハウの蓄積を両立できます。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、「並走しながらスキルを移管する」進め方を重視しています。作って納めるだけでなく、お客様の社内に運用できる体制が残ることを前提に設計することで、PaaS移行後の自走を支援します。

事例から学べるのは、内製化はゴールではなくプロセスであり、外部の知見を借りながら段階的に進めるのが現実的だという点です。

進め方を、構築時と引き継ぎの二つの段階に分けて見ておきます。

  • 構築時の並走:パートナーと並走しながら、設計の意図や運用手順をドキュメントにまとめます。
  • 主担当の引き継ぎ:自社メンバーが徐々に主担当を引き継ぎ、運用を自社で回せるようにしていきます。

PoCで効果を検証してから本格導入した事例

堅実な成功事例に共通するもう一つの要素は、PoC(概念実証)で効果を検証してから本格導入に進んでいることです。いきなり全システムをPaaSに載せ替えるのではなく、まず一部の業務やシステムで小さく試します。

PoCを丁寧に行った事例では、本番移行で想定外のコスト増や性能不足に陥るリスクを減らせています。逆に、PoCを省いて一気に本番化した結果、転送量の急増やワークロードの不適合で追加費用が発生する失敗も後を絶ちません。

事例を読むときは、成功企業が何を指標に効果を判断したかに注目すると、自社の導入計画に活かせます。PaaS活用は、検証と段階的な拡大を組み合わせてこそ、安定した成果につながります。

PoCの進め方は、検証する項目と評価軸の二つで考えます。

  • 検証する項目:想定したコスト削減や性能が本当に得られるか、自社の運用体制で回せるかです。
  • 評価軸:何をどこまで検証し、何をもって合格とするかを、あらかじめ決めておきます。

ポイント

内製化は、外部パートナーと並走しながら段階的に進めると現実的です。PoCで評価軸を決めてから本格導入すると、判断の根拠を社内に示せます。

まとめ

PaaS活用の事例を振り返ると、成果の核心は「マネージドな機能に運用を委ね、削減した工数と費用を付加価値の創出に再配分する」という一点にまとめられます。オンプレミス脱却ではマネージド活用でインフラ費を約3分の1に圧縮でき、サーバーレスはアイドルコストをゼロに近づけ、自動スケールでピークに耐えます。

API連携やAIマネージドAPIで業務を自動化し、CCoE立ち上げとPoCによる検証で内製文化を根づかせることが、長期的な定着につながります。

事例を読むときに大切なのは、「どのPaaSを使ったか」だけでなく、「どんなワークロードで、どう段階的に導入したか」という視点です。自社のシステムのアクセス特性とコスト構造に照らし、まずはPoCで効果を検証できる範囲から、PaaS活用の一歩を踏み出してください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、PaaSの強みを引き出す設計と、社内に運用が残る内製化支援を一貫して行っています。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。