年金システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

年金システム開発の費用相場は、簡易な計算・照会ツールで300万円〜3,000万円、パッケージ導入で1,000万円〜5,000万円、複数制度を統合する基幹システムで5,000万円〜3億円が目安です。

ただし、年金システムの見積は画面数だけでは決まりません。企業年金の制度数、加入者・受給権者の人数、旧制度を含む履歴年数、人事給与や記録関連運営管理機関との連携、給付計算の検証、セキュリティ、法改正対応、保守までを含めて比較する必要があります。この記事では、企業年金を中心に年金システムの費用内訳、価格帯、変動要因、開発の進め方、コストを抑えるポイントを具体的に解説します。

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・年金システム開発の完全ガイド

年金システムの全体像を理解すると費用を見積もりやすくなります

年金システムの全体像を整理するイメージ

年金システムとは、加入者や受給権者の情報を管理し、掛金や拠出金、給付額、支払、帳票、外部機関との連携を一貫して扱うシステムです。検索時の「年金システム」には、公的年金、企業年金、確定拠出年金、生命保険会社の個人年金保険が含まれるため、最初に対象を分けることが費用算定の出発点になります。

企業年金と個人年金保険では管理する単位が異なります

企業年金では、制度・規約、事業所、加入者、受給権者、扶養情報、資格の取得・喪失、給与、掛金、退職・脱退一時金、年金給付、源泉徴収などを管理します。確定給付企業年金では規約に基づく給付計算と長期履歴が中心になり、確定拠出年金では加入者ごとの拠出、運用、記録関連運営管理機関とのデータ連携、給付や資産移換が重要になります。厚生労働省も私的年金を確定給付型と確定拠出型に大別して説明しています(出典: 厚生労働省「私的年金制度の概要」、2026年確認)。そのため、制度の違いを要件定義書に明記しておくことが大切です。

一方、生命保険会社の個人年金保険では、保険契約、証券、保険料、予定利率、積立金、年金開始、受取人、解約・減額、数理計算、代理店や顧客チャネルを管理します。企業年金と共通するのは長期履歴、制度改定、支払精度、個人情報保護ですが、加入者・受給権者を管理するか、契約・被保険者を管理するかでデータモデルが変わります。対象を曖昧にしたまま見積を取ると、後から計算機能や契約管理を追加することになり、費用が膨らみやすくなります。

費用に影響する主要機能は10領域に分けて整理します

企業年金システムの機能は、制度・規約・給付設計マスタ、加入者・受給権者管理、資格取得・喪失や異動、給与連携、掛金・拠出金計算、給付・支払・源泉徴収、旧制度を含む履歴管理、基金経理・決算・帳票、Webポータル・電子申請、外部機関連携とセキュリティに分けると整理しやすくなります。すべてを一度に開発する必要はありませんが、計算の正本データ、締め処理、承認者、再計算やエラー再処理の責任は初期段階で決める必要があります。

例えば、基金経理だけをクラウド化する案件と、DB・DC・退職一時金・旧厚生年金基金の履歴を統合し、給与、人事、会計、記録関連運営管理機関、信託銀行、生命保険会社まで接続する案件では、同じ年金システムでも必要な工数が大きく異なります。見積依頼では機能名だけでなく、対象人数、月次・年次の処理件数、制度変更時の計算パターン、連携方式、帳票数、保存年数まで添えると比較可能な金額になります。

年金システム開発は制度とデータを先に固めて進めます

年金システム開発の工程を計画するイメージ

年金システムの開発では、画面や帳票を作り始める前に、制度・規約・計算式・データの正本を決めます。基本工程は現状分析、要件定義、方式選定、設計・設定・開発、データ移行、テスト、受入、並行稼働、リリース、保守です。各工程で成果物と判断基準を合意すると、見積の前提が変わることによる追加費用を抑えられます。

要件定義では規約・計算式・例外処理を言語化します

最初に、対象制度をDB、DC、キャッシュバランス、退職一時金、基金経理のどこまで含めるかを確定します。次に、加入から受給終了までの状態遷移を図にし、資格取得、休職、復職、転籍、退職、死亡、再加入、遡及裁定、支給停止、受取人変更などの例外を洗い出します。給付額の計算式、丸め、端数処理、支給日、源泉徴収、再計算の条件を文章とサンプルケースで残すことが重要です。

この工程の工数を削りすぎると、開発中に制度解釈が分かれ、テストケースや帳票が増えます。JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」では、要件定義の工数比率は約15%、工期比率は約20%と整理されています(出典: 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「ソフトウェア・メトリクス調査2025」、2025年)。年金業務では規約確認や現場ヒアリングが多いため、要件定義を短縮するより、後工程の手戻りを防ぐ投資として扱う方が安全です。

設計・開発では連携の責任分界とエラー処理を決めます

人事給与、会計、ワークフロー、記録関連運営管理機関、信託銀行、生命保険会社などと接続する場合は、連携項目、送受信時刻、ファイル形式、API仕様、暗号化、照合キー、再送、エラー訂正、障害時の手動処理を設計書に書きます。CSVを取り込めれば十分とは限らず、同じ人の異動前後をどう紐づけるか、基礎年金番号や個人番号をどのシステムで保持するかまで決める必要があります。

パッケージを使う場合は、標準機能で対応する業務とアドオンで対応する業務を分けます。独自仕様を追加しすぎると、法改正時の回帰テストと保守費が増え、製品のアップデートを受けにくくなります。クラウドやSaaSを利用する場合は、データ所在、テナント分離、バックアップ、可用性、復旧目標、ログの保管期間、サービス終了時のデータ返却も初期費用と同じ見積項目として確認します。

移行では旧制度データを捨てずに品質を診断します

年金システムで費用とリスクが大きくなりやすいのは、過去の加入・脱退・受給・支払・制度変更の履歴移行です。設計書がない旧システムや紙台帳、担当者が加工したExcelが残っている場合は、データの欠損、重複、名寄せ漏れ、日付形式の相違、旧制度と新制度の計算ルールの違いを調査します。全件を一度に移行するのではなく、まずサンプルを抽出して、件数、金額、期間、状態別に品質を測定します。

移行リハーサルは少なくとも複数回行い、移行前後の件数・残高・給付額・支払予定を突合します。退職、死亡、再加入、遡及、制度変更、受給者の住所変更など、通常処理だけでは発見できない異常ケースも並行計算します。移行対象を「全履歴」ではなく「現行運用に必要な履歴」と「照会・監査用に保管する履歴」に分けると、変換工数やデータ保管費を抑えられる場合があります。

テスト・受入・並行稼働で計算誤りを防ぎます

テストは画面の動作確認だけでなく、計算結果の正しさ、締め処理、帳票、権限、連携、復旧を検証します。規約に基づく正解データを業務側が用意し、旧システムと新システムで同じケースを計算して、結果の差分を確認します。差分が出た場合は、計算式、丸め、マスタ、入力データ、旧システムの仕様のどこに原因があるかを記録し、業務責任者が承認します。

大規模案件では、一定期間の並行稼働と段階リリースを計画します。JUASの2025年調査は、分析対象232件で工数と工期の関係を示し、125人月の案件では標準工期を約16.15か月と試算しています。また、実績工期は標準工期の1.08倍だったため、スケジュールには約1割の余裕を持たせる考え方が示されています(出典: JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」、2025年)。年金では法改正や移行差分の追加検証も必要なため、無理に短納期にすると品質確保の費用が後から発生します。

年金システム開発の費用相場とコスト内訳

年金システムの費用相場を確認するイメージ

年金システムの費用は、初期構築費だけを見ると判断を誤ります。開発費、データ移行費、連携費、セキュリティ・インフラ費、教育費、保守費、法改正対応費を分け、5年間の総保有コストで比較することが大切です。以下の価格帯は、公開価格が少ない年金システム市場で、一般的な開発工数、公開料金、制度・移行の難易度を組み合わせた税別の概算です。価格保証ではなく、RFPの予算仮説として利用します。

規模別の初期費用は300万円から10億円超まで幅があります

簡易な年金計算・照会・経理補助ツールで、制度や利用者、連携先が限定され、過去履歴の大規模移行がない場合は300万円〜3,000万円程度が目安です。既存の企業年金パッケージを導入し、設定、1〜3本程度の連携、初期データ移行、教育を行う場合は1,000万円〜5,000万円程度です。標準機能を使えるほど下限に近づきますが、独自制度や帳票を追加すると上限に近づきます。

DB・DC・退職一時金・旧制度をまとめ、複数拠点や大量の加入者・受給権者、Webポータル、外部機関連携、並行計算まで含める企業年金基幹では5,000万円〜3億円程度を見込みます。高可用性、厳格な監査、複数チャネル、特殊な数理処理を伴う大規模スクラッチ刷新では3億円〜10億円超となる可能性もあります。制度数や人数だけでなく、履歴の品質と連携本数が多い案件ほど、データ移行とテストの比率が高まります。

初期費用は要件定義・開発・移行・検証に分けて確認します

初期費用の内訳は、要件定義・制度分析が10〜20%、設計・設定・実装が40〜50%、テスト・計算検証が15〜25%、移行・インフラ・教育・導入支援が10〜25%という配分を仮置きすると比較しやすくなります。これは市場全体の固定比率ではなく、年金システムの見積を分解するための目安です。移行対象が多い案件では移行・検証の比率が上がり、パッケージ導入では実装よりもFit&Gapや設定、データ変換に費用が移ります。

人月単価の参考として、JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」は、分析対象195件の総費用と工数から127.14万円の人月単価を示しています。外注コストの加重平均単価はスクラッチ開発で96万円、パッケージ利用開発で144万円でした(出典: JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」、2025年)。例えば30人月なら約2,880万円〜4,320万円、100人月なら約9,600万円〜1億4,400万円という機械的な試算になりますが、年金特有の制度検証、移行、法改正、監査要件は別途考慮する必要があります。

ランニングコストは保守・クラウド・法改正・監査を分けます

導入後は、アプリケーション保守、問い合わせ対応、クラウド利用料、監視、バックアップ、データ保管、障害対応、脆弱性対応、法改正対応、帳票変更、受入テスト支援などが発生します。初期費用が安いサービスでも、制度改正や個別帳票がオプション扱いであれば、5年TCOは高くなる場合があります。見積書では、月額・年額の定額部分と、改修・出張・追加ユーザー・追加連携の従量部分を分けて記載してもらいます。

公開料金の一例として、株式会社セキュリティ情報研究所の企業年金経理クラウドサービスは、初期費用無料、月次費用12,000円(税別)、契約条件3年以上と案内しています。ただし、これは年金経理・業務会計を対象としたサービスであり、給付計算、複雑な制度統合、全履歴移行を含む年金基幹システム全体の価格ではありません(出典: 株式会社セキュリティ情報研究所「企業年金 経理クラウドサービス」、2026年確認)。このように公開価格は機能範囲とセットで読み取る必要があります。

年金システムの費用を左右する6つの変動要因

年金システムのコスト変動要因を整理するイメージ

同じ「年金システム開発」でも見積が数倍になるのは、機能数以外の条件が異なるためです。特に、制度の複雑さ、利用者数と履歴、外部連携、移行品質、セキュリティ・可用性、運用と法改正の責任分担が金額を動かします。これらをRFPの前提条件として明示すると、会社ごとの見積差を理由付きで比較できます。

制度数と給付ルールの複雑さが計算・テスト工数を増やします

DB、DC、キャッシュバランス、退職一時金、旧厚生年金基金など制度が増えるほど、マスタ、計算式、権限、帳票、締め処理、例外ケースが増えます。同じDBでも、加入期間、給与比例、ポイント制、最低保証、支給停止、遡及裁定などのルールが複雑なら、標準機能だけでは対応できない可能性があります。独自ルールをアドオンする場合は、初期開発費だけでなく、法改正時の回帰テストや保守費も加算します。

加入者数よりも受給権者数と履歴年数が効く場合があります

利用者数やデータ件数は、データベース容量や画面性能だけでなく、移行、バックアップ、帳票、照会、権限設計の工数に影響します。特に受給権者の支払履歴や旧制度の記録を長期間保持する場合、現行加入者だけを管理するシステムよりも照会・監査機能が複雑になります。過去データが紙、固定長ファイル、複数のExcelに分散している場合は、移行前のクレンジングと照合が大きな費用になります。

連携本数とデータ品質が追加開発と運用費を左右します

連携は、接続先が1つ増えるだけで終わりではありません。項目マッピング、認証、送受信、照合、エラー通知、再送、監査ログ、テストデータの準備、障害時の責任分担まで設計します。APIが使える接続先でも、年次処理だけファイル授受になることがあります。形式が異なる複数の連携を一つの共通データモデルへ集約するか、個別アダプターで対応するかによって初期費用と将来の保守性が変わります。

個人情報・可用性・監査の要求水準でインフラ費が変わります

年金情報には、給付や給与に関する情報、場合によっては基礎年金番号や個人番号など、慎重な取り扱いが必要な情報が含まれます。最小権限、多要素認証、通信・保存時の暗号化、個人番号の分離・マスキング、操作ログ、バックアップ暗号化、脆弱性対応、委託先監査、災害復旧訓練を要求すると、その設計・製品・運用の費用が発生します。

金融・保険事業者などでFISCの考え方を参照する場合は、法律で一律に同じ対策が義務付けられていると解釈せず、法令、ガイドライン、社内基準、委託契約のどの層で求められるかを確認します。FISCは2026年3月に安全対策基準・解説書の第14版を公表し、同年5月更新のサイバーセキュリティFAQも案内しています(出典: 公益財団法人金融情報システムセンター「サイバーセキュリティFAQ」、2026年)。要求水準を後から追加すると、アーキテクチャや契約の見直しが必要になるため、RFP段階で明示します。

法改正対応と運用体制を誰が担うかでTCOが変わります

年金制度は法令や通知、規約、税制、外部機関の仕様に応じて変わります。厚生労働省が公表する2025年の制度改正では、企業型DCの手続き簡素化やマッチング拠出の制限撤廃などが2026年4月1日に施行され、iDeCoの加入可能年齢や拠出限度額の見直しは2026年12月1日施行予定とされています(出典: 厚生労働省「2025年の制度改正」、2026年確認)。このような改正を誰が分析し、いつまでに仕様化し、どの環境で回帰テストし、どの帳票を承認するかを契約に落とします。

ベンダーの保守契約に法改正対応が含まれる場合でも、独自アドオン、顧客側の規約変更、外部機関の接続試験、データ移行、ユーザー教育まで含まれるとは限りません。定額保守と個別改修の境界、対応期限、障害時の復旧、問い合わせ時間、再委託、データ返却を確認し、年間費用に反映させます。初期費用の安さだけでなく、5年後まで担当者が運用できるかを評価することが重要です。

年金システムのコストを最適化する5つのポイント

年金システムのコストを最適化するイメージ

コスト最適化は、単に開発範囲を削ることではありません。計算の正確性や監査性を守りながら、標準機能を活用し、移行範囲と導入順序を整理し、将来の変更費用を下げる取り組みです。短期の初期費用と中長期の運用負担を分けて考えると、安さだけではない合理的な選択ができます。

Fit to Standardを基本にして独自開発を絞ります

パッケージやSaaSを選ぶ場合は、標準機能に業務を合わせるFit to Standardを基本にします。独自帳票や個別画面を追加する前に、業務上の必須条件、法令・規約上の必須条件、単なる慣行を分けます。慣行にすぎない手作業をそのままシステム化すると、開発費だけでなく、法改正時の検証範囲と保守費が増えます。

標準機能で対応できない差分は、アドオン、連携、業務手順の変更のどれで吸収するかを比較します。例えば、分析ダッシュボードや職員向け申請画面は、計算コアと分離してクラウドや個別開発にする方法があります。計算・制度マスタの正本を専門パッケージに置き、周辺の照会・申請・分析を疎結合にすると、将来の改修範囲を限定しやすくなります。

経理・照会・申請から段階導入して投資を分散します

全制度を一度に刷新する必要がなければ、段階導入を検討します。例えば、最初に基金経理や帳票をクラウド化し、次に電子連携、加入者・受給権者ポータル、最後に給付計算や旧制度履歴を統合する進め方です。ただし、段階ごとにマスタの正本、連携方式、データの責任者、手作業の暫定期間を決めないと、二重入力や暫定運用が長期化します。

段階導入の評価は、初期費用の分割だけでなく、各段階で業務時間を何時間削減できるか、入力ミスや照合工数をどれだけ減らせるかで行います。投資対効果が見えやすい業務から始めると、次の予算を説明しやすくなります。一方で、法改正の施行日や契約更新日が近い場合は、短期導入よりも全体アーキテクチャを先に決める方が安全です。

移行対象を業務用と保管用に分けて変換費を抑えます

過去のデータをすべて現行データベースに載せる設計は、検索性や計算の一貫性を高める一方で、変換費とテスト費を押し上げます。現行の給付計算に必要なデータ、日常照会に必要な履歴、監査・法定保存のためのアーカイブを分け、アクセス頻度と保管要件に応じた格納先を設計します。アーカイブを作る場合も、検索方法、復元手順、改ざん防止、保存期間、廃棄承認を定義しておく必要があります。

移行前のデータクレンジングは発注者側で進めるほど、ベンダーの作業量を減らせます。ただし、業務側だけで補正すると、元データを変更した根拠が残らないことがあります。補正前後の件数、金額、担当者、承認者、処理日を記録し、移行用の変換ルールと照合結果を成果物に含めます。これにより、費用を抑えながら監査とトラブル調査に耐えられる状態を作れます。

見積と契約の責任分担を明確にして追加費用を防ぎます

追加費用を防ぐには、要件定義後に何を固定し、何を変更管理するかを決めます。制度解釈、規約の最終承認、サンプル正解値の提供、旧データのクレンジング、連携先との調整、受入試験の実施、法改正情報の分析を、発注者・ベンダー・外部機関のどこが担うか明記します。責任分担が曖昧なまま「一式」で発注すると、問題が起きた際に調査費、再テスト費、納期延長費が発生します。

契約では、成果物、検収条件、計算誤りの扱い、重大障害の定義、法改正対応の範囲、SLA、再委託、知的財産、データ返却、契約終了後のサポートを確認します。特に「計算結果の正しさ」の承認方法を、代表ケース、全件突合、差分の許容範囲、承認者、記録の保存期間まで具体化します。発注前にここまで決めると、価格の安い提案が必要な品質を含んでいるか判断できます。

年金システムの見積を取る際のポイント

年金システムの見積を比較するイメージ

相見積もりは、同じ情報を同じ粒度で渡して初めて意味を持ちます。会社ごとに前提が違えば、片方は移行費込み、もう片方は別見積という状態になり、金額だけで優劣を判断できません。RFPには業務範囲、制度、人数、履歴、連携、セキュリティ、導入時期、保守期間、予算の考え方を記載します。

RFPには人数・履歴・連携・制度資料を添付します

最低限、対象制度と規約、加入者・受給権者・事業所の概数、過去データの年数と形式、月次・年次処理、給付パターン、帳票、現行システム一覧、人事給与・会計・記録関連運営管理機関などの連携先、想定する利用者と権限、必要な可用性・復旧目標を渡します。個人情報を含む実データをそのまま渡すのではなく、匿名化・マスキングしたサンプルと項目定義を用意します。

加えて、通常ケースだけでなく、退職、死亡、休職、復職、転籍、再加入、遡及、支給停止、受取人変更、制度改定、データ欠損のケースを提示します。これらを提案会社が見積前に質問するか、標準機能・設定・個別開発のどこで対応するかを見ると、年金業務への理解度を確認できます。

会社は価格だけでなく専門領域と責任範囲で比較します

年金システムの開発会社には、企業年金基金の基幹に強い会社、旧制度履歴や基金事務に詳しい会社、DCデータ連携を得意とする会社、企業型DCの人事側処理に強い会社、基金経理クラウドを提供する会社、中小企業向けの制度導入DXに強い会社があります。知名度や見積総額だけでなく、自社と同じ制度・規模の導入実績、計算検証の責任者、法改正対応の体制、移行方法、運用継続性を確認します。

提案会社には、標準機能と個別開発の一覧、初期費用と年間費用、追加連携の単価、法改正対応の範囲、障害時の復旧目標、データ返却形式、契約終了後の支援条件を同じ様式で回答してもらいます。特に、計算コアを提供する会社と周辺のポータル・分析を開発する会社を分ける場合は、マスタの正本、障害時の連絡経路、再計算の責任、手動運用の期間を合意しておく必要があります。

安すぎる見積では除外された作業と追加条件を確認します

見積が相場より大幅に安い場合は、要件定義、移行、計算検証、セキュリティ、教育、法改正、保守のどれが含まれていないかを確認します。特に「データ移行は別途」「連携はサンプル確認後」「帳票は標準のみ」「制度変更は個別見積」「受入試験は顧客実施」という条件が隠れていると、契約後に費用が増えます。安さの理由が標準機能の活用なのか、必要作業の未計上なのかを分けて評価します。

逆に、高額な見積でも、計算結果の全件突合、複数回の移行リハーサル、並行稼働、24時間監視、災害復旧訓練、法改正の回帰テストが含まれていれば、5年TCOとリスクを合わせると合理的な場合があります。各社に「この金額を下げるには、どの品質・範囲・納期を変更するか」を回答してもらうと、予算とリスクのトレードオフを経営層に説明しやすくなります。

よくある質問

年金システムに関するよくある質問のイメージ

年金システムの費用相談では、対象制度と機能範囲、移行、保守、法改正の扱いについて質問を受けます。ここでは、発注前に特に確認しておきたい質問へ直接回答します。

年金システムの開発費用は最低いくらからですか?

対象が限定された計算・照会・経理補助ツールであれば、初期費用300万円〜3,000万円程度が一つの目安です。ただし、既存データの移行、複数の外部連携、給付計算、個人情報を扱うセキュリティ、法改正対応を含めると、1,000万円を超える見積になることが一般的です。安い価格だけで判断せず、含まれる機能と対象業務を確認します。

年金システムはパッケージとスクラッチのどちらが安いですか?

一般には、制度知識や標準帳票を持つパッケージを活用し、独自開発を抑える方が短期の開発リスクを下げやすいです。ただし、パッケージは設定、Fit&Gap、専門人材、保守、個別アドオンに費用がかかるため、スクラッチより必ず安いとは限りません。自社の制度が標準機能にどれだけ合うか、法改正や5年分の運用費を含めて比較します。

旧制度のデータ移行はすべて実施する必要がありますか?

すべてを現行データベースへ移す必要はありませんが、現行の給付計算、日常照会、監査、法定保存に必要な情報は確実に残します。現行処理用、照会用、アーカイブ用にデータを分け、検索方法と復元手順まで決めると、移行費用と運用性を両立しやすくなります。移行しないデータについても、保存場所、責任者、保存期間、改ざん防止、廃棄承認を明確にします。

法改正対応の費用は初期費用に含まれますか?

契約によって異なり、すべての法改正対応が初期費用や定額保守に含まれるとは限りません。標準機能の更新は保守内でも、独自アドオンの改修、規約変更、外部機関の接続試験、帳票変更、顧客側の受入試験は別料金になる場合があります。施行日、対応期限、回帰テスト、承認者、追加費用の条件を契約前に確認します。

まとめ

年金システムの開発費用をまとめるイメージ

費用相場は機能範囲と5年TCOで判断します

年金システム開発の費用相場は、簡易ツールで300万円〜3,000万円、パッケージ導入で1,000万円〜5,000万円、企業年金の統合基幹で5,000万円〜3億円、大規模刷新で3億円超が目安です。ただし、これは制度数、加入者・受給権者数、履歴年数、連携本数、移行品質、セキュリティ、保守範囲によって変わる概算です。

見積比較では制度・移行・法改正の責任分担を確認します

適正な見積を取るには、企業年金と個人年金保険などの対象を確定し、制度・計算式・例外処理、データの正本、移行範囲、外部連携、計算検証、法改正対応、5年TCOを同じ条件で各社に提示します。Fit to Standardと段階導入を検討しながら、計算の正確性、監査性、復旧性を削らない範囲で独自開発を絞ることが、長期的なコスト最適化につながります。

年金システムの要件整理や見積比較では、RFPの作成から制度・データ・連携の棚卸し、開発会社との責任分担までを一体で進めることが重要です。自社に必要な範囲を明確にし、初期費用だけでなく法改正と運用を含む総コストで判断することで、導入後に使い続けられるシステムを選びやすくなります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。