年金システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

年金システムの発注・外注・委託は、給付計算の画面だけを作るのではなく、制度・規約、加入者と受給権者の履歴、掛金、支払、経理、外部連携、法改正対応までを一体で設計して委託することです。発注側が業務と責任分界を整理してから、パッケージ、クラウド、スクラッチ、ハイブリッドを選ぶことが成功の近道です。

本記事では、年金システムの対象範囲を確認し、発注形態の選び方、RFPと要件整理、準委任・請負など契約形態の使い分け、費用相場、委託先の選定、見積比較のポイントを順番に解説します。初期費用だけでなく、データ移行、並行計算、保守、制度改正、監査、5年間の総保有コストまで比較できるよう、発注前に準備する資料と確認事項も具体的に整理します。

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年金システムとは何ですか?発注前に範囲を決めます

年金システムの発注範囲を整理する担当者

年金システムは、年金制度のルールをデータと計算に反映し、加入・受給の記録を給付や報告へつなぐ業務基盤です。「年金システム」という言葉だけでは、公的年金、企業年金、確定拠出年金、個人年金保険のどれを指すか分かれます。発注書では対象制度を明記し、制度ごとに管理対象と連携先を切り分けます。

企業年金と個人年金保険を最初に区別します

企業年金を対象にする場合は、制度・規約マスタ、事業所、加入者、受給権者、扶養情報、資格取得・喪失、休職・復職、給与連携、掛金、給付、退職一時金、源泉徴収、基金経理、帳票などが中心になります。確定給付企業年金(DB)では給付算定と長期履歴、確定拠出年金(DC)では拠出・配分・記録関連運営管理機関との連携が重要です。キャッシュバランス制度や旧厚生年金基金の記録を含むと、制度の適用時点を正確に再現する必要があります。

生命保険会社の個人年金保険を対象にする場合は、契約、証券、保険料、積立金、予定利率、年金開始、支払、解約・減額、受取人、税務、数理計算、代理店や顧客チャネル連携が中心になります。企業年金とは計算単位とデータの正本が異なるため、「加入者台帳を管理する」とだけ書かず、契約・被保険者・受取人のどの情報を管理するかまでRFPに記載します。

機能一覧より先にデータの正本を決めます

年金システムの主要機能には、制度・規約・給付設計マスタ、加入者・受給権者台帳、資格異動、掛金・拠出金計算、給付計算、遡及裁定、支払、源泉徴収、年金経理、帳票、電子申請、ポータル、権限管理、操作ログ、バックアップがあります。外部連携では、人事給与、会計、銀行、信託銀行、生命保険会社、記録関連運営管理機関などを洗い出し、API、暗号化ファイル、閉域網、手動取込のどれを使うかを決めます。

重要なのは、金額だけを保存して計算根拠を失わないことです。どの規約版、どの加入者履歴、どの入力値、どの端数処理、どの承認者によって結果が作られたかを追跡できる設計にします。連携でも、受信件数、エラー件数、照合差額、再処理の結果を記録し、担当者のExcelだけに判断を残さないことが発注要件になります。

年金システムの発注・外注はどのように進めますか?

年金システム開発の工程を打ち合わせる担当者

年金システムの発注は、現状分析、RFI、要件定義、RFP、提案比較、契約、設計・設定・開発、移行リハーサル、テスト、受入、並行稼働、本番切替、保守の順で進めます。製品デモや画面の見た目から始めると、規約の例外、旧制度の履歴、支払締め、連携エラーが後から見つかりやすくなります。発注側に年金業務の責任者を置き、各成果物の承認者を先に決めます。

現行業務とデータを棚卸ししてRFIを出します

最初に集める資料は、規約・細則・給付設計書、事務処理要領、計算表、帳票、申請書、月次・年次の締め手順、現行システムの項目定義、連携ファイル、手作業のチェックリストです。制度数、事業所数、加入者・受給権者数、履歴年数、資格異動件数、年間の支払件数、帳票数、連携本数、同時利用者数、許容停止時間も数えます。数字が揃うほど、候補会社から同じ前提の回答を得やすくなります。

データは、項目名、形式、桁、コード、欠損、重複、訂正履歴、保存期間を一覧にします。たとえば資格喪失日が空欄の場合、未入力なのか受給待期なのかで給付判定が変わります。RFIでは、年金業務の対応実績、対象制度、標準機能、移行方法、法改正対応、保守体制、想定期間、概算費用を質問し、候補を絞り込みます。個人情報を含むサンプルを渡す場合は、マスキングとアクセス管理を先に行います。

RFPには計算事例と受入条件まで書きます

RFPでは、目的、対象制度、対象業務、利用者、データ量、連携先、帳票、非機能要件、移行範囲、教育、運用保守、費用の提示形式を示します。機能一覧だけでなく、代表的な計算事例を「入力値・期待結果・根拠規約・計算日・承認者」とセットで提示します。正常な加入・給付だけでなく、休職・復職、転籍、死亡、再加入、遡及、支給停止、過払い訂正、制度改定の境界日も含めます。

受入条件には、金額の一致、件数照合、差異の説明、再計算、帳票出力、支払ファイル、ログ、権限、性能、障害復旧を含めます。「テストを実施する」と書くだけではなく、何件のシナリオを何回実施し、重大障害を何件以下にし、未解決差異を誰が承認するかを明記します。提案書には、標準機能で対応する項目、設定で対応する項目、追加開発する項目、業務を変更する項目を分けて記載してもらいます。

移行リハーサルと旧新の並行計算を発注範囲に含めます

年金システムでは、データ移行が費用と品質を左右します。抽出、変換、取込、件数照合、金額照合、履歴確認を複数回リハーサルし、現行データの欠損や重複をいつ、誰が、どのルールで補正するかを決めます。旧厚生年金基金時代の記録や制度統合前の履歴を捨てる場合は、保管方法と参照方法を別途設計します。

切替前には、旧システムと新システムで代表ケースと全件データを並行計算します。掛金、給付、源泉徴収、支払額、会計仕訳、通知書を加入者・受給権者単位で突き合わせ、差異の原因を規約解釈、入力データ、端数、旧制度の扱いに分類します。本番移行の検収には、重大な未解決差異がないこと、支払データを承認できること、障害時のロールバックと手作業の代替手順を実行できることを含めます。

年金システムの発注形態はどれを選びますか?

年金システムの発注方式を比較する資料

発注形態は、パッケージ導入、クラウド・SaaS利用、スクラッチ開発、ハイブリッド、要件定義だけの先行委託などに分けて比較します。判断軸は初期費用の安さだけではなく、制度改正を設定で吸収できるか、長期履歴を保持できるか、計算根拠を再現できるか、連携先を増やせるか、5年後も保守できるかです。

パッケージ・クラウドは標準機能と責任分界を確認します

パッケージは、制度管理、加入者・受給権者管理、掛金・給付、帳票、基金経理などの知識を標準機能に取り込みやすく、法改正や保守を計画しやすい方式です。まずFit to Standardで業務を標準機能に合わせ、独自制度や特殊帳票だけを設定・アドオン・追加開発へ分けます。すべてを個別改修すると、バージョンアップや制度改正のたびに費用が増えやすくなります。

クラウドやSaaSは、初期インフラを抑え、バックアップ、監視、複数拠点利用、災害対策を標準化しやすい方式です。一方で、データの保管場所、テナント分離、暗号鍵、ログ、可用性、目標復旧時間、障害時の連絡、サービス終了時のデータ返却を契約で確認します。クラウド事業者が基盤を管理していても、制度解釈、入力の正確性、計算結果の承認、支払指図の責任まで移るわけではありません。

スクラッチ・ハイブリッドは長期変更を見積もります

スクラッチ開発は、独自の給付計算、複数機関との特殊な連携、生命保険会社の契約・数理処理、既存基幹との深い統合に向く場合があります。ただし、制度改正のたびに分析、改修、回帰テスト、計算検証が必要になり、年金業務と技術の両方を理解する人材を長期に確保しなければなりません。計算ロジックをコードへ埋め込むだけでなく、規約版と適用期間を管理できるようにします。

ハイブリッドでは、制度・給付・台帳は年金専門パッケージ、ポータル・分析・連携はクラウドや個別開発というように分担します。費用と変更範囲を抑えやすい一方、マスタの正本、再計算の責任、連携障害の切り分け、手動運用への切替を決めないと、複数ベンダーの間で問題が止まります。RFPにはシステム構成図とデータフローを添え、各社に同じ責任分界で見積もらせます。

資料が不足する場合は要件定義を先に外注します

現行資料や計算事例が不足している場合、いきなり本開発を一括発注せず、現状分析・業務整理・データ診断・RFP作成を先行して委託する方法があります。短期間の調査で、対象制度、例外処理、データ品質、連携、概算工数、移行方針を明確にしてから本開発を相見積もりにかけます。要件定義の成果物には、業務フロー、機能要件、非機能要件、計算事例、データ項目表、課題一覧、優先順位、概算計画を含めます。

先行委託は、発注側の準備負担を減らせる反面、要件定義を担った会社が本開発を有利に誘導する可能性があります。成果物の著作権や利用権、第三者への開示範囲、データ返却、次の入札で使える形式を契約に定めます。本開発を別会社へ委託する可能性があるなら、特定製品に依存しない業務要件と、比較可能な評価基準を成果物として求めます。

年金システムの契約形態はどのように使い分けますか?

年金システムの契約条件を確認する担当者

年金システムでは、すべての工程を一つの契約形態に押し込めるより、業務の不確実性と成果物の明確さに応じて契約を分けることが実務的です。準委任は専門家の作業や助言、請負は合意した成果物の完成に向きます。契約名だけで判断せず、作業範囲、成果物、検収、変更管理、責任分界、再委託、データの取扱いをセットで確認します。

準委任契約は調査・要件定義・保守に適しています

準委任契約は、発注側と委託先が一定期間、調査、業務整理、要件定義、プロジェクト管理、運用支援を一緒に進める場合に使いやすい契約形態です。制度の解釈や現行データの品質が確定していない段階では、完成物を先に固定するより、専門家の作業内容、稼働時間、会議体、報告書、課題管理、意思決定支援を明確にします。

準委任でも成果が不要になるわけではありません。月次の業務調査報告、課題一覧、RFP案、計算事例、データ診断結果、次工程の見積条件など、作業の証跡を納品物として定義します。誰が制度仕様を承認するか、発注側の回答遅延で期間が延びた場合の扱い、再委託者の作業範囲、機密情報へのアクセス方法も契約書と個別仕様書に記載します。

請負契約は成果物と検収条件を細かく定めます

請負契約は、基本設計書、設定済みパッケージ、追加開発機能、連携プログラム、移行ツール、テスト仕様書、操作マニュアルなど、完成させる成果物が明確な工程に向きます。年金システムの検収では、画面が表示されることだけでなく、計算事例の期待結果、規約版の適用、履歴の再現、帳票、支払データ、ログ、性能、脆弱性対応を条件にします。

請負の見積では、要件変更をすべて追加費用とするのか、法改正や規約改定を保守に含めるのかを分けます。仕様書にない例外が発見された場合の協議手順、追加見積の期限、納期への影響、瑕疵対応、損害賠償の範囲、再委託の承認、契約終了時のデータ返却を決めます。計算誤りが見つかったときに、制度仕様の誤り、入力データの誤り、プログラムの不具合をどの手順で切り分けるかも重要です。

個人情報・再委託・法改正を契約条項に落とします

年金システムでは、氏名、住所、生年月日、給付情報、基礎年金番号、個人番号などの情報を扱う可能性があります。個人番号を取り扱う場合、個人情報保護委員会の特定個人情報ガイドラインは、委託先の選定、契約による安全管理措置、取扱状況の把握を含む必要かつ適切な監督を求めています。秘密保持、目的外利用の禁止、持ち出し制限、漏えい時の責任、終了時の返却・廃棄、従業者教育、報告と監査を契約に含めます。

再委託がある場合は、再委託先、業務範囲、データの取扱場所、アクセス権、監査方法、事故時の連絡経路を事前に把握します。FISCの「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」は2025年3月に第13版が発行され、金融機関等の開発・導入・運用に必要な安全対策を示しています。ただし、FISCは案件ごとに適用範囲を確認する基準資料であり、すべての年金システムに一律適用される法律ではありません。

制度改正の対応では、分析、仕様変更、開発、テスト、リリース、利用者告知のどこまでを月額保守に含めるかを分けます。厚生労働省の施行スケジュールでは、2026年4月に企業型DCの手続き簡素化や拠出限度額の拡充、2026年12月にiDeCoの加入可能年齢や拠出限度額の引き上げが予定されています(出典:厚生労働省「私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール」、2026年)。DCを扱う場合は、法改正の情報収集と回帰テストの責任者を契約上明らかにします。

年金システムの費用相場と見積もり内訳

年金システムの見積費用を確認する担当者

年金システムには全国共通の公開価格表が少ないため、以下は2026年時点で発注前に使う概算レンジです。制度数、加入者・受給権者数、過去履歴の年数、連携本数、データ品質、帳票、監査要件、可用性、移行と並行稼働の有無で大きく変わります。価格保証ではなく、候補会社へ同じ前提で見積もりを依頼するための基準として扱います。

規模別の初期費用は300万円から10億円超まで幅があります

簡易な年金計算・照会・経理補助ツールで、制度、利用者、連携が限定され、過去履歴の大規模移行がない場合は、初期費用300万〜3,000万円、期間1〜3か月程度が目安です。年金専門パッケージを導入し、設定、初期移行、人事給与・会計・記録関連運営管理機関との1〜3本の連携、教育まで含める場合は、1,000万〜5,000万円、3〜9か月程度を見込みます。

DB・DC・退職一時金・旧制度など複数制度を統合し、複数拠点、長期履歴、ポータル、支払、経理、並行計算を含める場合は、5,000万〜3億円、9か月〜2年程度が目安です。大量データ、高可用性、複雑な独自給付、複数外部機関、厳格な監査、段階移行を含むスクラッチまたは刷新案件は、3億〜10億円超、18か月〜3年以上になる可能性があります。

一般システムの参考値として、JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」は、分析対象195プロジェクトの費用と工数の回帰から、人月単価127.14万円が妥当と報告しています(出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会、2025年)。30人月なら約3,814万円、100人月なら約1億2,714万円という機械的な計算になりますが、年金案件では規約解析、データ移行、全件検証、法改正テストが加わるため、そのまま契約価格とはみなしません。

要件・開発・移行・保守を分けて見積もります

見積書は、要件定義・制度分析、設計・設定・実装、テスト・計算検証、インフラ・移行・教育・導入に分けます。発注前の比較用として、要件定義10〜20%、設計・実装40〜50%、テスト・計算検証15〜25%、インフラ・移行・教育10〜25%程度の配分を仮置きすると、会社ごとの抜け漏れを確認しやすくなります。これは年金案件の公定比率ではなく、作業範囲を分解するための目安です。

初期費用以外には、クラウド利用料、ネットワーク、監視、バックアップ、脆弱性診断、保守、法改正対応、追加帳票、問い合わせ、教育、外部機関との接続費、データ返却費が発生します。保守費を初期開発費の年10〜20%程度で仮置きして比較する方法もありますが、SLA、法改正の範囲、休日対応、バージョンアップ、障害対応で変動します。月額の安さではなく、初期費用と5年間の利用・保守・移行・終了費用を合算します。

5年TCOで安さと将来負担を比較します

5年TCOは、初期開発費、導入支援、データクレンジング、移行リハーサル、クラウド・ライセンス、保守、法改正、追加連携、監査、教育、障害対応、契約終了時のデータ返却を合算します。パッケージは初期費用が高く見えても、制度知識や回帰テストが保守に含まれる場合があります。スクラッチは初期の自由度が高くても、担当者交代や制度変更のたびに解析・改修費が発生する可能性があります。

候補会社には、5年分の費用を年度別に示してもらい、価格の前提を併記させます。加入者数が増えた場合、制度が追加された場合、連携先が増えた場合、法改正が発生した場合、障害で復旧支援を依頼した場合の追加単価も確認します。特に、最低利用期間、解約予告、データエクスポートの形式、撤去費、保守終了後の支援を見落とすと、乗り換え時にベンダーロックインが発生します。

年金システムの委託先選定と見積比較のポイント

年金システムの委託先候補を比較する担当者

委託先は知名度や提示価格だけでなく、対象制度と役割の適合性で選びます。企業年金基金の基幹、旧制度の履歴・遡及裁定、DCデータ連携、企業型DCの人事側事務、基金経理クラウド、中小企業向けの制度DXでは、必要な専門性が異なります。候補会社を同じ質問票と計算事例で評価し、提案の華やかさよりも、移行・検証・保守の実行体制を確認します。

年金業務の実績と担当者の専門性を確認します

実績確認では、企業年金の制度種別、加入者・受給権者数、導入時期、移行した履歴年数、連携先、並行稼働の有無、稼働後の保守年数を聞きます。可能なら、同規模・同制度の導入事例について、計算検証の方法、切替時の差異、障害対応、法改正の実績を確認します。営業担当だけでなく、年金業務の責任者、移行責任者、品質保証責任者、保守責任者が提案段階から参加するかも評価します。

大手SIerは複数システムとの統合や大規模プロジェクト管理に強みを持つ一方、年金業務の制度判断を別会社へ依存することがあります。年金専門ベンダーは規約・給付・履歴に強い一方、最新のクラウド連携や全社基幹との統合範囲を確認する必要があります。DCデータ連携会社や経理クラウド会社は、対応する業務範囲を基幹全体と誤認しないよう、対象外の業務と連携方法を質問します。

見積書は同じWBSと前提条件で比較します

見積比較では、会社ごとに作業名が違うまま総額を比べないことが大切です。RFPに作業分解構成を指定し、要件定義、Fit&Gap、設計、設定、追加開発、インフラ、連携、データクレンジング、移行、テスト、並行稼働、教育、保守、法改正対応を同じ項目で提出させます。各項目に工数、人月単価、前提、対象外、再委託費、税、納期を記載させます。

評価表では、価格だけでなく、業務適合性、計算の再現性、移行計画、検証方法、連携方式、セキュリティ、可用性、保守、法改正、担当者体制、契約条件を採点します。たとえば価格30点、機能・業務適合25点、移行・テスト20点、体制・保守15点、セキュリティ・契約10点のように重みを決めます。点数は例示ですが、先に評価軸を固定すると、安い提案だけが有利になることを防げます。

安さの裏にある追加費用とロックインを確認します

初期見積が安い場合は、何が含まれていないかを確認します。データクレンジング、旧制度履歴、特殊給付、帳票変更、連携テスト、性能試験、脆弱性診断、利用者教育、休日切替、法改正、稼働後の問い合わせが対象外になっていないかを見ます。追加開発の単価、連携先追加の単価、制度追加の単価を確認し、起こりやすい変更を別見積にしておくと予算超過を予測しやすくなります。

ベンダーロックインを避けるには、データの標準形式での出力、計算ルールと設定の文書化、ソースコードや設定情報の権利、運用手順、バックアップの返却、第三者保守の可否を確認します。SaaSでも、解約時に加入者・受給権者の履歴、証跡、帳票、添付資料をどの形式で、何日以内に、いくらで返却するかを契約します。候補会社が自社だけでなく、発注側の将来の選択肢を説明できるかも選定材料になります。

よくある質問(FAQ)

年金システムの発注に関する質問を確認する担当者

ここでは、年金システムの発注・外注を検討する担当者から寄せられやすい疑問に回答します。費用や方式は制度とデータの条件で変わるため、回答をそのまま自社のRFPへ移すのではなく、対象範囲と前提を確認して使います。

年金システムの開発費用は最低いくらですか?

対象を限定した簡易な計算・照会・経理補助ツールなら、初期費用300万〜3,000万円程度が推定の入口です。企業年金の複数制度、長期履歴、支払、経理、外部連携、移行、並行計算まで含めると、1,000万〜5,000万円以上になり、統合基幹や大規模刷新では数億円から10億円超になる可能性があります。最低価格ではなく、移行・テスト・保守が含まれる範囲を確認してください。

パッケージとスクラッチはどちらを選ぶべきですか?

標準的な企業年金の制度管理、給付、経理、帳票を安定運用したい場合は、年金専門パッケージを中心にし、独自要件だけを追加する方式が有力です。特殊な給付計算、生命保険会社固有の契約・数理処理、既存基幹との深い統合が差別化要件になる場合は、ハイブリッドやスクラッチを検討します。制度改正への追随、計算根拠の再現、担当者の継続性、5年TCOを比較して決めます。

RFPを作る前に何を準備すればよいですか?

規約・細則・給付設計書、制度・事業所一覧、加入者・受給権者数、履歴年数、代表的な計算事例、帳票、現行データ項目表、連携先、月次・年次処理、セキュリティ基準、希望時期を準備します。個人情報はマスキングし、欠損・重複・訂正履歴も説明できるようにします。資料が揃わない場合は、調査・要件定義を先行発注してから本開発のRFPを作成します。

年金業務を知らない開発会社にも外注できますか?

外注はできますが、年金業務の専門家と開発会社を組み合わせ、制度解釈、計算検証、移行、支払の責任者を発注前に決める必要があります。Web開発の技術力だけでは、規約の例外、長期履歴、端数処理、遡及、支給停止の意味を判断できない可能性があります。提案段階で、年金専門ベンダー、受託金融機関、業務コンサルタントとの連携体制と、業務仕様の承認者を確認します。

年金システムは準委任と請負のどちらがよいですか?

現行調査や要件定義のように不確実性が高く、発注側と委託先が一緒に整理する工程は準委任が使いやすく、仕様と成果物が確定した設計・開発・移行ツール作成は請負が適しています。ただし、工程の性質に応じて分けることが基本で、契約名だけで責任範囲を決めてはいけません。成果物、検収、変更管理、計算誤りの原因切り分け、保守、再委託、データ返却を個別に定めます。

まとめ

年金システムの発注計画をまとめる担当者

年金システムの発注・外注では、最初に公的年金、企業年金、確定拠出年金、個人年金保険のどれを対象にするかを決め、制度・規約、加入者・受給権者や契約の履歴、給付・支払、経理、外部連携の範囲を定義します。画面や製品から選ぶのではなく、どのデータを正とし、どの計算根拠を残し、誰が承認するかを先に決めることが重要です。

発注形態は、標準機能と制度知識を活かせるパッケージ、運用を標準化しやすいクラウド、特殊要件に対応するスクラッチ、役割を分けるハイブリッドを5年TCOで比較します。資料が足りなければ調査・要件定義を先に委託し、RFPには代表計算事例、移行、並行計算、受入条件、セキュリティ、法改正、契約終了時のデータ返却まで含めます。

委託先は、知名度や最安値ではなく、制度対応、長期履歴の移行、全件照合、担当者の専門性、保守と法改正対応、再委託管理、障害時の責任分界で選びます。準委任と請負を工程に応じて使い分け、計算誤りや連携障害が起きた場合に原因を説明できる体制を契約へ落とします。まずは規約、計算事例、データ項目表、連携一覧をそろえ、同じ前提で複数社へ相談することから始めます。

発注前に確認する項目

発注前には、対象制度、制度数、加入者・受給権者数、履歴年数、代表計算事例、連携先、帳票、移行対象、セキュリティ基準、希望時期を一枚の前提条件にまとめます。候補会社からは、標準・設定・追加開発の区分、初期費用、年間費用、法改正対応、検証方法、担当者、再委託、データ返却を同じ形式で提出してもらいます。

次に行うことは現行整理と相見積もりです

規約と計算事例を確認できる業務責任者を発注側に置き、現行データをマスキングして候補会社へ相談します。最初から総額だけを競わせず、調査・要件定義、パッケージ導入、個別開発、移行・並行稼働、保守を分けて比較すると、費用とリスクの根拠を説明しやすくなります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。