PMSの保守・運用費用は、SaaS型かフルスクラッチ型かによって構造が大きく変わります。さらに、外部連携の範囲や法改正・決済対応の有無によっても差が出ます。
費用の幅は、月額で数千円〜数十万円、フルスクラッチ型では年間で初期開発費の10〜15%程度が目安です。
▼全体ガイドの記事
・PMS開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
PMSの保守・運用費用の全体像
PMSの保守・運用費用は、導入形態によって構造が大きく異なります。クラウド型のPMS(SaaS)は、月額利用料にサーバー維持費や保守費用を含むのが一般的です。そのため、予期せぬ追加費用が発生しにくく、総所有コスト(TCO)を抑えやすい特徴があります。
一方、フルスクラッチ開発では、インフラの維持費に加えて、機能追加や外部連携の仕様変更ごとに開発費が発生します。SLAや障害対応まで含めると、一般的な年間保守運用費は初期開発費の10〜15%程度が相場です。PMSは24時間365日稼働し、外部要因への対応も必要なため、比率が上振れしやすい領域です。
費用は、システム自体の保守費用と、宿泊業界特有の外部要因への対応費用に分けて考えます。前者はサーバー管理、セキュリティパッチ適用、バグ修正が中心です。後者はOTAのAPI仕様変更、宿泊税などの法改正、カード決済の基準対応を指します。
2つの観点に分けると、見積もりの項目ごとに何へいくらかかるかを評価しやすくなります。
保守費用の相場とシステム形態別の目安
契約内容を形態別に比べると、月額費用と保守費用の分かれ方が見えてきます。
- SaaS型:月額利用料にインフラ費用と基本保守を含む
- フルスクラッチ型:インフラ費用と別に保守契約が必要
- 保守契約:稼働監視や障害対応を含むほど費用が増える
SaaS型の月額利用料は、機能や部屋数によって数千円〜十数万円程度が目安です。フルスクラッチ型は、AWSやAzureなどのクラウドサーバーを使っても、インフラ維持費が月額数万円〜数十万円かかります。
24時間365日止めないために、SLA(稼働率保証)、死活監視、障害対応まで含めて契約すると、年間保守費用が初期開発費の10〜15%程度になります。たとえば、初期開発費が2,000万円のフルスクラッチPMSなら、年間200万〜300万円程度の保守費用です。
SaaS型とフルスクラッチ型のコスト構造の違い
SaaS型とフルスクラッチ型は、仕様変更に対応する主体と自由度が異なります。
- SaaS型:提供者が仕様変更を全ユーザー向けに更新
- フルスクラッチ型:独自の顧客体験や業務フローを実現しやすい
- 比較の観点:初期費用だけでなく総所有コストで判断
SaaS型は、OTAやサイトコントローラーのAPI変更、宿泊税などの制度変更にも、原則として追加の改修費がかかりません。一方、フルスクラッチ型は自由度が高い反面、外部仕様変更のたびに個別の改修費用が発生します。
オンプレミス型では、通常5年程度に一度、数百万〜数千万円規模のサーバリプレース(機器交換)費用も生じます。このように、稼働後の費用が積み上がる点は、SaaS型とフルスクラッチ型のどちらを選ぶ場合も同じです。何年でどれだけ積み上がるかをTCOで比べることが重要です。
保守・運用費用の内訳

PMSの費用は、システム保守契約・SLA、サーバー・クラウドインフラ、外部連携維持費に分けると整理しやすくなります。
システム保守契約とSLA
宿泊施設では、深夜のチェックインや早朝のチェックアウトにも、PMSが正常に動いている必要があります。
- 稼働時間:宿泊施設は24時間稼働が前提
- SLA:サービスレベルアグリーメントで障害対応を定める
- サポート:駆けつけ対応や24時間365日対応ほど高額になる
保守契約は、SLA付きで結ぶのが一般的です。PMSが止まると、フロント業務も止まります。そのため、初期費用の安さだけで契約内容を軽視すると、稼働後のリスクになります。
サーバー・クラウドインフラ費用
インフラ費用は、誰が契約し、誰が管理するかで負担が変わります。
- SaaS型:インフラ費用を月額利用料に内包
- フルスクラッチ型:AWSやAzureを自社で契約・管理
- 運用設計:アクセス集中とバックアップへの備えが必要
フルスクラッチ型では、オートスケーリング設定やデータベースのバックアップ体制に、月額数万〜数十万円がかかります。繁忙期にはアクセス数が増えやすいため、その分の費用の増減も見込んでおく必要があります。また、コスト上限や予算アラートも必要です。
OTA・サイトコントローラー連携維持費
じゃらん、楽天トラベル、Booking.comなどのOTAやサイトコントローラーは、連携仕様を定期的に更新します。
- SaaS型:仕様変更への対応をベンダー側が担う
- フルスクラッチ型:変更ごとに連携プログラムを改修
- リスク:連携エラーやダブルブッキングを防ぐ対応が必要
SaaS型では、こうした変更対応がシステム利用料に含まれるのが一般的です。一方、フルスクラッチ型では、1回の変更につき数十万円〜百万円単位の追加開発費が発生します。これは、見積もりで見落とされやすい隠れコストです。
PMS特有のランニングコスト

PMSには、一般的な業務システムにはない、宿泊業界特有の費用要因があります。特に見落とされやすいのは、法改正への対応費用とカード決済のセキュリティ費用です。
宿泊税など法改正対応費用
宿泊税は、自治体ごとに新設や税率改定があり、計算ロジックも異なります。
- 税率計算:一定額未満の非課税や段階加算に対応
- SaaS型:制度変更の更新をベンダー側が実施
- フルスクラッチ型:会計や領収書出力の改修が必要
SaaS型では、制度変更への更新が月額基本料金に含まれるのが一般的です。一方、フルスクラッチ型は、改修のたびに数十万円規模の追加費用がかかります。特に、複数自治体に展開するホテルチェーンほど、費用が積み上がります。
カード決済のセキュリティ対応費用
オンライン事前決済や現地決済を使う場合は、決済手数料と情報管理の設計費用を見込みます。
- 決済手数料:売上に応じて毎月発生
- PCI DSS:カード情報を保持・処理する場合に準拠が必要
- トークン決済:情報を保持せず決済代行会社へ処理を委ねる
決済手数料の目安は、売上の2.5〜4.5%程度です。カード情報を保持すると、国際基準のPCI DSSに伴う要件整備と毎年の監査で、年間数百万〜数千万円かかります。
そのため、トークン決済や決済代行会社の画面へのリダイレクト方式を使い、重い対策費を代行会社側に持たせる方法があります。この設計判断によって、稼働後のセキュリティ関連コストは大きく変わります。
ROIと費用対効果の考え方
PMSの保守・運用費用は、コストだけでなく投資対効果として捉えると判断しやすくなります。
削減できる工数の試算
PMSは、予約受付や空室管理を置き換えることで、フロント業務の転記や確認にかかる時間を減らします。
- 予約受付:電話・FAXでの受付をPMSへ置き換える
- 空室管理:Excelでの管理をPMSへ集約する
- OTA管理:複数OTAの予約を手作業でまとめる作業を自動化
チェックインが1件あたり数分短くなるだけでも、繁忙期には人件費換算で効果が生まれます。こうした日々の積み重ねこそ、見落とされがちな工数削減効果です。
防げる機会損失の試算
PMSは、予約の重複を防ぎながら、空室と料金を正確に把握できるようにします。
- ダブルブッキング:予約取消やアップグレード対応を防ぐ
- 空室情報:リアルタイムに在庫を把握する
- 料金改善:需要が高い日の料金を見直しやすくする
在庫の排他制御がないと、予約取消やアップグレード対応の追加費用につながります。さらに、顧客の信頼が下がることも、機会損失です。
レベニューマネジメントにより、稼働率と客室単価の改善も期待できます。予約取消や信頼低下による損失の大きさも含めて評価すると、保守・運用費用に対する投資判断の精度が高まります。
コスト削減のポイント

PMSの保守・運用費用を抑えるには、契約の時点で機能と対応範囲を見極めておく必要があります。
SaaS活用とフルスクラッチのハイブリッド構成
標準化しやすい基盤はSaaSで使い、差別化する機能だけを独自開発する方法があります。
- SaaSの基盤:在庫管理やOTA連携を活用
- 独自開発:会員特典や複合施設連携を外部APIで実装
- 費用配分:外部要因の対応を委ね、強みに投資
OTA仕様変更や宿泊税対応をベンダー側に任せることで、自社の強みへの投資を集中させられます。この構成は、トータルの保守・運用費用を見直しやすくします。
保守契約の見直しポイント
既存のPMSの保守契約も、機能の使われ方、対応時間の範囲、拠点ごとの契約の単位、ベンダーとの価格の比べ方から見直すと、費用を適正化できる余地があります。
- オプション:使っていない機能を解約
- サポート時間:対応時間帯を実態に合わせる
- 拠点契約:複数拠点をまとめて交渉する
- ベンダー比較:更新時に複数社から見積もりを取る
また、決済手数料や外部連携費用も、契約更新の際に他社と比べやすい費目です。現状の費用が適正かどうかは、数年に一度の点検で確かめておくとよいでしょう。
まとめ
PMSの費用は、まずシステム形態で大きく変わります。そのうえで、保守契約の中身や、インフラ・外部連携の範囲によっても差が出ます。法改正・決済対応の有無も、費用に影響します。
SaaS型は、OTA仕様変更や法改正をベンダーが担うため、ランニングコストを見通しやすい形態です。一方、フルスクラッチ型は自由度が高い反面、外部仕様変更のたびに追加改修費用が発生します。
年間保守費用は初期開発費の10〜15%程度、決済手数料は売上の2.5〜4.5%程度が目安です。SaaSとフルスクラッチを組み合わせると、長期的なコストの抑え方を組み立てやすくなります。
まずは、必要な機能の範囲と、稼働後に許容できる費用を整理しておきましょう。そのうえで、複数の開発会社やPMSベンダーに相談して比べると、判断材料がそろいます。
▼全体ガイドの記事
・PMS開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
