発電管理システム開発の完全ガイド

発電管理システムは、多拠点の監視、EMSによる需給最適化、大規模発電所の制御更新の3つに分けて考えると、目的に合う機能と構成を選べます。

種類と機能、構成と開発手順、費用と発注時の判断材料を、順に見ていきます。各テーマの詳しい内容は、関連記事でも確認できます。

▼関連記事一覧
・発電管理システム開発の進め方
・発電管理システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
・発電管理システム開発の見積相場・費用
・発電管理システム開発の発注・外注・委託方法

発電管理システムの全体像

発電管理システムは、現場の設備データを集めて、運転と保全の判断を支える基盤です。機能を監視だけに絞る場合もあります。

複数拠点の計画、蓄電池の充放電、故障履歴、電力市場との連携まで含めると、発電管理システムは発電事業の業務基盤としての役割を担います。

発電管理システムが担う役割

発電所では、発電機やPCSのほか、インバーター、PLC、RTUなどから信号が出ています。気象センサーや電力量計からも信号が届きます。これらを個別に確認していると、異常の発見が遅れ、巡回担当者の負担も増えます。

  • データ保存:発電量・電圧・電流・周波数、温度・圧力・流量・燃料残量を同じ時間軸で保存
  • 異常通知:異常値や通信断が起きたことを知らせる
  • 運転・保全情報:日報・月報、台帳、点検・部品・故障履歴と連携する

導入効果は、画面の見やすさだけでなく、KPIで評価します。異常発見までの時間や巡回回数、停止時間、報告書作成時間などが、その指標になります。

監視システム・SCADA・EMSの違い

監視システムは、設備の状態や発電量を集めて、画面や帳票で確認する仕組みです。一方、SCADAは、制御機器との通信や警報、履歴保存、遠隔操作まで含む、制御寄りの仕組みを指すことが多いです。

EMSは、発電や蓄電、需要、電力価格、気象予測を組み合わせて、需給を最適化する仕組みです。ただし、これらは別々の製品とは限らず、案件によって機能が重なる場合もあります。

機能の重なりがあるため、要件定義では名称に頼らず、読む情報と操作する設備を分けて考えます。さらに、予測・最適化の対象と承認者も切り分けて、必要な範囲を決めます。

発電管理システムの種類と適用範囲

発電管理システムの3つの導入モデルを、対象となる設備や運用別に並べた図解。
対象設備と運用範囲から、検討するモデルを絞り込めます。

適した構成は、発電設備の種類や拠点数、リアルタイム制御の有無、既設設備の状態によって変わります。そこで、ここでは発電事業者が検討しやすい3つの導入モデルを取り上げます。

太陽光・風力の多拠点監視モデル

複数の太陽光・風力発電所では、拠点ごとの発電量や設備稼働率を一画面で確認できる構成が向いています。通信状態、気象データ、警報も、同じ画面にまとめられます。

導入の初期には、どこから運用を始めるか、既存設備をどう接続できるかを確認しておきます。

  • 段階導入:高度な自動制御を最初から入れず、読み取り専用監視、異常通知、帳票、点検管理から始める
  • 設備確認:機器の型式と信号一覧を洗い出す
  • 接続準備:必要なゲートウェイや信号変換器、センサー、回線、電源工事を見込む

標準通信がない場合、ソフトウェアだけの見積では、現地工事費が後から増える可能性があります。そこで段階導入を選べば、現場への影響を抑えながら、効果を測りやすくなります。

自家発電・蓄電池・需要を統合するEMSモデル

工場や施設の自家発電では、発電量だけでなく、負荷や電力契約も踏まえて運転します。さらに、燃料価格や蓄電池残量、気象予測も合わせて考慮します。

EMSでは、ピークカットや余剰電力の蓄電を計画できます。また、発電機の起動・停止や買電量の削減も、計画の対象になります。

最適化の仕組みと制御範囲は、燃料費の削減、停電時の事業継続、再エネ利用率の向上のうち、どれを目指すかで変わります。蓄電池を遠隔制御する場合は、次の点も決めておきます。

  • 充放電の制限:充放電の上限と、残量の下限
  • 停止条件:温度や寿命、異常時の停止条件
  • 予測外れへの備え:安全側の動作と、運転員が手動で介入する権限・手順

水力・火力など大規模発電所の制御更新モデル

大規模発電所では、監視画面だけでなく、制御系の二重化や起動・停止計画も扱います。予備力や給電指令、機器保護も含め、現場操作との責任分界まで対象にします。

停止可能な期間が限られるため、既設と新システムを並行稼働させ、段階的に切り替えます。また、可用性と応答時間を優先する制御系は、分析・帳票・経営管理の業務系から分けます。

現場側にエッジや冗長サーバーを置き、通信断でも安全な状態を保つ構成を検討します。すべてをクラウドに集約すると、回線断の影響を受けやすくなるためです。

ポイント

導入モデルは、拠点数や制御の有無、既設設備の状態で選びます。監視だけか、EMSや制御更新まで含めるかを先に切り分けておくと、構成と費用を同じ条件で比べられます。

発電管理システムの主な機能

機能をデータ収集から外部連携まで役割ごとに分けて整理すると、要件の抜け漏れを防げます。そのうえで、導入目的と運用体制に合わせて、機能の優先順位を付けます。

監視・警報・帳票機能

基本機能は、発電量や電圧、電流などをリアルタイムで表示することです。周波数や温度、圧力も表示の対象になり、流量や燃料、蓄電池残量も含まれます。

  • 傾向の記録:現在値に加えて、日・週・月・年のトレンドと設備別の比較
  • 異常の記録:異常値のしきい値や警報の優先度を、確認者と復旧時刻とあわせて残す
  • 同一原因の通知:同じ原因から警報が連続するときは、重要度や発生順で整理し、担当者が対応すべき警報を絞る
  • 日報・月報:計画値との差、停止時間、発電設備利用率の自動集計
  • 集計の範囲:警報件数と保全実績も集計に含め、会議や報告の負担を減らす

発電計画・出力制御・最適化

計画機能は、需要や気象の予測と設備の稼働予定を組み合わせ、発電量や蓄電池の運転計画を作ります。燃料や市場価格、契約条件も、計画の材料になります。

計画機能で実績との差を自動で確認し、計画変更の履歴と承認者を残しておくと、インバランスや予算差異の原因を追いやすくなります。

遠隔操作や自動制御では、画面の使いやすさより、誤操作の防止を優先します。

  • 権限分離:監視する人と操作を承認する人を分けておく
  • 影響確認:操作の前に、対象設備と影響範囲を画面で示す
  • 安全策:上限値、緊急停止、手動復帰の用意
  • 操作対象:発電機の起動・停止、PCS出力、蓄電池充放電

保全・分析・外部連携

設備台帳には、型式や設置場所、定格のほか、導入日と保証期間を登録します。点検周期と交換部品も、台帳に残しておきます。

点検と故障の履歴を発電量と結び付けると、設備異常による発電ロスを確認できます。

外部連携の対象には、電力会社や取引関連の計画データ、気象情報があります。会計・購買、保全管理、監視カメラとつなぐ場合もあります。

  • 予知保全:振動・温度・電流の傾向を分析
  • データ品質:欠損や時刻ずれを先に解消する
  • 連携条件:方式、頻度、正本、再送、情報の扱いを決める

連携条件が定まらないと、システム間で食い違いが生じ、運用の負担になります。

発電管理システムの構成と技術選択

現場機器からWeb画面や外部連携層まで、発電管理システムの構成要素を4層に積み上げた図解。
現場側から業務側へ、役割ごとに構成要素が積み上がります。

構成要素には、現場機器やエッジ・PLC、制御ネットワークがあります。監視サーバーやデータベースのほか、Web画面、分析基盤、外部連携層も含みます。そのうえで、制御系と集計・分析を行う業務系を分け、障害時に運転を続ける範囲を決めます。

現場機器からエッジまでの接続

接続の前に、設備から取得する信号、取得間隔、精度を確認します。PLC・RTUの型式や通信プロトコル、レジスタ、信号点数は、一覧にまとめます。アナログ値の単位や時刻同期、通信断時のバッファも、同じ一覧に含めます。

接続では、設備の状態に応じて必要になる工事と、通信断への備えを次のとおり確認します。

  • アナログ設備:センサー追加・盤改修・信号変換・現地試験が先行する場合がある
  • 回線断:エッジに一時保存し、復旧後にデータを補う
  • 現場制御:クラウドや業務ネットワークが止まっても、安全な状態へ移る
  • 機器側の安全策:タイムアウト、上限値、手動操作、フェイルセーフの確認

クラウド・オンプレミス・ハイブリッドの選び方

構成は、拠点数と応答性に加えて、高可用性や既設の制御基盤との連携から選びます。

  • クラウド:多拠点監視、帳票、分析、拠点追加に向く
  • オンプレミス:現場の応答性や高可用性が必要な設備に向く
  • ハイブリッド:現場制御・一次保存とクラウド分析を分担

クラウドは画面を共通化しやすく、サーバー運用の負担も抑えられます。ただし、通信遅延や回線断が影響する制御は、クラウド単独では担わせません。

オンプレミスは外部回線に依存しにくいため、設備を止められない場合や既設の制御基盤との連携に向きます。実務では、クラウドとオンプレミスを組み合わせる方法もあります。

ポイント

構成は、制御系と業務系を分けたうえで、通信断や障害時に運転を続ける範囲から決めます。クラウド、オンプレミス、ハイブリッドのどれを選ぶかは、拠点数と応答性の要件に合わせて判断します。

発電管理システム開発の進め方

開発は、画面の要件だけでなく、既設の設備と運用手順を先に明らかにするところから始めます。次の流れで進めます。

  1. 現地調査
  2. 目的とKPIの設定、要件定義
  3. PoCと基本設計
  4. 開発と機器調達
  5. 試験、教育、段階移行

小規模拠点や読み取り専用の監視から始めて、効果とデータ品質を確かめたうえで、制御の範囲を広げます。

現地調査と要件定義

調査と要件定義では、設備、資料、運用に関する条件を集めて、整理しておきます。

  • 設備情報:機器の型式とファームウェア、通信と信号、周期、設置や保守の条件
  • 現場資料:写真、配線図、ネットワーク図、帳票、警報履歴
  • 機能要件:監視、警報、帳票、保持期間、権限、監査ログ
  • 異常時対応:バックアップ、通信断、制御、承認、復旧・手動復帰手順

現地では、発電機やPCS、PLC、SCADAを確認します。電力量計や気象センサー、通信回線も押さえます。盤や電源、監視室を含め、停止可能な時間も記録します。

何を自動化するかに加えて、異常時に誰が何を見て、どう手動で復帰させるかも決めておきます。

設計・開発・試験

基本設計では、機器構成とネットワークゾーン、データモデルを確定します。画面や権限、冗長化は、このときに決めておきます。外部連携やログ、バックアップも、同じ段階で決めます。

  • 接続設計:制御系・業務系の接続点、通信方式、時刻同期を図で共有
  • 障害設計:通知とデータ再送の条件を決め、認識違いを防ぐ
  • 試験:単体、結合、現地、総合の各段階で行う
  • 切替準備:復旧後のデータ補完と、旧システムへの切り戻しを用意

通信断やセンサー・電源の異常、サーバー切替も試験します。誤指令や警報の大量発生、時刻ずれも対象にします。切替は、定期点検や計画停止に合わせます。

教育・段階移行・運用改善

リリース前には、役割別の訓練を行います。対象は、運転員や保全担当者、管理者、障害対応担当者です。

  • 訓練内容:マニュアルを配るだけでなく、通信断や設備異常を想定して、迷いやすい箇所を手順に反映
  • 多拠点展開:代表拠点で検証したあと、共通のテンプレートにまとめる
  • KPI確認:発電量と利用率、警報初動、巡回と停止、帳票とデータ欠損
  • 運用改善:不要警報の削減、データ品質、手順の定着を優先

効果を確認した領域から、予測保全や自動最適化へ進めます。

▶ 詳細はこちら:発電管理システム開発の進め方

発電管理システムの費用相場と内訳

小規模監視から大規模制御更新まで、4つのシステム範囲ごとの初期費用と期間を並べた図解。
制御更新を含む範囲ほど、費用と期間の概算が大きくなります。

公定価格はなく、費用は拠点数や信号点数、制御の有無で変わります。加えて、既設改修や冗長化、セキュリティも費用に影響します。現地工事や試験範囲によっても、金額は変わります。

次に示す金額は、2025〜2026年時点の税別の概算です。SCADAやEMS、PLC連携、設備監視、制御系SIの構成をもとにしています。公式な定価ではないため、予算の初期値として使い、同じRFPで複数の提案を比べます。

スコープ別の初期費用と期間

初期費用と期間は、発電設備やシステムの範囲で変わるため、次の概算を目安にします。

  • 小規模監視:太陽光・小水力の1〜数拠点、500万円〜2,000万円、3〜6か月
  • 1拠点PLC・SCADA連携:遠隔監視を含め2,000万円〜8,000万円、6〜12か月
  • 多拠点EMS:蓄電池連携を含め8,000万円〜3億円、12〜24か月
  • 大規模制御更新:二重化・給電市場連携・総合試験を含め3億円〜10億円超、18〜36か月

小規模監視では、センサーやゲートウェイ、クラウド画面を想定します。警報や帳票、基本的な運用管理も、その範囲に含めます。

金額と期間は、発電所数や信号点数、機器調達を前提にした推定です。既設盤の改修や現地作業も、その前提に含まれます。停止期間と試験範囲も、推定の条件になります。

統一された相場ではないため、見積の前提と対象外の作業を確認します。

見積書で分けるべき費用

見積は、初期費用と運用費を項目別に分けて比較します。

  • 設計・開発:要件定義・設計、アプリケーション開発
  • 制御連携:PLC・SCADA・ゲートウェイ連携
  • 基盤・機器:サーバー、ネットワーク、ライセンス、センサー、制御盤、機器
  • 通信・現地工事:通信費、現地工事
  • 試験・導入・保守:単体・結合・現地・総合試験、教育、移行、保守

機器や配線、盤改修の扱いは、会社によって異なります。足場や安全管理、現地出張についても、見積書でどこまで含むかを確認します。

クラウド利用料や通信費、監視サービスを含むランニング費用は、月額10万円〜80万円程度を仮置きできます。また、保守・改修費は、初期費用の年10〜20%程度を置くケースがあります。

24時間有人監視や追加センサー、AI分析は、別枠で確認します。脆弱性診断やペネトレーションテストも、同様に別枠で扱います。

拠点数やデータ量で料金が増えるサービスは、5年間の総額で比べます。

▶ 詳細はこちら:発電管理システムの見積相場・費用

ポイント

費用は、拠点数や信号点数、制御の範囲、既設設備の改修で大きく変わります。示した金額は予算の初期値として使い、同じ条件で複数の見積を比べて判断します。

発電管理システムの開発会社・サービスの選び方

知名度や画面の印象より先に、次の範囲を一つの責任分界で管理できるかを確認します。対象は、発電設備や制御、通信、保全、セキュリティです。

電気設備の現地作業に強い事業者と、業務システムや分析に強い事業者が組んで提案する体制もあります。自社の運用課題に合う役割分担かどうかを見極めます。

設備経験と対応範囲の確認

候補先の経験と体制は、導入実績と担当範囲を分けて見ると、比べやすくなります。

  • 設備経験:発電種別、拠点数、通信プロトコル、制御案件
  • 導入実績:信号点数、停止を伴う切替、障害対応、稼働後の保守、既設設備との責任分界
  • 対応範囲:現地調査・調達・盤改修・通信工事、開発・試験・教育、24時間監視・脆弱性対応
  • 協力体制:自社外の領域、協力会社・再委託先、障害時窓口

提案内容と保守の比較

提案内容と保守条件は、運用や移行まで含めて比較します。

  • 提案資料:構成図、データフロー、画面、警報、障害時の動作
  • 開発範囲:標準機能と個別開発、拠点追加、データ出力
  • 保守条件:受付時間や一次回答時間、復旧目標、現地駆け付け、部品供給、バックアップ
  • 引き渡し:脆弱性通知・更新検証、契約終了時のデータ返却、設定ファイル・通信定義・画面定義・運用手順・試験記録

試験や移行、教育の計画も、提案内容の一部として確認します。

▶ 詳細はこちら:発電管理システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方

ポイント

開発会社は、知名度より、発電設備から保全までを一つの責任分界で任せられるかで比べます。設備経験と対応範囲、協力体制を分けて確かめると、役割分担の食い違いを減らせます。

発電管理システムの発注・外注・委託方法

発注の方法は、大きく3つに分かれます。発注側が要件を定義して委託する形と、現地調査から要件定義まで支援を受ける形、既存のパッケージやクラウドを導入して不足分だけ開発する形です。

設備情報が未整理の場合は、本開発の契約前に、現地調査や構想策定、小規模PoCを先に行うと、見積の精度を高めやすくなります。

RFPに含めるべき情報

RFPでは、設備と機能、現地条件、見積・契約条件を、そろえて示します。

  • 設備:種類・規模、拠点、機器、信号、通信、取得周期
  • 機能:画面、警報、帳票、制御指令、保持期間、既存システム
  • 運用:現地制約、停止期間、権限、セキュリティ、保守、KPI
  • 見積条件:総額と前提、除外、追加費、成果物・受入・支払

総額には、ソフトウェアだけでなく機器や通信、盤改修、配線も含めます。安全管理や現地試験、教育のほか、移行と保守も対象に入れます。同じ書式で回答してもらうと、各社の条件を同じ土台で比べられます。

契約・責任分界・データの扱い

契約では、障害時の責任と停止への対策を定めます。データの権利や成果物の引き渡しも、あらかじめ決めておきます。

  • 責任分界:設備・通信・ソフトの不具合、誤操作、攻撃、自然災害
  • 停止対策:SLA、バックアップ、冗長化、復旧目標、連絡網、保守時間
  • データ権利:発電データ、ログ、画像、保全履歴、学習データの保有・利用・返却形式
  • 引き渡し:設定情報と通信定義を成果物一覧に記載

特に、発電データや設定情報が委託先だけにあると、拠点の追加や保守会社の変更が難しくなります。

▶ 詳細はこちら:発電管理システム開発の発注・外注・委託方法

ポイント

発注方法は、要件をどこまで自社で定めるかで選びます。RFPでは設備や機能、運用、見積条件をそろえ、契約では責任分界とデータの扱いまで定めておくと、後の食い違いを減らせます。

情報漏えいだけでなく、誤制御や設備停止も事業に影響します。発電量の改ざんや復旧遅延も、事業への影響が大きい事態です。そのため、制御系ネットワークを業務ネットワークやインターネットから分けます。

踏み台対策や許可リスト、多要素認証、暗号化は、設計の段階から組み込みます。そのうえで、操作ログやバックアップ、脆弱性管理、復旧訓練も、同じ段階で計画に入れます。

サプライチェーンと制御系を守る要件

経済産業省・資源エネルギー庁は2025年6月、電力制御システムのサプライチェーン・セキュリティ対策の手引きを公表しました。

発注時には、調達・保守・更新の各段階について、対策を確認します。

  • 調達管理:再委託先、機器経路、セキュリティ仕様、機器管理
  • 脆弱性対応:通知、パッチ検証、保守用アカウントの管理
  • 接続制限:直接の公開を避け、不要なポートを閉じ、権限を分ける
  • 遠隔保守・ログ:許可制にして、ログは改ざんしにくい形で保存

手引きは、リスク管理や仕様確認、機器管理などを整理しています(出典: 経済産業省・資源エネルギー庁、2025年)。可用性に影響する更新は、検証環境と切り戻し手順を用意してから実施します。

分散型電源と制度変更への備え

制度やガイドラインの更新に備え、制御経路や設備情報を確認します。

  • ERAB改定:ゲートウェイ連携、末端IoT機器、取得情報のリスク
  • 制御経路の把握:発電所・蓄電池・需要設備の経路と取得データ
  • 要件更新:台帳、点検、申請、休廃止計画を公式情報で見直す

経済産業省は2025年5月、ERABに関するサイバーセキュリティガイドラインVer.3.0を公表しました(出典: 経済産業省、ERABに関するサイバーセキュリティガイドラインVer.3.0、2025年)。

2026年3月に閣議決定された電気事業法改正案は、大規模電源の休廃止に関する事前協議や、太陽電池発電設備の支持物などの工事前適合性確認を示しました(出典: 経済産業省「電気事業法の一部を改正する法律案」、2026年)。

成立の時期や施行日、対象範囲は変わる可能性があります。そのため、台帳や点検履歴、申請状況、休廃止計画は、公式情報を確認して要件に反映します。

発電管理システムに関するよくある質問

導入前によく寄せられる質問に答えます。自社の設備がどのモデルに近いか、監視だけで足りるか、制御やEMSまで必要かを考える材料になります。

発電管理システムの導入費用はいくらですか?

小規模監視は500万円〜2,000万円が目安です。1拠点のPLC・SCADA連携は2,000万円〜8,000万円です。

多拠点EMSは8,000万円〜3億円、大規模制御更新は3億円〜10億円超が概算です。

統一された公式価格はありません。信号点数や既設改修、現地工事によって変わるうえ、制御や安全対策、試験範囲でも差が出ます。そのため、設備情報を添えて相見積もりを取ります。

古い発電設備やメーカーが混在する設備でも導入できますか?

導入できる可能性はあります。現地調査では、機器の型式や通信方式、信号点数を確認します。アナログ信号や盤改修の要否も、あわせて確認します。

標準通信が使えない場合は、ゲートウェイや信号変換を使います。追加センサーや通信工事も組み合わせます。まずは読み取り専用のPoCで、接続範囲を検証すると安全です。

発電管理システムはクラウドにすべきですか?

多拠点監視や帳票を重視するなら、クラウドが候補になります。分析や拠点追加にも向きます。一方で、発電機や蓄電池をリアルタイムで制御する場合は、現場側で安全な動作を担保します。

エッジやオンプレミスで制御し、クラウドは計画や集計、分析に使うハイブリッド構成も検討できます。そのうえで、通信断時の動作や一時保存、復旧後の再送を確認します。

最初から自動制御やAI予知保全を導入すべきですか?

最初からすべてを自動化する必要はありません。まずは読み取り専用の監視や警報、帳票と設備台帳で、データ品質と運用手順を固めます。

次の段階では承認付きの制御を導入し、最後に自動最適化や予知保全へ進む方法があります。AIを使う場合は、学習データの欠損や誤検知への対策を設計してから運用します。説明の方法や、異常時の人の判断も、あらかじめ決めておきます。

まとめ

発電管理システムは、現場のデータを監視から計画、制御、保全、報告までつなぐ運用基盤です。発電量を表示するだけの仕組みではありません。

多拠点監視、自家発電・蓄電池・需要の最適化、大規模発電所の制御更新では、必要な機能や構成が変わります。費用や導入期間も、それぞれ違ってきます。

導入前の確認事項

最初に、導入の目的とKPIを決めます。目的の例には、巡回や停止時間、燃料費の削減、インバランス低減、保安業務の省力化があります。

発電設備の型式や、PLC・PCS・SCADA、信号点数、通信を整理します。そのうえで、停止可能時間や既存の帳票、保全履歴も押さえます。

初期導入の範囲は、監視やEMS、制御、保全、外部連携のうち、どこまでを含めるかで決めます。

小さな検証と段階的な拡大

導入は小さく検証し、安全性や費用、運用条件を確かめながら、段階的に広げます。

  • 事前検証:現地調査とPoCで、データ品質を確認
  • 段階導入:読み取り専用の監視から、制御へ進める
  • 見積比較:ソフト、機器、通信、工事、試験、保守の項目に分けて比べる
  • 選定:設備経験、責任分界、セキュリティ、保守、データ移行を比較

セキュリティの手引きや制度の変更を踏まえて、稼働後も要件を定期的に見直します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。