商品管理システムは、在庫の数量を追いかける在庫管理システムとは異なり、商品そのものの属性情報——商品コード(SKU)や商品名、JANコード、商品カテゴリ、販売単価、仕入原価、仕入先、寸法・重量、消費税区分といった「商品マスタ」——を正確に定義し、維持していくためのシステムです。受発注・在庫・物流・会計といった基幹業務は、すべてこの商品マスタを土台にして動いており、マスタが不正確であれば誤出荷や在庫のズレ、原価計算の誤りといったトラブルが全社に波及します。だからこそ商品管理システムの開発では、「現場でどう数量を数えるか」よりも「商品という静的なデータをどう一意に採番し、どのルールで分類し、どの基幹システムと矛盾なく共有するか」が設計の主眼になります。導入を検討する企業担当者がまず気にするのが、「開発期間はどれくらいかかるのか」「いつから運用を始められるのか」という点でしょう。
本記事では、商品管理システム開発の開発期間・スケジュール・納期にフォーカスし、クラウド型・パッケージ型・フルスクラッチ型それぞれの期間の目安、標準的な開発工程の流れ、商品マスタ管理ならではの期間を左右する要因、そして納期を短縮する方法や遅延を防ぐ対策までを体系的に解説します。なお、EC・カタログ・店頭タブレットなど複数チャネル向けに画像や動画、チャネルごとの商品説明文を一元管理・配信する高度な仕組みは「商品情報管理システム(PIM)」と呼ばれ、本記事が扱う商品管理システムとは役割が異なります。ここでは、基幹業務の土台となる商品マスタをどのようなスケジュールで構築していくのか、実務に即した判断軸をお伝えします。
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・商品管理システム開発の完全ガイド
商品管理システム開発の開発期間の全体像

商品管理システムの開発期間は、どの提供形態を選ぶかによって数週間から1年以上まで大きく変わります。既製のクラウドサービスをそのまま利用するのか、パッケージ製品に自社独自の商品コード体系やカテゴリ分類を組み込むのか、あるいはゼロからフルスクラッチで構築するのかによって、稼働までの道のりはまったく異なります。ここで押さえておきたいのは、商品管理システムは「商品マスタ」「商品コード(SKU)採番」「カテゴリ分類」「価格・原価・仕入先の管理」「新商品登録から廃番までのライフサイクル管理」「他システムへのマスタ配信」といった機能ブロックの組み合わせで成り立っており、どこまでを標準機能でまかない、どこからを独自ルールで作り込むかが期間を決定づけるということです。特に、既存の商品マスタをどれだけ整備してから移行するか、販売管理・在庫管理・会計・ECサイトとどこまでマスタを連携させるかによって、要件定義とデータ移行に要する時間が大きく変わります。以下では、提供形態ごとの期間の目安を具体的な数値とともに整理します。
クラウド型(SaaS)の導入期間
クラウド型(SaaS)の商品管理システムは、初期投資を抑えつつ最短2週間から1ヶ月程度で運用を開始できるケースが多く、スピード重視の企業に適しています。すでに完成したサービスをインターネット経由で利用するため、サーバーの構築やソフトウェアのインストールが不要で、アカウントを発行して商品マスタを登録すればすぐに使い始められるのが最大の強みです。多くのクラウド型サービスは、商品マスタのCSVインポート機能や、商品名・価格・カテゴリ・JANコードを一括登録するためのExcelテンプレートを標準で備えており、既存の管理表からの移行を数日で済ませられます。商品コードの採番、カテゴリ分類、価格・原価の登録、新商品の追加や廃番処理といった商品管理システムの中核機能もあらかじめ用意されているため、標準機能で自社の運用がまかなえる場合はこの短さが実現します。ただし、クラウド型は「業務をシステムの標準機能に合わせる」ことが前提であり、自社独自の複雑な商品コード体系や、多階層のカテゴリ構造、セット品の構成管理といった特殊な要件を組み込むことは原則としてできません。導入期間が短い反面、既存のマスタ運用をどこまでサービスの仕様に寄せられるかが、実際の稼働スピードを左右します。トライアル環境に自社の実データを流し込み、商品コードの桁数やカテゴリの粒度が標準機能の範囲に収まるかを見極める作業に、導入前の1〜2週間を充てるのが現実的な進め方です。
パッケージ型の導入・開発期間
パッケージ型は、商品マスタ管理の基本機能を備えた製品をベースに、自社固有の要件をカスタマイズで追加していく方式で、要件定義から設計、開発、テスト、本番稼働までに1ヶ月から3ヶ月程度、カスタマイズの規模が大きい場合は3〜6ヶ月かかるのが一般的です。標準機能で商品コード採番やカテゴリ分類、価格・原価管理、仕入先マスタといった土台が用意されているため、フルスクラッチよりも大幅に期間を短縮できる一方、追加するカスタマイズの規模に比例して開発期間は延びていきます。たとえば、標準では単純な一意コードしか採番できないところに、アパレルのように「商品コード6桁+サイズ2桁+カラー2桁」の10桁で独自の規則性を持たせたインストアコードを組み込みたい、あるいはセット品や組立商品の構成情報を親子で管理したい、といった要件が加わると、その分の設計・開発・テストの工数が上乗せされます。パッケージ型で期間をコントロールする鍵は、導入初期に「標準機能で満たせる要件」と「どうしても独自開発が必要な要件」を明確に切り分けることです。多くの企業では、実際に使う機能は全体の5〜7割程度に収まると言われており、必須要件に絞ってカスタマイズを最小化すれば、2〜3ヶ月での稼働も十分に狙えます。逆に、現場から上がってくる要望をすべて受け入れてカスタマイズを積み重ねると、当初想定の1.5倍以上に期間が膨らむことも珍しくありません。パッケージ型を選ぶ際は、コード体系とカテゴリ構造のカスタマイズ範囲を最初に線引きすることが、納期を守るうえで決定的に重要です。
フルスクラッチ型の開発期間
フルスクラッチ型は、自社の商品管理業務に100%合わせてゼロから設計・開発するため、設計から開発・テストまでに半年から1年程度、販売・在庫・会計まで含む統合的な商品基盤を構築する大規模なプロジェクトでは1年以上を要することもあります。独自のコード体系を厳密に実装したい場合、多階層かつ大量のカテゴリを柔軟に組み替えたい場合、セット品や組立商品の構成品ごとに原価を自動で積み上げ計算したい場合などには、この規模の期間を見込む必要があります。フルスクラッチの開発期間が長くなる最大の理由は、商品マスタが単独では完結せず、必ず周辺の基幹システムにデータを供給する「源泉」となるからです。商品コードが採番された瞬間に在庫管理システムがその商品を数量管理の対象として認識し、販売管理システムが受注入力の選択肢に加え、会計システムが原価計算の基礎データとして参照する——こうしたマスタ配信の整合性を独自に設計・実装するには、それぞれの業務でどの項目がどのタイミングで必要になるかを深く理解したうえで作り込む必要があり、相応の時間がかかります。近年ではAIによるコード生成やテスト自動化を活用し、フルスクラッチの期間とコストを従来比で圧縮する手法も登場していますが、それでも要件定義とデータ移行、連携テストの工程は省略できず、慎重なスケジューリングが求められます。フルスクラッチを選ぶ場合は、最初から全機能を作り込むのではなく、商品マスタと採番の中核から段階的にリリースする計画を立てることが、長期プロジェクトを頓挫させないための現実的な進め方です。
標準的な開発工程とスケジュール例

商品管理システムの開発は、要件定義・設計・開発実装・テスト/移行・稼働という工程を順に進めるのが基本です。全体を通じて特に重要なのが最上流の要件定義で、商品という「業務全体で共有される基礎データ」をどう一意に定義し、どのコード体系とカテゴリ構造で管理するかをこの段階で正確に決めきれるかどうかが、後工程の手戻りとスケジュール全体を大きく左右します。ここでは各工程で商品管理システムならではの注意点を、標準的なスケジュール例とともに解説します。
要件定義フェーズ(商品コード体系とマスタ項目の定義)
要件定義は商品管理システム開発の成否を決める最重要フェーズで、全体工程の1〜2割前後を占めます。ここでまず行うのが、管理対象となる商品の粒度、すなわちSKU(在庫管理の最小単位)の定義です。SKUとは「これ以上分けることができない管理単位」であり、たとえばTシャツが柄2種類、サイズがS・M・Lの3種類ある場合、アイテムとしては2種類でも、SKUとしては2×3=6種類の商品コードを採番・登録する必要があります。この粒度の決め方を誤ると、後から色やサイズを分けて管理できないといった致命的な作り直しが発生します。次に決めるべきが商品コードの採番ルールです。世界共通のJANコード(事業者コード7桁または9桁+アイテムコード3桁または5桁+チェックデジット1桁の合計13桁)をどう扱うか、小売を通さない自社専用のインストアコード(頭2桁に20〜29を使う)をどう設計するかを、この段階で確定させます。あわせて、商品カテゴリの階層構造、価格(販売単価)・原価(仕入原価)・仕入先の管理項目、寸法・重量・消費税区分といった属性項目を洗い出します。さらに、販売管理・在庫管理・会計・ECサイトのうちどれにマスタを配信するのか、その連携方式はAPIによるリアルタイム連携かCSVによるバッチ連携かも要件として明確にします。これらを要件定義書としてまとめ、必須(Must)・希望(Should)・要望(Want)に優先度分類しておくことが、後工程での手戻りを防ぐ最大の予防策となります。
設計・開発フェーズ(マスタ構造とバリデーション)
要件が固まったら、設計・開発フェーズに移ります。この工程は全体の4〜6割前後を占める最も工数のかかる部分で、商品管理システムでは特に「マスタのデータベース設計」と「入力を守るバリデーション(統制)」の作り込みに注力します。データベース設計では、商品マスタ、カテゴリマスタ、仕入先マスタ、価格・原価の履歴といったテーブルを、将来の拡張に耐える構造で設計します。ここで避けなければならないのが、後々の拡張を口実に用途不明の「その他」という列を作ってしまう設計や、取引先と部署のように意味の異なる情報を「コード区分」で1つのテーブルに無理やり詰め込むダブルミーニングの設計です。こうした曖昧な構造はバグの温床となり、稼働後のデータ不整合を招きます。バリデーションの設計では、商品コードに関するアンチパターンをシステムで機械的に排除する仕組みを作り込みます。具体的には、大文字と小文字が混在するコード(「DOG-1」と「dog-1」が別物として登録されてしまう)、先頭が0から始まるコード(CSVエクスポート時に0が消えて桁がずれる)、日本語や記号を含むコード(連携先システムでの誤作動や文字化けの原因になる)といった登録を、入力段階で制限します。これらの統制を怠ると、誤出荷やシステム間連携の破綻に直結するため、地味ながら極めて重要な作り込みです。あわせて、新商品登録・情報更新・廃番といったライフサイクル操作の画面、カテゴリの一括変更機能、価格改定の履歴管理、そして各基幹システムへマスタを配信する連携処理の開発を進めます。中規模の商品管理システムであれば、この設計・開発フェーズだけで1〜3ヶ月を見込んでおくのが一般的です。
テスト・データ移行フェーズ(既存マスタの名寄せ)
開発が一段落したら、テストとデータ移行のフェーズに入ります。この工程は全体の1〜2割前後を占め、商品管理システムでは「既存の商品マスタをいかに綺麗にして新システムへ移すか」が最大の山場になります。単体テスト・結合テストでは、商品コードの採番が採番ルールどおりに行われるか、バリデーションが不正なコードを正しく弾くか、カテゴリの階層移動や価格改定が意図どおりに反映されるか、各基幹システムへマスタが正しく配信されるかなどを網羅的に確認します。特に重要なのが、長年運用してきた既存マスタの移行です。古い商品マスタには、廃番になった商品コードの残存、同一商品の重複登録、単価やカテゴリの欠損、全角と半角が混じった表記ゆれといった「データのゴミ」が蓄積していることが多く、これをそのまま移行するとエラーが多発します。そのため、移行前にデータ品質を評価し、名寄せ(同じ商品の重複を1つにまとめる作業)やクレンジングを行うことが不可欠で、この作業に想定以上の時間がかかるケースが少なくありません。複数の既存システムからマスタを統合する場合は、システムごとに異なるコード体系や項目定義を突き合わせ、コードの統廃合を行うマッピング作業も必要になります。ユーザー受入テスト(UAT)では、商品登録を担当する部門や、マスタを利用する販売・在庫・経理の各部門が実際の業務シナリオに沿って操作し、新商品登録から廃番までの一連の流れが問題なく回るかを検証します。稼働直前には、新旧システムでマスタの内容を照合し、差異がないことを確認する作業を丁寧に行うことが、安全な移行につながります。
開発期間を左右する商品管理システム特有の要因

商品管理システムの開発期間は、同じ規模のプロジェクトであっても、いくつかの要因によって大きく変動します。在庫管理システムでは棚卸資産の評価ロジックや複数拠点の在庫同期が期間を左右しますが、商品管理システムでは「商品コード体系とSKU設計の複雑さ」「取り扱う商品数とカテゴリ階層の規模」「マスタを配信する連携先の数」といった、マスタそのものの構造と広がりに関わる要因が期間を決定づけます。ここでは、商品マスタ管理に特有の期間変動要因を3つの観点から解説します。
商品コード体系・SKU設計の複雑さ
商品管理システムの開発期間を最も大きく左右するのが、商品コード体系とSKU設計の複雑さです。単純な連番コードだけで管理できる商材であれば設計はシンプルですが、多くの企業では商品コードに意味を持たせて管理しています。たとえばアパレルでは「商品コード6桁+サイズ2桁+カラー2桁」といったインストアコードを用い、コードを見ただけで商品の属性がわかる規則性を持たせます。こうした体系を実装するには、桁ごとの意味づけ、採番の自動化、チェックデジットの計算、既存コードとの重複チェックといったロジックを丁寧に作り込む必要があります。さらに、JANコードとインストアコードの両方を併用する場合や、取引先ごとに異なるコードで同じ商品を呼ぶ「取引先商品コード」の対応表を持つ場合には、コード変換のテーブルとロジックが加わり、開発量が一気に増えます。SKU設計も期間を押し上げる要因です。色・サイズ・容量・入数といった軸の組み合わせでSKUが爆発的に増える商材では、親商品(アイテム)と子商品(SKU)を階層で管理する仕組みが必要になり、その分の設計・テスト工数がかかります。コード体系は一度決めると後から変更が極めて難しいため、設計に時間をかける価値がある一方、要件が固まらないまま開発を進めると大きな手戻りを招きます。
取り扱い商品数とカテゴリ階層の規模
取り扱う商品数の規模と、カテゴリ階層の深さも、開発期間を左右する商品管理システム固有の要因です。数百点程度の商品を扱う企業であれば、シンプルなマスタ構造と平易な検索機能で十分ですが、数千から数万、場合によっては数十万SKUに及ぶ商品を扱う企業では、大量のデータを高速に検索・一覧・絞り込みできるパフォーマンス設計が必要になります。商品数が増えるほど、一覧画面のページング、カテゴリや属性による絞り込み検索、あいまい検索の応答速度が問題になりやすく、データベースのインデックス設計や検索エンジンの導入といった追加の作り込みが求められます。カテゴリ階層についても、2〜3階層で済む場合と、大分類・中分類・小分類・細分類と多階層にわたり、しかも季節やキャンペーンに応じて頻繁に組み替える必要がある場合とでは、設計の難易度がまったく異なります。カテゴリを柔軟に組み替えられる仕組みや、1つの商品を複数のカテゴリに所属させる多対多の管理、カテゴリ変更時に配下の商品を一括で移動する機能などを求めると、その分だけ開発期間が延びます。商品数とカテゴリの規模は、要件定義の段階で現状と将来の見込みを正確に把握し、必要なパフォーマンスと柔軟性の水準を見定めておくことが、期間の見積もり精度を高める鍵となります。
マスタを配信する連携先システムの数
商品管理システムは、商品マスタを起点として周辺の基幹システムへデータを供給する「源泉」の役割を担うため、そのマスタをいくつのシステムに、どの方式で配信するかが開発期間を大きく左右します。在庫管理システムには商品コードと在庫管理単位を、販売管理システムには販売単価と税区分を、会計システムには原価と勘定科目の紐付けを、ECサイトには商品名やカテゴリを——というように、配信先ごとに必要な項目とタイミングが異なります。連携先が1〜2システムでCSVのバッチ連携であれば比較的シンプルに実装できますが、複数のシステムにAPIでリアルタイム配信し、しかも商品情報が更新されるたびに全連携先へ即座に反映するとなると、更新の順序制御、連携失敗時のリトライ、どのシステムを正(マスタの真実)とするかといった設計判断が必要になり、作り込むべき処理が一気に増えます。特に、複数の既存システムがそれぞれ独自の商品マスタを持っている状態から、商品管理システムを新たに「唯一の正しいマスタ」として据える場合は、既存マスタとの整合性を取りながら移行する難易度が高く、連携仕様の調整だけで数週間を要することもあります。連携先が多いほど、連携テストのパターンも増え、期間は加速度的に延びていく点に注意が必要です。
納期を短縮する具体的な方法

商品管理システムの開発期間を少しでも短縮したい場合、闇雲に開発を急ぐのではなく、マスタ項目の絞り込みと段階的な移行によって現実的に期間を圧縮するのが定石です。ここでは、品質を犠牲にせずに納期を短縮するための実践的な方法を紹介します。
Fit to Standardでマスタ項目を絞り込む
納期短縮の最も効果的な方法は、「業務をシステムの標準機能に合わせる」というFit to Standardの考え方を徹底することです。商品マスタに持たせられる項目は際限なく増やせますが、実際に基幹業務で必要とされる項目は限られています。あれもこれもと独自項目を追加し、独自のコード体系やカテゴリ運用にこだわると開発量が膨れ上がり期間が延びますが、必須項目(Must)に絞り込み、標準機能で代替できる部分は業務側を寄せることで、開発工数を大幅に削減できます。たとえば、独自の複雑なインストアコードにこだわるのではなく、パッケージやSaaSが備える標準の採番機能をそのまま使う、独自の商品台帳帳票を作り込むのではなく標準の商品一覧をCSV出力して既存のツールで加工する、といった割り切りが有効です。カスタマイズは「それがなければ業務が回らない」ものに限定し、「あれば便利」レベルの項目や機能は稼働後の追加開発フェーズに回すことで、初期リリースまでの期間を短縮できます。特に、EC向けの画像や動画、チャネルごとの説明文といったリッチな商品情報は、商品情報管理システム(PIM)の領域として切り分け、基幹業務用の商品管理システムからは外すことで、スコープを引き締められます。この切り分けを要件定義段階でベンダーと合意しておくことが、納期を守るうえで欠かせません。
スモールスタートと段階的なマスタ移行
もうひとつの有効な方法が、全商品・全連携を一斉に切り替えるのではなく、対象を絞ったスモールスタートです。最初から全カテゴリの商品マスタと全システム連携を同時に稼働させようとすると、データ移行もテストも膨大になり、期間が長期化するうえリスクも高まります。そこで、まず1つの主力商品カテゴリ、あるいは1つの事業部門に絞って商品マスタの登録・採番・基本的な連携から稼働させ、効果と課題を検証してから対象を広げる段階的導入が効果的です。この方式なら、最初のリリースまでの期間を短縮でき、早期に運用を開始して現場からのフィードバックを得られます。得られた知見をもとに、次のフェーズで対象カテゴリを追加し、その次で会計システムやECサイトへの連携を組み込む、というようにマスタの対象範囲と連携先を段階的に拡張していけば、各フェーズのリスクを抑えながら着実に全社展開を進められます。特に、データ品質にばらつきがある既存マスタを扱う場合は、品質の良いカテゴリから先に移行し、整備に手間のかかるカテゴリは後続フェーズに回すことで、初期リリースを早められます。段階的な移行は、経営層に早い段階で成果を示せる点でも、プロジェクトの継続的な支持を得るうえで有利に働きます。
納期遅延の典型要因と対策

商品管理システムの開発では、いくつかの典型的な要因で納期が遅延します。これらは事前に把握して対策を打っておけば、多くを回避できるものです。ここでは、代表的な遅延要因とその対策を解説します。
既存商品マスタの品質不良による移行遅延
納期遅延の最も典型的な要因が、既存の商品マスタの品質不良です。長年運用してきたマスタには、廃番になった商品コードの残存、同じ商品の重複登録、単価やカテゴリの欠損、全角と半角や大文字と小文字が混在した表記ゆれといった問題が蓄積しているのが常で、これをそのまま新システムに流し込むとエラーが多発し、移行が予定通りに進みません。テスト環境の綺麗なダミーデータでは順調に動いていたのに、本番の実データを投入した途端に重複や不整合が噴出する、という失敗は商品管理システムで頻繁に起こります。対策は、開発着手と並行して、あるいは開発着手前にデータ品質の評価とクレンジングを先行して完了させておくことです。重複商品の名寄せ、廃番コードの整理、欠損単価の補完、コード体系の統一、表記ゆれの標準化といった作業には想像以上の時間がかかるため、プロジェクトの初期段階からデータ整備の担当と期限を明確に決めておく必要があります。特に、複数の部門や既存システムがそれぞれ別のマスタを持っている場合は、どれを正とするかの判断も含めて統合作業が難航しがちです。データ整備を後回しにしたプロジェクトほど、稼働直前に大きな遅延を招く傾向があります。マスタの整備は地味な作業ですが、商品管理システムの正確性の土台であり、ここに十分な時間を確保することが結果的に全体の納期を守ることにつながります。
コード体系の後戻り・カテゴリ定義の詰め不足
もうひとつの典型的な遅延要因が、商品コード体系の後戻りとカテゴリ定義の詰め不足です。商品コードやSKUの粒度は、一度決めて開発を進めた後で変更すると、マスタ構造から連携仕様まで広範囲に影響が及び、大きな手戻りが発生します。「後からサイズ違いを別コードで管理したくなった」「カテゴリをもっと細かく分けたくなった」といった要件の追加が開発の後半で発覚すると、その修正コストは要件定義段階で対応する場合の数十倍に膨らむこともあります。対策は、要件定義の段階で、商品を登録・利用するすべての部門を巻き込み、コード体系とSKUの粒度、カテゴリの階層構造を細部まで詰めきることです。特に「同じ商品を取引先ごとに違うコードで呼ぶ必要はないか」「1つの商品を複数のカテゴリに所属させる必要はないか」「セット品や組立商品をどう管理するか」といった論点は見落とされやすく、稼働後のトラブルの温床になります。あわせて、バリデーションのルールも早期に固めておくことが重要です。どんなコードを許可し、どんなコードを弾くかを曖昧にしたまま開発を進めると、後から統制ルールを追加するたびに既存データの手直しが発生します。要件を必須・希望・要望に分類し、コード体系とカテゴリ定義を早期に確定させたうえで、関係部門と合意しておくことが、手戻りによる遅延を防ぐ最も確実な方法です。
まとめ

本記事では、商品管理システム開発の開発期間・スケジュール・納期について解説しました。商品管理システムは在庫の数量を追う在庫管理システムとは異なり、商品コードやカテゴリ、価格・原価・仕入先といった商品マスタそのものを定義・維持し、在庫・販売・会計・ECといった基幹業務にデータを供給する「源泉」となるシステムであるため、開発期間は「商品コード体系とSKU設計をどこまで作り込むか」「取り扱う商品数とカテゴリ階層がどれだけ大きいか」「マスタをいくつのシステムにどう配信するか」といった要因で大きく変動します。提供形態別の目安は、クラウド型(SaaS)で最短2週間〜1ヶ月、パッケージ型で1〜3ヶ月(カスタマイズ次第で3〜6ヶ月)、フルスクラッチ型で半年〜1年以上です。納期を守るためには、要件定義段階でコード体系とカテゴリ定義を確定させ、連携仕様を関係部門と詰めきること、Fit to Standardでマスタ項目を絞り込むこと、そして既存マスタの品質整備を早期に完了させることが決定的に重要です。なお、マルチチャネル向けのリッチな商品情報の配信は商品情報管理システム(PIM)の領域であり、基幹業務用の商品管理システムとは切り分けて考えるとスコープが引き締まります。まずは自社の商品マスタの現状と連携すべき基幹システムの範囲を整理し、複数の開発会社に相談して現実的なスケジュールを見積もることから始めることをお勧めします。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
