プロジェクト管理システム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

プロジェクト管理システムの保守・運用費用は、導入形態と利用人数で変わります。予算管理や工数連携をどこまで含めるかも金額を左右し、月額は1ユーザーあたり500円から3,000円以上です。

PMO・情シス・経営企画の方が予算を組む際の材料として、相場と保守費、増加要因をまとめています。

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プロジェクト管理システム開発における保守・運用費用の全体像

保守・運用費用は、Backlog、Jira、Microsoft ProjectなどのSaaS・パッケージを使うか、自社向けにオンプレミス・フルスクラッチで構築するかによって異なります。導入形態が違うと、費用の発生の仕方そのものが変わるためです。

SaaS型は初期投資をほぼゼロにできる一方、利用人数に応じた月額料金が続きます。人数が増えると、3年・5年のランニングコストも大きくなります。これに対し、オンプレミス・フルスクラッチ型は、月額利用料がなくても、サーバー維持費やライセンス・カスタマイズ部分の年間保守費用が発生します。

予算管理や原価管理を含むと、一般的なタスク管理向けより上位の料金プランが必要になる場合があります。ここは見積もりで見落とされやすい点です。

費用を把握するには、プロジェクト管理システムが隣接システムとは異なるレイヤーにあることも押さえておく必要があります。

タスク管理ツールは個々の進捗共有が中心で、月額500円〜1,500円程度のプランで足りることが多くあります。スケジュール管理システムも、予約や稼働を効率よく回すことに特化した同水準の価格帯に収まりがちです。

一方、プロジェクト管理システムは、複数人・複数タスクの予算消化や工数実績の差異を分析します。さらに、複数プロジェクトを横断するポートフォリオ管理など、経営判断に関わる機能も担います。

そのため、1ユーザーあたりの月額料金で比べても、上位プランや特化型ツールが必要になる場合があります。月額単価と保守費用も、高めに推移する傾向です。

費用構造の基本(初期費用とランニングコストの内訳)

費用は初期費用とランニングコストに分けて考えます。その理由は、SaaS型とオンプレミス・フルスクラッチ型で発生する費用の種類が異なるためです。

  • SaaS型の初期費用:アカウント発行や初期設定が中心で、費用がほぼゼロに近い場合があります。
  • SaaS型の運用費:月額のユーザー課金に、上位プランや外部連携のオプション費用が上乗せされます。
  • 自社構築の初期費用:開発費とライセンス費で、数百万円から数千万円規模になります。
  • 自社構築の運用費:ライセンス・カスタマイズ部分の保守費に加え、サーバー・インフラの維持費がかかります。

初期費用だけで選ぶと、3年・5年のトータルコスト(TCO、総所有コスト)で想定外の負担になる場合があります。そのため、契約前に運用費も含めて試算しておくことが大切です。

導入形態による費用差(SaaS型 vs オンプレ/フルスクラッチ型)

SaaS型とオンプレミス・フルスクラッチ型では、費用が発生する時期も性質も違います。比べるときは、利用規模と作り込みの度合いを踏まえる必要があります。

  • SaaS型:利用人数やプロジェクト数が増えるほど、ランニングコストも膨らみます。
  • オンプレミス・フルスクラッチ型:初期投資は大きい一方、ユーザーが増えても追加のライセンス費が発生しにくい形です。
  • 保守費用の算定:ライセンス費用やカスタマイズ費用の一定割合で計算されます。

大規模組織では自社構築のほうが相対的に有利になりやすい一方、結果は規模やプロジェクト数、予算管理・工数連携の作り込み度合いによって変わります。そのため、自社の利用規模を当てはめて試算してみてください。

ポイント

導入形態を比べるときは、初期費用の安さだけでなく、利用人数が増えたときに月額と年間の費用がどこまで伸びるかで判断すると迷いにくくなります。

SaaS型プロジェクト管理システムの月額相場・費用シミュレーション

タスク管理機能中心、平均、上位プランの1ユーザーあたり月額相場を3枚のパネルで示した図
予算・原価分析などの機能を加えると、月額帯も上がります。

一般的なタスク管理機能中心のSaaSは、1ユーザーあたり月額500円〜1,500円程度です。平均は約1,150円〜1,271円とされています。一方、タイムトラッキングや予算・原価のレポート分析を使う場合は、月額1,500円〜3,000円以上の上位プランが必要になるケースが多くあります。

年間契約では、1ユーザーあたりの月額料金が30%〜40%ほど割引されるケースが多くあります。長期利用の見込みがあれば、ランニングコストの圧縮に有効です。

ユーザー数別の費用シミュレーション

1ユーザーあたり月額約1,271円を基準にすると、利用人数によって長期費用がどう変わるかが分かります。

  • 100名規模:月額約12.7万円、年間約152.5万円、3年間で約457.5万円。
  • 500名規模:月額約63.5万円、年間約762.6万円、3年間で約2,287万円。
  • 1,000名規模:月額約127万円、年間約1,525万円、3年間で約4,575万円。

予算管理・工数実績連携などの上位機能を使う場合、上位プランとの差額が加わります。そのため、実際の負担額は、この試算より大きくなる可能性があります。

ユーザー数無制限の月額固定制プランは、相場として月額1万円〜5万円程度です。人数の多い組織では、1人あたりの単価を大幅に抑えられる場合があります。そこで、大規模導入では固定制プランの有無も確認しておくとよいでしょう。

代表的な製品の価格帯比較

製品の価格には、ユーザー単位の月額制と、利用人数にかかわらない固定制があります。機能と課金単位を分けて見ると、比較しやすくなります。

  • Asana:目標管理・ワークフローに強く、Starterは月額1,475円、Advancedは月額3,300円(いずれも1ユーザーあたり)。
  • Jira:アジャイル開発・バグ管理に強く、Standardは月額990円〜1,085円、Premiumは月額1,770円です。
  • Microsoft Project:大規模プロジェクト向けの詳細なスケジュール・リソース管理を備え、月額1,250円〜です。
  • Lychee Redmine:クラウド版はスタンダードが月額900円、ビジネスが月額2,100円です。
  • 固定制・専門ツール:BacklogやReforma PSA、OBPM Neoも候補です。

固定制の例として挙げた国内製品のBacklogは、スターターが月額2,970円(30ユーザーまで定額)、プラチナが月額82,500円(無制限)です。Lychee RedmineはRedmineを拡張した高機能版で、工数・出来高管理を備えています。

Reforma PSAは工数・経費から原価を自動算出し、予実管理に特化しており、月額は30,000円〜です。OBPM NeoはPMBOKの10の知識エリアを統合し、IT・製造業向けのコスト・進捗・要員管理を提供します。月額は52,500円(10ID)〜です。

予算管理・原価管理まで扱うなら、高価格帯の専門ツールも選択肢に入ります。そのため、タスク管理ツールとは価格帯が異なる点を踏まえて比べる必要があります。

ポイント

月額を試算するときは、上位機能を使う人数を先に分けて数えると、見込みが実態に近づきます。年間契約の割引は、長期利用の見込みがあるかどうかで検討するとよいでしょう。

オンプレミス・フルスクラッチ型の保守・運用費用

パッケージ本体とカスタマイズ部分について、保守費用の基準と割合を左右で比べた図
見積もりでは保守の対象ごとに基準額を分けて整理できます。

オンプレミス・フルスクラッチ型は月額利用料がかかりませんが、サーバー維持費と保守運用費用が継続して発生します。特に、独自の予算管理・原価計算ロジックを多くカスタマイズすると、その保守費用が総額を押し上げる要因になります。

ライセンス・カスタマイズ部分の年間保守費用

パッケージ本体の年間保守費用は、初期ライセンス費用の約20%が目安です。たとえば、初期ライセンス費が100名規模で150万円なら、年間約30万円です。

一方、自社の予算管理・原価計算に合わせて開発した部分は、開発費の年間約10%が保守費用の目安です。カスタマイズの割合が大きいほど、この費用が総保守コストに占める比率も高くなる傾向があります。

ライセンス保守とカスタマイズ保守は、契約や担当ベンダーが別々になる場合があります。そのため、双方の保守範囲と対応時間帯(SLA)を事前にすり合わせておくと、稼働後のトラブルに対応しやすくなります。

サーバー・インフラ維持費

オンプレミス型や自社専用クラウドでは、サーバー維持費として3年間で約100万円(年間約33万円程度)が目安です。月額3万〜5万円程度、3年間で108万円〜180万円とする試算もあります。

数千から数万件のWBSタスクや工数実績、複数プロジェクトの予算データを長期間蓄積すると、容量やバックアップ体制によって費用が膨らむ場合があります。また、監査や内部統制のために過去の予算実績を数年保存する組織では、ストレージの拡張とバックアップの運用費用も見込んでおく必要があります。

ポイント

保守費用は、ライセンス部分とカスタマイズ部分に分けて見積もると、費用が膨らむ箇所が見えやすくなります。カスタマイズを増やす前に、その保守費用を年間で試算しておくことが判断の目安になります。

予算管理・工数実績連携など上位機能ゆえの費用増加要因

上位プラン、複数サービス、連携開発、クラウドストレージの4項目をカードで整理した図
契約料に加えて、連携やデータ保存にも費用が発生します。

予算管理・原価管理・工数実績連携を備えるため、プロジェクト管理システムにはタスク管理やスケジュール管理とは異なる費用増加要因があります。

上位プラン・特化型SaaSの契約必須化

高度な権限管理、ワークフロー自動化、セキュリティ強化、会計システムやERPとのAPI連携機能には、PremiumやEnterpriseなど高額な上位プランが必要になるケースがほとんどです。

さらに、複数プロジェクトの予実管理レポートやEVM(アーンド・バリュー・マネジメント)分析は、最上位プランだけで提供されることがよくあります。タスクの状況を把握するだけなら安価なプランで足りますが、予算の執行状況を経営層へ報告する要件が加わると、上位プランが必要になる構造です。

複数SaaS組み合わせとシステム間連携の隠れコスト

複数のSaaSを組み合わせると、契約料に加えて連携開発や保存容量の費用が発生します。

  • 複数サービスの利用:案件・原価・現場写真・人員手配などを、機能ごとに別のSaaSで管理する場合があります。
  • サブスクリプション:建設業などでは、月額10万円〜20万円のサービスを3本以上組み合わせる例があります。
  • 連携開発:SaaS同士のデータがずれないよう連携するため、追加の開発費用が200万円〜400万円ほどかかることもあります。
  • 長期費用:追加費用により、3年間のランニング費用が500万円〜800万円規模になることもあります。
  • 保存容量:WBSの設計データやファイルが多い場合、クラウドストレージの拡張費もかかります。

複数SaaSを組み合わせる場合は、契約前に連携開発費を含めた総額を試算しておく必要があります。

ポイント

上位プランが必要かどうかは、予算の執行状況を経営層へ報告する要件があるかで判断しやすくなります。複数SaaSを組み合わせる場合は、連携開発費を含めて比べることが目安です。

保守・運用費用を最適化するための考え方

上位レイヤーにあるプロジェクト管理システムは、費用が高額になりがちです。TCOを抑えるには、費用構造を理解したうえで、構成や契約、機能範囲を工夫することが欠かせません。

ハイブリッド構成によるコスト最適化

業界標準が確立した領域と自社の差別化領域で、システムの役割を分けると、初期費用や保守費用を抑えられます。

  • SaaSに任せる領域:会計・給与計算・勤怠管理など、業界標準が明確な業務です。
  • スクラッチで開発する領域:案件管理・原価管理・複数プロジェクトを横断したリソースの配分など、自社の差別化領域です。
  • システムの役割分担:日々のタスク進捗はタスク管理ツール、予約状況はスケジュール管理システムが担います。
  • プロジェクト管理システム:プロジェクト全体の予算・工程統制を担い、SaaS同士はAPIで連携します。

この構成であれば、スクラッチ部分の初期費用を抑えながら、SaaSのカスタマイズが過剰になることによる保守費用の膨らみを防げます。また、各システムで高価格帯のプランを重複して契約する事態も避けやすくなります。

カスタマイズを抑える経営判断と契約形態の工夫

パッケージ・自社構築のいずれでも、コストを抑えるうえではカスタマイズをしないという経営判断が鍵になります。カスタマイズを重ねると、自社開発部分の開発費の年間約10%にあたる保守費用が積み上がり、長期的な負担も想定以上に膨らみます。

  • 年間契約:長期利用の見込みがあれば、月額料金が30%〜40%ほど割引される場合があります。
  • 月額固定制:ユーザー数無制限のプランなら、大規模組織でも1人あたりの単価を抑えられることがあります。
  • 機能の適用範囲:上位機能は必要な部門・プロジェクトに限定し、全社一律で最上位プランを契約しない方法もあります。

上位機能の対象範囲を絞ることも、不要な費用を抑えるうえで有効です。対象を広げすぎると、使わない部門の分まで上位プランの料金がかかります。

ポイント

ハイブリッド構成を検討するかどうかは、業界標準が明確な業務と自社の差別化領域を分けられるかで決まります。分けられるなら、差別化領域だけを自社で開発する形が候補になります。

まとめ

全体像から、SaaSの相場と人数別の試算、自社構築の保守費、上位機能による増額要因、費用を抑える考え方までを見てきました。

タスク管理ツールは個人・チームの日々のタスクを、スケジュール管理システムは会議室・設備・人員の予約状況を扱います。一方、プロジェクト管理システムは、複数人・複数タスクの予算・WBS・マイルストーン・工数実績を統合管理します。上位レイヤーのため、費用水準も高くなりやすいシステムです。

SaaS型は1ユーザーあたり月額500円〜3,000円以上が目安です。これに対し、オンプレミス・フルスクラッチ型は、ライセンス保守が初期費用の約20%、カスタマイズ保守が開発費の約10%です。

サーバー維持費は年間約33万円が目安です。予算管理・原価管理・工数実績連携の作り込みや、複数SaaSの連携費用で総額は変わります。

ハイブリッド構成やカスタマイズを抑える判断で、費用の水準を下げられます。そのうえで、必要な機能とプロジェクト・ユーザー数を整理し、複数の製品・開発会社から3年程度のTCOで見積もりを取得して比べるとよいでしょう。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。