オーナー管理システム開発の完全ガイド

オーナー管理システムは、台帳・収支と修繕・法令記録の3つに分けて整理すると、管理会社とオーナーのやり取りを一か所で扱いやすくなります。

機能、種類、導入の進め方、費用、開発会社の選び方、運用の確認事項を順に解説します。各テーマの詳細は、関連記事もご覧ください。

▼関連記事一覧
・オーナー管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・オーナー管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・オーナー管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・オーナー管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

オーナー管理システムの定義と範囲

オーナー管理システムは、管理会社が使う賃貸管理の基幹機能と、オーナーが使うWebポータルやアプリを一つにまとめた仕組みです。

会計や銀行、電子契約との連携まで含めて考えると、導入効果を正しく評価できます。

顧客台帳と異なる、オーナー・物件・契約をつなぐ仕組み

一般的な顧客管理では、氏名や連絡先を登録します。一方で、オーナー管理では一人が複数の建物や部屋を所有するため、関連情報を結ぶデータモデルが必要です。

  • 物件ごとの管理:契約や入居状況、家賃、修繕、送金、提案内容を、それぞれの建物に結び付けます。
  • 横断する記録:物件や部屋、入居者、契約を、同じ記録の中でたどれるようにします。入出金や書類、対応履歴も、この記録に含めます。

給湯器交換では、見積書や現場写真、承認者と日時など、複数の記録が出ます。これらを別々に扱うと確認漏れが起きやすくなるため、物件や修繕案件にひも付けて、必要な情報だけを共有します。

導入を検討する背景

検討の背景には、管理戸数の増加や人手不足があります。さらに、オーナーの高齢化やデジタル化、報告品質への期待も高まっています。

  • 紙・Excel・電話・個人メール:担当者が少ないうちは回せても、情報があちこちに散らばります。
  • 異動・退職:担当者が替わると、情報の置き場所が分からなくなることがあります。

賃貸住宅管理業では、管理戸数200戸以上の事業者に登録が義務付けられ、財産の分別管理と定期報告が求められます。

定期報告は少なくとも年1回以上必要で、対象は管理業務の実施状況と苦情の発生・対応状況です(出典: 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」、2026年確認)。

システムは、報告データや履歴、期限を管理する基盤として、法令対応を支えます。

オーナー管理システムの主な機能と業務全体像

オーナー管理システムを中心に、台帳、収支報告・送金、書類、修繕承認・問い合わせを結ぶ図解。
機能同士が元データと履歴でつながる構成です。

機能を選ぶときは、画面の数よりも業務がどこで完結するかを見ます。

収支報告を見せるだけでなく、元データの取り込みから承認、送金、問い合わせまでが一続きかどうかが重要です。

オーナー・物件・契約の一元管理

オーナー、物件、管理受託契約の各台帳を互いに関連付けます。そのため、共有所有や法人担当者の交代にも対応できます。

  • オーナー台帳:区分、連絡先、担当者、振込先を持ちます。共有利用者、本人確認情報、契約書類も含みます。
  • 物件台帳:建物や部屋、駐車場、設備を登録します。住所、築年、所有関係も押さえます。
  • 受託契約:契約期間、管理料、委託範囲、更新条件を定めます。

オーナーは、所有物件を一覧で確認し、収支や修繕履歴を切り替えて見る利用者です。こうした画面があれば、問い合わせのたびに担当者が資料を探す時間を減らせます。また、閲覧範囲は契約単位で制御します。

収支報告・送金・書類の共有

収支・送金機能では、入出金を消し込んで月次報告を行います。元データをExcelに残したままだと二重入力が続くため、基幹システムからCSVまたはAPIで受け取ります。

  • 取り込む入出金:家賃や共益費、敷金、管理料を取り込みます。修繕費、原状回復費、振込手数料も対象です。
  • 取引の追跡:報告に載る数字を、元の取引と結び付けます。

書類ポータルは、郵送や閲覧の確認を減らせます。ただし、口座情報や精算データを扱うため、画面表示とダウンロードの権限は分けておきます。

登録する書類は、収支報告書、送金明細、契約書などです。見積書や領収書、巡回・清掃・点検報告も含まれます。公開や既読の日時、ダウンロード、再送の履歴も残します。

修繕承認と問い合わせ対応の履歴管理

修繕の流れは、起票から費用計上まで一連で管理します。

  1. 案件を起票し、見積書や写真を添付して、承認期限を決めます。
  2. オーナーへ通知し、承認か差し戻しを受けてから発注します。
  3. 完了報告を登録し、費用を計上します。

承認者が複数いる場合は、全員承認にするか代表者承認にするかを決めておきます。そのうえで、期限を過ぎた案件を管理会社が把握します。

  • 対応記録:電話、メール、チャット、訪問、提案の記録を、オーナーと物件に結び付けます。
  • 引き継ぎ情報:期限や担当者、状態、次の対応を記録します。不在のときも、ほかの担当者が対応を続けられます。
  • 提案に活用する情報:空室、更新、設備交換、売却相談の情報を、次の働きかけに生かします。

蓄積した情報は、事務処理を効率化するだけでなく、オーナーへの提案の質も高めます。

ポイント

機能は、元データの取り込みから承認、送金、問い合わせまでが一続きにつながるかで比べます。画面の数だけでは、二重入力や確認漏れを防げるかが分かりません。

オーナー管理システムの種類と選び方

SaaS、賃貸管理パッケージ、伴走開発、フルスクラッチの4つを並べた図解。
管理戸数と独自業務の複雑さを軸に候補を絞ります。

選択肢は、管理戸数と独自業務の複雑さで絞るのが現実的です。標準機能で足りない部分だけを、連携や追加開発で補います。

候補は、SaaS、賃貸管理パッケージ、業務基盤の伴走開発、スクラッチです。そのうえで、同じ業務シナリオで比べます。

SaaS・オーナー向けポータル

SaaSは、クラウドの更新やセキュリティ対策を利用できるため、郵送や電話確認を減らしたい会社に向きます。

  • 利用できる機能:収支報告や書類配信、チャット、承認などが使えます。
  • 初期費用の公開例:10万円からとされています。
  • 月額・開始時期の例:2万円から、契約後約1週間で始められます。

これらは公開料金の例です(出典: オーナー向け業務システムの公開料金ページ、2026年8月確認)。

個別の条件は、初期検討の段階で確かめます。

オーナー数や管理戸数、ストレージ、帳票が別料金になる場合があります。さらに、初期登録や追加ユーザー、API連携、サポートにも、追加の料金がかかることがあります。

ログイン方式と既存システムとの連携項目を確かめておきます。

解約時のデータの返し方も、あわせて確認します。

賃貸管理パッケージを基幹にする方法

賃貸管理パッケージは、基幹業務をまとめて扱い、複数拠点や大規模な管理戸数でも整合性を保ちたい会社に適しています。

  • 対象業務:建物や部屋、入居者、契約を扱います。家賃や送金、修繕も対象です。
  • 管理対象:オーナー向けの画面と、社内の基幹データの両方が含まれます。

現場の帳票や精算ルールは、標準機能に合わせる場合があります。基本はFit to Standardとし、法令や共通業務は標準機能を使います。

独自業務は、競争力につながるものだけを追加します。現行の帳票をすべて再現する場合と、標準化する場合とで、費用を分けて確認します。

業務基盤の伴走開発とフルスクラッチ

伴走開発は、自社の運用に合わせて段階的に整えたい場合に適しています。既存の基幹を残したまま、ポータルやワークフローを加える構成も可能です。

  • 伴走開発:オーナーや物件、入居者、契約を扱う基盤です。問い合わせや発注、請求、収支報告も含めます。
  • フルスクラッチ:既製品で事業の要件を満たせないときに検討します。

現場の変更に慣れていない場合は、小さく始めて、運用を見ながら広げられます。

フルスクラッチなら、独自の精算や複雑な権限、複数サービスとの連携、アプリでの体験などを実現できます。

契約には、ソースコードや設計書、API仕様、データベース定義の権利を明記します。インフラ構成、テスト仕様、データ出力も対象です。また、脆弱性対応と保守引き継ぎの権利・手順も定めます。

ポイント

種類は、管理戸数と独自業務の複雑さで候補を絞るのが現実的です。標準機能で足りない部分を連携や追加開発で補えるかを、同じ業務シナリオで比べて決めます。

オーナー管理システム開発・導入の進め方

企画・要件定義から設計・開発、テスト・移行・定着化へ進む導入工程の図解。
少数物件で移行と月次報告を試してから展開します。

導入では、機能一覧よりも現場の業務シナリオから始めたほうが、失敗しにくくなります。

まず、「月次報告」「修繕承認」「入退去」「送金」「問い合わせ」の流れを現場で観察します。そのうえで、誰が、どのデータを、いつ、どの方法で確認しているかを書き出します。

▶ 詳細はこちら:オーナー管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

企画・要件定義での業務範囲と成功指標

企画の段階では、「DX化する」のような抽象的な目的で終わらせず、現状の値を測ったうえで成功指標を決めます。

  • 業務指標:報告の作成にかかる時間、郵送の件数、電話での承認確認の件数を測ります。
  • 利用指標:オーナー登録率や電子報告率、修繕承認にかかる日数が対象です。
  • 応対指標:問い合わせへの初回応答までにかかる時間です。

導入後は、3か月、6か月、12か月の目標を置きます。あわせて、要件定義では正常系以外のケースも扱います。

具体的には、複数オーナーや共有持分、口座変更、退去精算、未入金などがあります。さらに、承認の差戻しや担当者の変更、契約終了、データ訂正、通信障害も含めます。

権限は役割ごとに、最小単位で定めます。役割は、管理会社の本部や店長から担当者、経理、オーナーまで、複数に分かれます。オーナー向けの情報と社内の情報も、分けて扱います。

設計・開発でのデータ連携と画面の使いやすさの検証

設計では、データ同士の関係を先に決めておきます。画面を先に作ると、複数物件や共有オーナーに対応できず、データを作り直すことがあります。

  • 設計するデータ:オーナーや物件、契約を中心に、取引や修繕まで扱います。部屋、書類、通知、対応履歴も含めます。
  • CSV連携:項目名や文字コード、更新キー、再取込、重複判定、取込履歴を決めます。
  • API連携:認証方式やレート制限、停止時の再送、監視方法を、事前に決めておきます。

画面設計では、スマートフォンで報告書や写真を見て、承認や差し戻しができるかを実機で試します。高齢の方やデジタル機器に不慣れな利用者も想定します。

ログインの手順や通知のわかりやすさ、パスワードの再設定、問い合わせ方法も検証します。

2026年6月に公表された大手サービスの事例では、利用オーナー数が35万人、管理物件が220万戸超です。

利用者が増えるほど、UIと連携の安定性が問われます。

テスト・移行・定着化の進め方

テストでは、機能だけでなく、月次締めの業務が完了するかを確認します。

  • 照合する項目:収支報告や送金明細、修繕費が正しく合うかを見ます。書類の表示や通知、既読履歴も対象です。
  • 権限確認:対象外の情報が、画面に出ないことを確かめます。
  • 受入テスト参加者:現場の担当者と経理、可能であればオーナー役が加わります。

移行では、名寄せや住所・口座の形式の統一、重複の排除、欠損の確認、移行後の照合を計画します。加えて、少数の物件でPoCを行います。

移行と月次報告を一度通してから、対象を広げます。本稼働後は、旧運用の終了時期や例外の窓口、利用率を見る担当者を決めます。また、二重運用を長引かせないようにします。

ポイント

判断に迷ったら、月次報告や修繕承認など一つの業務の流れを選び、誰がどのデータをどう扱うかを先に書き出します。業務が通ってから機能の範囲を決めると、要件の抜けを減らしやすくなります。

オーナー管理システムの費用相場とコストの内訳

費用は、オーナー向けの報告と承認だけを導入するか、賃貸管理基幹や会計、銀行、電子契約まで統合するかで、大きく変わります。

以下の金額は、2026年時点の公開料金と、業務システム開発の一般的な人月単価を組み合わせた目安です。正式な見積金額ではありません。

金額は、管理戸数やオーナー数、帳票の複雑さ、データ移行、連携数、保守範囲によって変わります。

▶ 詳細はこちら:オーナー管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

SaaS・クラウド型の費用相場

SaaS型の料金は利用する規模で差が大きいため、公開されている例を小規模向けと法人向けに分けて見ておきます。

  • 小規模向け:報告や配信、簡易承認を使う場合で、初期0万〜10万円、月額2万〜5万円程度です。
  • 法人向け:多戸数で、配信や承認、サポート、基幹連携まで含む例です。

法人向けは、初期費用が無料に見えても、月額15万円以上になる例があります(出典: オーナー向けクラウドサービスの公開料金ページ、2026年8月確認)。料金の体系を確かめておくことが欠かせません。

月額の金額だけで比べると、オーナー数や容量の上限、初期設定、帳票を見落としがちです。さらに、SMSや電子契約、移行、追加支援も、料金に含まれていないことがあります。

5年間使う可能性があるなら、初期費用と月額に加えて、オプションや導入支援、移行、教育、保守、解約時の出力費用も合算します。

賃貸管理基幹・パッケージ型の費用相場

建物や契約、入居者、会計、送金を含むパッケージの公開例を、管理戸数別に示します。

  • 1,000戸程度:初期90万円から、月額5万円からの例です。
  • 3,000戸:初期300万円から、月額10万円からです。
  • 5,000戸:初期500万円から、月額15万円からとなっています。

これはオーナー画面だけでなく、基幹業務も含めた参考額です。

移行や帳票の設定、複数拠点、追加の連携が加わると、金額は増えます。

月額がSaaSより高くても、複数の業務をまとめて扱える場合があります。ただし、既存の基幹を残す場合は、置き換え費用を含めずに比べます。

見積は、工程ごとに費用を分けてもらいます。対象は、ライセンスや導入設定、移行です。連携、テスト、教育、保守も、見積に入れてもらいます。

個別開発の費用相場と期間の目安

収支報告などをMVPにするか、修繕や外部連携まで含めるかで、個別開発の範囲が変わります。

  • MVP:報告や書類、台帳、簡易承認、CSV取込を含みます。費用は300万〜1,000万円、期間は3〜6か月です。
  • 中規模:修繕や権限、監査ログ、API連携、移行を含みます。費用は1,000万〜3,000万円、期間は6〜12か月です。
  • 大規模:複数拠点や数千〜数万戸、複雑な精算、アプリ、高可用性、災害対策が対象です。

大規模では、3,000万〜1億円超、12〜24か月以上となる場合があります。この目安は、一般的な人月単価に基づいています。

単価は、中小の開発会社で月80万〜120万円、大手SIerで月150万〜200万円程度です。

保守運用費は、初期費用の年15〜25%を目安にします。

クラウドやストレージ、SMSの費用は、別途見積もります。

本人認証や脆弱性対応、帳票変更、監視、問い合わせ対応も、個別に扱います。

収支報告や書類配信、承認からMVPにして、送金や高度な分析を第二段階に回すと、予算超過を抑えやすくなります。

ポイント

費用は導入する業務の範囲で大きく変わるため、まず対象業務を絞ることから考えます。複数の見積は、同じ項目の内訳をそろえてから比べます。

オーナー管理システムの開発会社・ベンダーの選び方

開発会社やベンダーは、機能数や知名度だけでなく、自社の業務シナリオを理解し、データ連携から定着までを担えるかで選びます。

オーナー向けアプリ専用、賃貸管理基幹、業務基盤の伴走開発、個別開発では得意な領域が違います。そのため、同じ質問票で比べることが大切です。

不動産管理とオーナー業務の経験の確認

導入社数よりも、自社に近い規模や業務を扱った実績を確認します。

  • 事例の条件:管理戸数やオーナー数、所有形態が自社と近いかを確かめます。修繕承認や送金、会計連携、帳票の扱いも見ます。
  • デモで見る流れ:月次報告の作成と公開、オーナーのスマホでの確認、修繕見積の差し戻し、担当者の履歴をたどる操作を見せてもらいます。

事例については、導入前の課題や対象業務、移行期間、開始後の支援、KPI、残った課題を尋ねます。

成功例だけでなく、要件変更や移行の失敗、稼働後の問い合わせ件数、オーナー登録率も確かめます。

連携・権限・セキュリティの比較

既存システムとの連携は、「API連携に対応」という表記だけでなく、データ項目や停止時の対応まで確かめます。

  • 連携項目:オーナーや物件、契約、入金、修繕、書類が対象です。
  • 連携条件:データの更新頻度や、どちらを正とするかを決めておきます。
  • 停止時の対応:連携が止まったときに、検知の方法や再送、手動での補正の履歴を確かめます。

個人情報保護委員会のガイドラインは、個人データの正確性や安全管理、従業者・委託先の監督、漏えい時の対応を扱います(出典: 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」令和8年6月一部改正)。

質問票では、二要素認証、通信と保存時の暗号化、最小権限を確かめます。ログやバックアップ、脆弱性、管理者権限、再委託先の管理も含めます。

口座や本人確認情報を扱う場合は、上記の項目をベンダーへの質問票に入れておきます。

見積・契約・保守の条件の確認

見積書は一式表示を避け、内容が見える形で出してもらいます。

  • 見積内訳:要件定義や画面設計、開発、連携を分けて書いてもらいます。移行、テスト、教育、導入支援、保守も含みます。
  • 費用・納期:追加費用の条件や仕様変更の単価、遅延時の扱い、検収の条件を決めます。
  • 契約条件:障害対応や計画停止、データの返却と削除、再委託、知的財産権を取り決めます。

クラウドでは、利用中の月額だけでなく、終了時にCSVやPDFで返せるデータも確認します。項目ごとに出力できないと、移行や監査に支障が出ます。

返却の対象に、オーナーや物件、契約、取引、書類、監査ログが含まれるかを確かめます。

保守窓口については、一次受付だけなのか、原因調査や復旧まで含むのかも確認します。

▶ 詳細はこちら:オーナー管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:オーナー管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

オーナー管理システムは、便利なポータルであると同時に、契約、金銭、本人確認、苦情、修繕写真などを扱う業務基盤です。

導入の前から、法令上の報告や分別管理、帳簿、個人情報の安全管理を業務の流れに落とし込みます。そのうえで、システムの機能と運用ルールを合わせます。

法令対応の報告・分別管理・記録

賃貸住宅管理業法では、登録の要否や契約の手続き、金銭の管理、報告、帳簿を確認します。

  • 登録・配置:登録の対象かどうかと、業務管理者の置き方を確かめます。
  • 契約手続き:契約前に重要事項を説明し、契約時には書面を交付します。
  • 管理・記録:財産の分別管理や定期報告、帳簿の備え付けが求められます。

国土交通省は、200戸以上の事業者に登録を義務付けています(出典: 国土交通省「管理業者の業務」、2026年確認)。各営業所・事務所には、業務管理者を1名以上置くよう示しています。対象となる事業者は、まず登録の要否を確かめます。

システムでは、対象期間や作成者、承認者、公開日時、修正履歴、差し替え前の報告書を追跡できるようにします。

自己財産と受領金は分け、契約に基づく金銭を帳簿や会計ソフトですぐ判別できる状態にします。あわせて、業務の要件とシステムの要件を一緒に整理します。

権限・認証・ログの運用

役割と、物件・契約・データの範囲を組み合わせて、利用者ごとの閲覧権限を定めます。

  • 役割:管理会社全体や拠点、担当者、経理、修繕担当、オーナーごとに分けます。
  • 異動時:担当者が替わったら、権限を速やかに変えます。
  • 重要操作:口座の変更や報告書の差し替えには、追加の認証や承認を設けます。

操作ログは、保存しておくだけでなく、異常を検知する運用に使います。大量ダウンロードや深夜の管理者操作を確認します。さらに、短い時間でのログイン失敗や、普段と異なる地域からのアクセスも検知します。

バックアップの頻度や復旧の目標時間・時点、障害連絡先、訓練の頻度を、契約や手順に定めます。

オーナーの利用定着のKPI管理

オーナー登録が進まないと、紙と電子の二重運用が続き、導入効果が出にくくなります。そこで、利用状況を毎月確認します。

  • 利用状況:招待メールの開封率や登録率、月次報告の閲覧率を見ます。
  • オンライン化:修繕承認率や問い合わせ率、郵送と電話での確認の件数を追います。
  • 対応速度:承認にかかる時間(承認リードタイム)です。

全オーナーへ一斉に切り替えるより、利用意欲の高いオーナーや少数の物件から試すほうが進めやすくなります。

初回ログインの案内や、紙から電子へ切り替える時期、使い方の動画、電話窓口を準備します。

未登録の人への再案内や、例外時の紙対応も用意します。

利用率が低い場合は、ログインの手順や通知文、報告書の見つけやすさ、スマートフォンでの表示を見直します。

ポイント

法令とセキュリティの対応は、導入後の運用ルールまで含めて完了します。業務の手順と社内ルールを先に決め、機能の設定や権限をその内容に合わせます。

よくある質問

導入前によく質問される内容を、費用や開発方法、利用定着の観点から答えます。自社の管理戸数や既存システムに当てはめ、要件定義の質問項目としても使ってください。

オーナー管理システムの導入費用はいくらですか?

オーナー向けの報告や書類配信、簡易承認に絞る場合は、初期0万〜10万円、月額2万〜5万円程度の公開例があります。

基幹連携や個別開発を含めると、目安はMVPで300万〜1,000万円、中規模開発で1,000万〜3,000万円、大規模開発で3,000万〜1億円超です。

正確な金額は、管理戸数やオーナー数、連携、移行、保守を分けた見積で確認します。

パッケージとスクラッチ開発はどちらが良いですか?

短期間で標準的な収支報告や書類配信を始めたい場合は、SaaSやパッケージが向きます。

独自の精算や権限、複数サービスの連携が競争力の中心にあり、既製品では業務を大きく変えることになる場合は、伴走開発やスクラッチを検討します。

まずは標準機能で業務を確かめ、差別化に直結する部分だけを作り込むのが現実的です。

オーナーがシステムを使ってくれない場合はどうしますか?

最初から全機能を案内するより、月次報告を見る、修繕を承認する、書類を確認するといった利用目的を、一つずつ伝えるほうが伝わりやすいです。

初回ログインの手順を短くし、スマートフォンで迷わず操作できる画面にします。そのうえで、未登録の人への再案内と電話サポートを用意します。

登録率や報告の閲覧率、オンライン承認率を見ながら、機能を足すより、使いにくさを減らす改善を優先します。

法令や個人情報保護に対応できるシステムですか?

法令への対応は、システムの導入に加えて、社内の運用を整えて完了します。

登録の要否や定期報告、分別管理、帳簿、重要事項説明、契約書面の運用を確認します。また、権限や認証、暗号化、ログ、バックアップ、委託先の管理を、システムと社内規程に反映します。

要件定義の段階で、保存期間や訂正の手順、閲覧範囲、漏えい時の連絡の流れまで決めておくと、後で迷いにくくなります。

まとめ

オーナー管理システムは、画面だけでなく、業務全体をつなぐ基盤です。オーナーや物件、契約、収支を一続きで扱えます。修繕や書類、問い合わせも同じ基盤で扱えるため、管理会社の業務とオーナーへの報告を一貫させられます。

導入の成否は、業務シナリオや基幹連携、データ移行、権限、利用定着を具体的に決められるかで決まります。機能の数よりも、この具体化が効いてきます。

MVPと3年TCOでの導入判断

最初は、紙や電話、メールの削減効果を測りやすい業務を対象にします。そのうえで、SaaSなどで足りる範囲と、個別開発が必要な範囲を分けます。

  • MVP候補:収支報告や書類配信、修繕承認から検討します。
  • 総額に含める費用:初期費用と月額、移行、連携、保守、教育、解約時のデータ返却を入れて計算します。

費用の総額は、3年または5年で比べます。

デモでは、月次報告や修繕の差し戻し、複数物件、権限エラーを確かめます。

契約前に、登録率や電子報告率、承認リードタイム、郵送件数、問い合わせの削減、月次締めの時間を、KPIとして定めます。

デモでは、API停止やデータ訂正の場面も確かめます。導入後はKPIを追い、業務の改善につながったかを判断します。

導入前に整理する項目

導入前に、規模や運用の現状を洗い出し、関係者の困りごとを要件にまとめます。

  • 業務量:管理戸数やオーナー数、月間の報告書、郵送、修繕承認の件数を把握します。
  • システム環境:既存システムやCSV・API、権限の区分、保存年数を整理します。
  • 要件化:担当者や経理、責任者、オーナーの課題を業務の流れに置き換え、要件定義書とRFPに書き起こします。

法令やセキュリティ、データ返却、保守体制を確認し、候補を同じ条件で比べます。また、小さく検証して、利用者の声とKPIを見ながら段階的に広げます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。