不動産業向け賃貸管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

賃貸管理システムの発注・外注は、まず業務を整理し、次に方式を選びます。そのうえでRFPを作って提案を依頼し、比較と契約を経て、PoCから本番展開へ進みます。この順番で進めると、手入力や確認を減らせます。

▼全体ガイドの記事
・不動産業向け賃貸管理システム開発の完全ガイド

賃貸管理システムの発注・外注の進め方

発注の前に、対象範囲を決めておきます。物件台帳から始めて、募集、契約、家賃請求へと進み、入金消込、更新、退去へ続きます。その先の修繕とオーナー送金まで、含めて考えます。

台帳だけを電子化すると、請求や修繕の場面で転記と確認が残ります。そのため、業務の流れ全体を対象範囲に含めます。

作るシステムの機能だけでなく、手入力や確認を減らしたい業務も先に決めておきます。外部へ委託する範囲と責任もあわせて決めておくと、後で認識がずれにくくなります。

対象範囲は、契約から送金までの業務連鎖

賃貸管理では、物件・建物・部屋・オーナー・入居者の登録から始まり、募集条件の更新、申込、審査、契約、鍵の引き渡しへと処理が続きます。

契約後は、毎月の請求、入金消込、滞納督促と続きます。更新、解約、退去、原状回復を経て、オーナー送金へ進みます。

また、修繕を扱う会社では、問い合わせから点検、見積、発注へと進みます。協力会社の手配、完了報告、請求までも、対象に含めます。

最初に困っている業務と測定指標

担当者の時間を取られている処理は、発注前に三つ程度に絞ります。候補は、月次請求の締めと入金消込、更新案内です。ほかに、空室情報の反映、修繕進捗、オーナー報告書の作成も挙がります。

月末処理に何人日かかるか、入金消込に何件の手作業があるか、空室登録から広告反映まで何時間かかるかを、導入前に測ります。そうすると、導入後の効果を同じ物差しで確かめられます。

1拠点・1業務のPoCから始める段階的な展開

全物件・全拠点を一度に切り替えるより、代表的な物件を選んで一連の処理を試す方が安全です。発注は次の順に進めると、提案と見積を比べやすくなります。

  1. 現状業務を洗い出す
  2. 導入方式を選ぶ
  3. RFPと要件を整理する
  4. 候補会社に提案を依頼する
  5. 実データを使って比較する
  6. 契約条件を確定する
  7. PoCと検証を行う
  8. 本番環境へ展開する

検証では、実際の契約や日割り家賃のデータを使います。滞納、退去、修繕、オーナー精算の処理も、同じ検証に含めます。

小さく試す進め方の参考として、国土交通省の2025年度DX実証を挙げられます。この実証では、IT重説・書面電子化サービスの導入費と3か月分の利用料を、1社あたり最大50万円(税込)を上限に支援しました。

出典:国土交通省「不動産分野におけるDXの推進に向けたデジタル技術・サービスの導入・活用支援」、2025年。この支援額は通常価格の相場を示すものではなく、小さく試す考え方の参考です。

ポイント

発注の範囲は、物件台帳から送金までの業務をどこまで一つのシステムで扱うかで決めます。迷ったら、手入力や転記が残る業務を優先して範囲に含めます。

SaaS・パッケージ・個別開発の選び方

賃貸管理システムのSaaS、パッケージ、個別開発を選ぶ条件を3枚のパネルで示した図
標準業務の範囲と独自要件が方式選びの分かれ目になります。

方式は、標準業務を早く始めたいのか、独自精算や複数事業を強みにしたいのかで選びます。管理戸数のほか、契約形態や拠点数、会計連携を比べます。募集・保証会社との連携、帳票の特殊性、現場のIT習熟度も判断材料になります。

定型業務を早く始めるための業界特化SaaS

SaaSは、業務への適合性と追加費用の二つから比べます。

  • 標準機能:物件、入居者、契約、請求、入金、オーナー報告
  • 運用面:サーバー構築や更新を自社で抱えずに済み、複数拠点やテレワークにも広げやすい
  • 追加料金:ユーザー数、管理戸数、写真容量、帳票変更、CSV出力、移行、外部連携、サポート、データ返却が対象になる

同じ料金でも、使える機能が同じとは限りません。そのため、必要な機能と導入支援が料金に含まれているかも比べます。

一例として、ユニコムのSimple Upは、部屋・駐車場の登録件数に応じて月額4,980円(税抜)からと掲載しています。

出典:ユニコム株式会社「Simple Up賃貸管理システム」公式料金ページ、2026年確認。なお、これは同サービスの例で、市場全体の相場を示すものではありません。

業務範囲が広く標準機能を重視する場合のパッケージ比較

パッケージ導入では、標準機能をどこまで使えるかと、運用体制が整っているかを見極めます。

  • 適する業務:物件、契約、家賃請求、督促、入金処理、帳票、募集などの共通業務
  • 要件定義:業務を標準機能に寄せられれば、ゼロから設計するより短く済む可能性があります
  • オンプレミス型:独自運用や大量データに対応しやすい場合があります
  • 導入時の確認:機能・設定・追加開発・運用代替を切り分け、サーバーや保守の責任を契約前に明らかにする
  • 例外処理:日割り、フリーレント、水道料、保証会社、事業用テナント、サブリース、オーナー精算の処理を、実データで通すこと

独自精算や基幹連携が強みになる場合のセミオーダー・個別開発

独自の業務要件に応じて、連携方法と個別開発の範囲を決めていきます。

  • 連携:会計、銀行、保証会社、電子契約、ポータル、CRMとの接続は、標準SaaS基盤での開発やセミオーダーが候補になります
  • 自由度と運用:全面スクラッチより初期の自由度は限られるものの、マスタ、更新方向、エラー対応者を決めれば、二重入力を減らせます
  • スクラッチの検討条件:独自精算、複数拠点の権限、サブリース、事業用テナント、仲介・PM・建物管理の統合が、差別化に直結するケース
  • 要件と保守:曖昧な要件は費用や納期に響きます。標準化の範囲を決め、例外だけを個別開発に残せば、保守の負担を抑えられます

ポイント

標準業務はSaaSかパッケージ、独自精算や基幹連携が強みならセミオーダーや個別開発が候補になります。どの方式でも、例外処理を実データで通したうえで費用を比べます。

RFPと要件整理で決めておく事項

RFPは、同じ前提で提案と見積を比べるための基準です。発注者だけで設計書を完成させる必要はありませんが、前提はそろえて伝えます。

前提には、対象業務、利用者、データを含めます。既存システムや制約、優先順位もそろえます。さらに、納期、予算、検収条件も、同じ条件で示します。

契約・請求・修繕までを一枚の流れにした現状業務の整理

募集、申込、審査から契約に進み、更新、解約、退去、原状回復へと続きます。請求、入金消込、督促を経て送金へつなげ、修繕と募集媒体連携も流れに加えます。

各工程には、担当者と入力内容、帳票を書きます。承認者と次の処理も、あわせて書き込みます。紙の契約書やExcel台帳、顧客指定の報告様式、電話やメールの指示も、資料に含めます。

データの発生源と正本を決め、物件マスタを管理システムと会計のどちらに置くか、入金明細を誰が訂正するかを明確にします。同じ入居者や物件を異なるIDで登録すると、請求や送金の突合に手作業が増えます。そのため、システム間のデータの持ち方をRFPで共有します。

機能要件と非機能要件の切り分け、必須と将来の区別

機能の条件と品質の条件を分けたうえで、それぞれの優先順位を導入目的と結びつけます。

  • 管理機能:各種マスタ、募集、申込、契約、更新、退去、家賃請求、入金消込
  • 周辺機能:滞納、送金、修繕、帳票、入居者・オーナー向けポータルの機能
  • 優先順位:各機能を「必須」「初回リリース後」「不要」の三つに分けた一覧
  • 業務効果:入金消込で月末作業を減らし、修繕チャットで電話件数を減らすこと
  • 非機能要件:稼働・応答、バックアップ・復旧、認証・権限、ログ・暗号化、脆弱性対応、サポート、障害連絡、データ返却の条件

個人情報や口座情報を扱うため、非機能要件の作成では、個人情報保護委員会の安全管理措置やIPAのクラウド安全利用の考え方を参照します。

開発会社には、アクセス制御、識別・認証、不正アクセス防止についても質問します(出典:個人情報保護委員会・IPA、2026年時点の公開ガイドライン)。

デモとPoCで通す実際の例外データ

デモと提案依頼では、例外処理と回答範囲を具体的に示してもらいます。

  • 例外データ:日割り、フリーレント、複数オーナー、滞納、名義変更、退去精算、修繕の相見積もり
  • 処理の確認:担当者の登録から、管理者の承認、請求と入金、オーナー向け帳票までの流れ
  • 提案書の回答:標準機能、設定、追加開発、外部連携、運用代替、初期・月額費用、前提・除外、導入後の担当者・対応時間を、項目ごとに書いてもらう

画面の見た目より先に、Excelへの再入力の有無と、例外処理の担当者を確かめます。移行や帳票作成が別料金となる場合もあるため、費用の範囲も確認します。現場の例外を隠さず、帳票やExcelのサンプルを添えて伝えます。

請負と準委任の使い分け

成果物の完成責任を明確にする工程と、要件を一緒に探る工程は、分けて考えます。契約名だけで判断せず、契約書の条項で確かめます。

作業範囲や成果物、検収の条件に加え、変更、報酬、責任の扱いも見ます。知的財産や再委託、保守、データ返却も、条項に残します。

仕様と検収条件が固まった製造に向く請負

請負は、合意したシステムや成果物を完成させ、検収を受ける工程に向きます。画面、帳票、連携が明確で、テストや納期も決まっています。さらに、検収基準が定まっていれば、固定価格で予算を管理しやすくなります。

発注後に機能を追加する場合は、仕様、納期、金額の調整が必要になります。そのため、追加開発の単価と承認手順は、契約前に定めておきます。

要件定義や改善を一緒に進める場合の準委任

準委任では、依頼する作業と契約条件を整理しておきます。

  • 対象工程:現行調査、要件定義、プロトタイプ、アジャイル改善、運用支援など
  • 報酬と完成責任:作業や専門家の支援に対する報酬。成果を完成させる範囲は、請負とは異なります
  • 契約条件:何人月か、何時間か、各役割、会議やレビューの頻度

IPAの情報システム・モデル取引・契約書は、変更が起きやすいアジャイル開発では、準委任を基礎とする考え方を示しています(出典:IPA「情報システム・モデル取引・契約書」、2025年更新)。

要件定義・開発・移行・保守を分けた段階契約

顧客指定の帳票や物件ごとの例外が多く、初めに全仕様を確定しにくい分野です。そのため、要件定義、PoC、製造・設定の段階ごとに、成果と次へ進む条件を定めます。残りの三つの段階も、それぞれ成果と次へ進む条件で区切ります。

  • 現行調査
  • 移行・教育
  • 保守運用

要件定義の成果物には、業務フロー、画面・帳票一覧、データ項目を含めます。権限表や連携方式、非機能要件、受入テスト案も、成果物に入れます。クラウドを解約するときに備え、データ形式、返却費用、移行支援、バックアップ保持期間を確かめます。

ソースコードや設定情報の受領範囲、画面・帳票の著作権と利用権は、契約に残します。第三者サービスのライセンスと再委託先の責任も、契約で定めます。SLAでは、障害受付、復旧目標、メンテナンス通知、事故連絡の期限を合意します。

ポイント

成果物と検収条件が固まった工程は請負、要件定義や改善を一緒に進める工程は準委任と、工程ごとに分けて考えます。契約名だけでは決めず、条項で作業範囲と検収の条件を見極めます。

不動産業向け賃貸管理システムの費用相場

小規模クラウド、パッケージ、スクラッチの初期費用レンジを横棒で比較した図
個別開発を含む方式ほど、初期費用の幅が大きくなります。

費用は、ライセンスや月額、初期設定、データ移行に分けて見積もります。さらに、帳票変更や外部連携、個別開発も、別々の項目にします。教育と保守も、項目として分けておきます。

賃貸管理専用の全国統計は確認できません。そこで、リサーチノートにある公開価格と一般的な業務システム相場から、2026年時点の検討レンジを整理しました。

ここでの金額は、正式な見積もりではありません。管理戸数やユーザー数、拠点数、契約形態、連携、移行データ量によって変わります。

小規模クラウドの初期0〜30万円、月額5,000円〜10万円の目安

小規模利用や設定追加の費用は、次のレンジが目安になります。

  • 小規模利用:標準的な物件・入居者・家賃機能で、初期0〜30万円、月額5,000円〜10万円程度
  • 公開価格例:Simple Upは月額4,980円(税抜)から
  • 標準SaaSへの設定追加:初期の調整、Excel整理、研修、権限の割り当てを含め、初期10万〜100万円、月額5万〜30万円程度

ユーザー追加や部屋数、帳票の料金範囲を確かめます。CSV出力、サポート、移行の扱いも、確認しておきます。

入居者・オーナー向け画面や会計・保証会社連携では、別途費用が生じる場合があります。なお、公開価格例と市場全体の推定は、区別して考えます。

パッケージと複数連携の初期100万〜500万円という検討レンジ

導入範囲ごとの費用と、連携作業の見積条件を並べて示します。

  • 導入範囲:会計、銀行、保証会社、電子契約、募集媒体、帳票、移行、教育
  • パッケージ費用:上記を含む場合、初期100万〜500万円
  • 利用料・保守:月額10万〜50万円または年額保守
  • セミオーダー・連携開発:初期300万〜1,000万円、月額10万〜80万円相当の場合
  • 費用要因:移行期間、API、相手側仕様、エラー時の手作業、テスト環境によって変わります

賃貸管理専用の公的統計ではなく、一般的な業務システム相場からの推定です。見積書は、ライセンスと導入作業、連携、保守を分けてもらいます。連携本数や月間件数、失敗時の復旧担当者も、確認します。

スクラッチの初期1,000万〜3,000万円以上という想定

統合範囲と初期費用を含め、保守や5年TCOもまとめて検討します。

  • 対象範囲:複数拠点、PM・仲介・修繕、独自精算を統合した範囲
  • 連携範囲:入居者アプリ、会計、銀行、保証会社、電子契約との接続
  • 初期費用・期間:1,000万〜3,000万円以上、9〜18か月以上となる場合
  • 保守費:初期費用の15〜20%を年額の目安とする場合がある
  • 5年TCOと投資調整:初期費用、月額×60か月、移行・教育・開発、保守・連携費を合計し、標準機能で個別開発の範囲を絞ること

これらは確定見積ではなく、一般的な業務システム相場からの推定です。保守費は契約内容によって異なります。移行や帳票変更、解約時のデータ返却費用も、長期の総額に含めて比べます。

ポイント

費用は初期費用だけでなく、月額や移行、保守を含めた5年TCOで比べます。金額の幅は方式で大きく違うため、自社の管理戸数と連携の範囲に当てはめます。

委託先の選定と見積比較の確認事項

委託先は、知名度だけでなく、賃貸管理への理解や移行経験で比べます。連携設計や導入後の支援も、判断材料になります。

製品会社と開発・移行会社が別々の場合は、障害や追加費用、仕様変更の責任を分けて考えます。

候補は2〜4社程度に絞ります。同じRFPとサンプルデータで提案を依頼すると、比較の前提がそろいます。

賃貸管理の例外処理と導入規模の適合性

管理戸数、拠点数、ユーザー数を、数字で伝えます。戸建て・アパート・マンション・事業用テナントの比率と、契約形態も示します。

既存の会計や保証会社、移行年数も共有し、標準外の処理も質問します。

  • 賃料計算:日割り、フリーレント、共益費、水道料、更新料
  • 契約・保証:敷金・保証金、サブリース、契約形態
  • 精算・修繕:送金ルール、退去精算、修繕の承認上限

導入社数だけでなく、管理戸数や業態、既存システムが似た事例を聞きます。導入前の課題や移行範囲を確かめ、標準機能と改善指標の数字も見ます。

可能なら現場担当者と管理者が画面を操作し、問い合わせへの返信速度や説明の分かりやすさも評価します。

見積の前提条件と除外項目をそろえた比較

見積書と比較表は、作業の内訳、前提、発注者側の負担を照合して読みます。

  • 見積の作業行:要件定義、設計、設定、開発、テスト、移行、データ整理
  • 見積の作業行:帳票、API、環境、教育、初年度保守
  • 各行の条件:数量、単価、期間、担当、成果物、検収を示したうえで、機能・設定・開発・外部費を区分すること
  • 比較表:初期・月額・5年TCO、期間、移行・連携、開発単価、サポート、SLA、返却・終了条件を並べたもの

「一式」とある大項目は、内訳を質問します。発注者の作業時間や教育、データ整理は、比較に含めます。受入テストと稼働後の担当者も、見ておきます。

特に、発注者の負担が大きい提案は、安くても実質の費用と導入リスクが上がります。

個人情報・データ移行・再委託の契約上の取り決め

個人情報の保護策と移行範囲、再委託先への管理を確かめます。

  • 扱う情報:氏名、住所、連絡先、口座、本人確認書類、契約書、滞納情報、修繕写真
  • セキュリティ:多要素認証、最小権限、ログ、暗号化、バックアップ、脆弱性対応
  • 委託先管理:本番データの開発環境への持込禁止と、退職者・再委託先のアカウント停止
  • クラウド管理:データ所在地、国外取扱い、委託先の監査方法
  • 移行・照合条件:過去契約の範囲、滞納・修繕履歴の保持年数、CSV項目、名寄せ、空欄・重複、照合件数、切替前バックアップ

2026年の発注では、AIや自動化も提案されます。たとえば、いい生活は2026年2月にAI消込アシストの概念実証を開始しました。

出典:株式会社いい生活、2026年。導入直後から全自動を前提にせず、人が候補を確認して誤処理を戻せる設計を優先します。

ポイント

委託先は知名度よりも、賃貸管理への理解と移行経験で比べます。候補を2〜4社に絞り、同じRFPとサンプルデータで提案を依頼すると、見積の前提をそろえて比べられます。

発注後の導入と運用定着の進め方

要件定義から本番展開までの4工程と、それぞれの導入期間を示した時系列図
準備から本番まで、各工程に一定の期間を見込む構成です。

契約後は、発注者側の業務責任者と現場代表を決めます。受入条件には、システムの完成に加えて、データの正確さや月次請求と送金、現場で迷わず入力できることも含めます。

導入期間は、要件定義・現状調査が1〜2か月、データ整理・設定が1〜3か月、試験運用が1〜2か月、本番展開が1〜3か月程度の場合があります。規模や連携によって変わるため、工程ごとの前提を確かめます。

通常ケースと例外ケースを分けた受入テスト

物件登録から募集、申込、契約までを一つのシナリオにします。続けて、請求、入金消込、更新を通します。さらに、退去、原状回復、送金まで試します。

  • 入金:名義違い、日割り、一部滞納の解消
  • 契約・精算:契約者変更、複数オーナーへの分配
  • 修繕:見積もりが予算を超えるケース

通常ケースに加えて、例外も試します。テストの結果と、修正期限、再テストの担当者は、記録に残します。

現場の入力負担と運用ルールの解消

研修は、管理部門のほか、募集や契約、経理の担当者を対象にします。修繕や拠点責任者、オーナー対応の担当も、入力や確認をする人として含めます。誰がマスタを更新し、契約変更を承認するかを決めます。

入金エラーの修正と退去精算の確定についても、担当者を決めておきます。操作習得だけでなく、判断情報が一画面にそろい、入力後の次工程が明確になることを重視します。稼働後は、月次で処理時間、入金未処理、請求訂正を確かめます。

空室更新時間、修繕完了日数、問い合わせ件数も確認します。導入前のKPIと比べて改善が弱ければ、機能を追加する前に、マスタの重複や権限、入力手順、教育を見直します。業務を変えずにシステムだけを加えると、旧Excelが残り、二重管理が固定化します。

法令上の手続きと、対象業務に応じたシステム運用を、あわせて整理します。

  • 登録:管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理事業者は、国土交通大臣への登録が必要
  • 契約前の説明:報酬と管理業務の内容・実施方法を示し、書面を交付
  • 記録と保存:登録情報、説明履歴、相手の承諾、閲覧性、改ざん防止、保存期間を、運用要件に反映
  • 契約形態:サブリースや事業用テナントでは、説明書、契約、更新・解約、賃料改定、修繕負担、報告の適用範囲を確かめる

オンラインでの重要事項説明や、電子書面の交付も活用できます(出典:国土交通省「管理業者の業務」、2026年確認)。ただし、住宅向けの標準機能では足りない業務もあるため、法律の解釈は社内法務や専門家に確認します。

不動産業向け賃貸管理システムの発注・外注でよくある質問

導入方式と費用、契約、期間について、よくある疑問に答えます。管理戸数や業務範囲によって異なるため、自社のRFP項目に置き換えて確認してください。

賃貸管理システムはSaaSとスクラッチのどちらがよいですか?

標準的な物件・契約・請求を早く始めるならSaaS、独自精算や複数連携が強みならセミオーダーやスクラッチが候補です。管理戸数だけで決めず、例外処理やデータの集約先を比べます。5年TCOと運用体制も、判断の材料にします。

小規模な会社でも発注・外注する価値はありますか?

価値はありますが、最初から全業務を個別開発する必要はありません。公開価格では、月額4,980円(税抜)から使えるSaaSの例もあります。デモや短期PoCで、請求、入金、オーナー報告の改善を確かめます。

初期設定、移行、研修、サポートを含めた総額と、担当者の作業時間を比べるのが、判断の近道です。

請負契約と準委任契約はどちらを選べばよいですか?

画面、帳票、連携、検収条件が固まった製造は請負が候補になり、現状調査、要件定義、試作、改善支援は準委任が候補です。工程ごとに契約を分ける方法もあります。

契約名だけでなく、成果物と作業時間、変更手続を明記します。検収や知的財産、再委託、障害対応も、契約書に書いておきます。

賃貸管理システムの導入にはどれくらいかかりますか?

小規模な標準SaaSは即日〜2か月、設定・移行・研修込みで1〜4か月、複数連携やパッケージ導入で3〜8か月程度が目安です。セミオーダーは6〜12か月、スクラッチは9〜18か月以上の場合があります。

期間は、データ整理や社内での決定に加えて、帳票と例外処理の数、外部システムの仕様によって変わります。

まとめ

発注前に、物件や契約、家賃を、どこまで一つのシステムで扱うかを整理します。入金、修繕、送金も、同じ視点で決めます。

標準業務であればSaaS、広い業務を標準機能で扱うならパッケージ、独自精算や連携が強みならセミオーダーやスクラッチを検討します。

RFPと実データによる比較条件のそろえ方

RFPには、業務、機能、非機能要件を記載します。連携、移行、権限、監査ログも、同じ文書に加えます。SLA、保守、返却、検収の条件もそろえます。

複数社に同じ条件を渡し、通常ケースと日割り・滞納・退去・複数オーナー精算を実データで確かめます。

見積もりは、初期費用だけでなく5年TCOで比べます。5年TCOには、月額や移行、教育、追加開発、保守を含めます。

小さく始めることと、契約・運用の責任分担

1拠点・1業務のPoCから始め、受入テストとKPIで効果を確かめてから全社へ広げます。請負と準委任は、工程に合わせて使い分けます。個人情報や再委託、障害については契約に定め、セキュリティと解約時のデータ返却も含めます。

自社の業務課題と将来の運用体制を整理してから、委託先に相談するのが大切です。

▼全体ガイドの記事
・不動産業向け賃貸管理システム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。