採用管理システム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

採用管理システムの費用は、月額25,000円程度からで、5年間の総保有コスト(TCO)では約310万円から5,250万円以上まで開きがあります。

金額を左右するのは、導入形態、課金方式、媒体連携や通知などの周辺費用です。全体像は、採用管理システム開発の完全ガイドもあわせてご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・採用管理システム開発の完全ガイド

採用管理システムの保守・運用費用の全体像

採用管理システム(ATS=応募者トラッキングシステム)は、求人・スカウト媒体の応募を一元管理する仕組みです。さらに、応募者の選考状況や面接調整、内定者フォローを担い、応募から内定までの採用活動を支えます。

ランニングコストを見積もるには、まず費用の発生構造を把握する必要があります。導入形態によって、システム費用は異なります。

また、求人媒体費やエージェント報酬は、システム利用料とは別に発生します。そのため、採用単価と切り分けて把握することが、適切な投資判断の第一歩になります。

クラウドSaaS型とオンプレミス/フルスクラッチ型のコスト構造の違い

採用規模や独自機能が必要かどうかを判断するには、SaaS型と自社保守型で費用の負担がどう違うかを比べる必要があります。

  • クラウドSaaS型:初期費用を抑えたうえで、月額料金を継続して支払う
  • オンプレミス・フルスクラッチ型:開発後の保守・運用も自社で担う

クラウドSaaS型は、初期費用が無料から数十万円程度で、そのあとは月額利用料を継続して支払う形になります。サーバーの保守やセキュリティ対策、新機能の追加、媒体APIの変更への対応は、ベンダーが担います。そのため、これらの費用は月額料金に含まれます。

SaaS型は自社でインフラを維持しなくて済むため、ランニングコストの見通しを立てやすいのが特徴です。

オンプレミス型やフルスクラッチ開発は、初期費用が数百万円から数千万円規模です。加えて、稼働後も年間保守費用が発生します。

年間保守費用は、初期費用の10%から20%程度が目安で、サーバー維持、不具合修正、セキュリティ対策を含みます。求人媒体のAPI仕様変更に伴う改修も、保守費用の対象です。

自社専用に作り込んだシステムは、維持の責任と費用も自社が負います。そのため、オンプレミス型はSaaS型より総保有コストが大きくなりやすい構造です。導入形態を選ぶときは、自社の採用規模と、システムに求める独自性を踏まえて判断します。

システム費用と採用コスト(媒体費・エージェント費)の切り分け

システム利用料と採用活動そのものの費用は、別枠で考えます。予算を組むときは、次の2つを区別します。

  • システム費用:採用管理システムの利用料
  • 採用コスト:媒体掲載、スカウト送信、紹介手数料など

システムの月額が数万円でも、採用活動全体の費用はそれだけでは収まりません。

中途採用1名の費用は、エージェント費用や研修費を含めて年収の35%程度とされ、金額にすると100万円から数百万円に達します。

システムは応募者情報の一元管理と選考の効率化を担いますが、媒体費やエージェント費を直接下げるものではありません。直接応募を強化してエージェント依存を下げられれば、採用単価を引き下げられる可能性があります。そのため、システム費用は採用活動全体を最適化する投資として捉え、媒体費・エージェント費も含めて投資対効果を評価します。

クラウドSaaS型の課金体系と月額・年額の目安

定額制、ユーザー数課金、応募者・求人枠数課金の料金を左右する対象を並べた図。
自社の採用規模と利用人数が、方式選びの分かれ目になります。

製品によって課金体系が異なり、月額・年額の費用感も大きく変わります。割安になる課金方式は、採用規模、応募者数、利用人数によって変わるため、仕組みを理解して比べる必要があります。代表的な課金方式と採用規模別の目安を見ながら、自社でどの方式が割安になるかを検討します。

定額制・ユーザー数課金・応募者数課金など課金体系の違い

料金を動かすのは、応募者数、利用者数、求人枠数です。課金方式ごとに特徴が違うため、自社の採用に合うものを比べて選びます。

  • 定額制:応募者数や利用人数にかかわらず月額一定
  • ユーザー数課金:利用する担当者や面接官の人数で変動
  • 応募者・求人枠数課金:応募者数や同時掲載求人数で変動

定額制は、採用規模が読みづらい企業や、繁忙期と閑散期の差が大きい企業に合う方式です。月額が一定のため、予算を管理しやすいという利点があります。

ユーザー数課金は、利用者が限られる中小企業では割安になりやすい一方、現場の面接官が多い大企業では費用が積み上がります。応募者数課金や求人枠数課金は、扱う応募者や同時掲載する求人の数に応じて料金が動きます。

新卒採用で特定時期に応募が集中する場合や大量採用では、従量課金の設計が総額に影響します。そのため、年間応募者数、同時掲載する求人数、利用人数を見積もり、各方式の年間総額をシミュレーションして比べます。

同じ機能でも、採用スタイルによって割安な方式は変わります。そのため、月額の表示価格だけで判断しないようにします。

採用規模別の月額・年額の目安

採用人数や必要な機能によって費用には幅があるため、規模ごとの目安を予算検討の出発点にします。

  • 年間数名〜十数名:月額数万円、年額数十万円程度
  • 年間数十名〜数百名:月額十数万円以上になる場合がある

SaaS型は月額25,000円程度から始まる製品が多く、主要サービスではこの水準が相場の中心です。ここに示すのは基本プランの目安です。

年間数名から十数名を採用する中小企業では、基本的なプランで十分にカバーできるケースが多くあります。一方、新卒採用で大規模な母集団形成を行う場合は、応募が特定時期に集中する点を踏まえて課金方式を選ぶ必要があります。

応募者数や利用人数が増えると費用も上がり、必要な機能によっても実際の金額は変わります。タレントマネジメント製品では、採用管理機能が基本プランに含まれないケースが大半で、オプション費用が必要になります。そのため、必要な機能が標準かオプションかを確認し、実質的な月額・年額を追加費用込みで比べます。

ポイント

課金方式は、月額の表示価格ではなく年間総額で比べます。年間の採用人数や応募者数によって割安な方式が変わるため、その差を判断の目安にするとよいでしょう。

採用管理システム特有の隠れコスト

採用管理システムを中心に、媒体関連、通知関連、検査・テスト、Web面接、採用サイト・マイページを周辺費用として配置した図。
システム本体の料金だけでは運用費の全体像を捉えきれません。

基本利用料に含まれない費用にも注意が必要です。外部サービスとの連携や利用に伴い、費用が積み重なります。そのため、求人媒体、適性検査、Web面接ツールなど、採用管理システムの運用に関わる隠れコストを事前に洗い出しておきます。

求人媒体・スカウト媒体連携と通知の従量コスト

媒体連携費は、採用管理システム特有の隠れコストの代表例です。掲載費や通知費も、利用料とは分けて見積もる必要があります。

  • 媒体関連:掲載・スカウト費用、連携オプションや維持費
  • 通知関連:メールやSMS、リマインドの送信に伴う従量課金

リクナビ、マイナビ、ビズリーチなどの掲載費やスカウト送信費は、システム利用料とは別枠で発生します。さらに製品によっては、連携したい媒体が増えるほど、維持・調整の費用も積み上がります。

応募者への自動通知は、見落としやすい従量費用です。受付返信や選考結果、面接案内、内定者フォローの各段階で、メールを大量に送ります。

応募者数が多い企業では、通知費が無視できない金額になることがあります。通知は辞退防止に欠かせず減らしにくいため、通知費を事前に把握しておかないと、想定外の運用費がかかる場合もあります。

適性検査・Web面接・キャリアサイト連携の追加コスト

周辺ツールの料金も、実質的なランニングコストに含まれます。連携するサービスごとに費用を見積もる必要があります。

  • 検査・テスト:受検者1人あたりの費用
  • Web面接:ツール利用料や面接実施数に応じた費用
  • 採用サイト・マイページ:ホスティングやコンテンツ管理の費用

応募者数が増えるほど検査の総費用も上がるため、予定する受検者数をもとに予算を算出します。また、採用管理システムとの連携機能も有料オプションの場合があるので、利用前に料金を確認します。

採用管理システムと自社採用サイトや応募者向けマイページを一体で運用する場合は、周辺費用も予算に含めます。マイページでは求人検索、エントリー、選考状況の確認ができます。応募者体験を高めて辞退を防ぐ一方で、マイページの運用費がかかります。

予算は、システム本体だけでなく、周辺ツールを含めた採用テクノロジー全体の費用で組みます。

ポイント

応募者数が多いほど通知費や検査費の比重が大きくなります。想定する応募者数をもとに、周辺費用を先に見積もっておくとよいでしょう。

保守契約・法改正/個人情報保護対応・バージョンアップ費用

採用管理システムは、導入後も保守とアップデートが続きます。媒体APIへの対応と応募者情報の保護は、継続的にかかる費用として重要です。

そのため、保守契約、バージョンアップ、法改正や個人情報保護への対応費用を、稼働後の予算に含めておきます。

保守契約・バージョンアップ費用とSaaSの優位性

保守を自社で担うか、ベンダーに任せるかで、費用と運用の負担が変わります。その差は、保守費用の払い方に表れます。

  • オンプレミス等:保守契約、サーバー維持、媒体変更の改修
  • SaaS型:保守や更新の費用を月額料金に含む

オンプレミス型やフルスクラッチ型では、不具合修正や機能追加にも継続費用がかかります。年間保守費用は、初期開発費の10%から20%程度が目安です。

媒体は定期的に仕様を更新するため、年間保守費用とは別に、媒体変更の改修費が1回あたり数十万円からかかることがあります。

クラウドSaaS型は、この点で優位です。媒体変更や新機能、セキュリティ更新はベンダーが担います。多くの企業が同じシステムを使うため、ベンダーが仕様変更に一括で対応できます。

自社改修型より費用と運用負荷を抑えやすい点が利点です。また、採用市場や媒体仕様の変化に追随する必要があるため、保守を外部に任せる価値は大きいといえます。

応募者の個人情報保護・法改正対応の費用

応募者情報の保護には継続的な対策が欠かせません。その対策は、システムの安全を守る面と、情報を扱う運用の面の2つに分かれます。

  • 安全対策:脆弱性対応、権限管理、データ暗号化
  • 情報運用:保持・削除ポリシー、開示・削除請求への対応

履歴書や職務経歴書、面接評価、適性検査結果は、機密性の高い情報です。応募者情報の漏洩は、企業の信用に大きな影響を与えます。

フルスクラッチやオンプレミス型では、セキュリティ対策と個人情報保護法などの改正対応を、自社の責任と費用で行います。そのため、情報管理と法令対応で発生する業務を事前に把握しておきます。

さらに、不採用者の情報をいつまで保持し、いつ削除するかという運用も必要です。応募者本人からの情報開示や削除請求にも、企業が対応します。こうした情報運用の仕組みを維持するにも、費用がかかります。

SaaS型では、保護対策や法改正対応をベンダーが月額の中で行います。専門人材を自社で抱える費用と比べると、SaaS型が割安になるケースは多くあります。個人情報保護の費用は目立ちにくいものの、運用で軽視できません。

ポイント

自社で保守や媒体API改修を担えるかどうかが判断の目安です。担えない場合は、更新費用が月額に含まれるSaaS型を候補にします。

5年TCOで見るコスト最適化の考え方

クラウドSaaS型約310万円、ノーコード・ローコード約900万円、カスタマイズパッケージ約1,400万円、フルスクラッチ約5,250万円以上の5年TCOを横棒で比較した図。
導入形態によって、5年間の費用規模には大きな開きがあります。

採用管理システムの費用は、初期費用や月額だけでなく、数年間の総保有コスト(TCO=Total Cost of Ownership)で比べます。導入形態によって費用の発生時期が違うため、この比べ方が欠かせません。

5年程度で総額を試算し、コスト最適化の考え方に照らすと、自社に合う選択肢が見えてきます。

導入形態別の5年TCO比較と損益分岐

5年間の総保有コストは、導入形態によって差があります。次の試算は、規模や要件に応じて比べる際の目安として使います。

  • クラウドSaaS型:初期10万円、月額5万円×60か月で約310万円
  • ノーコード・ローコード:初期300万円、月額10万円×60か月で約900万円
  • カスタマイズパッケージ:初期800万円、年保守120万円×5年で約1,400万円
  • フルスクラッチ:初期3,000万円、年保守・改修450万円×5年で約5,250万円以上

これらは一般的な水準で、規模や要件によって変動します。それでも、費用の桁の違いを押さえておくと、比較の見当がつきます。

多くの企業にとっては、SaaS型が総保有コストの面で合理的です。一方で、応募者数や利用人数が増えると、課金も上がります。

年間数万人が応募する超大手企業では、SaaSに5年で数千万円を払うより、フルスクラッチのほうが安い可能性もあります。採用規模を基準に、SaaSの従量課金が積み上がるのか、標準プランで収まるのかを見極めることが、最適化の出発点になります。

採用ROIとコスト最適化の考え方

システム費用は、支出だけでなく得られる効果と合わせて評価します。そのうえで、採用単価の変化も見ていきます。

  • 導入時:必要最小限の機能からの開始
  • 運用中:利用状況に応じたプランや契約の見直し
  • ツール整理:機能統合による重複費用の整理

中途採用1名の費用は、エージェント費用などを含めて年収の35%程度で、金額では約100万円から数百万円に達します。

応募者管理や自動化で直接採用を増やし、エージェント経由を減らせれば、1人あたりの採用単価を大きく下げられます。特に年間数十名を採用する企業では、単価削減の効果がシステム費用を上回る規模になり得ます。

オプションは、実際に使う機能が見えてから検討します。また、契約内容とサポート範囲も定期的に確認します。

複数のツールを個別に契約している場合は、その機能が採用管理システムでまかなえるかを確かめます。採用活動全体のROIのなかで、削減できた採用単価とシステム費用を対比しながら、最適化を進めます。

ポイント

総額は5年を基準に、初期費用・月額・年間保守費をそろえて計算します。桁が大きく違うときは、採用規模や要件の前提を見直すとよいでしょう。

まとめ

採用管理システムの費用は、導入形態や課金方式、周辺サービスによって変わります。SaaS型は月額25,000円程度からで、初期費用を抑えられます。そのうえで、多くの企業にとって総保有コストの面でも合理的です。

媒体API変更やセキュリティ対策は、ベンダーに任せられます。一方で、媒体費や紹介料、通知の従量費、検査・Web面接の連携費は分けて把握し、5年TCOで比べます。

システム費用は、削減できる採用単価と合わせて評価します。中途採用1名の費用は年収の35%程度で、約100万円から数百万円です。

応募者情報の一元管理と自動化で直接採用を強化し、エージェント依存を下げられれば、採用単価を抑えられます。年間数十名を採用する企業では、削減効果がシステム費用を大きく上回る場合があります。

必須機能から始め、採用規模と応募者数に合う課金方式を選びます。さらに、隠れ費用を含めた総額で複数のサービスを比べ、導入後も契約内容を見直して、採用全体の費用対効果を高めていきましょう。

▼全体ガイドの記事
・採用管理システム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。