賃貸管理システムの開発費用は、規模、機能数、開発手法によって変わり、200万円台から5,000万円以上まで幅があります。
開発の流れに沿って、規模別の相場、ランニングコスト、見積もりの取り方を見ていきます。システム全体の概要は、下の完全ガイドもご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・賃貸管理システム開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
賃貸管理システムの全体像

賃貸管理システムは、物件、入居者、契約、家賃などを一元管理する仕組みです。台帳やExcelから移すことで、業務効率化、精度向上、コスト削減を目指せます。費用や方向性を決めるには、システムの種類と必要な機能の全体像を先につかんでおくことが大切です。
賃貸管理システムの種類と特徴
導入形態は3つに分かれ、初期費用、運用負担、拡張性のバランスがそれぞれ異なります。
- パッケージ:市販のソフトを導入する方式
- SaaS:月額で使うクラウド型のサービス
- スクラッチ:業務に合わせて一から構築する方式
パッケージの代表例は「賃貸革命」や「いえらぶCLOUD」です。初期費用を抑えやすい一方で、業務に合わせたカスタマイズは難しくなります。
SaaSは月額制で、アップデートやセキュリティ対応は提供側が担います。そのため、運用の負担は少なくなります。
スクラッチ開発(フルオーダーメイド開発)は、費用が3つの方式のなかで最も高くなります。その代わり、業務への適合度と拡張性に優れます。
賃貸管理システムの主要機能
主要機能は、管理対象と業務の流れに沿って整理しておくと、実装する範囲を決めやすくなります。
- 物件管理:所在地、面積、設備、空室状況の管理
- 入居者管理:関係者情報と対応履歴の管理
- 契約管理:契約書類と契約手続きの電子化
- 家賃・請求管理:入金消込や精算報告の自動化
- 修繕管理:点検、原状回復、工事の管理
物件管理では、ポータルサイトへのリアルタイム連携も可能です。入居者管理では、オーナー、入居者、取引業者の情報をデータベース化するほか、更新、退去、クレーム対応もWeb上で完結させられます。
契約管理では、賃貸借契約書と重要事項説明書を作成・出力でき、入居申込から解約までの工程も電子化できます。家賃・請求管理では、未収金管理やオーナーへの精算報告書も自動化できます。
修繕・メンテナンス管理では、修繕履歴、定期点検、原状回復を管理し、工事業者への発注から完了報告まで一貫して扱えます。
実装する機能の範囲は、開発費用を大きく左右します。
賃貸管理システムの開発の進め方
開発は要件定義、設計、開発、テスト、リリースの順で進みます。フェーズごとに作業量と費用が異なるため、各フェーズの役割と注意点を押さえておく必要があります。
要件定義・企画フェーズ
要件定義では、作るものと作らないものを決めておくことで、後の手戻りを防げます。
- 業務整理:ヒアリングと業務フローの整理
- 機能設計:機能一覧と非機能要件の定義
- 方式判断:スクラッチかパッケージかの検討
- 優先順位:先に作る機能の絞り込み
非機能要件には、セキュリティ、性能、可用性が含まれます。
この工程の費用は開発費全体の10%前後で、1,000万円なら100万円程度が目安です。工数は1〜2人月程度が標準です。ただし、業務が複雑であれば、さらに必要になります。
企画での方式と機能の判断は、最終的な総費用に直結します。そのため、経験豊富なシステム会社と協力しながら、慎重に進めることが大切です。
設計・開発フェーズ
設計では、要件をもとに、システムの構造、画面、データベースを決めます。
- 基本設計:外部から見える構成の設計
- 詳細設計:内部の処理と構造の設計
- 開発:各機能のコーディングと実装
- 外部連携:必要なAPIを組み込む作業
基本設計と詳細設計を合わせた費用は、開発費全体の10〜20%です。設計の段階では、画面モックアップやデータフロー図で発注者と認識を合わせます。
開発フェーズは、開発費用の50〜60%を占める、費用比率の高い工程です。物件、入居者、契約、家賃の機能を実装し、外部APIとも連携します。
外部API連携には、ポータルサイト連携、銀行API、電子契約サービスがあります。これらの連携開発は、追加コストとして見込む必要があります。
エンジニア1人月の単価は、平均80万〜120万円が相場です。スキルの高い人材では、120万〜200万円程度になることもあります。
テスト・リリースフェーズ
テストとリリースでは、品質確認と本番移行を分けて進めます。
- テスト:各工程でのシステム品質の確認
- 移行:本番環境とデータを移す作業
- 定着:研修と運用マニュアルの整備
テストは単体、結合、システム、ユーザー受け入れテスト(UAT)の順に行います。費用は開発費全体の15〜20%程度が目安です。
契約書類や家賃計算は法律に関わるため、特に入念な確認が必要です。テストが不足すると信頼失墜や業務停止につながります。そのため、テストの予算は削りすぎないよう注意します。
リリース時の導入費用は、開発費全体の5〜10%が相場です。なお、既存システムから移行する場合は、クリーニングや変換に別費用がかかります。
賃貸管理システム開発の費用相場とコストの内訳

開発費は、規模、機能数、開発手法によって大きく変わります。そのため、概算を把握しておくと、過不足のない予算で見積もりを依頼できます。ここでは、スクラッチ開発を前提に、規模別の相場と主なコストを見ていきます。
人件費と工数の考え方
スクラッチ開発では、人件費が費用の大部分を占めます。
- エンジニア:設計や実装を担う人材
- デザイナー:画面や操作性を設計する人材
- PM:プロジェクトを管理する人材
- 規模:機能範囲と期間によって総額が変わる点
エンジニア、デザイナー、プロジェクトマネージャー(PM)の単価を合算して、人件費を考えます。
一般的なエンジニアの単価は月額80万〜120万円です。シニアエンジニアやアーキテクトは150万〜200万円になることがあり、PMの月額単価は100万〜150万円が相場です。
小規模は200万〜500万円で、期間は3〜6ヶ月が目安です。基本的な物件管理、入居者管理、契約管理だけを実装する規模です。
中規模は500万〜1,500万円で、期間は6〜12ヶ月が目安です。小規模の機能に加えて、家賃管理、修繕管理、ポータル連携を追加する規模です。
大規模は1,500万〜5,000万円以上で、1年以上かかることもあります。基幹システムとの統合、外部APIの多数連携、マルチテナント対応を含む規模です。
初期費用以外のランニングコスト
賃貸管理システムは、リリース後も継続的に費用がかかります。
- インフラ:サーバーやクラウドの利用費
- 保守運用:監視、障害対応、更新の費用
- 機能追加:業務変化や法改正への改修費
AWS、Azure、GCPなどのクラウド利用では、月額数万円〜数十万円かかります。利用規模や冗長化の要件によって、インフラ費用は変わります。
保守運用は、開発費の年10〜20%が目安です。1,000万円のシステムなら、年間100万〜200万円程度を見込みます。
機能追加や改修は、業務の変化、法改正、利用者の声に応じて発生します。こうした費用を含めると、5年間の総所有コスト(TCO)は、初期開発費の2〜3倍になる場合があります。そのため、初期費用だけでなく、長期的な予算計画が必要です。
賃貸管理システムの見積もりを取る際のポイント

見積もりの精度は、発注前の準備で変わります。要件が曖昧なままだと、不確実性を含む高めの提示や追加費用につながります。仕様書や業務フロー図を用意しておくと、精度が高まり、複数社を比べやすくなります。
要件明確化と仕様書の準備
見積もりを依頼する前に、規模、業務フロー、機能の優先順位を決めておきます。
- 規模感:物件数、入居者数、ユーザー数
- 業務フロー:業務の順番と担当者
- 優先順位:必須、希望、将来追加の機能
- 非機能:安全性、可用性、外部連携の条件
現行業務は、誰が何をどの順番で行うかまで文書にしておくと、伝え漏れを防ぐ助けになります。そのうえで、機能は「必須」「あれば良い」「将来的に追加」に分類します。
セキュリティでは、個人情報保護への対応とアクセス制御のレベルを決めます。可用性では、障害時に許容できる停止時間とバックアップの頻度を定めます。
他システムとの連携では、ポータルサイト、銀行API、電子契約サービスと連携するかどうかを確認します。
非機能要件が曖昧だと、見積もりのブレが大きくなります。特に、個人情報を多く扱う不動産業界では、セキュリティの定義が欠かせません。
複数社比較と発注先の選び方
発注先は、価格だけでなく、実績、体制、契約条件まで比べます。
- 実績:不動産・賃貸管理の類似案件の有無
- 対応範囲:要件定義から保守までの体制
- PM:専任のプロジェクトマネージャーの有無
- 契約形態:請負と準委任の違い
見積もりは最低でも3社以上から取り、同じ要件で比べます。人月単価、技術スタック、管理体制の違いによって、2〜3倍の差が出ることもあります。加えて、不動産業務への理解度や対応の丁寧さも評価します。
請負契約は、成果物に対して報酬が発生する契約で、仕様が明確な場合に向きます。一方で、仕様変更には対応しにくい面があります。
準委任契約は、工数に対して費用が発生し、要件変更に対応しやすい契約です。そのため、要件が変化しやすい案件やアジャイル開発に適しています。
注意すべきリスクと対策
主なリスクは、仕様の膨張と特定会社への依存です。
- スコープクリープ:要件が際限なく増える状態
- ベンダーロックイン:特定会社に依存する状態
- 成果物管理:将来に備えた資料の受け取り
スコープクリープは、要件定義で機能範囲を文書にしておくことで防げます。変更が生じたときは、費用とスケジュールへの影響をその都度確認します。
ベンダーロックインへの対策として、ソースコードの所有権は発注者側に置きます。特定会社独自の技術にも、過度に依存しないことが大切です。
経営悪化や担当者の離脱に備えて、設計書や仕様書を受け取っておきます。テストドキュメントも含めて、これらをすべて受け取ることが欠かせません。契約時には、成果物の帰属とドキュメントの納品義務を明記しておきます。
賃貸管理システムの開発費用を適切にコントロールする方法
費用削減と高品質は両立できます。両立させるには、削る部分と守る部分を分けて考えることが大切です。ただし、要件定義やテストを簡略化すると、後から大きな修正費用が生じます。
MVP(Minimum Viable Product:最小限の機能で動く製品)であれば、初期投資を抑えられます。
MVP思考によるフェーズ開発
フェーズ開発は、初期機能を絞って費用を管理する方法です。
- 第1フェーズ:物件、入居者、契約の実装
- 第2フェーズ以降:追加機能の段階的な実装
- 既存サービス:SaaSやOSSの組み合わせ
第1フェーズでは、コア機能に絞ります。家賃自動化、外部ポータル連携、修繕管理は後から追加します。そのため、初期開発費を200万〜500万円程度に抑えたうえで、利用者からのフィードバックを次の開発に反映できます。
すべてをスクラッチで作らず、市販のSaaSやOSSを一部組み合わせます。電子契約は、クラウドサインなどをAPIで連携させれば、開発費を削減できます。
認証や権限管理には、Auth0などのIDaaSも活用できます。作らなくてよい部分を既存サービスで代替する視点が大切です。
オフショア・ニアショア開発の活用
海外や地方の人材を活用すると、人件費を抑えられる場合があります。
- オフショア:海外エンジニアの起用
- ニアショア:地方都市の人材の起用
- ハイブリッド:国内で上流、海外や地方で実装
ベトナム、インド、中国などを使うオフショアは、費用が30〜60%下がる場合があります。ただし、意思疎通、品質管理、時差が課題になります。そのため、経験豊富なPMを介した体制づくりが欠かせません。
ニアショアは、首都圏より人件費が20〜30%低くなる場合があります。オフショアより削減効果は小さい一方で、意思疎通と品質を保ちやすい方法です。そこで、要件定義と設計を国内で行い、実装を委託する体制が現実的です。
まとめ
賃貸管理システムの費用は、規模、機能数、開発手法で変わります。スクラッチ開発では、小規模で200万〜500万円が目安です。中規模は500万〜1,500万円、大規模は1,500万〜5,000万円以上です。
総額は、エンジニアの単価と開発期間にも左右されます。一般的なエンジニアの単価は、月額80万〜120万円が相場です。保守やインフラ、追加改修の費用もかかるため、初期費用だけでなく、総所有コスト(TCO)で予算を考えます。
見積もり前に、要件、業務フロー、機能の優先順位を整理します。3社以上から相見積もりを取り、実績と体制も比べます。
費用管理には、フェーズ開発、既存SaaS、オフショア、ニアショアが有効です。適切なパートナーと計画的に進めれば、効率化と競争力強化につながります。
▼全体ガイドの記事
・賃貸管理システム開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
