賃貸管理システム開発の開発期間・スケジュール・納期について

賃貸管理システム開発の期間は、管理戸数と機能範囲、導入形態によって大きく変わります。フルスクラッチ開発の目安は、小規模で約3〜4ヶ月、中規模で約6〜8ヶ月、大規模で約10〜15ヶ月以上です。

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賃貸管理システム開発の期間の全体像

期間の目安は管理戸数と機能範囲によって変わるため、見積もりの前に、自社がどの規模に当たるかを確かめておく必要があります。

賃貸管理は、家賃・敷金・保証金などのお金を扱う基幹業務で、一般的なWebサービスより設計や検証が難しくなります。特に、家賃の入金は毎月発生し、1円単位の正確さが求められます。

賃貸借契約は数年にわたって更新と解約を繰り返します。また、履歴を遡って契約の変遷を追えるよう、データ構造も複雑になります。その結果、同規模の一般業務システムより期間と費用が大きくなる傾向があります。

賃貸管理システムが対象とする業務範囲

開発期間の見積もりに入る前に、何を管理するシステムなのかを明確にし、対象業務を決めておく必要があります。賃貸管理は長期契約を扱う業務です。

  • 契約管理:入居者情報、個人・法人(社宅)契約、保証人、契約期間、更新条件、特約
  • 請求・入金:家賃・共益費の毎月請求、入金消込、滞納督促
  • 更新・退去:契約更新、解約、原状回復、敷金精算
  • 物件運営:空室・募集状況、設備トラブルの受付から修繕完了までの履歴、送金額を計算する収支レポート

契約期間や特約も管理対象で、契約者が個人か法人か、保証人が連帯保証人か家賃保証会社かによって、扱いも変わります。

ホテル・旅館のPMS(宿泊施設管理システム)は、1泊単位の予約やチェックイン、客室清掃を扱います。一方で、賃貸管理は長期の債権債務関係を追うため、PMSとは設計の考え方が異なります。

業務範囲のどこまでをシステム化するかが、開発期間を大きく左右します。

規模別の開発期間・人月・費用の目安

フルスクラッチで新規開発する場合の期間・費用・人月は、管理戸数と機能範囲によって、小規模から大規模まで次のように変わります。

  • 小規模・MVP(最小構成):約3〜4ヶ月、約300万〜500万円、約4〜6人月
  • 中規模・標準構成:約6〜8ヶ月、約1,000万〜2,000万円、約15〜25人月
  • 大規模・フル機能:約10〜15ヶ月以上、約3,000万〜5,000万円以上、約40人月〜

小規模は、Excel管理からの脱却を目的とした最小構成です。作る機能は、物件マスタ登録、入居者・契約管理、家賃請求額一覧に絞ります。

中規模は数十戸〜数百戸の会社向けです。更新・解約、ファームバンキング連携による入金消込、収支報告書が加わります。

大規模は数千戸〜数万戸を扱う会社向けで、金融機関API、入居者アプリ、修繕業者への受発注を統合するERPクラスの規模です。

ここに示す金額は、一般的な開発相場を賃貸管理の難易度で補正した目安です。正確な費用は、詳細な要件定義の後に算出できます。

ポイント

期間の見積もりは、管理戸数と機能範囲で規模を決めてから、規模ごとの目安と照らし合わせます。賃貸管理は一般的な業務システムより期間が延びやすいため、その分の余裕を見込んでおくと安心です。

要件定義から本番稼働までの工程別スケジュール

要件定義・基本設計から開発・実装、テスト・移行へ進む3工程と、それぞれの期間および工数配分を示した図。
工数配分の中心は開発・実装です。

中規模の約6ヶ月開発を例に、工程ごとの期間と工数配分を見ていきます。全体は3段階に分かれ、それぞれに工数を配分します。

  • 要件定義・基本設計:工数の35〜40%
  • 開発・実装:工数の約40%
  • テスト・移行:工数の約20%

賃貸管理では、テストとデータ移行が一般的なシステムより重くなりやすいため、注意が必要です。

要件定義・基本設計フェーズ(約2〜3ヶ月)

要件定義では、現行の賃貸管理業務フローをすべて洗い出し、システム化する範囲を決めます。工数は全体の15〜20%、期間は約1〜1.5ヶ月が目安です。

  • 入金と督促:家賃の回収日、締め日、督促手段と保証会社への請求時期
  • 送金:オーナーへの送金日と送金ルール
  • 契約更新:更新案内を出す時期(何ヶ月前か)

運用ルールは会社ごとに異なり、担当者の経験や慣習に埋もれがちです。そのため、例外処理を言語化しておくと、後工程の手戻りを防げます。

オーナーごとの管理手数料率や送金条件、家賃保証会社ごとの督促ルールも、同じように書き出しておくと、設計以降がスムーズに進みます。

続く基本設計では、データベース設計が最大の山場になります。物件には複数の部屋があり、契約者や保証人、保証会社も、それぞれの契約に関わります。

各部屋には時期の異なる複数の契約が紐づくため、契約更新の履歴を過去に遡って保持する構造が必要です。設計の品質は、入金消込や収支報告、滞納管理の実装しやすさを左右します。

このため、拙速に設計を決めず、実際の物件・契約データを使ったサンプル検証を重ねながら固めます。

開発・実装フェーズ(約2ヶ月)

開発・実装は中規模で約2ヶ月、工数の約40%が目安です。全工程の中で最も多くの工数を使います。

  • 請求と入金:毎月の請求生成、入金データの取込と消込
  • 退去精算:解約時の日割り計算と敷金精算
  • オーナー送金:送金額の計算と明細出力

プログラミングと単体テストは並行して進め、共益費の按分、日割りの端数処理、消費税・インボイスなどの仕様を実装します。

管理画面などのフロントエンドと、データ処理・バッチ・外部連携を担うバックエンドは、並行して開発するのが一般的です。

計算ロジックにバグが残ると、後のテストで修正の手間が大きくなります。そのため、実装の時点で単体テストにより計算結果を検証します。

結合テスト・データ移行・受入フェーズ(約1〜1.5ヶ月)

最終工程は工数の約20%、約1〜1.5ヶ月が目安です。お金の計算を1円単位で確かめる必要があるため、一般的なシステムより重くなりやすい工程です。

  • 会計テスト:月をまたぐ解約の日割り家賃の1円単位の検証
  • 送金検証:手数料と立替修繕費を差し引いた送金額の確認
  • データ移行:既存データの移し替えと内容の突合

会計テストでは、お金に関する計算を網羅的に確かめるため、テストケースが膨大になります。

移行では、Excelや旧システムの物件、部屋、契約者、過去契約、入金履歴を新しいデータ構造へ移します。移行データの整理と突合検証には、想定以上の時間がかかります。

本番稼働は、月初の家賃請求や月末の入金消込に合わせます。そのため、業務カレンダーから逆算して、テストと移行のスケジュールを組むことが重要です。

ポイント

工程の期間は、工数の配分を基に見積もります。テストと移行は一般的なシステムより重くなりやすいため、本番稼働の時期から逆算して計画を組むと、遅れを見つけやすくなります。

賃貸管理固有の機能が開発期間に与える影響

入金消込と滞納管理、契約更新・解約・原状回復の精算、オーナー向け収支レポート・送金明細、空室管理と修繕ワークフローの追加期間を並べた図。
入金消込と滞納管理は追加期間の幅も大きくなります。

開発期間を正確に見積もるには、機能ごとにどれだけ期間が延びるかを把握する必要があります。毎月のお金の動きと長期契約の変遷を追う機能は、開発のボトルネック(遅延要因)になりやすいです。

空室管理では、退去が確定したあとに募集可能へ切り替え、SUUMO・アットホーム等の募集ポータルと連携します。修繕ワークフローは、受付から発注、完了までを追う機能です。

空室管理と修繕ワークフローは、それぞれ+0.5〜1ヶ月程度です。なお、ここから示す影響は標準構成に機能を加えた場合の目安で、実際の要件によって変わります。

家賃・共益費の入金消込と滞納管理(影響:+1.5〜2ヶ月)

入金消込は難易度が高く、テストの工数も膨らみます。標準構成に加えた場合の目安は、+1.5〜2ヶ月程度です。

銀行から取得した全銀協フォーマットのCSVを取り込み、請求データと振込名義や金額で照合します。

  • 名義の例外:親名義、勤務先名義、同姓同名の判定
  • 金額の例外:振込手数料の差引きや一部入金への対応
  • 滞納管理:期日後の契約の抽出と、督促段階の記録

自動で照合できない入金も出るため、担当者が手動で消し込む画面も必要です。また、督促の手段には、電話、書面、家賃保証会社への代位弁済請求があります。

機能の作り込み度合いが、システム全体の開発期間を最も大きく左右します。

契約更新・解約・原状回復の精算(影響:+1ヶ月)

更新・解約と精算の機能を標準構成に加えると、開発とテストに+1ヶ月程度かかります。

  • 契約更新:対象契約の抽出、案内、新契約への切替
  • 解約:通知の受付、退去日の確定、解約月の日割り
  • 退去精算:原状回復費と敷金等の相殺、返金または追加請求

解約では、退去日が決まらないと日割り計算に進めないため、通知の受付から順に退去日を確定させていきます。

更新では、更新料や火災保険の更新、家賃改定の内容を契約に反映します。解約後は、退去立会いを経て原状回復費用を算定します。

原状回復では、国土交通省のガイドラインに沿った貸主・借主の負担区分も踏まえます。そのうえで、実際の見積額から過不足を精算します。

金額の誤りは入居者やオーナーとのトラブルに直結するため、テストの精度が強く求められる領域です。

オーナー向け収支レポート・送金明細(影響:+1〜1.5ヶ月)

管理会社に欠かせないオーナー(家主)向けの収支レポート(送金明細書)は、標準構成から+1〜1.5ヶ月程度が目安です。特に、計算と帳票出力の実装・テストが山場になります。

  • 収入:徴収した家賃・共益費の集計
  • 控除:管理手数料、立替修繕費、広告料(AD)の差引き
  • 送金明細:送金額の計算と、月次明細のPDF等への出力

管理手数料は、たとえば家賃の5%です。ただし、手数料率や送金サイクル、口座、レポート様式は、オーナーごとに異なります。

1人のオーナーが複数物件を所有するケースや、サブリース(一括借上げ)など、契約形態ごとの計算も必要になります。また、ポータルで明細を見せる場合は、画面開発も加わります。

送金額は管理会社の信頼に直結するため、実際の過去データを使った検証が欠かせません。

ポイント

機能を追加すると、その分だけ開発期間は延びます。入金消込と滞納管理は影響が最も大きいため、標準構成に加える前に、どこまで作り込むかを要件定義の段階で決めておくと判断しやすくなります。

導入形態による開発期間の違い

既製SaaS・パッケージ、フルスクラッチ、ハイブリッド型の3つの導入形態と、それぞれの特徴を示した図。
標準業務と独自業務の範囲が、形態選びの分かれ目になります。

導入方法には、フルスクラッチ、既製SaaS・パッケージ、独自部分のみを作るハイブリッド型があり、稼働までの期間はそれぞれ異なります。

期間の目安を比べると、既製SaaSの導入は約1〜3ヶ月、フルスクラッチは中規模で6〜8ヶ月、大規模で10〜15ヶ月以上です。標準業務で足りる場合はSaaS、独自業務に合わせる必要がある場合はフルスクラッチが候補になります。

既製の賃貸管理SaaS・パッケージ導入の期間

いい生活やいえらぶなど、賃貸管理に特化したSaaS・パッケージがあります。標準業務に自社の運用を合わせられれば、導入は比較的短期間で済みます。

  • 導入期間:契約、初期設定、データ移行、操作研修を経て約1〜3ヶ月
  • 利点:短期間で立ち上がり、初期投資を抑えられます。法改正や機能更新はベンダーが継続して対応し、保守負担も小さくなります。
  • 確認点:独自運用や既存システム連携に対応できない場合があります。

独自の家賃回収やレポート様式には、対応しにくい場合があります。その際は、標準機能に業務を合わせるか、カスタマイズの費用と期間を加えます。

管理戸数が多くなく、標準業務で問題ない場合は、期間の面でSaaS・パッケージが現実的です。

フルスクラッチ開発とハイブリッド型の期間

フルスクラッチは、中規模で6〜8ヶ月、大規模で10〜15ヶ月以上かかります。そのため、SaaS導入に比べて稼働までの期間は長くなります。

  • フルスクラッチ:独自業務に100%合わせて作れ、既存会計・基幹システムやオーナーポータルと連携できます。
  • ハイブリッド:標準化された家賃・契約管理をSaaSに任せる形
  • 独自機能:専用アプリや特殊なレポートを、API連携で開発する部分

フルスクラッチとSaaSの中間にあたるベスト・オブ・ブリード(ハイブリッド)型は、近年有力な選択肢です。開発範囲を絞ることで、期間・費用を抑えながら独自性を保てるため、期間短縮策の一つになります。

まず、標準機能で足りる部分と独自に作りたい部分を切り分けます。この切り分けが、導入形態を選ぶ出発点になります。

ポイント

導入形態は、標準業務で足りるか、独自の業務をシステムに反映させる必要があるかで選びます。管理戸数が多くなく標準業務で足りるならSaaS・パッケージ、独自性が強いならフルスクラッチやハイブリッド型が候補になります。

納期遅延の典型要因と短縮策

主な遅延要因は、要件定義で業務ルールを洗い出しきれないことです。特に、督促、例外入金、オーナー送金は、担当者の経験や慣習に頼りがちです。

言語化の過程で、担当者にしか分からない暗黙のルールが後から次々に出てくることがあります。開発の後半で見つかると、設計をやり直すことになります。

外部連携の仕様が決まるまでの時間も、遅延要因になります。たとえば、全銀協フォーマットの取得可否や、口座振替・集金代行会社の仕様、電子契約や会計ソフトのAPIは、連携先への確認に時間がかかります。

そのため、初期の段階で連携先へ仕様を照会し、ベテラン担当者への聞き取りと現行帳票の分析で、暗黙のルールを明らかにします。

MVPによる段階的リリースと納期リスクの抑制

最初から全機能を作らず、MVP(最小限の機能セット)から段階的にリリースすると、納期リスクを抑えられます。

  1. フェーズ1で、物件・部屋マスタ、入居者・契約管理、家賃請求額一覧を作り、Excel管理からの脱却を目指します。
  2. フェーズ2で、入金消込と滞納管理を追加します。
  3. フェーズ3は、収支レポート、空室募集連携、修繕ワークフローです。

段階導入なら、早い段階で業務改善の効果を得られ、現場の意見を次の開発に反映できます。また、一度に抱えるリスクも抑えられます。

入金消込のような難しい機能を初期から作ると長期化しやすいため、請求・契約管理で土台を作ってから、難所に段階的に取り組みます。

既存SaaSを部分的に使うハイブリッド型や、管理画面の一部にノーコードツールを使う方法も、開発範囲を圧縮できます。

ポイント

納期を守るうえでは、初期の段階で暗黙のルールと連携先の仕様を洗い出せているかを確かめます。遅れが見込まれるときは、MVPで段階的にリリースする案も比べると、選択肢が広がります。

まとめ

賃貸管理システムは、長期契約と毎月の家賃入出金を追う基幹業務です。短期利用を扱うホテル・旅館のPMSとは、業務の性質が異なります。

フルスクラッチの目安は、小規模MVPで3〜4ヶ月、中規模で6〜8ヶ月、大規模で10〜15ヶ月以上です。機能範囲によっても、期間は変わります。

工程は、要件定義・基本設計、開発・実装、結合テスト・データ移行の3段階に分かれます。なかでもテストと移行は、お金の計算を1円単位で確かめる必要があるため、一般的なシステムより重くなりやすい工程です。

期間を左右するのは、入金消込・滞納管理、更新・解約・原状回復、オーナー収支レポートです。なかでも入金消込は、最も難易度が高く、テスト工数が膨らむ山場です。

納期を守るには、要件定義で属人化した業務ルールを徹底して洗い出し、外部連携の仕様を早めに確認することが大切です。また、MVPの段階導入や既存SaaSを使うハイブリッド型も、有効な手段になります。

管理戸数と業務の独自性に合う導入形態を見極めたうえで、複数の開発会社に期間・費用の見積もりを相談しましょう。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。