小売業界のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

小売業界のシステム開発を外注するには、発注前の整理から、開発会社の選定、契約、発注後の管理まで、順を追って進めます。

社内にIT部門がない、または少ない中小の小売業では、外注の進め方全体に不安を感じることもあるでしょう。全体像は、次の全体ガイドでも確認できます。

▼全体ガイドの記事
・小売業界のシステム開発の完全ガイド

小売業界のシステム開発を外注する前の準備

発注前に整理する現状の業務フロー、課題、実現したいこと、優先順位を4枚のカードで示した図。
4観点をそろえると、相談時に共有する内容を整理しやすくなります。

外注を成功させるには、発注前の準備が欠かせません。

「とりあえず開発会社に相談してから考える」という進め方では、要件が曖昧なまま開発が進み、後から大幅な手戻りや追加費用が発生するおそれがあります。

自社要件の整理と課題の明確化

外注前にまず行うべきは、自社の業務課題とシステム化のニーズを整理することです。

要件を曖昧なままにしないため、次の4つの観点から見ていきます。

  • 現状の業務フロー(AS-IS):店頭での販売から在庫管理、発注、顧客対応までを、図や文書にまとめる。
  • 課題:「在庫データの更新に時間がかかる」「ECと店舗の在庫が連動していない」「顧客データが各部門でバラバラに管理されている」など、問題点と改善要望を一覧にする。
  • 実現したいこと(TO-BE):「在庫のリアルタイム共有」「EC・店舗の統合在庫管理」「顧客の購買履歴を活かしたマーケティング」などを例に、目指す姿を決める。
  • 優先順位:全てを一度に解決しようとせず、効果の高い課題から順に、システム化する範囲を決める。

社内体制と推進責任者の設置

外注プロジェクトを成功させるには、社内の推進体制が不可欠です。外部に全てを任せる「丸投げ」は、要件の伝達不足、品質の確認不足、スケジュール管理の不備を招き、プロジェクト失敗の大きな原因になります。そのため、社内には少なくとも次の役割を置くことを推奨します。

  • プロジェクトオーナー(経営層):プロジェクトの最終承認と、予算・リソースの決裁
  • プロジェクトマネージャー(PM):開発会社との窓口として、進捗管理、課題解決、関係者間の調整を担う。
  • 業務担当者(キーユーザー):現場の業務知識を提供し、要件定義とテストに参加する各業務部門の代表者。
  • IT担当者:既存システムの技術情報を提供し、連携設計に協力する。

社内にPMがいない場合は、開発会社のPMに代行してもらう方法もあります。ただし、その分のコストが発生する点は念頭に置いてください。

予算とスケジュールの概算設定

外注の前に、予算とスケジュールの概算を社内で決めておくことが大切です。予算の上限を決めておくと、開発会社への相談時に適切な提案を受けやすくなります。

ただし、最初から上限の予算をすべて伝えると、見積もりがその上限に張り付くことがあります。そのため、「〇〇円〜△△円の範囲で検討している」というように、幅を持たせて伝えるのが効果的です。

  • スケジュールの決め方:「いつまでにシステムを稼働させたいか」を先に決め、そこから逆算して発注の時期を計画する。
  • 期間の目安:小規模なシステムでも要件定義から稼働まで6ヶ月〜1年、中規模以上では1年〜2年以上を見込む必要があります。

ポイント

要件や予算が固まらないまま相談を始めると、後から手戻りや追加費用が生じるおそれがあります。発注前に要件・課題・予算・スケジュールを整理し、社内の推進役を決められているかが判断の目安です。

外注の方法と開発会社の探し方

開発会社を探す方法は複数あります。

それぞれの特徴を知ったうえで、自社の状況に合う方法を選びましょう。

主な開発会社の探し方

開発会社を探す主な方法は、次の4つです。

  • Web検索:「小売業界 システム開発 会社」などで検索し、要件に合いそうな会社を一覧にする。各社のWebサイトで実績・得意分野・企業規模を確認する。
  • マッチングサービス:システム開発会社と発注者をつなぐサービス(発注ナビ・PRONIアイミツなど)を使うと、複数社に一括で問い合わせられます。
  • 業界団体や展示会:流通・小売業界向けのIT展示会(リテールテック等)に参加し、小売業界に特化したシステム会社と直接接点を持つ。
  • 同業者経由:同業他社や取引先が使っている開発会社を紹介してもらう。実際の使用感を聞けるのが利点です。

問い合わせから選定までの流れ

開発会社への問い合わせから選定までは、次の流れで進みます。

  1. 候補会社への問い合わせ:候補会社(3〜5社)へ問い合わせ、初回ヒアリングで自社の課題や要件を丁寧に説明する。
  2. 提案依頼:RFP(提案依頼書)を作成して候補会社に送り、提案書と見積もりを求める。
  3. 提案の評価:届いた提案書と見積もりを、提案内容や費用に加え、実績と対応力の面から選定会議で評価する。
  4. 契約に向けた協議:最優先候補の会社と詳細を打ち合わせたうえで、契約交渉と契約締結を行う。

質問や提案の中身から、業界の知識がどの程度あるかを確かめることも大切です。業界知識が乏しい会社だと、要件定義の段階で認識のずれが起きやすくなるためです。

ポイント

自社の状況に合う探し方を選び、候補は3〜5社程度に絞って問い合わせるのが目安です。初回ヒアリングで業界の知識があるかも確かめておくと、後の認識のずれを減らせます。

契約形態の選び方(請負契約vs準委任契約)

請負契約と準委任契約について、成果物と稼働時間という対価の対象を左右2列で比較した図。
支払いの基準が成果物か稼働時間かで、2つの契約形態を見分けられます。

システム開発の外注には、主に「請負契約」と「準委任契約(時間単価契約)」の2つの契約形態があります。

請負契約と準委任契約は、それぞれの特徴を知り、自社の状況に合う形を選ぶことが大切です。

請負契約(固定価格)の特徴と適した場面

請負契約は、「〇〇の機能を持つシステムを△△円で開発する」という形で、成果物(完成したシステム)に対して対価を支払う契約形態です。費用が事前に確定するため、予算を管理しやすいのが特徴です。また、成果物の品質に瑕疵があった場合は、開発会社が無償で修正する義務(瑕疵担保責任)があります。

一方で、要件変更には対応しにくく、仕様変更が生じると追加費用が発生することが多いです。そのため、請負契約が適しているのは、要件が明確で仕様変更の可能性が低いプロジェクトです。

小売業界では、レジシステムの基本機能や在庫管理の基本機能など、定型的な機能の開発に向いています。

準委任契約(時間単価)の特徴と適した場面

準委任契約は、開発者の稼働時間に対して対価を支払う契約形態(時間単価×稼働時間)です。要件変更に柔軟に対応でき、アジャイル開発との相性も良いです。

ただし、費用は稼働時間に連動するため、プロジェクトの進め方によって最終的な費用が変動するリスクがあります。準委任契約が向いているのは、要件が途中で変わる可能性が高いプロジェクトや、新しいシステムや技術を探索的に開発する場合です。たとえば、ECサイトのUI/UX改善やAIを活用した需要予測システムの開発など、試行錯誤が必要なプロジェクトが挙げられます。

多くの実際のプロジェクトでは、要件定義を準委任で行い、開発を請負で行うハイブリッド型のアプローチも選ばれています。

ポイント

要件が明確で変更が少なければ請負契約、要件が途中で変わりうるなら準委任契約が目安です。要件定義を準委任で、開発を請負で行う組み合わせもあります。

発注後のプロジェクト管理のポイント

発注後の管理に関する進捗確認、要件変更の管理、ユーザー受入テストの3項目を並べた図。
進行中の確認からリリース前のテストまで、発注側の関与が続きます。

契約したあとも、プロジェクトを成功させるには発注側の積極的な関与が欠かせません。

開発会社に任せきりにする「丸投げ」は、失敗の元になります。

定期的なコミュニケーションと進捗確認

週次や隔週で、開発会社と定期的にステータスミーティングを行い、進捗状況、課題、次回のアクションを確認します。会議の内容は議事録に残し、合意事項や担当者、期限を明確にします。

進捗が遅れている場合は、原因をすぐに把握し、スケジュール、リソース、スコープを調整します。

さらに、開発中の成果物(設計書、画面モックアップ、プロトタイプ)を定期的に確認し、要件とずれていないかを見ておくことが重要です。問題を見つけたら早く伝えるほど、修正コストを抑えられます。

要件変更の管理と追加費用の防止

システム開発の途中で要件が変わることは、珍しくありません。

変更のたびにスコープが広がると「スコープクリープ」と呼ばれる状態になり、費用超過やスケジュール遅延の主な原因になります。

要件変更が生じた場合は、変更内容と理由を書面で確認し、費用とスケジュールへの影響も開発会社に示してもらいます。双方が合意してから変更を承認する流れを設けることが大切で、これを「変更管理プロセス」と呼びます。優先度の低い追加要件は、第2フェーズとして後日実装する選択肢を持っておくと、コストとスケジュールを守りやすくなります。

ユーザー受入テスト(UAT)の実施

システムが完成に近づいたら、現場で業務を行うスタッフがユーザー受入テスト(UAT:User Acceptance Testing)を必ず行います。UATでは、実際の業務シナリオ(在庫の入出庫、POSでの販売処理、EC受注処理など)に沿ってシステムを操作し、想定どおりに動くか、操作しやすいかを確かめます。

発注側が主体となってUATを計画し、実行します。見つかった不具合や改善要望は、開発会社にフィードバックします。

UATに合格してから本番リリースを行えば、「稼働したらシステムが使いにくい」というリスクを大幅に減らせます。

ポイント

進捗を定期的に確認し、要件変更を書面と双方の合意で扱えているかが判断の目安です。現場主体の受入テストを計画できているかも、あわせて見ておくとよいでしょう。

まとめ

小売業界のシステム開発を外注するには、発注前に自社の要件・課題・予算・スケジュールを整理し、社内の推進体制を整えることが第一歩です。

開発会社は複数社から相見積もりを取って選び、実績、業界知識、コミュニケーション力を総合的に評価します。

契約形態は要件の確定度合いに応じて、請負契約と準委任契約を使い分けます。そのうえで、プロジェクトを始めたあとは変更管理プロセスを設け、要件変更によるスコープクリープを防ぎます。

リリース前のユーザー受入テスト(UAT)を現場スタッフが主体となって行えば、現場に根付いたシステムの導入を実現できます。

小売業界の業務知識と技術力を兼ね備えたパートナーと共に、システム開発プロジェクトを成功させましょう。

小売業界のシステム開発の相談先(ripla)

小売業界のシステム開発でお困りの方は、ぜひ株式会社riplaにご相談ください。riplaは、小売業界の業務プロセスへの深い理解と、豊富なシステム開発実績を持つSIerです。

要件定義から設計・開発・保守運用まで、一気通貫でご支援します。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。