学校向けシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

学校向けシステム開発は、要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3フェーズを段階的に進めるのが基本です。要件定義では、教育現場の業務・利用者・セキュリティ・法令要件を整理し、本番稼働後も現場の声を取り入れながら改善を重ねていきます。

▼全体ガイドの記事
・学校向けシステム開発の完全ガイド

学校向けシステムの全体像

学校向けシステムの全体像

学校向けシステムとは、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・大学・専門学校などの教育機関で、教育活動や学校運営を効率化・高度化するためのITシステムの総称です。

GIGAスクール構想の推進により、1人1台端末の整備が進み、クラウドベースのシステム導入が加速しています。文部科学省の調査によれば、2023年度時点で全国の公立小中学校の約95%以上が何らかのICTシステムを導入しており、学校DXは急速に進んでいます。

学校向けシステムの種類と特徴

学校向けシステムは、大きく分けて「校務支援システム」「学習管理システム(LMS)」「保護者向けコミュニケーションシステム」「学籍・成績管理システム」の4種類に分類されます。

校務支援システムは、教員の出退勤管理・時間割作成・成績処理・通知表作成などを自動化するもので、教員一人あたり年間約200時間の業務削減効果があるとされています。学習管理システム(LMS)は、授業コンテンツの配信や課題管理、学習進捗の把握を一つにまとめるもので、Google ClassroomやMicrosoft Teamsなどが代表例です。

保護者向けシステムは、欠席連絡・学校からのお知らせ配信・個人面談予約などをデジタル化し、電話対応の負担を大幅に減らします。また、学籍・成績管理システムは、生徒の入学から卒業までのデータをまとめて管理し、転学や進学の際のデータ連携も可能にします。

導入のメリットと活用事例

学校向けシステムを導入して得られる主なメリットは4点あり、教員の業務負担の軽減や教育の質の向上のほか、保護者との連携強化や学校運営の効率化が挙げられます。

実際に東京都内のある公立中学校では、校務支援システムの導入により教員の残業時間が月平均30時間から18時間へと、約40%削減されました。また、LMSを活用した個別最適化学習は、学力向上だけでなく、不登校生徒への学習サポートとしても活用されています。

神奈川県の私立高校では、保護者向けアプリの導入後、学校への電話問い合わせが週平均150件から35件へと、約77%減ったと報告されています。

学校向けシステム開発の進め方

学校向けシステム開発の進め方

一般的な開発期間は、要件定義から本番稼働まで6か月〜18か月程度かかります。要件定義で決めたことが後の工程を左右するため、最初の段階を丁寧に進めます。

要件定義・企画フェーズ

要件定義フェーズでは、まず現在の業務フローを洗い出し、課題を一覧にすることから始めます。教員・事務職員・管理職・保護者など、システムを使うすべての関係者にヒアリングし、「誰が・何を・どのタイミングで・どのように使うか」を明確にします。

この段階で特に重要なのが、個人情報保護法や学校教育法への対応要件の整理です。生徒の成績・健康情報・家庭環境などの機微情報を扱うため、データの保存場所・アクセス権限・保存期間を、法令に沿って設計する必要があります。また、文部科学省が公開している「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に沿った設計になっているかも、確かめておきます。

要件定義では、要件定義書・業務フロー図・システム構成図・セキュリティ要件書を作ります。この段階での手戻りは、後工程のコストを数倍に膨らませます。そのため、時間をかけて要件を固めることが求められます。

設計・開発フェーズ

設計フェーズでは、要件定義の内容をもとに基本設計を行い、画面・データベース・インターフェースを決めます。続く詳細設計では、プログラミングに必要な詳細仕様を記述します。

学校向けシステムの設計では、利用端末の多様性への対応に特に注意が必要です。教員はPC・タブレット、生徒は1人1台のChromebook・iPad、保護者はスマートフォンと、異なる端末からのアクセスを想定し、レスポンシブデザインに対応させます。また、新学期や入学式、卒業式など特定の時期にアクセスが集中することを見越して、インフラを設計しておくことも必要です。

開発フェーズでは、アジャイル開発手法を採用し、2〜4週間のスプリント単位で機能を段階的にリリースします。そのため、教育現場からのフィードバックを早い段階で取り込めます。

テスト・リリースフェーズ

テストフェーズでは、単体テスト・結合テスト・システムテスト・ユーザー受け入れテスト(UAT)の4段階でテストを行います。UATでは、実際の教員や事務職員に操作してもらい、業務フローに沿って動作を確かめます。学校向けシステムでは特に、本番環境と同等の条件でUATを行うことが大切です。

リリースは、学校の業務への影響が少ない長期休暇(夏季休暇や春季休暇)中に行うのが一般的です。また、まず1校で試験導入し、問題がなければ全校に展開する段階的リリースを採用すると、リスクを抑えられます。

リリース後は、教員向けの操作説明会を開き、ヘルプデスクを設けて初期サポートを手厚くします。そうすることで、現場の混乱を防げます。

ポイント

迷ったときは、要件定義の段階で業務・利用者・法令の条件を決めきれているかを見直すとよいでしょう。決めきれていない項目は、設計以降の手戻りになりやすいためです。

費用相場とコストの内訳

学校向けシステム開発の費用相場

学校向けシステムの開発費用は、規模・機能・開発方式によって大きく変わります。スクラッチ開発(一から開発する場合)とパッケージシステムのカスタマイズでは費用感が異なるため、まずは規模別の目安を押さえておきます。

規模別の開発費用目安

小規模な学校(生徒数500人未満・1校向け)では、500万円〜1,500万円程度が相場です。この目安は、出席管理・成績管理・保護者連絡の基本機能を含む場合のコストです。中規模(生徒数500〜2,000人・複数校への展開を想定)では1,500万円〜5,000万円程度となり、機能追加や複数校対応の設計が必要になるため、費用が増えます。

大規模(学校法人全体・市区町村全体など複数校・数千人規模)では、5,000万円〜2億円以上になることもあります。既存の基幹システムとのデータ連携、シングルサインオン対応、大規模なトラフィック対応が必要になるためです。

パッケージシステムへのカスタマイズを選ぶ場合は、ライセンス費用(年額50万円〜500万円程度)に、カスタマイズ費用(100万円〜1,000万円程度)が加わるケースが多いです。

初期費用以外のランニングコスト

学校向けシステムは導入後も、継続的なランニングコストが発生します。主な費用は、クラウドインフラ費用(月額10万円〜100万円)、保守・サポート費用(年額50万円〜300万円)、セキュリティ監視費用(月額5万円〜30万円)です。加えて、定期的な機能アップデート費用もかかります。

また、文部科学省のガイドライン改訂や個人情報保護法の改正に対応するための費用も、見込んでおく必要があります。たとえば、2022年の個人情報保護法改正では、学校における個人情報の取り扱いに関する要件が強化され、システムのアップデート費用が発生するケースもあります。

総所有コスト(TCO)を5年間で試算すると、初期開発費用の1.5〜2倍程度になることが多いです。そのため、導入を検討する段階から、ランニングコストを含めた予算計画を立てることが大切です。

ポイント

費用は規模と開発方式で変わるため、まず自校の生徒数や連携先を把握して目安を当てはめます。運用後の保守費用も含めて予算を組むと、後から不足しにくくなります。

開発会社選びのポイント

学校向けシステム開発会社の選び方

学校向けシステムの開発会社は、一般的なシステム開発会社とは異なる視点で評価する必要があります。特に、教育機関特有の業務フロー、セキュリティ要件、法令対応の知見を持つかどうかが、プロジェクト成功の鍵になります。

教育分野の実績と経験

開発会社を選ぶ際は、まず教育機関向けシステムの開発実績を確認しましょう。同規模・同種別の学校(公立・私立・大学・小中学校など)での導入事例があるかどうかは、重要な判断材料になります。

事例のヒアリングでは、プロジェクトの規模・開発期間・導入後の課題・サポート体制などを詳しく聞くことをお勧めします。また、文部科学省や各都道府県教育委員会との取引実績がある会社は、公教育特有の調達プロセスや要件に対応する力が高いといえます。

ISMS認証(ISO/IEC 27001)やプライバシーマーク(Pマーク)を取得しているかも、情報セキュリティへの取り組みを判断するうえで有効な指標になります。

セキュリティ対応と法令遵守

学校向けシステムは、生徒・保護者の個人情報や成績、健康情報など、機密性の高いデータを扱います。そのため、開発会社のセキュリティ対応力は、最も重要な評価事項の一つです。

確認すべき点は、まずデータの保存場所(国内サーバーに限るか)と、暗号化対応(転送中・保存中ともにTLS/AES-256以上か)です。次に、アクセス制御(役割ベースのアクセス管理、多要素認証への対応)、ログ管理、定期的な脆弱性診断の実施体制を確かめておきましょう。

法令対応については、個人情報保護法・学校教育法・著作権法への対応方針を確認します。そのうえで、法改正があったときの対応フローが明確かどうかも聞いておくとよいでしょう。さらに、文部科学省が定める「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和5年版)」への準拠について、具体的な対応状況を確かめます。

ポイント

開発会社は、教育機関での導入事例と、セキュリティ・法令への対応力の2点で比べるのが判断の目安です。事例は、同規模・同種別の学校かどうかも合わせて見ておくとよいでしょう。

よくある失敗と対策

学校向けシステム開発の失敗と対策

事前に失敗パターンを知っておくと、多くのトラブルを未然に防げます。現場で報告されている失敗は、要件の不足と運用後の課題に大きく分かれます。

要件不足によるトラブル

最も多い失敗原因の一つが、要件定義の不足です。特に学校では「暗黙の業務ルール」が多く、担当者へのヒアリングだけでは要件を拾いきれないことがあります。例えば、成績処理に学校独自の計算ロジックがあったり、通知表のフォーマットが学年によって異なったりします。

対策として、ヒアリング対象を教員・事務職員・管理職・養護教諭など複数の職種に広げ、業務フローを実際に観察するシャドーイングを行うことをお勧めします。また、プロトタイプ(試作品)を早期に作って現場の担当者に確認してもらうと、要件の漏れや誤りを早く見つけられます。

要件定義書には承認のプロセスを設け、複数の担当者のサインオフを得ておきます。そうすることで、後から「そんな要件は聞いていない」といったトラブルを防げます。

運用後の課題と対応策

リリース後によくある課題は、教員のITリテラシーの差による活用の格差、システムの使い勝手の悪さによる現場の抵抗、予想外のトラブルへの対応の遅れなどです。特に年配の教員がシステムに馴染めず、紙での運用を並行させてしまう例は、多くの学校で報告されています。

これを防ぐには、導入前から現場の教員をプロジェクトに巻き込み、「使いやすさ」を最優先にした画面設計を行うことが欠かせません。さらに、段階的なロールアウトと並行して、チェンジマネジメント(変革管理)の取り組みも必要です。

具体的には、システムに習熟した「ICT推進リーダー教員」を各校に置き、ピアサポートの仕組みを作るのが効果的です。また、保守・サポート契約では、問い合わせの応答時間と障害復旧時間(RTO)を、SLA(サービスレベル合意書)として明確に取り決めておきます。

ポイント

要件不足と運用後の課題は、準備の段階でかなり防げます。要件は複数の職種にヒアリングし、導入前から現場の教員を巻き込むことが判断の目安になります。

まとめ

学校向けシステム開発まとめ

まず要件定義では、現場の関係者を巻き込み、個人情報保護法や教育情報セキュリティガイドラインへの対応要件を明確にします。そのうえで設計やテストを進めると、後の手戻りを減らせます。

また、開発フェーズではアジャイル手法で段階的にリリースし、多様なデバイスへの対応を設計に組み込みます。費用は、初期開発費用だけでなく、5年間のTCOを見据えた予算計画で捉えましょう。

開発会社は、教育分野の実績やセキュリティ対応力を重視して選び、複数社から見積もりを取ることをお勧めします。

GIGAスクール構想の推進により学校DXの重要性は高まっており、適切なシステム投資は、教員の働き方改革と教育の質の向上の両方に役立ちます。

この記事を参考に、自校に合ったシステム開発を進めてください。進める際は、準備から運用までを段階ごとに確認すると、整理しやすくなります。

  • 教育現場の業務、利用者、データ、権限を整理する
  • 機能、端末、連携、費用、セキュリティ、法令を比較する
  • 研修、導入、運用、改善まで定着計画を作る

▼全体ガイドの記事
・学校向けシステム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。