証券取引システムの開発会社は、取引商品、機能範囲、金融業務の運用体制を比べると、自社に合う取引基盤を選びやすくなります。
riplaと、実在する開発会社・ベンダー5社の計6社の得意領域、選定時の確認点、よくある質問を取り上げます。全体像は、完全ガイドにもまとめています。
▼全体ガイドの記事
・証券取引システム開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
証券取引システムの開発パートナー選びが重要な理由

証券取引システムには、一般的なWebサービス以上に、データの正確性や即時処理、障害復旧、法令対応が求められます。そのため、見積金額や画面デザインだけで会社を決めると、接続先、監査ログ、移行、制度改正対応の費用が後から膨らみやすくなります。
システムの範囲と責任の分け方
開発範囲は、機能と外部接続、運用基盤、障害時の責任に分けて考えます。担当の抜けを防ぐため、区分ごとに、どこまでを誰が受け持つかを決めておきます。
- フロントとOMS・ミドル:口座開設・本人確認、注文受付・余力やリスクの判定
- バックオフィス:約定照合、決済、会計、帳票
- 外部接続:取引所、清算機関、振替機関、銀行、相場情報会社
- 運用基盤:監査ログ、バックアップ、遠隔地のDR
- 責任分界:自社保有と外部委託の機能、障害時の復旧判断者を契約で明確化
金融業務とセキュリティを支える継続的な体制
金融庁の監督指針は、ログイン、出金、出金先口座変更などに、パスキー等のフィッシング耐性を持つ多要素認証を原則必須とする考え方を示しています(出典: 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」、令和8年7月)。認証の仕組みだけでなく、不正アクセス検知や取引通知、監査証跡まで提案を求めます。
さらに、アカウントロックや復旧訓練も提案に含めてもらうとよいでしょう。加えて、制度改正や攻撃手法の変化に合わせて保守を続けられる体制も重要です。
株式会社ripla|コンサルティングから開発まで一気通貫の支援
riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援する企業です。IT事業会社として社内DXを推進した経験を活かし、事業成果とシステムの定着を後押しします。
営業や顧客、生産、販売管理など、幅広い基幹システムの構築・導入実績があります。加えて、企業の業務要件に合わせて柔軟に対応できる体制を整えています。
特徴と強み
riplaは、業務整理、要件定義、実装を切り離さず、事業目的から運用定着まで支援します。証券取引の場合は、対象商品、顧客区分、取引フローを整理し、既存システムとの間でどこまでを誰が受け持つかを決められます。
既存パッケージや外部APIを活用し、独自業務に必要な部分を開発するハイブリッド構成も検討できます。過剰なスクラッチ開発を避けたい企業に適しています。
得意領域・実績
基幹システム構築で培った業務理解を活かし、証券関連の新規サービスや社内業務基盤の企画から伴走したい企業に向いています。
取引所級の超低遅延基盤を単独で置き換える場合は、専門ベンダーとの連携や担当範囲の確認が必要です。一方で、利用者向けの画面や業務管理、データ連携、周辺システムの改善を含めて柔軟に相談したい場合は、候補になります。
野村総合研究所(NRI)|証券総合バックオフィスの長期運用
野村総合研究所は、証券会社向けの総合証券バックオフィスシステム「THE STAR」を提供する大手IT企業です。THE STARは、口座開設から注文・決済、財務会計まで幅広い業務を扱います。
情報系やコンプライアンス、営業日報も扱えるほか、対面販売やインターネット取引、ホールセール、証券仲介業など、販売形態の違いにも対応します。公式情報では、2025年3月時点でTHE STARの利用社数は83社とされています(出典: 野村総合研究所「金融ITソリューションのミッション」)。
特徴と強み
THE STARは1974年の稼働以来、証券業務の変化に合わせて改良されてきました。導入形態は、共同利用型のASP、アウトソーシング、SI部品から選べます。
自社で全機能を保有する場合と、運用を外部化する場合を比べられます。また、残高更新や余力管理、受渡、報告書など、誤りが許されにくいバックオフィスを既存の業務知見とともに整えたい企業に向いています。
得意領域・実績
証券会社の基幹・バックオフィス刷新、ネット証券の口座管理、銀行の証券仲介基盤など、広い業務範囲と継続的な制度対応が必要な案件に向いています。
独自性の高い取引画面だけを短期間で作りたい場合は、対象範囲や導入条件が合わない可能性があります。そのため、標準機能と個別カスタマイズの境界、年間の制度改正対応費を確かめるとともに、データ移行をどこまで誰が担うかも確認してください。
株式会社トレードワークス|ネット証券取引と金融セキュリティに強み
株式会社トレードワークスは、金融ソリューションを中心に提供する企業です。製品には、インターネット証券取引、不公正取引監視、証券取引所売買端末の各システムがあります。そのため、株式、FX、CFDなど複数商品を扱うネット取引サービスのフロントや周辺機能を検討する際に候補となります。
特徴と強み
取引画面に加え、注文・約定や不公正取引監視、チャート、認証を金融業務の流れに組み込みやすい点が特徴です。
公式サイトは、2025年の証券会社向け多要素認証基盤「SpotPath」と、パスキー認証の導入事例を公表しています。また、2026年2月にはマネックス証券向け米国株取引サービスの新システム稼働開始も掲載しています(出典: トレードワークス「金融ソリューション製品情報」)。
得意領域・実績
ネット証券や銀行系証券を運営する企業、複数アセットの取引サービスを手がける企業、セキュリティ強化を急ぐ企業に適しています。フィッシング対策としてパスキーを標準化する場合、認証を別会社に任せるか、取引基盤と一体設計するか相談できます。
バックオフィス全体を刷新する場合は、口座や残高、決済、会計の各システムとの連携範囲を確認します。そのうえで、障害時の注文再処理も提案書に記載してもらうとよいでしょう。
富士通株式会社|大規模・高可用性の取引基盤の支援
富士通株式会社は、金融機関や社会インフラの大規模システムを長年支援してきた総合ITベンダーです。
証券取引では、取引所接続や市場系基盤、データセンターを含む全体設計を検討できます。ネットワークや運用監視も、同じ範囲で見られます。止めにくいシステムを構築したい場合に候補となります。
特徴と強み
証券取引では、平常時の処理速度に加え、注文集中時の処理能力を一体で設計します。そのうえで、サーバーや回線の冗長化、監視、災害対策を含め、復旧訓練まで設計対象にします。
東証のarrowhead4.0は2024年11月に稼働し、注文応答時間は約0.2ミリ秒と公表されています(出典: 日本取引所グループ「システム概要(arrowhead)」)。この数値は、一般的なWeb取引画面で求められる性能とは別の水準の話です。市場インフラ級では、非機能要件そのものが事業要件になることを示しています。
得意領域・実績
取引所や清算、相場配信に関わる案件、大手金融機関の基幹・インフラ更改など、可用性と運用体制を最優先する大規模案件に向いています。
取引フロントだけを小さく立ち上げる場合は、構成が必要以上に大きくなる可能性があります。そのため、基盤、業務アプリケーション、証券業務パッケージのどれを、どの会社が担当するかを確かめてください。
BIPROGY株式会社|資金証券管理とSaaS導入の支援

BIPROGY株式会社は、資金証券業務を管理する「Siatol-NE」を提供するITベンダーです。Siatol-NEは、国内証券と外国証券、資金、分析の4つのサブシステムで構成されます。
Siatol-NEは約定から決算までを支援します。顧客向けの取引画面というより、金融機関の中で使う市場系バックオフィスや資金・証券管理の整備に適しています。
特徴と強み
公式情報では、Siatol-NEをMicrosoft Azure上で稼働させる「Siatol-NE SaaS」も提供されています。商品追加はサブシステムやモジュール単位で進められます。そのため、国内証券から始めて外国証券や分析機能を追加する段階導入も検討できます。
Siatol-NEは、制度対応や当局報告、社内管理資料に必要な情報を検索・作表できる点も利点です(出典: BIPROGY「資金証券管理システム Siatol-NE」)。
得意領域・実績
銀行や金融機関の市場系業務、国内外の証券を扱う資金証券管理、既存システムからSaaSへの移行に向いています。
導入時は、顧客向けOMS・注文画面との連携と約定データの受け渡しを確認します。そのうえで、権限管理や保存期間、Azure障害時の復元目標も確かめます。個別帳票や独自承認フローは費用を増やすため、標準機能に業務を合わせられるか検証してください。
シンプレクス株式会社|デリバティブやトレーディング領域への対応
シンプレクス株式会社は、金融機関向けトレーディングやデリバティブ領域で実績を持つIT企業です。日本取引所グループのJ-GATE3.0 ISV一覧には、「SimplexBLAST」と「Stream」が掲載されています。そのため、先物・オプションを扱い、取引所接続や発注・訂正・取消を含む専門的なフロント・ミドル機能を検討する際に候補となります。
特徴と強み
デリバティブでは、商品ごとの注文条件や証拠金、リスク計算の扱いに専門性が必要です。さらに、取引所接続や約定後のポジション管理も欠かせません。シンプレクスは、取引支援のフロントだけでなく、金融機関の業務や収益モデルを踏まえたシステム企画を重視しています。
取引対象を明確にしたうえで、リアルタイムのリスク管理やアルゴリズム注文、監査ログ、障害時の再送制御を、どこまで標準化できるかを確かめます。
得意領域・実績
先物・オプションや機関投資家向けトレーディング、取引所接続、ミドルオフィスのリスク管理を重視する企業に向いています。J-GATE3.0のISV掲載は参考になりますが、自社要件への適合を保証しません。
対象市場や注文量、許容遅延をRFPに記載し、利用者区分、既存の決済・会計システムとの連携、運用体制も書き添えます。そのうえで、デモやPoCで確認します(出典: 日本取引所グループ「ISV一覧 J-GATE3.0」)。
証券取引システムのパートナー選びで確認すべきポイント

6社は得意分野が異なるため、知名度だけで順位を付けず、自社の取引商品とシステム範囲に照らして評価します。
RFPには機能要件と非機能要件を分けて記載し、各社が同じ前提で見積もれる状態を作ります。
自社と近い条件での実績確認
『金融機関の実績がある』という説明だけでは不十分です。実績は、どの商品を扱ったか(株式、FX、先物・オプションのどれか)と、顧客向けか社内の市場系業務かという観点で確認します。あわせて、取引所接続の有無も確かめてください。
同時注文数と稼働時間も確認します。NDA締結後に、同規模案件の導入期間や障害件数の傾向を聞き、制度改正対応、移行リハーサル、稼働後の一次対応も質問すると、実績の近さを判断しやすくなります。
技術力と専門性の評価(機能から運用まで)
画面のモダンさだけでなく、注文状態の一意管理や重複送信を防ぐ冪等性を確認します。さらに、約定・取消・部分約定の再処理と時刻同期も見ます。
データ暗号化や特権ID管理、監査ログも評価します。加えて、脆弱性診断、バックアップ、DRも見ていきます。
2026年時点では、パスキー等のフィッシング耐性を持つ多要素認証に加え、ログインや取引の振る舞い検知、異常通知、復旧後の事後検証まで設計できることが重要です。
プロジェクト管理体制と見積条件の確認
開発費の見積もりでは、工程ごとの配分と案件範囲を分けて確認します。
- 要件定義・設計:20〜30%
- 実装:30〜40%
- テスト:15〜20%
この配分は公開統計ではなく、金融システムの相場情報と人月モデルをもとにした初期検討用の推定です。
接続や移行、リハーサルによっても金額が変わります。DRや保守も金額を左右します。
小規模な取引フロントは1,000万〜3,000万円、中規模の取引基盤は3,000万〜1億円が目安です。一方で、フロントからバックまで一体構築する場合は1億〜5億円以上を想定します。各社には、初期費用や年間保守、クラウド費を分けて示してもらい、接続費やセキュリティ診断、移行費も明示してもらいます。
証券取引システムについてよくある質問
証券取引システムの開発では、「取引画面だけで足りるか」「既製サービスで対応できるか」といった疑問が生じやすくなります。発注前によくある質問に答えます。
証券取引システムの開発費用はいくらですか?
初期開発費は対象範囲により1,000万円台から5億円以上まで変わります。取引フロントだけなら1,000万〜3,000万円が目安です。
中規模のOMSや外部接続を含めると3,000万〜1億円になります。口座や決済などの基幹機能に加えて、会計、帳票、DRまで含めると、1億〜5億円以上が初期検討の目安です。
公開された定価はなく、価格は個別の見積りで決まります。見積りの前提として、商品や顧客数、ピーク注文数を定め、接続先や移行データ、SLAも定義したうえで、各社に見積りを取得します。
パッケージやSaaSとスクラッチ開発はどちらがよいですか?
標準的な口座管理、決済、帳票を早く安定させたい場合は、パッケージやSaaSが適しています。
独自商品や注文制御、超低遅延、独自の収益モデルが競争力になる場合は、スクラッチ開発が候補です。その場合、制度改正やテスト、移行、24時間運用の責任が自社に増えます。
バックオフィスは実績あるサービスを使い、フロントや独自機能はAPIやクラウドで開発するハイブリッド方式も、現実的な選択肢になりやすいです。
開発会社にセキュリティ要件をどう伝えればよいですか?
ログインや出金、出金先口座変更など、重要な操作ごとに認証と通知の要件を分けて伝えてください。注文や取消、権限変更についても、操作ごとに要件を分けて示します。
パスキー等のフィッシング耐性を持つ多要素認証やリスクベース認証、振る舞い検知を、RFPに記載します。さらに、監査ログやアカウントロック、脆弱性診断も書き添えます。
インシデント時の連絡期限と復旧目標も明記します。異常の確認、取引停止、再開の手順を運用担当者がどう実施するか、説明を求めます。
まとめ
開発会社を比べるときは、会社の規模だけでなく、対象商品や機能範囲、取引所や清算機関との接続を見ます。性能・可用性、セキュリティ、移行・運用体制も判断材料になります。
6社の得意領域は異なります。たとえば、riplaは一気通貫の業務支援、NRIは証券バックオフィス、トレードワークスはネット取引・認証に強みがあります。また、富士通は大規模基盤、BIPROGYは資金証券管理、シンプレクスはデリバティブ・トレーディングが得意領域です。
自社の取引範囲の整理
まず、対象商品や顧客区分、注文の入口、約定・決済の流れを書き出します。次に、接続先やピーク注文数を整理し、許容停止時間と必要な認証・監査要件も一覧にします。
標準機能、個別開発、外部委託の範囲を分けると、各社の提案と見積りを並べて比べられます。
初期費用と運用費を合わせた比較
初期開発費だけでなく、ライセンスやクラウド、接続、監視などの費用を含めた総保有コストで判断します。保守や制度改正への対応、脆弱性診断、DRも含めます。さらに、データ移行や終了時のデータ返却まで見ておく必要があります。
候補各社に同じRFPを渡し、標準機能と追加費用、SLAを比べます。そのうえで、障害時にどこまでを誰が受け持つか、稼働後の改善体制も確かめると、長く運用できるパートナーを選びやすくなります。
▼全体ガイドの記事
・証券取引システム開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
