中小企業向けERP開発の発注/外注/依頼/委託方法について

中小企業向けERPの発注・外注は、安い製品を選ぶことではなく、会計・販売・在庫などの対象業務を絞り、必要な範囲を明文化して段階的に委託することが成功の近道です。

ERPを外部に依頼するときは、クラウド製品の導入支援を頼むのか、既存ERPをカスタマイズするのか、独自システムを開発するのかで、費用も契約も大きく変わります。この記事では、発注形態の選び方、RFPと要件の整理、請負・準委任の違い、費用相場、委託先と見積書の比較方法まで、実務で迷いやすい点を順番に解説します。

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中小企業向けERPはどのように発注・外注すべきですか?

中小企業向けERPの発注計画を整理する担当者

中小企業向けERPの発注では、最初に「何を統合すれば経営上の効果が出るか」を決め、標準機能で足りる部分と個別開発が必要な部分を分けます。従業員数だけで製品や会社を決めるのではなく、拠点数、在庫や生産の複雑さ、既存システムとの連携、社内に運用担当者がいるかを見て委託範囲を決めることが重要です。

発注形態はクラウド導入、既存ERPの改修、スクラッチ開発から選びます

会計や請求を早く整えたい企業は、クラウドERPや複数の業務サービスを組み合わせ、初期設定・データ移行・操作研修を外注する方法が現実的です。販売・在庫・原価などに独自ルールが多い企業は、業務に近いパッケージを選んで連携や追加画面だけを開発する方法が候補になります。標準製品では競争力のある業務を表現できない場合に限り、独自開発を検討します。

製品ベンダー、販売代理店、SIer、導入コンサルを区別します

製品ベンダーはソフトウェアの機能やロードマップを持ち、販売代理店は導入支援や地域のサポートを担うことが多いです。SIerや開発会社は複数システムの連携、個別開発、移行、運用設計まで対応できます。導入コンサルタントは業務整理や製品選定を支援しますが、開発や保守を別会社へ再委託する場合もあります。提案を受ける前に、契約相手がどこまで責任を負うのか確認します。

最初から全社統合せず、効果の見えやすい業務から始めます

中小企業では、会計だけ、または販売・在庫だけを先に整え、月次決算日数や二重入力時間などのKPIを確認してから対象を広げる段階導入が向いています。最初から人事、生産、CRM、BIまで一度に含めると、要件の調整、マスタ整備、教育、受入テストが膨らみやすいです。発注書やRFPには、初回リリースの範囲と将来フェーズを分けて記載します。

発注前に業務要件とRFPをどのように整理しますか?

ERPの要件とRFPを整理する打ち合わせ

良い見積もりは、良い要件整理から始まります。システム名や機能名を先に並べるのではなく、現場で何が起きていて、どの指標を改善したいのかを言語化すると、委託先が異なる提案を同じ条件で比較しやすくなります。RFPは完成した仕様書でなくても構いませんが、対象範囲と前提条件を揃える役割を持たせます。

現行業務、データ、例外処理を棚卸しします

まず、見積、受注、発注、入荷、出荷、請求、入金、仕訳、月次報告までの流れを担当者と一緒に確認します。Excel、紙帳票、メール、既存の会計ソフト、ECやPOS、給与サービスなど、業務で使っているものを一覧にします。通常処理だけでなく、返品、分納、値引き、赤伝、締め後の修正、複数拠点間の移動などの例外処理も記録します。ここを省くと、開発後に「実際の業務で使えない」という追加要望が出やすくなります。

改善目標は、月次決算を何営業日早めたいか、棚卸差異をどの程度減らしたいか、請求漏れを何件以内にしたいか、転記作業を何時間削減したいかのように測れる形にします。ERP導入の価値は機能数ではなく、データの鮮度、二重入力の削減、担当者への依存の軽減、経営判断の早期化で評価します。

RFPには業務範囲と連携・移行・保守の条件を入れます

RFPには、導入目的、対象業務、利用部門、ユーザー数、拠点数、取引量、現行システム、必要な帳票、権限と承認、外部連携、移行データ、導入希望時期を記載します。会計ではインボイス制度や電子帳簿保存法への対応、販売・在庫ではロット、賞味期限、倉庫、返品、引当など、業種固有の条件も書きます。「使いやすい画面」のような抽象表現だけでなく、担当者が何ステップで処理できる必要があるかまで具体化します。

さらに、稼働後の問い合わせ窓口、障害時の連絡と復旧目標、バックアップ、データ出力、解約時の返却方法、アップデートの通知、追加開発の単価や承認方法をRFPに含めます。これらは初期見積もりに現れにくいものの、3〜5年の総費用と運用負担を左右する条件です。

MUSTとWANTを分けて初回リリースを守ります

MUSTは法令対応、決算、受注から請求までの基幹処理、在庫の正確性など、稼働に欠かせない要件です。WANTは高度な分析、特殊な帳票、細かな画面変更、将来のAI活用など、効果と費用を見ながら追加する要件です。両者を分けておくと、提案会社が標準機能で対応する部分とオプション開発を分けて提示できます。

非機能要件も後回しにしません。応答時間、同時利用者数、稼働時間、権限、操作ログ、MFA、バックアップ、災害時の復旧、データの保管場所を決めます。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」は、ランサムウェアやサプライチェーン、人材不足を踏まえた段階的な対策を示しています。ERPの委託先にも、最小権限、復旧訓練、委託先管理を確認します(出典: IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」、2026年確認)。

発注形態と契約形態はどのように選びますか?

ERPの発注形態と契約条件を比較する担当者

中小企業向けERPの発注形態は、標準機能を活用するほど短期・低リスクになりやすく、独自開発を増やすほど自由度と引き換えに費用・期間・保守負担が増えます。契約は、成果物を完成させる請負と、作業や専門知識の提供を受ける準委任を使い分け、要件の確定度に合わせて段階ごとに設計します。

クラウドERP、パッケージ、カスタム開発を比較します

クラウドERPはサーバー管理や制度改正への対応を抑えやすく、短期間で始められる点が魅力です。一方で、月額料金、ユーザー追加、データ保管場所、APIの制限、サービス障害時の業務継続、解約時のデータ返却を確認する必要があります。パッケージは業務に合う標準機能を利用しやすい一方、バージョンアップやサーバー運用の責任分界を確認します。

既存ERPのカスタマイズは、マスタや操作に慣れた従業員の負担を減らせる反面、標準アップデートの妨げになることがあります。スクラッチ開発は独自業務を表現しやすい反面、要件定義から保守まで自社が長期的に関与しなければなりません。競争力の源泉でない業務は標準に寄せ、独自性が必要な部分だけを周辺システムや追加機能に切り出す考え方が有効です。

一社への一括委託と複数社の分担を使い分けます

一社へ一括委託すると、業務整理、製品選定、開発、移行、研修、保守の窓口をまとめられます。社内にIT担当者が少なく、複数ベンダーの調整が難しい企業には向いています。ただし、提案会社の製品や得意領域に選択肢が偏ることがあるため、再委託先、保守体制、データの所有権を契約で確認します。

複数社に分ける場合は、製品ライセンス、導入コンサル、連携開発、データ移行、運用保守の責任を分けます。専門性を活かしやすい一方、障害の原因が複数サービスにまたがったときの切り分けが難しくなります。全体アーキテクチャと連絡窓口を担う会社を一社置くか、自社がプロジェクトオーナーとして管理できる体制を用意します。

請負、準委任、段階契約の違いを確認します

請負契約は、合意した仕様の成果物を完成させることが中心です。要件が固まっている開発や、明確な設定作業に向きますが、途中で仕様を変えると追加費用や納期変更が発生します。納品物、検収基準、瑕疵対応、著作権、再委託の条件を明記します。

準委任契約は、業務分析、PM、要件定義、技術支援など、専門的な作業を一定期間依頼する形です。業務理解が進みながら要件を調整できますが、完成したシステムの結果を保証する契約とは限りません。要件定義を準委任、確定した開発を請負、稼働後の改善を準委任にする段階契約は、ERPのように不確実性が残る案件で検討しやすい形です。

中小企業向けERPの外注はどのような手順で進めますか?

ERP導入の進行計画を確認するプロジェクトメンバー

発注先が決まった後も、ERP導入は自動的に進みません。経営層の意思決定、現場の参加、データ移行、受入テスト、教育を一つの計画に入れ、各段階の完了条件を決めます。特に中小企業では担当者が通常業務と兼務するため、会議体と判断者を小さく明確にすることが大切です。

候補会社を絞り、提案内容と現場理解を確認します

候補は、RFPへの回答を受けられる3社程度に絞ると比較しやすいです。会社の知名度だけでなく、同じ業種や近い取引形態の導入経験、担当予定者の経歴、データ移行の実績、導入後の保守窓口を確認します。提案書が製品機能の説明ばかりで、現行業務の課題や移行リスクに触れていない場合は注意が必要です。

可能であれば、営業担当だけでなく、要件定義と開発を担当するメンバーにも参加してもらいます。現場の質問に対して「標準機能」「設定」「連携」「追加開発」「運用変更」のどれで解決するかを説明できる会社は、見積もりの前提が明確になりやすいです。

要件定義と設計で標準機能・追加開発の境界を決めます

要件定義では、業務フロー、画面、帳票、権限、マスタ、連携、移行データを具体化します。製品のデモを見ながら、現場の処理を標準機能に合わせられるかを検討します。標準に合わせる業務変更が可能か、どうしても残すべき例外かを判断し、個別開発の数を抑えます。

設計段階では、画面モックや帳票サンプル、連携項目一覧、データ変換ルールを確認します。開発費を抑えるために仕様を曖昧にするのではなく、曖昧な部分を論点として一覧化し、誰がいつ決めるかを明確にします。仕様変更の受付、影響調査、承認、見積もりの手順もこの段階で合意します。

移行、テスト、教育、並行稼働を本番前に完了させます

データ移行では、顧客、仕入先、商品、勘定科目、在庫、過去取引のどこまでを移すかを決めます。古いExcelの重複や表記ゆれをそのまま移行すると、新ERPでも検索や集計が乱れます。移行前のクレンジング、変換後の件数照合、責任者による承認を計画に含めます。

テストは、機能単体だけでなく、受注から出荷、請求、入金、仕訳、月次締めまでの業務シナリオで行います。現場担当者が実データに近いサンプルで操作し、受入基準を満たしたか確認します。研修は一度の説明会で終わらせず、役割別の操作手順、問い合わせ先、障害時の代替手順を用意し、必要なら旧システムとの並行稼働期間を設けます。

稼働後の改善と保守まで発注範囲に含めます

稼働初期は、入力ミス、権限設定、データ連携の遅延、帳票の不足などが見つかります。問い合わせの優先度、回答時間、障害時のエスカレーション、月次の改善会議を保守契約に入れておくと、現場の不満を放置しにくくなります。保守費用に含まれる作業と、別途見積もりになる追加開発を区別します。

導入前に定めたKPIを30日、90日、半年などの節目で確認します。二重入力が減ったか、月次決算が早くなったか、在庫差異が改善したかを見て、効果のある領域から次の機能を追加します。AIやBIを急いで導入するより、マスタとデータの品質を整えたうえで、需要予測や異常検知などの用途を選ぶほうが定着しやすいです。

中小企業向けERPの費用相場とコスト内訳はどの程度ですか?

ERPの初期費用と運用費用を確認する担当者

ERPの費用は、製品料金だけでなく、初期設定、要件定義、追加開発、データ移行、連携、研修、保守を含めて見ます。全国一律の公定価格はなく、業務範囲、ユーザー数、拠点数、取引量、データ移行の難しさ、連携数で変わります。以下は2025〜2026年に公開された料金と業務システム相場を組み合わせた発注時の目安であり、最終金額は要件定義後の個別見積もりで決まります。

方式別の初期費用と期間をレンジで把握します

会計や請求など1領域から始めるクラウドERPは、サービス単位で月額5,000円〜4万円程度が一つの目安です。複数モジュール、利用者、連携を含めると月額1万円〜10万円超になる場合もあります。公開料金の例では、freee会計の法人向け年払いプランに月額5,480円〜39,780円の区分があり、OBCの勘定奉行クラウドにも1ライセンス月額5,000円〜の料金例があります。ただし、これはソフトウェア利用料の例で、導入支援やデータ移行の費用を含みません(出典: freee公式料金ページ、OBC公式料金ページ、2026年確認)。

販売・在庫・会計の部分刷新は、初期300万円〜1,500万円程度、期間3〜6か月程度が目安になります。複数業務や複数拠点を統合する中規模ERPは、初期1,500万円〜4,000万円程度、6か月以上を見込むことがあります。独自の生産、原価、承認、複雑な既存連携を含むスクラッチ開発は、800万円〜数千万円以上、案件によっては1年以上かかることがあります。これらは類似する業務システムやERP導入の公開情報から整理した推定レンジで、個別案件の価格を保証するものではありません。

見積書では要件定義、開発、移行、保守を分けて見ます

費用の構成は、要件定義、設計、設定・開発、テスト、移行、研修、プロジェクト管理、保守に分けて確認します。一般的な業務システムの見積もりでは、要件定義が約10%、設計が10〜20%、実装が40〜60%、テストが10〜20%という配分が参考になりますが、ERP導入では製品ライセンス、設定、移行、教育の比率が案件ごとに変わります。割合だけで良し悪しを判断せず、作業内容と成果物を確認します。

開発会社の人月単価は50万〜150万円程度、上流やPM、ERPの専門エンジニアは月80万〜120万円程度が目安として示されることがあります。これは職種、経験、契約期間、常駐の有無で変わるため、単価の安さだけで選びません。保守運用は初期開発費の年5〜20%程度を予算化し、法改正、クラウド更新、問い合わせ、障害対応、追加帳票が含まれるかを確認します。

補助金と3〜5年のTCOを別々に確認します

初年度の安さだけでなく、3〜5年間の総保有コストで比較します。初期費用、月額・年額ライセンス、ユーザー追加、ストレージ、API利用、保守、教育、サーバーやネットワーク、社内担当者の工数を足し、将来フェーズの追加開発も別枠で見積もります。解約時のデータ出力に費用がかかるか、契約更新で料金が変わるかも確認します。

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、対象プロセスが1つ以上の場合に5万円以上150万円未満、4つ以上の場合に150万円以上450万円以下、補助率は原則2分の1以内とされています。ソフトウェア購入費や最大2年分のクラウド利用料に加え、登録されたITツールの導入設定、研修、保守などが対象になり得ますが、登録ITツールとIT導入支援事業者を通じた申請が条件です。交付決定前に発注・契約しないこと、採択や実績報告が必要なことも含めて確認します(出典: デジタル化・AI導入補助金2026公式「通常枠」、2026年)。

委託先の選定と見積比較では何を確認しますか?

ERPの委託先と見積書を比較するチーム

見積金額を横に並べるだけでは、ERPの提案は比較できません。会社ごとに標準機能の解釈、対象範囲、移行件数、研修回数、保守の定義が違うため、同じ前提にそろえてから金額を比べます。提案書の分かりやすさと、リスクや除外事項を正直に書いているかも重要な選定材料です。

実績だけでなく担当者と導入後の体制を見ます

実績を確認するときは、有名企業の導入件数だけでなく、自社に近い規模、業種、拠点数、取引量の事例を見ます。導入前の課題、対象範囲、期間、移行方法、現場教育、稼働後の成果が説明されている事例は参考になります。たとえばOBCの公式事例では、従業員50名以下の建設業で経理作業を月40時間削減した例や、起票・月次決算にかかる時間を約50%削減した例が紹介されていますが、製品、業種、運用条件が異なるため、自社でも同じ成果が出ると断定しません(出典: OBC公式導入事例、2026年確認)。

提案時には、稼働後に誰が問い合わせを受けるか、担当者が退職したときに引き継げるか、再委託先を含む開発体制がどうなっているかを聞きます。担当予定者を曖昧にしたまま契約し、契約後に経験の浅いメンバーへ交代することがないよう、重要な役割と変更時の通知条件を決めておきます。

見積書を同じ項目に分解して比較します

各社の見積書は、ライセンス、要件定義、設定、追加開発、連携、データ移行、テスト、研修、プロジェクト管理、保守、旅費や環境費に分解して比較します。「一式」と書かれた金額には、対象画面数、帳票数、連携本数、移行件数、研修時間、修正回数、検収条件を質問します。見積もりの前提が違う場合は、最安値を選ぶのではなく、同じ条件で再見積もりを依頼します。

特に確認したいのは、標準機能で対応する部分、設定で対応する部分、追加開発する部分、業務を変えて対応する部分です。追加開発の単価、仕様変更の見積もり方法、納期延長の条件、保守で対応する範囲を確認します。月額料金だけの提案では、初期設定やユーザー追加、外部連携、データ出力の料金が抜けていないかを見ます。

追加費用、ベンダーロックイン、定着不足を防ぎます

追加費用を防ぐには、要件の優先順位と変更管理を合意し、予備費を含む社内予算を持ちます。ベンダーロックインを抑えるには、データを標準形式で出力できるか、APIや連携仕様を文書化して引き渡せるか、解約時にデータを返却してもらえるかを契約に入れます。独自開発のソースコード、設定情報、マスタ定義、操作手順書の権利と利用範囲も確認します。

定着不足を防ぐには、経営者だけで決めず、経理、営業、購買、倉庫などの代表者を要件定義と受入テストに参加させます。現場の例外をすべてシステムに追加するのではなく、残す例外と廃止する運用を話し合います。提案会社が「すべてカスタマイズできます」とだけ説明する場合は、アップデートへの影響、保守費用、将来の担当者でも運用できるかを追加で質問します。

クラウドERPとAI連携の最新動向を確認する担当者

2026年の発注では、クラウドかオンプレミスかだけでなく、標準機能への適合、外部サービスとの連携、AIの使い道、制度対応、セキュリティを一体で確認します。流行の機能を足すことが目的になると、費用と運用が複雑になるため、自社のKPIに結び付く範囲から採用します。

市場ではFit to Standardとデータ連携が重視されています

ノークリサーチの2025年調査は、年商500億円未満の企業を対象に、中堅・中小向けERPの導入状況やニーズを調べています。国産ERP、クラウドERP、パッケージとSaaSの併用、外部システム連携、ワークフロー、AIによる集約や異常検知が比較の論点になっています(出典: ノークリサーチ「2025年 中堅・中小向けERP市場の導入シェアと注目すべきニーズ動向」、2025年)。発注時も、単一製品ですべてを置き換えるかではなく、ERPを中核に周辺サービスをどう連携するかを検討します。

Fit to Standardは、ERPの標準業務に自社を合わせる考え方です。短期・低コストになりやすく、アップデートを受けやすい利点がありますが、法令や取引上どうしても必要な独自処理は残します。提案会社には、標準機能を使う場合の業務変更、追加開発する場合の保守負担、周辺サービスへ切り出す場合の連携費用を並べて提示してもらいます。

制度対応とセキュリティをRFPの必須条件にします

会計系ERPでは、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応できるかだけでなく、制度改正時のアップデート、証憑と仕訳の紐付け、検索・保存、権限と操作ログを確認します。国税庁は2025年度税制改正に関連して、請求・決済の電子データを変更せず保存し、仕訳をデータ連携で記録するデジタルシームレスな処理を説明しています。製品の対応表だけでなく、自社の業務手順で要件を満たすかを確認します(出典: 国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」、2025年)。

セキュリティでは、MFA、最小権限、管理者アカウントの分離、通信と保存データの暗号化、ログ監視、バックアップ、復旧テスト、脆弱性対応、委託先や再委託先の管理を確認します。クラウドを選ぶ場合は、障害時の復旧目標、サービスの稼働実績、データセンター、サポート時間、解約後の返却形式を質問します。小さな会社ほど「任せれば安全」と考えず、責任分界を契約に残します。

AIや連携は使う目的とデータの扱いを決めてから追加します

AIは、請求書の読み取り、仕訳候補、異常な在庫や売上の検知、問い合わせ対応、予測分析など、対象業務を限定して検討します。入力データの正確性、AIの出力を誰が確認するか、学習への利用有無、個人情報や機密情報の扱い、誤判定時の訂正方法をRFPに書きます。「AI搭載」という表現だけで加点せず、作業時間やミスをどれだけ減らす機能かを確認します。

EC、銀行、給与、人事、CRM、BI、POSなどを連携する場合は、データの正本をどこに置くか、更新タイミング、エラー時の再送、項目の変換、APIの利用料を決めます。SAPの中堅・中小企業向けクラウドERPでも、財務やサプライチェーン、人事から始めて必要な機能を段階的に追加する考え方が示されています。自社も初回の連携を重要なものに絞り、拡張可能な設計を委託先へ求めます(出典: SAP「中堅中小企業の成長を支えるクラウドERP」、2026年確認)。

よくある質問(FAQ)

中小企業向けERPの発注に関する質問を確認する担当者

ここでは、中小企業向けERPを発注・外注するときに多く寄せられる質問へ回答します。費用だけでなく、発注のタイミング、開発会社の選び方、補助金の扱いまで、初回相談前に確認したい論点をまとめます。

中小企業向けERPの発注予算はどのくらい用意すればよいですか?

1領域のクラウド利用なら月額5,000円〜4万円程度、複数サービスや連携を含めると月額1万円〜10万円超が目安になります。販売・在庫・会計の部分刷新では初期300万円〜1,500万円程度、複数業務の統合では初期1,500万円〜4,000万円程度を一つの検討レンジにします。ただし、ユーザー数、拠点、移行、追加開発、保守で変動するため、RFPを作って複数社へ同じ条件で見積もりを依頼します。

ERPの開発会社と製品ベンダーはどちらに相談すべきですか?

標準機能や料金、ロードマップを知りたい場合は製品ベンダーや販売代理店が相談先になります。複数製品の比較、既存システムとの連携、独自業務の整理、移行、運用設計まで必要なら、SIerや開発会社、導入コンサルタントを候補にします。製品の販売だけでなく、要件定義から稼働後まで誰が責任を持つかを確認して選びます。

RFPは専門会社に作成してもらうべきですか?

社内で現行業務、課題、対象範囲、利用者、連携、移行条件を整理できれば、簡易なRFPから始められます。業務が複雑で、製品選定の中立性を保ちたい場合や、複数部門の意見をまとめにくい場合は、導入コンサルタントへ要件整理だけを委託する方法があります。作成を外注しても、業務上の優先順位と受入基準は自社が決めます。

補助金を使う場合はいつ発注すればよいですか?

補助金の公募要領と申請スケジュールを先に確認し、原則として交付決定前に発注・契約・支払いを進めないようにします。デジタル化・AI導入補助金2026は、登録ITツールとIT導入支援事業者を通じた申請が条件で、対象経費や実施期間も枠によって定められています。採択されることを前提に全額を予算から外すのではなく、不採択時の資金計画と実績報告まで含めて判断します。

まとめ

中小企業向けERPの発注計画を振り返る担当者

中小企業向けERPを発注・外注するときは、製品の価格だけでなく、自社の業務課題、初回リリースの範囲、移行と連携、現場教育、稼働後の保守までを一つの計画として比較します。クラウド導入、既存ERPの改修、スクラッチ開発にはそれぞれ適した条件があり、標準機能に合わせられる部分と独自開発すべき部分を分けることが費用とリスクの抑制につながります。

発注前にRFPと比較軸を整えます

最初に現行業務とKPIを棚卸しし、MUSTとWANTを分けます。RFPには、業務範囲、ユーザー数、拠点、連携、データ移行、権限、セキュリティ、SLA、データ返却、追加費用の条件を記載します。見積書は「一式」のまま比べず、要件定義、設定、開発、移行、研修、保守に分け、3〜5年の総額で比較します。

段階導入と稼働後の定着まで見据えて委託先を選びます

ERP導入の成否は、契約書を締結した時点ではなく、現場が日々使い、経営に必要な数字が早く正確に見えるようになった時点で決まります。自社に近い導入事例と担当者の体制を確認し、まずは効果の見えやすい領域から発注してください。制度対応や補助金の条件は更新されるため、申請前には必ず公式情報と契約条件を確認します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。