加入者管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

加入者管理システムの発注は、発注範囲と要件を整理し、技術リスクを検証してから、開発・移行・運用を順に委託する流れで進めます。

この順で進めると、責任の抜けや追加費用を抑えられます。全体像は、下の完全ガイドでも確認できます。

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・加入者管理システム開発の完全ガイド

加入者管理システムの発注範囲

加入者管理システムを中心に、BSS型の契約・顧客管理と通信コア型の加入者データ管理を示す図。
業務機能と通信コアの境界を先に決めると、見積の前提をそろえやすくなります。

加入者管理システムは、BSS型の契約・顧客管理だけを対象にするか、通信コアの加入者データ管理まで含めるかで、発注範囲が大きく変わります。

範囲を分けないまま見積を頼むと、各社が前提にしている範囲がそろいません。こうなると、安い提案を選んだあとに、機能の不足や追加費用が起きがちです。

BSS型と通信コア型の切り分け

BSS型が扱うのは、契約者情報、料金プラン、注文、請求、問い合わせです。SIM在庫や管理者画面も対象に含まれます。

一方、通信コア型は、認証・認可と接続可否を扱います。さらに、APNやQoS、ローミング、在圏・セッション情報も対象になります。

4GではHLR/HSS、5GではUDMとUDRが中心になります。また、通信コアは顧客マスタに比べて、可用性と即時性が強く求められます。

発注書やRFPには、業務機能、ネットワーク機能、外部接続の範囲を分けて書きます。

  • BSS:契約者・回線・SIM/eSIMの管理
  • 接続:MNOや通信コアとのプロビジョニング
  • 保有機能:HLR/HSS/UDM/UDRを自社で保有するか
  • 料金・請求:既存システムに任せる機能

MNO・MVNO・ローカル5Gごとの外注範囲

外注範囲は、事業形態と、加入者データを管理する主体によって分かれます。

  • MNO・フルMVNO:加入者データとネットワーク接続を自社で管理する範囲が広い
  • ライトMVNO等:通信機能を外部に任せる場合は、契約・料金・顧客画面とMNOの開通API連携が中心になることがある
  • ローカル5G・IoT:電話番号より端末識別子、拠点、SIM在庫、利用許可、閉域接続、交換履歴が重要

フルMVNOは、HLR/HSSを自ら運用し、MNCやIMSIを保有する事業形態です(出典: IIJ「フルMVNOとは」、2019年、2026年閲覧)。そのため、開通電文やSIM/eSIMの発行、障害の切り分けについて、誰が受け持つかを定める必要があります。

ローミングや認証鍵についても、責任の範囲を分けておきます。外注費を抑えるには、まず自社の事業区分とデータの正本を決めることが出発点になります。

ポイント

BSS型だけを対象にするか、通信コアの加入者データ管理まで含めるかを、最初に決めます。範囲が違う見積は前提がそろわないため、比べる前に範囲をそろえておく必要があります。

発注・外注前に決める業務とデータ

RFP前に整理する業務、正本データ、接続先、非機能要件を並べたチェックリスト図。
4領域をそろえておくと、連携漏れや見積前提のずれを見つけやすくなります。

RFPを作る前に、現場の業務を契約受付から障害対応までの流れ(ライフサイクル)に沿って整理します。そのうえで、操作担当、更新データ、外部連携、失敗時の処理も決めておきます。

契約受付から停止・解約までの業務の分解

契約から停止・解約まで、処理の順番と、失敗したときの動きを決めておきます。

  1. 新規契約:本人確認後に契約番号を採番し、SIM/eSIM、料金プラン、利用制限を登録して開通要求を送る
  2. 応答管理:外部側が成功を返した場合だけ「利用中」にするか、タイムアウト時は「確認中」に留めて再送するか決める
  3. 不整合防止:二重開通や、画面上は開通済みでもネットワーク未登録となる状態を防ぐ
  4. 停止・再開・解約:即時か予約か、未払い・不正利用・本人申請のどれが起点かを決める
  5. 停止順:請求と通信のどちらを先に止めるか定める

業務、ネットワーク、請求の担当者を要件定義に加えるとともに、サポートやセキュリティの担当者も入れておくと、手戻りを減らせます。

正本データと接続先の一覧

データと接続先を洗い出し、正本と連携条件を一覧にします。

  • 識別子:契約者ID、回線ID、IMSI、MSISDN、ICCID
  • 加入者情報:eSIMプロファイル、料金プラン、利用量、速度制御、APN、QoS
  • 運用情報:ローミング許可、認証情報、請求プロファイル、端末識別子、在圏・セッション
  • 接続先:CRM、注文、料金計算、請求・決済、本人確認、SIM在庫、MNO、HLR/HSS/UDM/UDR、監視、分析
  • 接続条件:正本・権限、API/メッセージ、通信・認証方式、タイムアウト、再送、冪等性キー、エラーコード、監査ログ

見積の前提に連携条件が入っていないと、開発を進めたあとに連携費用が増える可能性があります。

非機能要件とセキュリティの数値基準

性能、可用性、セキュリティの条件は、数値で示したうえで、検証方法も決めておきます。

  • 処理量:加入者数、通常・繁忙時の開通件数、認証ピーク、同時接続数
  • サービス水準:応答時間、稼働率、RTO、RPO、データ保持期間、監視時間帯
  • 障害試験:片系障害、ネットワーク分断、外部API遅延、DB復旧、再送集中時の合格条件
  • 情報保護:個人情報、通信の秘密、本人確認記録を、認証鍵による権限分けで守る

また、携帯音声通信事業者には、本人確認記録を役務提供契約の終了日から3年間保存する義務があります(出典: e-Gov法令検索「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」、2026年現行法)。保存期間も要件に含め、検収で確かめられるようにします。

最小権限や多要素認証、鍵の保管、ログの改ざん防止を要件に入れ、再委託先からのアクセスも条件にします。特に、バックアップの暗号化と退職者の権限削除は、検収の対象にします。

ポイント

業務の流れ、正本データ、接続先を先に整理しておくと、RFPの内容がぶれにくくなります。非機能要件は数値で示し、検証方法まで決めておくと、見積の前提をそろえやすくなります。

発注形態の選び方(パッケージ・クラウド・スクラッチ)

発注形態は、初期費用だけで決めず、標準機能、拡張性、運用責任を合わせて見て選びます。委託する範囲がBSSだけか、通信コアと24時間運用まで含むかによって、適切な組み合わせも変わります。

通信キャリア向け製品・パッケージの場合

キャリア向け製品は、標準機能と導入実績を活用できます。標準への準拠や障害対応の知見も得やすいため、短期導入を目指す案件に向いています。

  • 標準機能:HLR/HSS、UDM/UDR、認証、プロビジョニング、冗長化
  • 料金体系:ライセンス、加入者数、CPU、接続先、保守時間、追加モジュール
  • 動作確認:デモ画面だけでなく、契約変更や開通失敗時の再送、4G・5G併存、地理冗長、移行、監査ログも対象にする
  • 保守条件:標準機能に合わせる業務、カスタマイズ範囲と保守責任、将来の更新方法

初期見積だけでは、総額を判断できません。そのため、標準機能で対応する業務とカスタマイズの範囲を分けて、提案書に書いてもらいます。

クラウド・マネージドサービスの場合

クラウドやマネージドサービスは、設備の調達や一部の監視を任せられるため、立ち上げを早めやすい方式です。

  • 拡張性:加入者数の増加に応じてリソースを拡張しやすい
  • 接続とデータ:保管場所、鍵管理、MNO接続、通信遅延を契約前に確認
  • 責任と権限:障害分界、終了時の返却、プロファイル変更、本番アクセス、緊急変更記録をSLA等に記載
  • 追加料金:API、転送、監視、バックアップ、検証環境、サポート

「クラウドだから安全」「マネージドだから運用は不要」と考えると、監査証跡や権限管理が抜けがちになります。そこで、基本利用料だけでなく、個々の追加料金と障害時の責任の分かれ目も確かめておきます。

スクラッチ開発・共同体制の場合

独自の料金体系や特殊な加入形態、既存のCRM・請求基盤との複雑な連携がある場合は、スクラッチや製品の拡張が候補になります。

  • 開発範囲:独自性が必要な業務層を作り、コアは実績ある製品・サービスを使う
  • 自作の負担:認証、標準IF、高可用性、性能試験、鍵管理まで担うと開発後の責任が大きい
  • 共同提案:通信コア製品ベンダー、国内SI、MVNO運用に詳しい事業者を組み合わせる
  • 責任分界:窓口、設計、障害切り分け、ライセンス、再委託、成果物の帰属を明記

コア機能は製品やサービスと組み合わせることで、リスクと費用を抑えられる場合があります。また、複数社で体制を組む場合でも、全体の受入責任は発注者が負います。

加入者管理システム開発の外注の進め方

現行調査・RFP作成から要件定義・PoC、段階開発・移行、総合試験・リリース・運用移管へ進む流れ図。
技術リスクを確かめてから開発へ進み、移行と運用引き継ぎまで計画に含めます。

現行調査と要件整理を先に進め、PoCで技術リスクを確かめてから本開発へ移るのが、安全な進め方です。

MNO接続、既存HSSとの共存、eSIM開通は、資料だけでは判断しにくい項目です。さらに、請求連携やピーク性能も、資料だけで見極めるのは難しい項目です。

現行調査とRFP作成の先行発注

業務やネットワークの情報が足りない場合は、現行調査、業務整理、RFP作成を準委任契約で先に発注します。

  • 成果物:業務フロー、関連図、データ・連携先一覧、非機能要件、移行方針
  • 比較準備:運用体制、概算予算、提案依頼書を作り、複数社の見積前提をそろえる
  • 規模・方式:加入者数、月間・ピーク開通数、認証要求数、4G/5G、既存システム、MNO仕様
  • 移行・運用:移行件数、希望時期、運用時間、SLA、RTO/RPO、セキュリティ基準

提案者には、対象範囲、除外、前提、追加費用を分けて回答してもらいます。こうすると、各社の見積を同じ前提で比べられます。

要件定義とPoCによる技術リスクの低減

要件の成功条件とPoCの検証対象は、実際に試せる形で定めておきます。

  • 成功条件:本人確認完了後に採番し、指定時間内にSIM/eSIM情報を登録する
  • 開通要求:MNOまたは通信コアへ一度だけ送り、応答を監査ログに残す
  • 失敗処理:要求を一度だけ送る条件、再送、取消、手動復旧
  • PoCシナリオ:匿名化データを使い、開通・停止・再開・変更、認証失敗、APIタイムアウト、重複要求を試す
  • 障害確認:片系障害とデータ復旧を検証

5GではUDMが加入者・認証データを利用し、そのデータをUDRに保管できます(出典: ETSI TS 23.501 V19.5.0、3GPP Release 19、2026年1月)。

技術検証の費用と成果物を本開発の前に合意しておくと、大規模な設計変更を避けやすくなります。

段階開発と移行の一体計画

開発する機能と既存環境からの移行を、優先順位に沿って段階に分けます。

  • 開発単位:契約・加入者マスタ、開通・停止・プラン、請求・CRM連携
  • 追加機能:5G、ローミング、IoTも段階に分け、優先順位を付ける
  • MVP:限定した加入者数・料金プランで稼働し、開通と監査を確認後に拡大
  • 既存移行:旧HSS/BSSを止めず、新UDM/UDRや契約管理を並行稼働する案を検討

Nokiaの資料では、既存のHSS/HLRや4G向けDBを残したまま、5G向けUDRを並行して導入する案が示されています(出典: Nokia「5G Non-Standalone to 5G」、2026年閲覧)。

移行の単位と切り替えの条件、ロールバック、旧システムの廃止時期は、契約書と受入計画に含めておきます。

総合試験・リリース・運用移管までの委託範囲

受入試験から運用移管までを発注範囲に含め、合格条件と納品物を定めておきます。

  • 業務試験:契約受付から開通、課金、停止、解約、監査まで通して確認
  • 性能・障害試験:ピーク開通・認証、外部断、DB障害、片系停止、復旧、監視通知
  • 試験条件:データ、環境、実施者、合格基準、修正期限を事前に決定
  • 納品物:設計、API、移行、監視、障害切り分け、復旧、鍵・証明書更新、脆弱性、教育資料

一次・二次対応、MNOやクラウドへの連絡、重大障害の報告時間は、SLAに定めておきます。

ポイント

業務やネットワークの情報が足りなければ、現行調査とRFP作成を先に発注します。PoCで技術リスクを確かめ、その結果を見てから本開発へ進みます。

契約形態の使い分け(準委任と請負)

加入者管理システムの発注には、要件がまだ固まっていない工程と、納品物や合格基準を決められる工程が混在します。そのため、全工程を同じ契約にせず、要件整理は準委任、本開発の一部は請負、運用改善は準委任と分けられます。

要件整理・技術検証の準委任契約

準委任は、専門知識や作業の提供を受ける契約です。要件が固まる前の検討に使いやすい形といえます。

  • 対象工程:現行調査、業務整理、RFP、アーキテクチャ検討、PoC、PMO
  • 未確定要件:加入者数やMNO接続が未確定なら、請負では変更や責任問題が起きやすい
  • 成果物:月次の業務フロー、課題一覧、設計判断記録、PoC結果、RFP案、リスク表
  • 契約条件:稼働時間、担当者、報告、秘密保持、再委託、知的財産、責任範囲

準委任では、状況に応じて検討を深めていけます。発注者が作業の進め方に関わる場合は、その責任の所在も明確にしておきます。

本開発の請負の成果物と検収条件

請負は、合意した仕様に基づく納品物と検収条件を決められる工程に向いています。

  • 成果物:システム、設計書、試験結果、移行ツール
  • 受入条件:機能別シナリオ、性能、可用性、ログ、セキュリティ試験、移行件数
  • 未解決障害:許容範囲を検収基準に定める
  • 変更管理:受付、影響・工数、納期、承認者、緊急判断、標準機能変更か追加開発か

「加入者管理機能一式」だけでは合格かどうかを判断しにくく、仕様変更を曖昧なままにすると、口頭の依頼が積み重なっていきます。さらに、料金や本人確認のルール、MNO仕様の変更も、別に切り分けて扱います。

再委託・鍵管理・障害対応の責任範囲

複数の委託先が関わる場合は、再委託の条件と障害対応の責任を、契約で明確にしておきます。

  • 関係会社:製品、クラウド、運用、試験会社が関与する場合を想定
  • 再委託:事前承諾、所在地・アクセス範囲、秘密情報、監査協力、終了時の削除・返却
  • 要員管理:鍵・本人確認記録を扱う担当者の身元確認と権限レビュー
  • 障害対応:一次受付、重大度判定、MNO・クラウド連絡、暫定復旧と報告の期限

開通の不整合や誤ったプランの反映、鍵更新の失敗、移行時のデータ欠損も、重大障害の対象に含めます。そのうえで、契約書と運用手順書の内容を一致させておきます。

ポイント

要件が固まらない工程は準委任、成果物と合格基準を決められる工程は請負と、工程ごとに契約を分けて考えます。どちらの契約でも、検収と変更管理、障害対応の条件は具体的に書いておきます。

加入者管理システムの費用相場

費用は、BSSだけなら数百万円から、MNO接続や通信コア、24時間運用、大規模な移行まで含めると、数千万円から数億円まで幅があります。

一律の公開価格表は、ほぼありません。そこで、ここに示す数値は、2026年時点の相場と通信基盤の負荷をもとにした計画用の推定として読んでください。

見積額は、加入者数やピーク処理、対象世代によって変わるほか、接続仕様や移行件数、SLAでも変わります。

初期費用の範囲と前提の比較

初期費用は、対象範囲と構成に応じて、次のような幅を計画用の目安として見ておきます。

  • 調査・小規模BSS:調査等は150万〜500万円程度、小規模BSSは500万〜1,500万円程度
  • クラウドMVP:加入受付・プロビジョニングで1,000万〜3,000万円程度
  • MVNO連携:HLR/HSS、BSS/OSS、課金、監視、移行、総合試験で3,000万〜1億円程度
  • 5G基盤:UDM/UDR、4G併存、冗長化、認証、複数NW機能、移行、災害対策、24時間運用を含む場合、5,000万〜3億円以上が予算枠になることがある
  • キャリア刷新:多地域・多NWでは1億〜5億円以上の場合がある

調査等は、現行調査、要件整理、RFP作成を指します。小規模BSSの金額は、契約・加入者マスタ、管理画面、CSV/API連携に絞った場合の目安です。

通信コアの金額は公開価格ではなく、開発相場、高可用性、人材、ライセンス、試験負荷をもとにした推定です。

2026年版の市場解説では、人月単価は60万〜200万円程度とされます(出典: SIA株式会社「システム開発の費用・相場 2026年版」、2026年)。

複雑な基幹システムや業界特化システムは、数千万円から億単位になる場合があります。通信プロトコル、移行、24時間運用の専門工数も含めて見るため、画面数だけで相場を判断しないようにします。

ライセンス・クラウド・運用費の内訳

初期費と運用費の内訳を分けて整理します。

  • 初期項目:要件定義、設計、開発・連携、基盤・ライセンス、移行、試験、教育・運用設計
  • 通信コア:HSM等の鍵保護、検証、バックアップ、地理冗長、監視、証明書更新、MNO試験
  • 運用費:クラウド、ライセンス、従量料金、24時間監視、保守、脆弱性対応、バックアップ
  • 周辺費用:回線・SIM/eSIM、検証環境、問い合わせ窓口

保守・更新費は、初期費用の年15〜25%程度を仮置きできます。ただし、製品やSLAによって変わる推定値です。加えて、加入者が増えたときの単価も試算し、5年間の総保有コストで比べます。

委託先の選定と見積比較の確認事項

委託先は、知名度や総額だけでなく、同じ通信方式や規模、移行条件で成果を出せるかで選びます。

通信コア製品ベンダー、BSS/OSSに強い国内SI、MVNO・SIM運用に詳しい会社では、得意分野が異なります。そのため、単独提案と共同提案も、同じ評価軸で比べます。

通信方式と運用範囲が近い実績

通信方式や案件規模、運用範囲が近い実績を、担当した内容まで確かめます。

  • 技術領域:4G/HSS、5G/UDM/UDR、MNO接続、フルMVNO、ローカル5G、IoT
  • 業務範囲:SIM/eSIM、料金・請求、24時間監視での担当内容
  • 案件条件:加入者数、ピーク処理量、移行件数、障害対応、稼働後の保守期間
  • 証拠資料:可能なら匿名化した構成図やテスト項目のサンプル

たとえば、EricssonとSwisscomは、Packet Core、UDM、IMSを含むDual Mode Coreを導入しました。この事例では、展開期間を従来の数週間・数か月から数日単位へ短縮する方向が示されています(出典: Ericsson「Swisscom and Ericsson driving performance partnership」、2025年)。

発注する側は、事例の効果を自社にそのまま当てはめず、対象範囲、移行条件、運用体制が一致しているかを確認します。

同じ項目と前提の見積比較表

各社の見積は、作業の内訳と前提をそろえたうえで、必要な範囲とリスクを評価します。合計額だけでなく、必要な作業が抜けていないかも確認します。

  • 費目:要件定義、設計、開発、ライセンス、基盤、連携、移行、試験、教育、運用、保守、変更単価
  • 見積条件:作業、工数、人月単価、期間、担当会社、成果物、除外、前提、再委託
  • 評価軸:機能、通信・セキュリティ、移行、性能・可用性、運用、管理、費用、契約
  • 配点:たとえば価格だけに30点を配分すると、運用や移行が弱い提案を選びやすい

安すぎる見積と曖昧な提案のリスク

見積金額だけで判断せず、抜けている範囲や提案体制を確認します。

  • 安い見積:ライセンス、試験、移行、24時間運用、セキュリティ、再送・復旧の除外
  • 高い見積:一式費用、加入者増加時の追加料金、保守範囲の明記を確認
  • 提案体制:技術設計者や運用責任者が回答に参加しているか
  • 契約前確認:責任者、技術リーダー、運用窓口、再委託先、担当変更時の引き継ぎ

曖昧なRFP回答は、契約後の追加費用や納期遅延のリスクとして、評価表に残しておきます。

ポイント

委託先は、同じ通信方式や規模の実績と、担当範囲を具体的に説明できるかで比べます。合計額だけで選ぶと、運用や移行の抜けを見落とすおそれがあります。

よくある質問(FAQ)

外注のときに判断に迷いやすい点を取り上げます。まず、BSS、MVNO開通基盤、5Gコアのどれが中心かを確認し、発注範囲と契約条件を整理してください。

加入者管理システムは顧客管理システムと同じですか?

顧客管理システムと同じとは限りません。BSS型は、顧客・契約・料金・請求を扱います。

さらに、通信サービスでは、HLR/HSS/UDM/UDR、認証、開通、ネットワークポリシー、SIM/eSIMも含む場合があります。そのため、RFPで範囲を分け、各システムの正本と連携責任を明記します。

加入者管理システムの開発契約は請負にすべきですか?

必ずしも全工程を請負にする必要はありません。現行調査、RFP、要件整理、PoCは準委任にできます。

本開発や明確な移行ツールは請負、稼働後の改善や監視は準委任など、成果と責任の分け方で決めます。どの契約でも、成果物、範囲、検収、変更管理、障害対応は具体的に書きます。

加入者管理システムの発注費用を抑える方法はありますか?

契約・加入者マスタ、開通、料金、通信コア、分析を分けて、必要な範囲から段階的に導入します。標準機能やマネージドサービスを使い、独自開発が必要な業務だけをスクラッチで作ります。

RFPの前提をそろえ、要件定義やPoCを先に進めて手戻りを減らすことも、総額を抑える方法のひとつです。

通信コアの経験がないSI会社にも外注できますか?

外注はできますが、通信コア製品ベンダーやMVNO運用に詳しい会社と共同体制を組むのが望ましいです。

たとえば、SI会社は業務、請求、CRM、移行、PMOを担い、専門会社は標準への準拠、認証、性能、冗長化、MNO接続を担います。

元請が全体の責任分界と障害窓口を担うことを、契約で確認しておきます。

まとめ

発注するときは、BSS型の契約・料金管理と、HLR/HSS/UDM/UDRを含む通信コア型を分けて考えます。

業務とデータの正本を整理したうえで、加入者数、ピーク処理、SLA、RTO/RPO、移行、セキュリティをRFPに記載します。

発注前の範囲・前提・責任分界の確認

費用や納期を比べる前に、BSSと通信コアの境界、正本データ、外部接続を、前提シートにまとめておきます。

非機能要件、移行方式、運用時間も記載し、同じシートで各社の提案を比べます。そうすると、見積の差が機能の漏れによるものか、方式や体制の違いによるものかを見分けられます。

外注先に求める開発後の運用体制

加入者管理は稼働後も変更と障害対応が続くため、運用を含めた総保有コストと体制で発注先を選びます。

  • 委託先の確認:障害連絡、再委託、鍵・個人情報アクセス、試験・移行責任、検収後の保守
  • 発注形態:要件に合わせてパッケージ、クラウド、スクラッチ、共同体制を選択
  • 契約:要件整理・PoCは準委任、本開発・明確な移行成果物は請負など工程で分ける
  • 費用幅:小規模BSSは500万〜1,500万円、MVNO連携は3,000万〜1億円程度
  • 比較条件:5Gコアや大規模移行は5,000万〜3億円以上の場合がある。5年総額や実績、専門性、運用体制も比べる

見積の前提、除外、追加単価をそろえておきます。ライセンス、クラウド、試験、移行、保守も同じ項目で比べると、発注の判断を進めやすくなります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。