タレントマネジメントシステム開発の完全ガイド

タレントマネジメントシステムの開発は、経営戦略と人材戦略を結び付ける要件定義と、現場への定着が成功の鍵です。

導入を考えると、「どの機能が必要か」「費用はどれくらいか」「どの会社に頼むか」といった疑問が次々に浮かびます。全体像から発注方法まで、順に解説します。

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タレントマネジメントシステムの全体像

タレントマネジメントシステムの全体像

タレントマネジメントシステムは、従業員のスキル、経験、資格、評価履歴、キャリア目標といった人材情報を一元的に管理するシステムです。採用から育成、配置、評価、離職防止まで、人材マネジメントの全サイクルをデータをもとに最適化します。単なる人事管理の効率化にとどまらず、組織の戦略目標と個人の成長を連動させる「人的資本経営」の中核として機能します。

2023年には、上場企業約4,000社で有価証券報告書への人的資本情報開示が義務化されました。経営戦略と人材戦略を連動させる仕組みを持つことが、企業の競争力を左右するようになっています。さらに、国内のタレントマネジメントシステム市場は、2025年の407億円から2026年には447億円へ約10%拡大する見通しで、今後も成長が続くと予測されています。

近年は、AIによるスキルギャップ分析や次世代リーダー候補の可視化など、高度な分析機能を備えたシステムも登場しています。また、グローバル市場も、2025年の113億ドルから2032年には250億ドルへ年率12.0%で成長する見込みです。

タレントマネジメントシステムの主要機能

タレントマネジメントシステムが備える機能は多岐にわたります。中核となるのは人材データベース機能で、氏名・所属・役職といった基本情報に加え、保有スキルや取得資格、語学レベル、プロジェクト経験、研修受講履歴なども一元管理します。このため、「Pythonスキルを持つ中堅社員」「海外赴任経験者」といった条件で、すぐに人材を絞り込めます。

  • スキルマップ・スキル評価:部門横断でスキルの充足状況を可視化し、不足するスキルを把握します。採用や育成の計画立案に役立ちます。
  • 人事評価:目標設定(MBO・OKR)から評価実施、フィードバックまでをシステム上で完結させ、評価プロセスの透明性と公平性を高めます。
  • 後継者計画(サクセッションプランニング):重要ポジションの後継者候補をリストアップし、必要な育成アクションを可視化することで、組織の継続性を担保します。

近年は、1on1支援機能やエンゲージメントサーベイ機能も標準搭載されるケースが増えており、日常的なコミュニケーションの記録や従業員満足度の定量把握も可能になっています。さらに、人的資本開示の義務化を受けて、ISO30414に対応した指標の自動集計機能やグローバル単位での集計機能を求める企業も増えています。

開発形態の種類:スクラッチ・パッケージ・クラウドの違い

タレントマネジメントシステムの構築方法は、大きく3つに分けられます。

  • スクラッチ(フルカスタム)開発:業務フローや評価制度に合わせてゼロから作り、差別化を図る方式です。
  • パッケージカスタマイズ開発:既存のタレントマネジメントパッケージに、自社固有の要件を追加実装します。開発期間と費用を抑えつつ、ある程度の柔軟性を確保できます。
  • SaaS型クラウドサービス:カオナビ、HRBrain、SmartHRなどの既製品を月額利用料で使う方式です。

スクラッチ開発は、開発期間が6か月〜1年以上、費用が500万円〜数千万円規模になりがちです。さらに、保守運用コストも継続的に発生します。

SaaS型は初期費用が低く、早期導入が可能です。ただし、自社固有の評価体系や業務フローには対応しきれない場合があります。

独自の評価制度や組織体系を持つ企業、既存の人事システムとの深い統合が必要な企業には、スクラッチ開発またはパッケージカスタマイズが向いています。標準的な機能で十分な中小企業には、SaaS型が適しています。自社の規模、制度の複雑さ、将来の拡張性を総合的に判断し、最適な開発形態を選ぶことが成功の鍵です。

タレントマネジメントシステム開発の進め方

タレントマネジメントシステム開発の進め方

タレントマネジメントシステムの開発は、要件整理から本番稼働まで複数のフェーズを順に進めます。各フェーズで判断を下し、関係者の合意を取ることが、プロジェクトの成否を大きく左右します。そこで、標準的な流れと各フェーズで押さえたい点を見ていきます。

要件定義・企画フェーズ

開発の最初のフェーズは、要件定義・企画です。ここでは「なぜタレントマネジメントシステムが必要なのか」という導入目的を、経営層、人事部門、現場マネージャーとすり合わせるところから始まります。例えば「後継者不在リスクを可視化したい」「スキルの偏在を解消して適切な人材配置を実現したい」「人的資本開示に向けてデータを整備したい」など、目的によって必要な機能は大きく変わります。

目的が明確になったら、現行の人事業務フローを棚卸しし、AS-IS(現状)とTO-BE(あるべき姿)のギャップを整理します。そのうえで、既存の人事給与システム、勤怠管理システム、LMSとのデータ連携要件も確認しておく必要があります。

要件定義の品質が開発全体のコストと品質を決めるため、この段階で時間をかけることが、結果として工数削減につながります。次の成果物をそろえ、発注先との認識のずれをなくすことを目標にします。

  • 要件定義書:機能や条件を文章でまとめ、発注先と合意する基準。
  • 業務フロー図:現行とあるべき姿の業務の流れを、図で示したもの。
  • 画面イメージ(ワイヤーフレーム):画面の配置と項目を、開発前に確かめるための図。
  • データ項目一覧:管理する人材情報の項目を、漏れなく一覧にしたもの。

要件定義フェーズの目安期間は1〜2か月です。この段階での手戻りは後工程で何倍ものコストになるため、ステークホルダー全員が合意するまで丁寧に進める必要があります。

設計・開発フェーズ

要件定義が完了したら、設計・開発フェーズに移ります。設計は、基本設計(外部設計)と詳細設計(内部設計)の2段階で進めるのが一般的です。基本設計では、画面レイアウトやデータベース設計を含め、API仕様やセキュリティ設計など、システムの骨格を決めます。

タレントマネジメントシステムは、個人情報、評価情報、給与情報など機密性の高いデータを扱います。アクセス権限の設計とデータ暗号化の方針は、特に慎重に検討する必要があります。役員、管理職、人事担当者、一般社員のそれぞれについて閲覧・編集できる範囲を細かく設計し、個人情報保護法に準拠したデータ取扱いの仕組みを組み込みます。

詳細設計では、各機能の具体的な処理ロジックを、プログラマーが実装できるレベルまで落とし込みます。開発フェーズでは、アジャイル開発かウォーターフォール開発のいずれかを採用します。

  • ウォーターフォール:機能の優先順位が明確でスコープが安定している場合に向いています。
  • アジャイル:ユーザーのフィードバックを取り込みながら、段階的に機能を広げる場合に向いています。

開発期間の目安は、MVP(最小実装版)で3〜6か月、フル機能版で6か月〜1年以上です。週次または隔週でステータス報告会議を設け、進捗の遅延や仕様の疑問点を早期に解消する体制を整えます。

テスト・リリース・定着化フェーズ

開発が完了したら、テストフェーズに入ります。単体テスト、結合テスト、システムテスト、ユーザー受け入れテスト(UAT)の順に、品質を検証します。特に念入りに確かめたいのは、次の点です。

  • 評価計算ロジック:計算結果が設計どおりに動くかどうか。
  • 既存システムとのデータ連携:連携データの受け渡しに、抜けや誤りがないかどうか。

権限設定では、一般社員が他社員の給与情報を閲覧できないかなどを確かめます。

本番リリース後は、段階的ロールアウトを推奨します。まず特定の部署や職種でパイロット運用を行い、問題点を洗い出してから全社展開すると、失敗リスクを大きく下げられます。たとえば、製造業A社(従業員2,000名)の事例では、段階的ロールアウトを採用したことで、全社展開時の問題発生率を大幅に抑え、スムーズな定着に成功しています。

システムが定着するかどうかは、操作研修と継続的なサポート体制にかかっています。ユーザーマニュアルの整備、管理者向け・一般ユーザー向けの研修実施、問い合わせ窓口の設置など、人が変わる部分への投資を怠らないことが大切です。リリース後3〜6か月間は利用状況を定期的に確認し、使われていない機能の改善や追加機能の優先順位を見直すサイクルを設けてください。

▶ 詳細はこちら:タレントマネジメントシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順をご覧ください。

ポイント

要件定義では導入目的と業務の現状を固め、設計・開発では機能の優先順位と仕様の安定度に応じて開発方式を選びます。テストは段階的ロールアウトで進めると、全社展開の失敗リスクを下げられます。

タレントマネジメントシステム開発の費用相場

タレントマネジメントシステム開発費用相場

タレントマネジメントシステムの開発・導入費用は、開発形態、規模、機能範囲によって大きく変わります。自社に合った投資計画を立てるには、開発形態別の費用目安と内訳を押さえておくとよいでしょう。

表示価格の1.5倍程度を総コストとして見込んでおくと、安全な予算計画につながります。

開発形態別の費用目安と内訳

スクラッチ開発は、要件定義・設計・開発・テスト・リリース支援の一連の工程を合計すると、中規模システム(従業員300〜1,000人規模、主要機能一式)で500万円〜1,500万円程度が相場です。大企業向けの高度な分析機能、グローバル対応、既存基幹システムとの多重連携が必要な場合は、2,000万円〜5,000万円を超えることもあります。工程別に見ると、開発費が最も大きな割合を占めます。

  • 要件定義・設計費:全体の15〜20%
  • 開発費:全体の40〜50%
  • テスト・品質保証費:全体の15〜20%
  • プロジェクト管理費:全体の10〜15%
  • リリース後サポート費:全体の5〜10%程度

小規模のスモールスタート(基本的な人材データベース+評価機能のみ)であれば、300万円〜800万円での開発事例もあります。パッケージとSaaSでは、費用の範囲も掛かり方も異なります。

  • パッケージカスタマイズ:ライセンス費用(初期)とカスタマイズ費用を合わせて、100万円〜500万円程度に収まるケースが多くなります。
  • SaaS型クラウドサービス:初期費用は20万円〜50万円(無料の製品もあり)で、月額利用料は従業員1人あたり200円〜1,000円が目安です。

たとえば、300人規模の企業なら、月額6万円〜30万円となります。

ただし、SaaS導入にも初期設定、データ移行、従業員教育のコストが別途かかるため、実際の総コストは表示価格の1.5倍程度を見込んでおくことをお勧めします。なお、IT導入補助金を活用すると、一定の要件を満たす中小企業は導入費用の1/2〜2/3の補助を受けられる可能性があります。経済産業省の最新情報を確認する必要があります。

ランニングコストと隠れコスト

タレントマネジメントシステムの費用を考えるときは、初期開発費に加えて、ランニングコストも見込む必要があります。スクラッチ開発やパッケージカスタマイズでは、サーバー費用(クラウドインフラ)と保守管理費が毎年かかります。ほかに、機能追加開発費やセキュリティ対応費も必要です。

一般的に、システム保守費は開発費の15〜20%/年が相場とされており、1,000万円で開発したシステムなら、年間150万〜200万円の保守費がかかる計算です。

SaaS型でも、ユーザー数の増加に伴う月額料金の増加、オプション機能の追加、サポートプランのアップグレードといったコストが生じます。

導入に伴う作業や社内の人手にかかる費用は、見積もりで見落とされやすくなります。

  • 既存データの移行・クレンジング費用:移行の前にデータを整える作業にかかる費用。
  • 連携システムの改修費用:既存の人事給与システムなどとのデータ連携の見直し。
  • 社内IT担当者の工数:導入作業のために、社内の担当者が割く時間。
  • 導入コンサルティング費用:業務の見直しや要件の整理を外部に頼む場合の費用。
  • 従業員研修費用:操作研修などで従業員の教育にかかる費用。

特に既存の人事データは、「氏名の表記揺れ」「部署コードの体系の違い」「スキル情報の未整備」など品質上の問題を抱えていることが多くあります。データクレンジングだけで数十万円のコストになるケースも、珍しくありません。

これらを含めた3〜5年間のTCO(総所有コスト)で比較することが、最適な投資判断につながります。予算策定の段階で、ランニングコストを含む5年間の総費用をSaaS型、パッケージ型、スクラッチ型で比べると、意外にもスクラッチ開発のほうが長期的に安価になるケースもあります。

▶ 詳細はこちら:タレントマネジメントシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段についてをご覧ください。

ポイント

費用は開発形態と規模で大きく変わるため、表示価格の1.5倍程度を総コストとして見込むと安全です。判断の軸は初期費用だけでなく、保守やデータ移行を含めた3〜5年間のTCOです。

タレントマネジメントシステム開発会社の選び方

タレントマネジメントシステム開発会社の選び方

タレントマネジメントシステムの開発は長期的なパートナーシップになるため、開発会社は慎重に選ぶ必要があります。技術力に加えて、人事業務への理解度、プロジェクト管理能力、サポート体制も評価軸になります。選び方を誤ると、要件の取り違え、スケジュール遅延、コスト超過が起き、最悪の場合はプロジェクトの仕切り直しになります。

開発会社を評価する5つの基準

開発会社を選ぶ際の評価基準は5つあります。タレントマネジメントシステムには、人事評価制度、組織構造、法令(労働基準法・個人情報保護法)への深い理解が求められます。そのため、単にWebシステムを作れる会社ではなく、HR領域の業務知識を持つ会社かを確かめてください。

  • 人事・HRシステムの開発実績:タレントマネジメントや人事評価システムの開発件数と、業種・規模ごとの実績です。
  • 要件定義の支援力:「どんなシステムが必要かわからない」状態でも、業務ヒアリングから要件を引き出せるかを、提案内容で見極めます。
  • 技術スタックの適切さ:クラウドインフラ(AWS・Azure・GCP)の活用、セキュリティ設計の水準、既存システムとのAPI連携実績などです。
  • プロジェクト管理体制:専任のプロジェクトマネージャーの有無、進捗報告の頻度と方式、課題が生じた際の対応フローを、事前に確かめます。
  • リリース後の保守・サポート体制:バグ対応のSLA(サービスレベルアグリーメント)、機能追加要望の対応フロー、年間保守費の内訳を、契約前に明確にします。

なお、ripla(株式会社ripla)は、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる企業です。IT事業会社として社内DXを推進してきた経験を活かし、ビジネスへの成果創出とシステムの定着支援に強みを持っています。また、人事・評価系を含む幅広い基幹システムの構築・導入実績があり、企業の業務要件に合わせて柔軟に対応できる体制を整えています。

RFP作成から複数社比較までのプロセス

開発会社を選ぶには、RFP(提案依頼書)を作成して複数社から提案を受けることを、強くお勧めします。RFPには、次の内容を明記します。

  • 背景と目的:プロジェクトの背景と、導入で果たしたい目的。
  • 対象と機能:対象従業員数と、必要機能の一覧。
  • 連携と納期:既存システムとの連携要件と、納期。
  • 予算目安:想定する予算の範囲。
  • 選定基準:開発会社を比べる観点。

RFPがあれば、複数社から同じ条件で比較提案を受けられるうえ、自社内の要件整理も進みます。

提案を受けたら、提案内容の技術的な妥当性、費用の根拠、開発体制、類似実績をもとに、3〜5社程度に絞り込みます。そのうえで、デモとヒアリングを実施します。この過程では、担当者とのやり取りのしやすさ、質問への回答の的確さ、業務理解の深さを確認しましょう。

最終的な選定では、費用だけでなく、「この会社なら自社の業務をしっかり理解してシステムを作ってくれるか」という観点を重視することが、長期的な成功につながります。また、選定前に参考先企業への問い合わせ(リファレンスチェック)を行い、実際の開発経験者から率直な評価を聞くことも有効です。

▶ 詳細はこちら:タレントマネジメントシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方をご覧ください。

ポイント

開発会社は、人事・HRシステムの実績、要件定義の支援力、技術、プロジェクト管理、保守体制の5点で比べます。複数社のRFP提案を同じ条件で比較すると、費用だけでなく業務理解の深さも見極められます。

タレントマネジメントシステム開発の発注・外注方法

タレントマネジメントシステム開発の発注方法

タレントマネジメントシステム開発の発注方法は複数あり、自社のリソース、要件の明確さ、予算によって最適な手法が異なります。適切な発注形態を選べば、コストと品質のバランスを保ちやすくなります。

発注後のトラブルの多くは、契約形態の選び間違いや発注前の準備不足が原因です。そのため、発注前に十分な検討を重ねておく必要があります。

請負契約・準委任契約・ラボ型開発の違い

外注形態として代表的なのは、請負契約、準委任契約、ラボ型開発の3つです。

  • 請負契約:「要件定義書に記載した機能を一式納品する」という、成果物の完成を義務とする契約です。
  • 準委任契約:開発者の作業時間に対して報酬を支払う方式で、アジャイル開発や、仕様が確定しきれていないフェーズに適しています。
  • ラボ型開発:特定の開発チームを一定期間専任で確保する方式で、長期的かつ継続的に機能追加や改善を行いたい場合に向いています。

請負契約は、スコープと費用が固定されるため、予算管理がしやすいメリットがあります。一方で、要件変更が生じると追加費用の交渉が起きやすく、仕様が後から変わりやすいタレントマネジメントシステムでは、硬直化のリスクに注意が必要です。請負契約を選ぶなら、要件定義書の品質を極めて高くすることが成功の前提条件になります。

準委任契約の費用は、かかった工数によって変動するため、予算の上限管理をしっかり行うことが欠かせません。特に要件が複雑で段階的に仕様を確定させたい場合は、要件定義・基本設計フェーズだけを準委任契約で進め、スコープが固まった段階で請負契約に切り替えるハイブリッド方式も有効です。

ラボ型では、月額固定費でチームを確保するため、優先度の高い機能から柔軟に着手できます。自社で社内開発チームを持つ場合は、特定機能だけを外注する「部分外注」も有効な選択肢です。

発注時に失敗しないための重要ポイント

発注時に失敗しないために、特に注意したい点がいくつかあります。人事部、情報システム部、経営企画部など複数部門が関わるプロジェクトでは、意思決定者が不明確なまま開発が進みがちです。その場合、後から「やっぱりこうしたい」という要望が噴出し、コストと工数が膨らみます。

  • 意思決定者の明確化:プロジェクトオーナー(最終意思決定者)とプロジェクトマネージャー(推進担当)を、社内で明確に定めてから発注します。
  • 成果物の明文化:契約前に「何が成果物に含まれるか」を明らかにし、契約書に明記します。
  • 社内PMの決定:外注先を管理できる社内担当者がいないと、コミュニケーションロスやスコープクリープが生じやすくなるため、発注先との窓口となる社内PMを決めます。
  • 段階的な発注:まず要件定義・基本設計フェーズだけを発注し、成果物を確認してから開発フェーズに進めば、最初の発注先が合わなかった場合のリスクを小さくできます。

契約書では、ソースコードの所有権とドキュメント納品の有無を、特に明確にしておく必要があります。テストの範囲、バグ対応期間、瑕疵担保責任の範囲も、契約前に決めておく項目です。

タレントマネジメントシステムは個人情報を大量に扱うため、セキュリティ要件、NDA(秘密保持契約)、個人情報取扱委託契約の締結も、発注前に忘れず行います。個人情報保護法の改正に対応した最新の個人情報取扱委託契約書のひな形を使うことも大切です。

▶ 詳細はこちら:タレントマネジメントシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法についてをご覧ください。

ポイント

発注形態は、要件の明確さと社内体制に合わせて選び、契約前に成果物の範囲を明文化します。請負は範囲が固まっている場合、準委任は仕様を段階的に決める場合、ラボ型は長期の改善を続ける場合に向きます。

タレントマネジメントシステム開発を成功させるポイント

タレントマネジメントシステム開発の成功ポイント

タレントマネジメントシステムの開発・導入が失敗する原因の多くは、技術ではなく、組織変革管理(チェンジマネジメント)の不足にあります。システムを作るだけでなく、人と組織を動かす視点を持つことが成功の鍵です。ここでは、プロジェクトを確実に成功させるための核心的なポイントを順に見ていきます。

経営層のコミットメントと現場の巻き込み方

タレントマネジメントシステムの導入は、人事部門だけのプロジェクトにせず、現場を巻き込んで進めることが大切です。従業員のスキルや評価情報を入力・更新するのは、現場のマネージャーや従業員自身です。彼らが「なぜこのシステムが必要なのか」「自分たちにとってどんなメリットがあるのか」を理解していないと、入力率が低く、活用されないシステムになってしまいます。

IT企業B社(従業員500名)の事例では、Excelで管理していた評価プロセスをシステム化する前に、各部署のキーパーソンを巻き込んで要件を整理しました。その結果、リリース後3か月で全社的な利用率が90%を超えています。

現場を巻き込むには、次の2つの取り組みが有効です。

  • 経営層からの発信:人的資本経営の重要性を明確に発信し、「このシステムは従業員のキャリア開発を支援するためのものだ」というメッセージを継続的に届けます。
  • 現場キーパーソンの参加:プロジェクトの初期段階から、先進的なマネージャーや若手のHRBPに、要件定義やβテストへの参加を依頼します。

経営層の発信は、現場の利用意欲を高めます。キーパーソンの参加によって現場ニーズを反映したシステムができ、社内の推進役としても活躍してもらえます。「自分たちが作ったシステム」という当事者意識を生み出すことが、定着率を大きく押し上げます。

データ品質の確保と継続的な運用設計

タレントマネジメントシステムの価値は、蓄積されるデータの質と量に正比例します。「ゴミを入れたらゴミしか出てこない(Garbage In, Garbage Out)」という原則は、タレントマネジメントでも同じです。スキル情報が古い、評価情報が入力されていない、異動情報が反映されていないといった問題があると、分析結果や人材サーチの精度が下がり、システムへの信頼も失われます。

データ品質を保つには、まず入力ルール(誰が、いつ、何を入力するか)を業務プロセスとして明文化することが欠かせません。たとえば、次の作業を業務カレンダーに組み込みます。

  • 人事異動時のマスタ更新:異動の情報を、システムへ確実に反映する流れ。
  • スキル情報の自己申告:年1回、従業員が自分のスキルを申告する周期。
  • 評価情報の入力:半期ごとに、評価を入力する期間。

入力の負担を下げるには、UIの改善やモバイル対応、既存の人事給与システムからの自動データ連携なども検討してください。

近年は、AIを活用したスキル情報の自動推定(職務経歴書やプロジェクト履歴からスキルを自動タグ付け)や、退職予兆スコアリング機能を組み込むケースも増えており、データドリブンな人材マネジメントの実現が加速しています。導入後1〜2年は定着期として、データ品質のモニタリングと改善を続けるPDCAサイクルを回すことで、活用度と分析精度が大きく向上します。

さらに、タレントインテリジェンス(データとAIの力で人的資本に知性をもたらす)という次世代ビジョンを見据えて設計すると、長期的に価値を発揮し続けるシステムを構築できます。

ポイント

失敗の原因は技術より組織の側にあることが多いため、経営層の発信と現場の巻き込みを早くから進めます。データ品質は入力ルールを業務に組み込んで継続的に管理すると、活用度が上がります。

まとめ

タレントマネジメントシステム開発まとめ

タレントマネジメントシステム開発について、全体像から進め方、費用、会社選び、発注方法、成功のポイントまでを見てきました。要点を整理します。

タレントマネジメントシステムは、人材情報の一元管理から評価、育成、配置、後継者計画まで、人材マネジメントの全サイクルを支えるシステムです。人的資本経営の基盤として、市場も急拡大しています。

開発形態は、スクラッチ開発、パッケージカスタマイズ、SaaS型クラウドの3種類があります。自社の規模、制度の複雑さ、予算に応じて、最適な方式を選ぶことが重要です。

費用はSaaS型なら月額数万円から、スクラッチ開発なら500万円から数千万円と幅があります。そのため、初期費用に加えてランニングコストを含むTCOで判断します。

開発会社の選定では、人事・HRシステムの実績、要件定義支援能力、プロジェクト管理体制、保守サポート体制を総合評価し、複数社のRFP提案を比べることをお勧めします。

発注時は、請負・準委任・ラボ型の特性を理解したうえで契約形態を選び、スコープと成果物を明文化してから発注します。

そして何より、経営層のコミットメント、現場の巻き込み、データ品質の継続的な管理が、システムを本当に活用されるツールに育てる鍵となります。

タレントマネジメントシステムの開発・導入を検討している方は、ぜひお気軽にriplaまでご相談ください。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。