UI/UXデザインへの投資を検討するとき、多くの事業責任者やPdMがまず知りたいのは、「実際にUI/UXを改善した企業が、どんなプロセスで、どれだけの成果(離脱率改善・売上向上・開発効率化)を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。UI/UXデザインは「見た目を整えること」と誤解されがちですが、本質は「ユーザーが目的を達成するまでの摩擦を減らす設計」です。だからこそ、自社に近い事例から「何を変えたら、どの数字が、どれだけ動いたのか」を読み解くことが、投資判断の精度を大きく高めてくれます。
本記事は、UI/UXデザインの導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注側・事業側の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。エンジニア主導の機能継ぎ足しでUXが複雑化し離脱率が悪化した状態から、専門家レビューとプロトタイプ検証、デザインシステム構築によって売上を前年比4,111%まで伸ばした事例、富士通のインタラクションデザイン(IxD)評価で開発者との修正調整時間を87%削減し使いにくさ問題の修正率を31%から100%へ引き上げた事例、ユーザビリティテストを被験者4人で十分に機能させたコスト最適化の事例など、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どの指標を成果に据えるべきか」のイメージが描けるはずです。なお、UI/UXデザインの全体像をまだ把握していない方は、まずUI/UXデザイン開発の完全ガイドから読むことをおすすめします。
UX改善で売上前年比4,111%成長を実現した事例

UI/UXデザイン事例の中で、もっとも分かりやすく成果が数字に表れたのが、プロダクト「Click」の改善事例です(出典:NOROSHI、Mikosea)。このプロダクトは当初、エンジニア主導で機能を次々と継ぎ足していった結果、画面が複雑化し、ユーザーが目的にたどり着けず離脱率が悪化していました。機能が豊富であることと、ユーザーが使いやすいことは、まったく別の問題だということを、この事例は端的に示しています。
機能継ぎ足しによるUX複雑化が離脱を生んだ構造
この事例で起きていたのは、UI/UX改善の現場でもっとも頻発する典型的な悪循環です。ユーザーや営業からの要望に応えて機能を一つずつ追加していくと、画面の情報量が増え、操作の導線が分岐し、本来やりたかったことにたどり着くまでの手数が増えていきます。一つひとつの追加は合理的に見えても、積み重なるとプロダクト全体の体験は確実に劣化します。これが「機能は増えているのに、なぜか使われなくなる」という現象の正体です。
重要なのは、この劣化が「離脱率」という数字で可視化されていた点です。感覚的に「使いにくい気がする」で止めず、ユーザーがどの画面で離脱しているかを行動データで捉えたことが、改善の出発点になりました。UI/UXの問題は、放置すると新規ユーザーの定着率や継続率、ひいては売上に直結します。だからこそ、まず「どの指標が、どの画面で悪化しているか」を特定することが、すべての改善の前提になります。
専門家レビューとプロトタイプ検証で立て直した過程
Click が立て直しに用いたのは、三つの打ち手でした。第一に、UI/UXの専門家によるレビューです。エンジニアの内側の視点だけでは「使いにくさ」に気づけないため、専門家が外部の目で導線や情報設計の問題を洗い出しました。第二に、改善案をいきなり実装するのではなく、プロトタイプを作って検証したことです。これにより、作り込んでから「やはり使いにくい」と気づく手戻りを防ぎました。第三に、デザインシステムを構築し、画面ごとにバラバラだった部品やルールを統一したことです。
この三点を回した結果、Click は売上を前年比4,111%まで伸ばしました(出典:NOROSHI、Mikosea)。注目すべきは、新機能を大量に追加したのではなく、むしろ複雑化した体験を整理し、ユーザーが目的を達成しやすい設計に作り直したことで、この成長を実現した点です。事例が教えるのは、「UI/UX改善とは、足し算ではなく引き算と整理である」という原則です。自社のプロダクトが「機能は多いのに使われない」状態にあるなら、まず専門家レビューとプロトタイプ検証で課題を特定するこのアプローチが有効です。この成功の裏返しである失敗の構造は、失敗・リスクの観点とも深く関わるため、関連記事もあわせてご覧ください。
富士通のIxD評価で開発効率と品質を両立した事例

UI/UXデザインの効果は「感覚的なもの」と思われがちですが、定量的に測れることを示すのが富士通のインタラクションデザイン(IxD)評価の事例です(出典:富士通)。IxD評価とは、ユーザーがシステムとどう対話するか(操作・反応・流れ)を体系的に評価し、使いにくさを設計段階で特定して改善する手法です。この事例では、UI/UXを「作ってから直す」のではなく「評価して作る」プロセスに変えたことで、品質と開発効率を同時に高めました。
修正調整時間87%削減・修正率31→100%の意味
この事例の数字は、UI/UX投資の費用対効果を語るうえで非常に示唆に富みます。富士通のIxD評価では、開発者との修正調整時間を87%削減しました(出典:富士通)。UI/UXの問題は、開発が進んでから「ここが使いにくい」と発覚すると、デザイナーとエンジニアの間で何度も調整が発生し、膨大な時間が失われます。評価を設計の早い段階に組み込むことで、この後工程の調整コストを大幅に圧縮できたのです。
さらに注目すべきは、使いにくさ問題の修正率を31%から100%へ引き上げた点です(出典:富士通)。従来は、見つかった使いにくさのうち3割程度しか直せていなかったものが、評価手法を体系化したことで、特定された問題をすべて修正できるようになりました。これは「課題が分かっていても直しきれない」という、多くの開発現場が抱える積み残しを解消した成果です。UI/UX改善の効果は、こうした調整時間や修正率という形で定量化でき、稟議や投資判断の根拠として説明可能だということを、この事例は明確に示しています。
被験者4人で十分な問題検出を実現したコスト最適化
UI/UX改善に二の足を踏む理由としてよく挙がるのが、「ユーザビリティテストにはコストがかかる」という思い込みです。しかし富士通の事例では、ユーザーモデルマッピングという手法を用いることで、被験者4人でも十分な問題検出率を維持し、16名分のテストコストを削減しました(出典:富士通)。これは、ユーザビリティテストが大規模なサンプルを必要とする統計調査ではなく、少人数でも主要な使いにくさを発見できる定性的な手法であることを示しています。
この知見は、予算が限られる中小企業やスタートアップにとって極めて重要です。「ユーザーテストは大企業がやるもの」という先入観を捨て、4〜5人の代表的なユーザーに実際に操作してもらうだけでも、多くの致命的な使いにくさは発見できます。事例から学べるのは、UI/UX改善のハードルは思っているほど高くなく、少人数のテストを早い段階で回すことが、後工程の大きな手戻りとコストを防ぐ、ということです。費用対効果の観点で見れば、ユーザビリティテストはむしろ「やらないことのコスト」のほうが大きいのです。
検証ループとデザインシステムで継続改善した事例

UI/UXデザインは「一度作って終わり」ではなく、公開後もデータに基づいて改善し続ける営みです。成功事例に共通するのは、仮説検証のループを仕組みとして組み込み、デザインシステムで改善を効率化していることです。ここでは、継続改善を支える「検証手法の使い分け」と「デザインシステムの役割」を、事例の観点から整理します。
ABテスト・NEM法・インタビューの使い分け事例
継続改善で成果を出す事例は、検証手法を目的に応じて使い分けています。「どちらの案が数字を伸ばすか」を定量的に比較したいときはABテストを用い、二つのデザイン案を実際のユーザーに見せて、クリック率や完了率で優劣を判定します。一方、「なぜ使いにくいのか」という理由を深掘りしたいときは、ユーザーインタビューやユーザビリティテストといった定性的な手法が有効です。前述の被験者4人の事例のように、少人数でも操作の様子を観察すれば、数字には表れない根本原因が見えてきます。
さらに、NEM法(操作の手順数や迷いを定量的に評価する手法)のように、操作の効率を数値で測る手法も活用されています。重要なのは、これらを単発で使うのではなく、「仮説を立てる→プロトタイプで検証する→定量・定性の両面で評価する→改善する」というループを継続的に回すことです。一度の改善で完璧を目指すのではなく、小さな検証を積み重ねて磨き込む。この検証ループの定着こそが、Click の4,111%成長のような大きな成果を生む土台になっています。
デザインシステムが改善を加速させた事例
デザインシステムとは、ボタンやフォーム、配色、余白などのUI部品と、その使い方のルールを一元管理する仕組みです。Click の事例でも、デザインシステムの構築が改善のスピードを大きく押し上げました。部品とルールが統一されていれば、新しい画面を作るたびにゼロから設計する必要がなくなり、デザイナーとエンジニアが共通の言語で会話できるようになります。これにより、PdM・デザイナー・エンジニアの間の認識のズレが減り、改善のサイクルが速く回るようになります。
ただし、デザインシステムは「導入すれば必ず定着する」ものではありません。後述する失敗事例のように、エンジニア主導で実装要件と合わないツールを入れたり、他社の真似で作って自社プロダクトと乖離すると、かえって運用コストが増えて使われなくなります。成功事例とは、自社のプロダクトと開発体制に合わせてデザインシステムを設計し、デザイナーとエンジニアが一緒に育てていくものだという認識を持っている点で異なります。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、デザインシステムを「他社の借り物」ではなく「自社の体制に合わせた共通基盤」として構築・定着させる支援を重視しています。
まとめ

UI/UXデザインの事例を振り返ると、成果が出る改善は一様に「動かす指標を先に定義し、ユーザビリティテストやプロトタイプで課題を検証してから実装に進む」というプロセスを丁寧に回しています。エンジニア主導の機能継ぎ足しで離脱が悪化したプロダクトを、専門家レビューと検証、デザインシステム構築で立て直し売上を前年比4,111%まで伸ばした事例(出典:NOROSHI、Mikosea)、IxD評価で修正調整時間を87%削減し修正率を31%から100%へ引き上げた事例、被験者4人で十分な問題検出を実現したコスト最適化の事例(いずれも出典:富士通)は、いずれもこの原則を体現しています。
事例を読むときに大切なのは、「どれだけ綺麗になったか」ではなく「どの数字が、なぜ動いたのか」という視点です。自社のプロダクトの離脱や継続率に照らし、まずは少人数のユーザビリティテストという小さな一歩から、課題の特定を始めてください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、目的の定量化から検証ループの設計、デザイナー×エンジニア連携を前提としたUI/UX構築までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
