ボイスボットの開発や導入を検討する際、多くのコールセンター責任者や情報システム担当者は初期費用やシナリオ設計費といった導入時の出費に意識を集中させがちですが、実際に長期的な総コストと投資対効果を大きく左右するのは、稼働後に毎月・毎年継続して発生する保守・運用費用・ランニングコストです。ここで本稿が扱うボイスボットとは、電話の音声を音声認識でテキスト化し、対話シナリオや生成AIによって応答内容を判断し、音声合成で顧客に返答する仕組みを指し、従来のプッシュ操作を前提としたIVRとは異なり、顧客が自然に話しかけるだけで用件を処理できる点に特徴があります。
本記事では、ボイスボットの保守・運用費用・ランニングコストに焦点を当て、SaaS型・クラウド型プラットフォームとフルスクラッチ・カスタム開発型という提供形態ごとに費用構造がどう異なるのかという全体像から、月額・年額の具体的な相場と費用内訳、通話量やAPI従量課金といったランニングコストに影響する運用面の要素、運用担当者が不在のまま放置した場合に生じる応答精度の劣化やシナリオの陳腐化というリスク、そしてランニングコストを賢く抑えるための実践的なポイントまでを、具体的な数値とともに解説します。すでにボイスボットを運用中で費用の見直しを考えている担当者の方はもちろん、これから開発・導入を検討する方にとっても、見落としがちな継続コストを把握し、適切な予算計画を立てるための判断軸となる内容です。
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▼全体ガイドの記事
・ボイスボット開発の完全ガイド
ボイスボット開発の保守・運用費用の全体像

ボイスボットの保守・運用費用でまず押さえておきたいのは、どの提供形態を選ぶかによってコストの発生の仕方がまったく異なるという点です。電話応答を自動化するという目的は共通していても、それを実現する手段には、既製のクラウドサービスを月額で利用するSaaS型・クラウド型プラットフォームから、自社の要件に合わせてゼロから構築するフルスクラッチ・カスタム開発型まで幅があります。この選択によって月額数万円で済むものから、初期に数千万円を投じたうえで年間数百万円規模の保守費用がかかるものまで大きく分かれるため、まずは自社がどの形態を採用するのかを軸にランニングコストを捉えることが、正確な予算計画の出発点となります。
ボイスボットのコストが他の一般的な業務システムと大きく異なるのは、システムそのものの維持費だけでなく、顧客との対話の質を保ち続けるための人的コストが本質的に組み込まれている点にあります。ボイスボットは、実際の通話ログを分析し、認識ミスや会話の行き詰まりが生じている箇所を特定してシナリオを改善し続けなければ、応答精度が下がって顧客が有人対応へ流れてしまうという特性を持つため、月額利用料や回線費用といった目に見えるコストに加えて、通話ログを分析しシナリオを育てていく担当者の運用コストまでを含めて総コストと捉える視点が欠かせません。
提供形態によるコスト構造の違い(SaaS型・クラウド型 vs フルスクラッチ・カスタム開発型)
ボイスボットは、大きく二つの提供形態に分けて費用構造を理解すると全体像がつかみやすくなります。一つ目は、AI Messenger VoicebotやPKSHA VoiceAgent、commubo、ekubot VoiceLITEといった既製サービスを利用するSaaS型・クラウド型プラットフォームで、初期費用は無料から数十万円程度、月額利用料は1万円から35万円程度が中心的なランニングコストになります。二つ目は、独自の音声認識エンジンや対話シナリオを組み込み、CRMや基幹システムと複雑に連携させるフルスクラッチ・カスタム開発型で、初期の開発費用が100万円から1,000万円以上、独自要件が高度になれば2,000万円以上に達することもあり、それに比例して保守費用も相応の規模になります。
この二つの形態で決定的に異なるのが、保守・セキュリティ対応や機能改善を誰が担うのかという点です。SaaS型・クラウド型では、音声認識エンジンの精度向上やシステムのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用を提供元が自動的に行うため、利用企業が追加の保守費用を負担する必要はほとんどありません。一方でフルスクラッチ・カスタム開発型は、稼働後の運用保守や脆弱性対応、障害対応、音声認識モデルの再学習をすべて自社ないし開発ベンダー側で継続的に担う必要があり、その体制維持費が年間の保守費用として固定的に発生します。つまり、独自要件や自社基幹システムとの深い連携を実現しようとするほど、保守負担とコストを自社側で抱える構造になるという基本的な対比を、形態選びの前提として押さえておくことが重要です。
初期費用とランニングコストの関係
ボイスボットの費用を考えるうえでは、初期に一度だけかかる開発・導入費用と、稼働後に毎月・毎年継続してかかるランニングコストを切り分けて捉えることが欠かせません。SaaS型・クラウド型の場合、初期費用としてシステム設定費が5万円から数十万円かかり、これに顧客との対話を設計するシナリオ設計費が数十万円から100万円近く上乗せされることがあります。この初期のシナリオ設計費は一度払えば終わりに見えますが、実際には稼働後もシナリオの改修という形でランニングコストとして繰り返し発生していく点に注意が必要です。
特に個別開発を伴うフルスクラッチ・カスタム開発型では、年間の運用保守費が初期開発費用の一定割合として算出されるのが一般的で、初期開発費用のおよそ15%から20%が年間保守費の目安とされます。たとえば1,000万円で開発したボイスボットであれば、年間150万円から200万円の保守費用が継続してかかり、5年間運用すれば初期開発費用に加えて750万円から1,000万円が積み上がる計算になります。初期開発費を高くかけたシステムほど稼働後の年間保守費も比例して高くなるため、初期費用の見積もりだけを見て導入できると判断すると、後から想定外の維持費に直面することになります。自社がどの程度の独自要件を必要とし、どの程度の年数使い続けるのかを前提に、初期費用とランニングコストを合算した総所有コストで比較することが、費用最適化の第一歩となります。
提供形態別の月額・年額相場と費用内訳

ここからは、SaaS型・クラウド型とフルスクラッチ・カスタム開発型のそれぞれについて、月額・年額の具体的な相場と、その費用が何に対して発生しているのかという内訳を整理していきます。同じボイスボットでも、月額数万円から始められるSaaS型と、初期に数千万円を投じて年間数百万円の保守費がかかるフルスクラッチ型が混在しているため、相場を数値で押さえておくことは自社に合った形態選びと予算計画の両面で欠かせません。
SaaS型・クラウド型のランニングコスト
SaaS型・クラウド型のランニングコストは、料金体系によって大きく二つのタイプに分かれます。一つは月額固定費用型で、月額1万円から35万円程度が相場となり、通話件数に左右されず一定の料金を支払う仕組みのため予算管理がしやすいのが特徴です。具体的なサービスで見ると、NTTドコモの提供する電話自動応答サービスはシステム設定費10万円に月額3万円からという水準で、DHK CANVASのように月額15万円という固定料金を明示しているサービスもあります。もう一つは月額従量課金型で、実際に応答した通話1件あたり50円から200円程度が発生する仕組みです。利用件数が少ない企業でも導入しやすく、無駄なコストを抑えられる反面、通話量が増えるほど費用が膨らむため、月間の想定コール数に応じて選択することが重要です。
SaaS型・クラウド型を選ぶ際に見落としがちなのが、月額利用料そのものとは別に発生する回線費用やオプション費用です。ボイスボットは電話回線を通じて稼働するため、電話番号の取得や通話料が別途かかり、有人オペレーターへの転送やSMS・メールの自動送信といった機能を使う場合はそれぞれにオプション料金が上乗せされることが少なくありません。加えて、システム利用料とは別に、通話ログを分析して認識精度の低い箇所を洗い出し、シナリオを改善していく運用担当のコストが実質的なランニングコストとして発生します。目安として、月間のコール件数が数百件を超える場合は固定費型、それ以下であれば従量課金型を選ぶとコスト効率がよくなり、導入初期の3か月から6か月は従量課金で様子を見てから固定費型へ切り替えるという進め方が費用の最適化につながります。
フルスクラッチ型・カスタム開発型の年間運用保守費
フルスクラッチ型・カスタム開発型の年間運用保守費は、前章で触れたとおり初期開発費用の15%から20%が目安とされ、1,000万円で開発したのであれば年間150万円から200万円が保守費用の目安となります。この年間保守費には、システム稼働環境であるサーバーやクラウド環境、ネットワークインフラを維持するための費用、定期的なアップデートやバグ修正、障害発生時の対応、セキュリティパッチの適用作業を担う保守体制の維持費が含まれます。SaaS型であれば提供元が自動で行うこれらの作業を、フルスクラッチ型ではすべて自社ないし委託先が担うため、体制維持のための人的コストが保守費の大半を占める構造になります。
さらにフルスクラッチ型で注意したいのが、音声認識モデルの再学習やチューニングに伴うコストです。生成AIや独自の音声認識エンジンを組み込んだシステムでは、実際の通話データを追加学習させてモデルを更新し続ける運用フェーズが不可欠で、この工程を含めると月額50万円から200万円という水準の運用費がかかるケースもあります。加えて、SaaS型のように新機能が自動で追加されるわけではなく、機能を拡張したい場合はその都度、追加の開発費が発生します。カスタマイズの自由度と自社システムとの深い連携を実現できる反面、保守と機能拡張の両面で継続的な投資が必要になる形態だと捉えておくことが重要です。
ランニングコストに影響する運用面の要素

ボイスボットのランニングコストは、月額固定料金だけで決まるものではなく、実際にどれだけ通話が発生し、どれだけシナリオを改善し続けるかという運用面の要素によって大きく変動します。特に、通話量に連動して発生するAPIの従量課金と、応答精度を保つためのシナリオ改修コストは、利用状況や求める品質水準によって金額が上下します。ここでは、通話量とAPI従量課金、そしてシナリオ改修・追加開発コストという二つの観点から、ランニングコストを左右する運用面の中身を具体的に見ていきます。
通話量・API従量課金(音声認識/音声合成APIの利用料)
ボイスボットのランニングコストで最も変動が大きいのが、通話量に比例して発生するAPIの従量課金です。ボイスボットは一本の通話の中で、顧客の発話を文字に変換する音声認識API、応答内容を判断する生成AIやLLMのAPI、そして返答を音声に変換する音声合成APIという複数の外部サービスを呼び出しており、これらはいずれも利用した分だけ課金される従量制です。AI通話の分課金はおおむね1分あたり0.07ドルが一つの基準とされ、通話時間が長くなるほど、また通話件数が増えるほど、この実費が積み上がっていきます。仮に平均3分の通話が月間1,000件発生した場合でも、この分課金だけであれば数万円規模に収まりますが、全社での利用が定着して月間数万件の通話を処理するようになると比例して膨らんでいくため、利用拡大を前提に月間コール数の増加を見込んだ試算をしておくことが大切です。
この従量課金の性質を理解しておくと、コストを管理しながらボイスボットを育てる方針が立てやすくなります。裏を返せば、PoC段階や一部の問い合わせ種別に限定した試験導入ではAPI実費をごくわずかに抑えられるため、まず限られた範囲で効果を確認し、費用対効果が見えてから対象を段階的に広げていくことが有効です。また、応答1件あたり50円から200円という従量課金型のSaaSを利用する場合、このAPI実費はサービス料金に含まれていることが多いものの、有人オペレーターへ転送された通話にはBPO事業者が設定する1件あたり数百円というコール単価が別途発生するため、自動応答で完結する割合である自己解決率を高めることが、そのままランニングコスト全体の圧縮につながります。
シナリオ改修・追加開発コスト
API従量課金と並んでランニングコストを左右するのが、対話シナリオの改修と追加開発にかかるコストです。ボイスボットが顧客と自然な会話を成立させるためには、どのような質問にどう答えるかというシナリオを細かく設計する必要があり、この初期のシナリオ設計費だけでも数十万円から100万円近い費用が発生することがあります。しかし本質的に重要なのは、この設計が一度で完成するものではないという点です。稼働後に実際の通話ログを分析すると、想定していなかった言い回しで顧客が話しかけてきたり、特定の分岐で会話が行き詰まったりする箇所が必ず見つかるため、それらを踏まえてシナリオを継続的に改修していく作業が、運用フェーズのランニングコストとして繰り返し発生します。
このシナリオ改修は、ノーコードで対話フローを編集できるSaaS型であれば自社の運用担当者が内製で対応できるため人件費の範囲で収まりますが、専門的なチューニングをベンダーに委託する場合は都度の作業費が上乗せされます。また、新たな問い合わせ種別への対応や、CRMや予約システムといった外部システムとの新規連携を追加する場合は、シナリオ改修の枠を超えた追加開発として、フルスクラッチ型ではその都度まとまった開発費が必要になります。ボイスボットのランニングコストを正しく見積もるには、月額利用料やAPI実費といった固定的・従量的なコストだけでなく、応答精度を維持・向上させるためのシナリオ改修と、業務拡大に伴う追加開発を、継続的に発生する運用投資としてあらかじめ予算に織り込んでおくことが欠かせません。
運用担当者が不在のときに生じるリスク

ボイスボットのランニングコストを考えるうえで避けて通れないのが、運用担当者を置かずにシステムを放置した場合に生じるリスクです。ボイスボットは通話ログを分析して応答内容を改善し続けることで初めて価値を発揮する仕組みであり、運用コストを削ろうとして担当者を置かないでいると、かえって顧客満足度が下がって有人対応への流入が増え、初期に投じた開発費用そのものが無駄になってしまいます。ここでは、応答精度の劣化と放置による離脱率の上昇、そしてシナリオの陳腐化やFAQ更新の遅延という二つの観点から、運用を怠ることの代償を具体的に見ていきます。
応答精度の劣化と放置による離脱率上昇
運用を怠ることの最も直接的な代償は、応答精度の劣化と、それに伴う顧客の離脱率上昇です。ボイスボットには誤認識や誤回答をするリスクが避けられず、AIの精度を維持・向上させるためには、認識ミスが生じやすい箇所を特定して会話の流れやシナリオを見直すチューニングが欠かせません。自動学習機能の有無にかかわらず、人の手による定期的なチューニングを行わなければ精度は維持できず、放置すれば顧客の発話をうまく聞き取れずに何度も聞き返したり、意図と異なる応答を返したりする場面が増えていきます。
このリスクが厄介なのは、応答精度の低下が顧客体験の悪化に直結し、電話の途中で顧客が対話を諦めて切ってしまう、いわゆる離脱率の上昇として表れる点にあります。用件を処理できないまま顧客が離脱すれば、その顧客はもう一度電話をかけ直して有人オペレーターにつながるまで待たされることになり、自動化で削減したはずの人的対応コストがかえって増えてしまいます。さらに、電話がつながらない、話が通じないという体験は企業への不満や機会損失に直結するため、応答精度を保つための定期的なチューニングは、単なる保守作業ではなく、顧客満足と自動化効果の両方を守るための投資だと理解する必要があります。
シナリオの陳腐化・FAQ更新遅延
応答精度の劣化と並んで起こりうるのが、シナリオの陳腐化とFAQ更新の遅延を起点とした形骸化です。ボイスボットが応答の根拠とする情報は、料金体系やキャンペーン内容、営業時間、手続きの手順といった、時間とともに変化していく業務情報です。運用担当者が不在になってこれらの更新が止まると、ボイスボットは古くなった情報をそのまま顧客に案内し続けることになり、すでに終了したキャンペーンを案内したり、変更前の手続き方法を伝えたりといった、誤った情報提供が発生します。人間のオペレーターであれば最新情報に基づいて柔軟に対応できる場面でも、更新されていないシナリオは古い内容を機械的に返し続けてしまうのです。
こうした陳腐化を放置すると、顧客は電話で得た情報が正しくないという不信感を抱き、次第にボイスボットを使わずに最初から有人対応を求めるようになります。すると自動応答率が下がって有人対応のコストが膨らみ、自動化のために投じた初期投資が回収不能になるという悪循環に陥ります。回答できなかった質問があれば次からは回答できるようにデータを追加し、満足度の低かった応答は内容を改善するという継続的な運用があってこそ、ボイスボットは価値を保ち続けられます。システムを導入して終わりにするのではなく、シナリオとFAQを最新の状態に保ち続ける運用の仕組みをコストとしてあらかじめ組み込んでおくことが、形骸化を防ぐ大前提となります。
ランニングコストを抑えるポイント

ボイスボットのランニングコストは、提供形態の選び方と運用の進め方を工夫することで、無理なく合理的に抑えることができます。ここでは、提供形態の適正選択とスモールスタート、そして運用ルールの策定とPDCAサイクルの構築という二つの観点から、コストを抑えながらボイスボットを機能させ続けるための実践的なポイントを解説します。
提供形態の適正選択とスモールスタート
ランニングコストを抑えるうえで最も効果的なのは、最初から高額なフルスクラッチ・カスタム開発型に投資するのではなく、まずは既製のSaaS型・クラウド型プラットフォームから始めるスモールスタートです。ボイスボット導入がうまくいかない典型的な失敗パターンは、最初からあらゆる問い合わせを自動化しようとしてシナリオ設計が複雑になり、初期の開発費用と時間が膨らんだ末に使いこなせずに終わることにあります。これを避けるには、全体の問い合わせの大部分を占める、よく聞かれる簡単な質問だけに対象を絞り、最小限のシナリオでスタートを切るのが有効です。営業時間の案内や予約の受付といった定型的な用件から始めれば、初期投資もランニングコストも最小限に抑えながら、自社にとって本当に必要な機能を見極めることができます。
そのうえで、SaaS型での運用が定着して自動化できる範囲や求められる連携が明確になった段階で、初めてフルスクラッチ・カスタム開発型への発展を検討するという段階的なアプローチが、費用対効果の観点から最も理にかなっています。月間のコール件数がまだ少ない段階では通話1件あたり50円から200円の従量課金型を選び、件数が数百件を超えて固定費のほうが割安になった段階で月額固定費用型に切り替えるという料金プランの見直しも、無駄なコストを避ける有効な手段です。自社の月間コール数や必要な連携範囲を前提に、過剰な機能に投資しない形態選びを徹底することが、コスト最適化の土台となります。
運用ルールの策定とPDCAサイクルの構築
形態選びと並んで重要なのが、ボイスボットを育て続けるための運用ルールをあらかじめ策定し、PDCAサイクルを回す仕組みをコストとして組み込んでおくことです。まず、誰が通話ログを確認し、どのくらいの頻度でシナリオを見直し、情報の更新は誰の責任で行うのかという運用ルールを明文化しておくことで、担当者が交代しても運用が属人化せず、安定したコストで回し続けられます。料金体系やキャンペーン内容といった業務情報が変わったときに、確実にシナリオへ反映される更新フローを定めておくことが、前章で述べた陳腐化を防ぐ基本となります。
運用ルールに加えて効果的なのが、通話ログの分析を軸としたPDCAサイクルの構築です。顧客が実際にどのような用件で電話をかけ、どの分岐で会話が行き詰まり、どこで有人対応に転送されているのかを通話ログから読み解くことで、認識精度が低い箇所や、シナリオが用意されていない問い合わせを特定できます。この分析結果をもとに、影響の大きい箇所から優先的にシナリオを改善し、その効果を自己解決率や離脱率といった指標で検証して次の改善につなげるサイクルを回せば、限られた運用工数を最も効果の高い作業に集中させることができます。ボイスボットのランニングコストは、単にシステムを維持するための費用ではなく、このPDCAサイクルを回して応答精度と自動化効果を高め続けるための投資であり、この視点を持って運用を設計することが、コストを抑えながら長期にわたって価値を生み出し続ける最大のポイントとなります。
まとめ

本記事では、電話の音声を音声認識でテキスト化し、シナリオや生成AIで判断して音声合成で応答するボイスボットについて、その保守・運用費用・ランニングコストを、提供形態別の相場、ランニングコストに影響する運用面の要素、運用放置時のリスク、コストを抑えるポイントまで具体的な数値とともに解説しました。ランニングコストは提供形態によって大きく異なり、SaaS型・クラウド型は初期費用が無料から数十万円、月額固定費用型で月額1万円から35万円、月額従量課金型で通話1件あたり50円から200円が相場で、バージョンアップやセキュリティ対応は提供元が担うため追加保守費がかかりにくい形態です。一方でフルスクラッチ・カスタム開発型は初期開発費が100万円から1,000万円以上、独自要件が高度なら2,000万円以上に達し、年間運用保守費は初期開発費用の15%から20%が目安で、音声認識モデルの再学習まで含めれば月額50万円から200万円という水準の運用費がかかることもあります。加えて、1分あたり0.07ドルを基準とするAPIの従量課金や、数十万円から100万円近いシナリオ設計費とその後の継続的な改修費が積み上がる点も見落とせません。運用担当者を置かずに放置すれば、応答精度の劣化から離脱率が上がって有人対応コストが膨らみ、シナリオやFAQの更新遅延から誤った情報提供が生じて形骸化に至るため、運用コストは投資を守るための費用と捉えるべきです。コストを抑えるには、安価なSaaS型からのスモールスタートと段階的な発展、そして運用ルールの策定と通話ログ分析によるPDCAサイクルの構築が有効です。具体的な検討は、自社の月間コール数や必要な連携範囲、想定する利用年数を整理したうえで、複数のサービスや開発会社に見積もりを依頼し、保守範囲とランニングコストの内訳を比較することから始めるのがおすすめです。
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・ボイスボット開発の完全ガイド
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
