ボイスボット開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

ボイスボットの保守・運用費用は、月額1万円から200万円程度まで幅があります。その差を生むのは、既製サービスを使うか独自開発するかの提供形態と、通話量、シナリオ改修の範囲です。

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ボイスボット開発の保守・運用費用の全体像

ボイスボットは、提供形態によってコストの発生の仕方が大きく違います。既製のクラウドサービスを使う方法もあれば、要件に合わせて構築するカスタム開発もあります。

SaaS型・クラウド型の月額利用料は1万円から35万円程度です。フルスクラッチ・カスタム開発型は、初期費用が100万円から1,000万円以上かかり、年間保守費は初期開発費の15%から20%が目安です。

予算計画は、自社が選ぶ形態を軸にランニングコストを見積もるところから始まります。

ボイスボットでは、システムの維持費だけでなく人的コストも総コストに含まれます。たとえば、通話ログを分析して認識ミスや会話の行き詰まりを見つけ、シナリオを改善する作業があります。改善を続けなければ応答精度が下がり、顧客が有人対応へ流れてしまうため、この作業も費用として見込んでおく必要があります。

提供形態によるコスト構造の違い(SaaS型・クラウド型 vs フルスクラッチ・カスタム開発型)

ボイスボットの費用構造は、提供形態によって次の二つに分けて考えると、違いがつかみやすくなります。

  • SaaS型・クラウド型:既製サービスを利用し、保守は提供元が担います。
  • フルスクラッチ・カスタム開発型:独自に構築し、保守も自社または開発ベンダーが担います。

SaaS型・クラウド型のサービスには、AI Messenger VoicebotやPKSHA VoiceAgentがあります。また、commuboやekubot VoiceLITEも利用できます。

SaaS型・クラウド型の初期費用は、無料から数十万円程度です。そのうえで、月額利用料の1万円から35万円程度が、中心的なランニングコストになります。

フルスクラッチ・カスタム開発型は、独自の要件に合わせて作るため、CRMや基幹システムとの複雑な連携にも対応できます。初期費用は100万円から1,000万円以上です。

独自の要件が高度になると、初期費用が2,000万円以上に達することもあります。

SaaS型・クラウド型では、音声認識エンジンの精度向上やバージョンアップ、セキュリティパッチの適用が、利用中に自動で進みます。そのため、利用企業が負担する追加の保守費用はほとんどありません。

フルスクラッチ・カスタム開発型では、運用保守や脆弱性対応を継続して行う必要があります。障害対応や音声認識モデルの再学習も、この運用に含まれます。

独自要件や基幹システムとの連携が深いほど、保守の負担とコストは大きくなります。

初期費用とランニングコストの関係

ボイスボットの費用は、導入時と稼働後に分けて見ると、総額を把握できます。

  • 初期費用:システム設定やシナリオ設計として、導入時に一度発生します。
  • 継続費用:シナリオ改修や年間保守として、稼働後も発生します。

SaaS型・クラウド型では、システム設定費が5万円から数十万円かかります。また、顧客との対話を設計するシナリオ設計費は、数十万円から100万円近くかかることがあります。

フルスクラッチ・カスタム開発型の年間保守費は、初期開発費の15%から20%が目安です。たとえば1,000万円で開発した場合、年間150万円から200万円の保守費が続きます。

5年間運用すると、初期費用とは別に750万円から1,000万円が積み上がります。また、初期開発費が高いシステムほど、年間保守費も比例して高くなります。

導入を判断するときは、独自要件と利用年数を踏まえ、総所有コストで比べます。

ポイント

既製サービスで足りるかは、自社の業務を既製の機能で置き換えられるかで判断します。置き換えられない業務が多いほど、独自開発を検討する理由が増えます。

提供形態別の月額・年額相場と費用内訳

ボイスボットの月額固定、従量課金、年間保守費の相場を3枚のパネルで示す図。
月額・1件あたり・初期開発費比率で課金単位が分かれます。

提供形態によって相場は大きく違います。月額数万円から始められるSaaS型がある一方、年間数百万円の保守費がかかる形態もあります。

相場を数字で押さえておくと、形態の選択と予算計画を具体的に進められます。

SaaS型・クラウド型のランニングコスト

SaaS型・クラウド型は、料金の決まり方によって二つのタイプに分かれます。

  • 月額固定費用型:通話件数に左右されず、毎月の予算を管理しやすい。
  • 月額従量課金型:利用件数が少ない企業でも、導入しやすい。

月額固定費用型の相場は、月額1万円から35万円程度です。たとえばNTTドコモの電話自動応答サービスは、設定費10万円のほか、月額3万円からかかります。

DHK CANVASのように、月額15万円の固定料金を明示しているサービスもあります。

月額従量課金型は、実際に応答した通話1件あたり50円から200円程度です。通話量が増えるほど費用が膨らむため、想定するコール数に応じて選びます。

月額利用料とは別に、電話番号の取得費や通話料がかかる場合があります。有人オペレーターへの転送やSMS・メール送信を使うと、オプション料金も上乗せされます。

通話ログを分析してシナリオを改善する運用担当者のコストも発生します。

目安は、月間コール数が数百件を超える場合は固定費型、それ以下であれば従量課金型です。

導入初期の3か月から6か月は従量課金で試し、その後に固定費型へ切り替える進め方もあります。

フルスクラッチ型・カスタム開発型の年間運用保守費

フルスクラッチ型・カスタム開発型は、保守体制と追加開発が年間費用を左右します。

  • 年間保守:稼働環境や障害対応を含む体制の維持費です。
  • 追加運用:再学習や機能拡張のため、継続的な投資が必要です。

年間保守費は、初期開発費用の15%から20%が目安です。たとえば1,000万円で開発した場合は、年間150万円から200万円が保守費用の目安になります。

保守費には、サーバーやクラウド環境、ネットワークインフラの維持費が含まれます。加えて、定期的なアップデートやバグ修正、障害対応も対象になります。セキュリティパッチの適用も、保守の範囲に入ります。

フルスクラッチ型では、これらの作業を自社または委託先が担います。そのため、人的コストが保守費の大半を占める構造になります。

音声認識モデルの再学習やチューニングには、継続的な運用が欠かせません。生成AIや独自エンジンを使う場合は、通話データを追加で学習させてモデルを更新します。

再学習まで含めた運用では、月額50万円から200万円の費用がかかる例もあります。

機能を拡張する場合は、その都度開発費がかかります。SaaS型のように機能が自動で追加される仕組みではないためです。

ポイント

毎月の費用を一定にしたいなら固定費型、利用件数が少ないうちは従量課金型が候補になります。どちらの型でも、年間の総額で比べると判断しやすくなります。

ランニングコストに影響する運用面の要素

通話を中心に、音声認識・生成AI・音声合成のAPIと分課金の基準を示す図。
通話中に呼び出すAPIが増えるほど、利用料が積み上がります。

ランニングコストは、月額固定料金だけでなく運用状況によって変動します。特に、通話量に連動するAPI課金とシナリオ改修費が、金額を大きく左右します。

ここでは、通話量・API課金と、シナリオ改修・追加開発の二つを取り上げます。

通話量・API従量課金(音声認識/音声合成APIの利用料)

通話量に比例するAPI従量課金は、ランニングコストの変動が大きい項目です。

  • 音声認識API:顧客の発話を文字に変換する際の利用料。
  • 生成AI・LLMのAPI:応答内容の判断に使われる利用料。
  • 音声合成API:返答を音声にする際の利用料。

ボイスボットは、通話中に複数の外部サービスを呼び出します。これらのAPIは、いずれも利用した分だけ課金される従量制です。

AI通話の分課金は、1分あたり0.07ドルが一つの基準になります。通話時間と件数が増えるほど、APIの実費は積み上がっていきます。

たとえば平均3分の通話が月間1,000件なら、分課金だけで数万円規模になります。さらに全社で月間数万件を処理すると、API実費も比例して膨らみます。

利用の拡大を前提に、月間コール数の増加を見込んで試算しておきます。

PoCや一部の問い合わせに限定すれば、API実費をごくわずかに抑えられます。このため、限られた範囲で効果を確認し、費用対効果が見えてから対象を広げる方法が有効です。

1件50円から200円の従量課金型のSaaSでは、API実費がその料金に含まれていることもあります。

有人オペレーターへ転送した通話には、BPO事業者のコール単価が別途かかります。この単価は、1件あたり数百円に設定される場合があります。

自動応答だけで用件が完結する自己解決率を高めると、有人対応の分が減り、全体のコストも抑えられます。

シナリオ改修・追加開発コスト

シナリオ改修と追加開発は、応答精度と業務の範囲を保つための継続費用です。

  • シナリオ改修:通話ログをもとに、会話の分岐を見直す作業。
  • 追加開発:新しい問い合わせや外部連携に対応するための開発。

シナリオ設計費は、数十万円から100万円近くかかることがあります。自然な会話を成立させるため、質問への応答内容と分岐を細かく設計する必要があります。

この設計は一度で完成せず、稼働後も改修を続けます。想定外の言い回しや、会話が行き詰まる分岐が通話ログから見つかるからです。

ノーコードで編集できるSaaS型なら、運用担当者が社内で手を入れられ、人件費の範囲に収まります。一方、専門的なチューニングをベンダーに委託すると、都度の作業費が上乗せされます。

新しい問い合わせへの対応や、CRM・予約システムとの新規連携には、追加開発費が必要です。フルスクラッチ型では、追加開発のたびにまとまった費用がかかります。

見積もりには、月額利用料やAPI実費だけでなく、継続的な運用費も含めます。

ポイント

通話量の見込みが立たないうちは、PoCで少ない件数から始めて実費の傾向を見てから、本格導入の予算を決めると判断しやすくなります。

運用担当者が不在のときに生じるリスク

チューニング停止から聞き返し、離脱率上昇を経て有人対応へ進む流れ図。
応答のつまずきが続くと、自動化で減らすはずの対応が戻ります。

担当者を置かず放置すると、導入効果が下がるおそれがあります。通話ログの分析と応答内容の改善を続けることで、ボイスボットは価値を発揮します。

運用コストを削って担当者を置かないと、有人対応への流入が増えることがあります。その結果、顧客満足度が下がり、初期の開発費用が無駄になるおそれもあります。

応答精度の劣化と放置による離脱率上昇

応答精度を保つには、認識ミスの箇所を特定して、定期的に調整することが欠かせません。

  • チューニング停止:聞き返しや、意図と異なる応答が増える。
  • 離脱率上昇:顧客体験が悪化し、有人対応の費用がかさむ。

ボイスボットには、誤認識や誤回答のリスクがあります。自動学習機能の有無にかかわらず、人の手による定期的なチューニングが必要です。

放置すると、顧客の発話を聞き取れず、何度も聞き返す場面が増えます。また、意図と異なる応答も増え、顧客が電話の途中で対話を諦めることがあります。

用件を処理できずに離脱した顧客は、再び電話をかけて有人対応を待つことになります。自動化で削減したはずの人的対応のコストが、かえって増える結果になります。

電話がつながらない、話が通じないといった体験は、企業への不満や機会損失にも直結します。そのため、応答精度のチューニングは、顧客満足と自動化の効果を守る投資だといえます。

シナリオの陳腐化・FAQ更新遅延

業務情報の更新が止まると、シナリオとFAQが古くなり、ボイスボットが形骸化します。

  • 業務情報の陳腐化:古い料金や営業時間を案内し続けてしまう。
  • FAQ更新の遅延:新しい質問に答えられず、有人対応へ流れる。

料金やキャンペーンのほか、営業時間や手続きも、時間とともに変わります。更新が止まると、終了したキャンペーンや変更前の手続きを案内してしまいます。

人間のオペレーターと違い、古いシナリオは内容を機械的に返し続けます。こうなると、顧客が情報を信頼できなくなり、最初から有人対応を求めるようになります。

自動応答率が下がり、有人対応のコストが膨らんで、初期投資が回収できなくなります。

答えられなかった質問にはデータを追加し、満足度の低い応答は改善します。

シナリオとFAQを最新に保つ運用は、あらかじめ費用に組み込んでおく必要があります。

ポイント

担当者を置けないなら、少なくとも通話ログの確認と情報更新の担当を決めておきます。放置期間が長いほど、有人対応への流入が増えるおそれがあります。

ランニングコストを抑えるポイント

提供形態と運用の進め方を工夫すると、ランニングコストを合理的に抑えられます。

ここでは、提供形態の選び方とスモールスタート、運用ルールとPDCAの二点を取り上げます。

提供形態の適正選択とスモールスタート

高額な開発を急がず、必要な範囲から始めることが、費用対効果を高めます。

  • SaaS型から開始:既製サービスで、必要な機能を見極める。
  • 段階的に拡張:自動化の範囲と連携が明確になってから、発展させる。

最初から全問い合わせを自動化しようとすると、シナリオが複雑になりがちです。その結果、開発費用と時間が膨らみ、使いこなせずに終わる失敗につながります。

導入では、よく聞かれる簡単な質問に対象を絞り、最小限のシナリオで始めます。たとえば営業時間の案内や予約受付から始めると、必要な機能を見極めやすくなります。

SaaS型の運用が定着し、必要な連携が明確になってから、カスタム開発を検討します。

月間コール数が少ない段階では、1件50円から200円の従量課金型が候補になります。件数が数百件を超えて固定費が割安になれば、月額固定型へ切り替えます。

月間コール数と必要な連携の範囲を基準にして、必要以上の機能への投資は避けます。

運用ルールの策定とPDCAサイクルの構築

運用ルールとPDCAを費用に組み込んでおくと、ボイスボットを継続して育てられます。

  • 運用ルール:担当者と、シナリオや情報の更新責任を文書で定める。
  • 通話ログのPDCA:課題を分析し、効果の大きい箇所から改善を進める。

誰がログを確認し、どの頻度でシナリオを見直すかを決めておきます。あわせて情報更新の責任者を明文化しておくと、担当者が交代しても属人化を防げます。

料金体系やキャンペーンが変わったときの更新の流れも、あらかじめ定めておきます。

通話ログからは、顧客の用件や、会話が行き詰まる分岐、有人対応へ転送された箇所が読み取れます。これにより、認識精度が低い箇所や未対応の問い合わせを特定できます。

影響の大きい箇所から改善し、自己解決率や離脱率で効果を確かめます。限られた工数を効果の高い作業に集中させることが、コストを抑えることにつながります。

ランニングコストは、応答精度と自動化の効果を高め続けるための投資でもあります。

ポイント

範囲を広げるかどうかは、今の対象で自己解決率と離脱率が安定しているかで判断します。安定していないうちに広げると、改善の手が回らなくなるおそれがあります。

まとめ

保守・運用費用は、提供形態と通話量を軸に、放置リスクや抑制策も含めて整理できます。

SaaS型・クラウド型は、初期費用が無料から数十万円です。月額固定費用型は1万円から35万円、従量課金型は1件50円から200円が相場です。バージョンアップやセキュリティ対応は提供元が担い、追加の保守費がかかりにくい形態です。

一方、フルスクラッチ・カスタム開発型は、初期費用が100万円から1,000万円以上です。独自要件が高度なら2,000万円以上に達し、年間保守費は初期費用の15%から20%が目安です。さらに、音声認識モデルの再学習まで含めると、月額50万円から200万円の例もあります。

API従量課金は1分あたり0.07ドルが基準で、シナリオ設計費は数十万円から100万円近くかかります。運用担当者が不在だと、応答精度の劣化や離脱率上昇で有人対応費が膨らみます。また、シナリオやFAQの更新が遅れると、誤った情報提供が生じて形骸化します。

費用を抑えるには、SaaS型から始めて段階的に発展させる方法が有効です。また、運用ルールを定め、通話ログ分析によるPDCAサイクルを構築しておくことも欠かせません。

検討時は、月間コール数、連携範囲、利用年数を整理します。そのうえで、複数のサービスや開発会社に見積もりを依頼し、保守範囲と費用内訳を比較します。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。