水道料金関連システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

水道料金関連システムの開発は、現状把握から切替・運用改善までの五段階で進めます。開発費は、対象業務、データ移行、外部連携の範囲によって変わります。公開されている調達事例では、税抜2,934万円から税込5,252.5万円までです。

費用の多くは、要件定義、現行調査、データクレンジング・移行にかかる人件費と工数です。

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水道料金関連システムの概要

水道料金関連システムを中心に、台帳管理、検針・計算、請求・収納、窓口・連携の4領域を示す図解
業務範囲を4領域に分けると、対象の抜けを確認しやすくなります。

水道料金関連システムは、水栓・使用者・検針値を管理し、水道料金を計算して請求・収納する業務システムです。請求書の発行だけでなく、料金計算と収納までを対象に含みます。

住民と接する窓口と、自治体内部の基幹業務をつなぐため、両方の業務を見通して開発を進める必要があります。

料金調定・収納から窓口対応までを一体で扱う範囲

料金関連システムの対象は、台帳管理から料金計算、収納、窓口対応までの業務です。

  • 台帳管理:契約者、所有者、給水装置、水栓、メーターの情報
  • 検針・計算:検針値の管理と料金の計算
  • 請求・収納:請求通知と収納方法への対応
  • 窓口・連携:窓口対応と関連業務との連携

料金計算では、用途や口径、従量区分などに加え、減免や休止も踏まえて調定します。

請求・収納では、納入通知書、口座振替、コンビニ収納に加えて、クレジットカードとスマホ決済にも対応します。

入金消込や未収金・滞納の管理も対象に入ります。

また、窓口での契約照会や申請受付にも対応します。

下水道使用料や公営企業会計、住民向けポータルと一体で調達されることもあります。

特に、開発の前に対象業務の範囲を確定することが、最初の分かれ目になります。

水道システムと料金システムの違いと混同の防止

水道システムと水道料金関連システムは、担う業務も、求められる安全性の性質も異なります。

  • 水道システム:浄水場や配水の監視制御を担い、安全な運転継続を重視。
  • 料金関連システム:住民情報、決済、会計、窓口を担い、個人情報保護と収納の正確性を重視。

両者をつなぐ場合は、境界をまたぐ通信やアカウントを含めて一体で設計する必要があります。ログや委託先の管理も、同じ設計に含めます。

特に、検討の最初の段階で担当部署とシステムの境界を明確にしておくと、後工程の手戻りを防げます。

ポイント

対象業務を台帳管理から窓口対応までどこまで含めるかと、水道システムとの境界が、発注側と開発会社の間でそろっているかを見てください。

水道料金関連システム開発の進め方

水道料金関連システム開発を、現状把握、要件定義、RFI・RFP、移行・検証、切替・運用改善の順に示す図解
各段階で決めた事項を次へ渡す流れが、後戻りを抑えます。

開発は五段階で管理し、現状把握と要件定義から始めます。そのあと、RFI・RFPや移行・検証を経て、切替・運用改善に進みます。各段階で確定させる事項を先に決めておくと、抜け漏れや工程の後戻りを抑えやすくなります。

現状把握での業務フローと例外処理の洗い出し

現状把握では、業務フローと料金表を中心に、現行の業務を洗い出します。例外処理や帳票、外部連携も、この段階でまとめて整理します。

  • 標準業務:検針から請求までの基本フロー
  • 料金例外:減免、休止、漏水、共同住宅のケース
  • 契約変更:名義変更、下水道併徴、還付の扱い
  • 収納対応:滞納、障害・災害時の業務

利用者数や水栓数、検針方式に加えて、データの保持年数も押さえます。

ここで作る業務一覧は、後のRFPや受入テストの土台になります。

要件定義での過去データによる料金計算テストケースの作成

要件定義では、必須機能と将来機能を分けたうえで、過去の請求データから料金計算のテストケースを用意します。

  • 機能の優先度:必須機能と将来機能の区分
  • 計算テスト:過去の請求データから作るケース
  • 移行条件:データ項目、外部連携、将来の乗り換え条件の固定

国土交通省が推進する水道情報活用システムでは、機器やシステム間でデータを横断的に扱う標準プラットフォームの考え方が示されています。また、インターフェースとデータプロファイルを整える方向性も挙げられています(出典: 国土交通省「上下水道:DX活用の推進」、2026年確認)。

現行ベンダーの画面をそのまま再現するより、データ項目、外部連携、将来の乗り換え条件を先に固めておくほうが、後の手戻りを減らせます。

RFI・RFPでの標準IFとTCOを使った比較条件の設定

RFI・RFPでは、提案の前提が違うと、各社の案を比べにくくなります。

  • 連携仕様:標準仕様、標準IF、API、データ辞書
  • 移行・出力:CSV出力と移行サンプルの扱い
  • 運用支援:SLAと障害時の一次窓口
  • 契約終了:契約終了時のデータ返却条件

これらの条件を提案依頼書に明記しておくと、各社の前提をすり合わせられます。さらに、初期費用だけでなく、5年間の総保有コストと年間運用費の上限も比較条件に入れます。

ポイント

各段階で決めた事項が次の段階へ渡っているか、特に過去データのテストケースと標準IF、TCOの条件がRFPまでに固まっているかが、手戻りの多さを左右します。

データ移行と並行稼働の進め方

並行稼働で照合する請求額、収納実績、会計連携の三つの結果を示す図解
三つの結果を並べると、差異が出た領域を切り分けやすくなります。

データ移行と並行稼働は、切替で特にトラブルが起きやすい工程です。そのため、名寄せとクレンジングを移行対象データごとに複数回行い、請求額、収納、会計連携を突合します。

名寄せとクレンジングの複数回の実施

旧システムの契約者や水栓、検針履歴には、表記の揺れや重複などが残っていることがあります。

  • 抽出:移行対象の契約者、水栓、検針履歴
  • 変換:表記ゆれや重複、異常値、欠損の整理
  • 検証・再移行:結果の確認と、必要に応じた再移行

この流れを複数回繰り返し、件数が合うかだけでなく、料金計算の結果も旧システムと照合します。要件定義で作った過去の請求データのテストケースを再利用すると、移行検証に生かせます。

並行稼働での請求・収納・会計連携の突合

並行稼働では、同じ検針データを新旧システムで処理し、その結果を比べます。

  • 請求額:新旧の料金計算結果
  • 収納実績:新旧の入金結果
  • 会計連携:連携結果の差異の記録

差異が出たら、料金表の解釈違いかデータ移行の誤りかを切り分けます。突合結果を記録し、原因を分類する運用をあらかじめ決めておくと、切替直前の混乱を防げます。

外部連携先を含めた結合試験

外部連携先を含めた結合試験は、並行稼働と同時に進めます。

  • 金融・収納:金融機関と収納代行
  • 検針機器:検針端末とスマートメーター
  • 住民接点:住民向けポータル

東京都水道局は、水道スマートメータ先行実装プロジェクト推進プランに基づき、2022年度から2024年度で約13万個を先行導入し、2025年度から2028年度に約100万個を設置する計画を示しています。

2030年代の全戸導入も見据えています(出典: 東京都水道局「水道スマートメータに係る取組」)。

たとえば、スマートメーターや新しい決済手段を段階的に接続する自治体では、連携先の追加を見込んだ試験計画を先に立てます。

ポイント

名寄せや並行稼働の結果を、移行の誤りと料金表の解釈違いに分けて記録できているかどうかで、切替直前の混乱の大きさが変わります。

切替とリリース後の運用改善の進め方

切替では、料金改定日や検針締めと切替日をずらし、ロールバック手順と住民告知を準備します。問い合わせが増えたときの体制も用意しておくと、切替を運用改善の起点として進められます。

検針締めと料金改定日を避けた切替日の設定

検針締め日や料金改定日と切替日が重なると、請求誤りの原因を切り分けにくくなります。

  • 検針サイクル:区切りが良い日の選定
  • 繁忙期:業務が集中する時期との重なりの回避
  • 料金改定:料金改定日との重複の回避

切替日を決めたら、ロールバック手順、旧システムへの切戻し条件、住民への告知方法を、あらかじめ文書にしておきます。

切替直後の問い合わせ増加を前提にした体制づくり

画面や請求書の見た目が変わると、住民からの問い合わせが一時的に増える傾向があります。

  • 窓口体制:窓口とコールセンターの厚めの人員配置
  • 回答準備:よくある質問への回答の事前作成
  • 改善記録:問い合わせ、収納率、未収金の定期的な分析

問い合わせへの対応を準備しておくと、切替直後の現場の負担を抑えられます。改善が必要な機能は、次期改修の候補として別に残しておきます。

費用相場とコストの内訳

水道料金関連システム単体の全国的な相場は、公開されていません。そのため、公開されている自治体の調達額を手がかりに、検討の段階で参考にできる費用感を紹介します。

公開調達における数千万円規模の事例

公開調達の事例を見るときは、業務範囲や契約条件を確認したうえで、費用感を読み取ります。

  • 有田市:予定価格は税抜2,934万円です。
  • 春日那珂川水道企業団:導入費用の提案上限は税込5,252.5万円です。

有田市の「水道料金システム及び公営企業会計システム構築業務」は、構築期限が2026年3月31日です。賃貸借期間は2026年4月から2031年3月までの60か月です(出典: 有田市の公告資料)。

春日那珂川水道企業団の更新業務は、調査・導入が2026年10月までです。また、保守は本稼働後5年間で、導入費用とは別に月払いまたは年払いです(出典: 同企業団の実施要領)。

これらは業務範囲の異なる個別事例で、全国平均ではない点に注意して参考にします。

現状把握の工程に比例する人件費と工数

開発費用の多くは人件費と工数で、その量は、現状把握で洗い出した業務や例外処理、外部連携の多さに比例します。

  • 業務整理:要件定義と現行調査の工数
  • データ対応:データクレンジングと移行の作業量
  • 周辺対応:外部連携、帳票作成、テストの工数

現状把握の段階で例外処理や外部連携を洗い出しておくと、後工程の仕様変更や手戻りが減ります。その結果、総費用も抑えられます。

ポイント

初期費用だけでなく、保守やクラウド利用料を含めた5年程度の総保有コストで比べられているかが、費用判断の要になります。公開事例の金額は業務範囲が異なるため、範囲とあわせて読みます。

見積もりを取る際のポイント

見積もりは、工程や費目ごとに分けて依頼します。要件定義、現行調査、データクレンジング・移行の工数は工程ごとに、ライセンスまたはSaaS利用料、環境構築は費目ごとに示してもらいます。

外部連携や帳票、テストは、それぞれ分けて示してもらいます。教育や切替支援、保守と、クラウド利用料や収納代行手数料も、費目ごとに分けます。

要件の明確化と仕様書の準備

見積もり依頼の前に、各社が同じ条件で確認できる資料を用意します。

  • 業務資料:業務一覧の整理
  • 計算資料:料金計算のテストケース
  • 連携資料:外部連携先の一覧
  • 移行資料:データ移行対象の整理

仕様が曖昧なまま「一式」で依頼すると、契約後に想定外の追加費用が発生しやすくなります。

統一条件による複数社の比較と発注先の選び方

複数社を比べるときは、初期費用と継続費用を同じ条件で並べます。

  • 初期費用:導入時にかかる費用
  • 総保有コスト:5年程度で見た費用の合計
  • 契約条件:標準IFとデータ返却条件

保守やクラウド利用料、収納代行手数料まで含めて比べると、各社の金額の差が見えやすくなります。標準IFへの対応状況やデータ返却条件も、進め方を左右する重要な比較軸です。

契約前に確認するリスクと対策

見積もりの対象範囲と、契約後に追加費用となる条件は、契約の前に確かめておきます。

  • 費用範囲:含まれる範囲と含まれない範囲の区分
  • 制度対応:制度改正や料金改定への対応費用
  • 繁忙期対応:繁忙期の追加対応の条件
  • 障害対応:障害時のサポート体制

水道施設の技術的基準を定める省令は、運転管理用コンピューターにサイバーセキュリティ確保を求めています。国土交通省は、「水道分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」を2025年に策定しました。

同ガイドラインは2026年5月13日に第二版へ改定されています(出典: 国土交通省「上下水道:水道分野におけるサイバーセキュリティ対策」)。

料金システムが運転制御系と直接つながらない場合でも、住民の個人情報や収納情報を扱います。そのため、見積もりの段階から、最小権限や多要素認証の仕組みを確認します。通信と保存データの暗号化、操作ログの保存も、あわせて確かめておきます。

ポイント

要件が一式でまとめられていないか、業務一覧やテストケース、連携先、移行対象の資料がそろっているかを見ると、各社を同じ条件で比べられます。

よくある質問(FAQ)

最後に、水道料金関連システムの進め方について、担当者からよく聞かれる質問に順に答えます。

水道料金関連システムの開発期間はどれくらいですか?

開発期間は、工程ごとの作業量に、検針や予算などの条件を合わせて見積もります。

  • RFI・概算見積もり:1〜2か月
  • 要件定義:2〜4か月
  • 設計・設定・連携・移行準備:4〜8か月
  • 総合テスト・並行稼働・教育・切替:2〜4か月

全体では、標準パッケージで6〜9か月、個別改修や統合を含む更新で9〜18か月程度が一般的です。ただし、検針サイクルや料金改定日、年度末といった日程によって延びる可能性があります。議会・予算やデータ品質も、延びる要因になります。

パッケージとスクラッチ開発のどちらを選ぶべきですか?

選ぶときは、標準業務への適合、クラウドの条件、独自業務への対応力を比べます。

  • パッケージ:業務ノウハウと法制度対応を取り込みやすい方式
  • 標準クラウド:更新、災害対策、拡張性の利点
  • スクラッチ:独自業務に合わせやすい方式

パッケージは、自治体固有の例外を標準業務へ寄せる判断が必要です。

標準クラウドは、回線の扱いやデータの所在地、どこまでを誰が受け持つかを契約で確認します。障害時の代替手段も、あわせて確かめておきます。

スクラッチは、初期費用や保守要員、将来の移行費が膨らみやすい方式です。そのため、標準プラットフォームと料金アプリを分け、ベンダーを乗り換えられるデータ形式にしておくと、将来の費用を抑えやすくなります。

既存データを失わずに移行できますか?

移行は可能ですが、対象データの範囲と変換方法を事前に決めておく必要があります。

  • 対象範囲:移行するデータの決定
  • データ整備:名寄せ、欠損・重複・異常値のクレンジング
  • 移行検証:並行稼働での請求額、収納、会計連携の突合

移行後の不整合は、一定期間の並行稼働で早く見つけられます。また、抽出から再移行までを複数回行う前提で、計画を組んでおいてください。

まとめ

水道料金関連システムの開発は、現状把握から切替・運用改善までの五段階で進めるのが基本です。

進め方の各段階で確定する事項

各段階では、前の段階で決めた事項を次に渡しながら、順に確定させます。

  1. 現状把握:業務と例外処理の洗い出し
  2. 要件定義:過去データによるテストケースの用意
  3. RFI・RFP:標準IFとTCOの比較条件の決定
  4. 移行・検証:名寄せと並行稼働の方法の決定
  5. 切替・運用改善:告知とロールバック手順の決定

段階ごとに何を出すかを決めておくと、後工程での手戻りを防ぎやすくなります。

複数年の視点での費用と体制の計画

費用と体制は、公開調達額や継続費用、連携とセキュリティの条件を合わせて計画します。

  • 公開調達額:自治体の公開事例
  • 総保有コスト:初期費用に加えた5年程度での比較
  • 契約条件:標準IF、データ返却、セキュリティ

見積もりの条件を早い段階で固めておくと、進め方全体の手戻りを抑えられます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。