配水管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

配水管理システム開発は、業務系と制御系を分けて考えたうえで、現行業務の棚卸しから要件定義、移行試験、PoC、段階導入を経て本稼働へ進めるのが基本の流れです。

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配水管理システムの定義

配水管理システムを中心に、台帳、センサー監視、業務記録、配水池・ポンプ場を結んだ図
設備情報と日々の業務記録が同じ管理の輪に集まります。

配水管理システムは、浄水場から配水池・ポンプ場を経て家庭へ水を届ける状態を管理します。管路・設備の台帳、センサー監視、修繕・工事の業務記録を横断して扱います。

自治体や水道事業体の業務に応じて、複数の機能を組み合わせて構築する仕組みの総称です。特定の一製品を指す言葉ではありません。

業務系と制御系の切り分け

配水管理システムは、管路台帳やGISを中心とする業務系と、ポンプ・水圧・水位を遠隔監視する制御系(OT)に分けられます。

  • 業務系:クラウドやローコードツールと相性がよく、比較的短期間で立ち上げやすい領域
  • 制御系:可用性と安全性を優先し、ネットワーク分離などの対策が必要

制御系では、サポート終了OSを残さないことも欠かせません。

また、国土交通省は2026年5月13日、安全ガイドラインを第二版へ改定しました。同指針は、水道施設の運転を管理する電子計算機にサイバー対策を求めています(出典:国土交通省「水道分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」第二版、2026年5月)。

事業体の規模に応じた対象範囲の切り分け

事業体の規模によって、最初に導入する機能や連携範囲は異なります。

  • 小規模:管路台帳と修繕受付のクラウド化から着手し、遠隔監視やAI分析は将来のオプションとして残します。
  • 中規模:管路GIS・台帳・現場モバイル、料金や工事システムとの連携までを一体で検討するケースが多くあります。
  • 大都市・広域:遠隔監視、制御系連携、複数区域、BCP、24時間運用まで含めた大規模プロジェクトです。

自団体の規模を先に整理しておくと、後続の要件定義がぶれにくくなります。職員数や現場担当者のITリテラシー、委託事業者との情報共有の範囲も、規模感の一部として押さえておきます。そうしておくと、後工程の教育計画や運用体制も設計しやすくなります。

ポイント

業務系から始めるか、制御系も含めて進めるかは、自団体の規模と対象範囲を照らして決めます。迷ったときは、効果を測りやすい業務系の領域から検討すると進めやすくなります。

配水管理システム開発の進め方

配水管理システム開発の要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの順を示す図
開発は企画から設計を経てテスト・リリースへ進みます。

開発は、現行業務の棚卸しから本稼働まで六つの工程を順に進めるとスムーズです。

  1. 現状の業務とデータを棚卸しする
  2. 要件を定義する
  3. データ移行を試験する
  4. PoCを行う
  5. 段階的に導入する
  6. 本稼働へ移行する

データ移行の試験を後回しにすると、稼働直前に紙図面の座標補正や重複データの整理が発生しやすくなります。そのため、移行試験は早い段階から着手します。

要件定義・企画フェーズ

まず発注側は既存業務を一覧にして、利用者と更新頻度、停止を許容できる時間を明確にします。データの所有者も、あわせて確認しておきます。

  • 台帳・施設:管路台帳、配水池・ポンプ、図面
  • 現場業務:漏水・修繕受付、工事、作業
  • 連携・記録:料金・給水装置、センサー、帳票

対象範囲は、全業務を一度に統合せず段階的に絞り込む判断が有効です。

たとえば、管路GISと台帳、修繕受付、現場モバイルなど、効果を測りやすい領域から始めます。一方で、遠隔監視やAI分析は、PoCや段階導入に回します。

設計・開発フェーズ

データ移行の試験は、本開発と並行して進めます。

  • 図面・データ:スキャン、座標補正、管種・口径・施設コードの標準化
  • 品質・責任:重複・欠損データの扱い、移行後の担当部署

発注側は、図面やデータの移行条件を先にRFPへ明記します。

非機能要件も、機能要件と同じ重みで検討します。対象には、可用性、RTO・RPO、監査ログがあります。さらに、権限分離やバックアップも含めます。

発注側は、災害時のスタンドアロン運用や、通信断時の現場入力も要件に含めます。

テスト・リリースフェーズ

熊本市上下水道局は、kintoneを活用した水道管路維持管理システムを2025年10月に運用開始し、年間約4,000件の漏水等対応を扱います。紙と複数のExcelに分かれていた情報を一つにまとめ、修繕案件を受託者と共有できるようにしました。

また、積算情報の取込にも対応しています(出典:株式会社NTTデータ九州「熊本市上下水道局様にてkintoneによる水道管路維持管理システムを導入」、2025年)。職員が運用画面を見ながら要件を具体化するアジャイル方式は、業務を言語化しにくい現場で特に有効です。

福岡市は2024年5月から、人工衛星の反射波データとAI判定機能付きIoTセンサを組み合わせた漏水調査を導入しました。漏水の可能性がある区間を継続的にモニタリングする体制です(出典:福岡市「AI搭載のIoTセンサシステムを活用した水道管漏水調査」)。

本番移行の前には、旧システムを一定期間参照できる状態に置き、並行して稼働させます。

  • データ照合:移行後の内容の突き合わせ
  • 利用者訓練:職員と委託業者への研修、問い合わせ窓口の設置
  • KPI設定:漏水受付から現地確認までの時間などを指標にして、本番へ移行

ポイント

移行試験は設計・開発と並行して早めに計画しておくと、稼働直前の座標補正や重複データの整理に追われにくくなります。段階導入の範囲は、工程の途中で広げすぎないことが目安です。

費用相場とコストの内訳

配水管理システム開発費用の五つの内訳と、それぞれの全体に対する割合の範囲を並べた図
内訳ごとの範囲をそろえると、見積もりの配分を見比べられます。

費用は、対象区域や職員数、既存データの状態によって大きく変わります。移行範囲や保守年数も、費用を左右する要因です。そこで、公開されている入札・契約情報を目安にすると、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

費用の内訳は、次の割合が一つの目安になります。

  • 要件定義・基本設計:全体の10〜15%
  • アプリケーションの設定・連携開発:全体の25〜40%
  • データ整備・移行:全体の15〜30%
  • インフラ・セキュリティ・機器:全体の10〜25%
  • 試験・教育・導入支援:全体の10〜20%

人件費と工数

唐津市の2025年度「水道施設情報管理システム入力業務」は税込305.8万円で、既存システムへの追加データ入力が中心の小規模案件です(出典:唐津市入札公告情報、2025年度)。一方で、吉野川市の2026年度「水道管路管理システム構築業務」は、管路GISと台帳整備を含む設計金額4,847万円(税抜)の中規模構築です(出典:吉野川市「令和8年度 水道管路管理システム構築業務」)。

要件定義から本稼働までの期間は、導入の規模によって変わります。

  • 簡易なクラウド導入:3〜6か月
  • 中規模の管路GIS・データ移行:9〜18か月

初期費用以外のランニングコスト

東大阪市の2025年度「水道管路情報システム保守・データ管理業務委託」は、保守とデータ管理を含む税込2,352.9万円です(出典:東大阪市入札公告情報、2025年度)。

神戸市水道局は2026年、管路情報管理と給水設計台帳管理の再構築・運用保守を発注しました。なお、契約期間は締結日から2038年3月31日までで、金額は税抜10億4,012万5,800円です(出典:神戸市水道局「管路情報管理システム/給水設計台帳管理システム再構築・運用保守業務」、2026年)。

予算は、初期構築費だけでなく、導入後にかかる費用まで含めた総額で検討します。

  • 保守
  • 運用
  • 教育
  • 将来の改修

ポイント

金額を比べるときは、初期費用だけでなく保守や教育を含めた総額で見ます。公開案件は規模によって金額の幅が大きいため、同じ規模の案件と並べて見ると判断材料になります。

見積もりを取る際のポイント

複数社の見積もりは金額の大小だけで決めず、含まれる範囲をそろえて比較します。

要件明確化と仕様書の準備

仕様書には、対象の管路延長や施設数を明記します。既存データの形式と品質、移行対象も盛り込みます。また、非機能要件や、教育・運用の引き継ぎの範囲も記載します。

  • 移行・連携:データ項目、成果物、API・標準形式
  • 運用・保全:バックアップ、ログ、SLA
  • 契約終了:データ返却の方法

これらをRFPのチェックリストとして使うと、各社の回答を同じ条件で比べられます。

複数社比較と発注先の選び方

候補は、知名度よりも自団体の課題に合う得意領域から整理します。

  • 管路・都市インフラ:管路GIS、都市インフラGIS
  • 業務・基盤:クラウド・ローコード、自治体SI
  • 分析・制御:管網解析、AI劣化診断

基幹システム会社と専門分析会社を組み合わせる協業も選択肢です。

注意すべきリスクと対策

データや仕様をベンダーに囲い込まれると、次回の更新時に相見積もりを取りにくくなります。国土交通省のDX方針も、水道分野のデータ連携の難しさとベンダーロックインを課題として挙げています(出典:国土交通省「上下水道:DX活用の推進」)。

  • データ返却:標準形式で返せるか
  • 仕様の開示:API仕様を示せるか
  • 移行支援:契約終了時のサポート内容

安価な提案では、要件定義やデータ移行が含まれない場合もあります。教育や24時間サポートは、提案に入らないこともあります。そのため、将来発生しうる追加費用まで比べます。

各社の提案を「含む・含まない・別途見積」の三区分で並べて判断します。

ポイント

各社の見積もりは、金額より先に含まれる範囲をそろえて比べます。データ返却や移行支援の条件を確かめておくと、契約後の費用を見通しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

開発を進める担当者から多く寄せられる質問に回答します。

配水管理システムの開発期間はどれくらいですか?

要件定義から本稼働までの期間は、システムの規模や連携範囲で異なります。

  • 簡易なクラウド導入:3〜6か月
  • 管路GIS・台帳・現場モバイルの中規模:9〜18か月
  • 遠隔監視・制御連携などを含む大規模:24〜36か月以上

データ移行の範囲が広いほど期間は延びる傾向があるため、移行試験は早めに始めます。

パッケージとスクラッチ開発、どちらを選ぶべきですか?

方式は、優先したい業務や既存環境に合わせて選びます。

  • パッケージ:標準業務を短期間・低リスクで始めたい場合向け
  • クラウド:ハード更新や拠点間の共有の負担を減らしたい場合向け
  • ローコード:業務受付・帳票・承認を素早く変えたい場合向け
  • スクラッチ:既存の水運用・制御・複雑な連携を維持しながら、独自要件を実装したい場合向け

業務系はクラウドやパッケージ、制御系は要件に応じて閉域・オンプレミスにする、ハイブリッド構成も選べます。

どの方式でも、両系統間では必要なデータだけを安全に受け渡します。業務系と制御系を同一ネットワークに置かないことが基本方針です。

小規模な水道事業体でも導入できますか?

導入できます。たとえば唐津市の追加データ入力業務のように、既存システムへのデータ整備から始める小規模案件は、約300万円台で実施されています。

  • 着手領域:最初から全機能を統合せず、台帳整備や修繕受付など、効果を測りやすい領域から始めます。
  • 導入方法:対象を絞ったうえでの段階的な導入

この進め方は、小規模事業体に適しています。

ポイント

期間も方式も、優先したい業務や既存環境、規模によって変わります。迷ったときは、この三つを先にそろえると比べやすくなります。

まとめ

開発は、業務系と制御系を分けて考え、現状の棚卸しから要件定義、移行試験、PoC、段階導入を経て本稼働へ進みます。熊本市のkintone事例のように、職員が運用画面を見ながら要件を具体化する進め方は、紙とExcelに業務が分かれている現場で特に有効です。

費用と期間の比較の仕方

公開案件の金額は、追加入力業務の300万円台から中規模構築の4,847万円、大規模再構築の10億円超まで幅があります。

初期費用だけでなく、データ整備やセンサー・通信の費用も含めた総額で比べます。教育費や保守費も、同じ総額の内訳として見比べます。

仕様書とRFPの整備

発注準備から契約まで、次の順に進めます。

  1. 対象業務を棚卸しし、非機能要件とデータ移行の試験計画をまとめます。
  2. 複数社に同じ条件でRFPを提示し、得意領域の異なるベンダーを比べます。
  3. 標準形式のデータ返却やAPI開示など、ロックイン対策を契約時に確認します。
  4. 業務系と制御系で担当部署を分け、両者のデータ連携方法を共通要件にします。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。