医療・介護のAI活用は、現場の課題を洗い出し、小さく試して効果を確かめながら広げていく流れで進めるのが基本です。人手不足と記録・事務作業の負担が続くなかで、この流れを押さえておけば導入の失敗を抑えやすくなります。
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AI活用の進め方や関連テーマは、次の記事で詳しく解説しています。
- ・医療・介護のAI活用の進め方|導入ステップと成功のポイント
- ・医療・介護のAI活用に強い開発会社・ベンダー6選|選び方も解説
- ・医療・介護のAI活用事例|診断支援・記録作成・問診を変える実例
- ・医療・介護のAIによる業務効率化・自動化|成果を出す進め方
AIシステム開発の工程ごとの進め方と注意点については、無料ホワイトペーパー「AIシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
医療・介護にAI活用が求められる背景
医療・介護分野では、デジタル化の遅れと人材不足が同時に進んでいます。現場の職員は、本来のケアよりも書類作成や記録入力に多くの時間を費やしているのが現状です。こうした課題を解消する手段として、AI・生成AIの活用が急速に注目を集めています。
深刻化する人材不足と業務過多
2040年には介護職員が約69万人不足すると、政府調査で予測されています。既存のスタッフは、より少ない人数でより多くの利用者をケアしなければならず、その状況が続いています。
医療現場でも、医師・看護師の働き方改革が義務化されるなか、間接業務の量が大きな課題になっています。たとえば、診察後のカルテ入力や退院サマリーの作成、診療報酬の請求業務などが挙げられます。
こうした背景から、定型業務をAIに任せ、専門職が本来のケアや医療行為に集中できる環境をつくることが、業界全体の急務になっています。テクノロジーの導入は、人材不足の一時的な補完にとどまらず、離職防止やサービス品質の均一化にもつながると期待されています。
国の政策とガイドラインが後押しする導入機運
厚生労働省は、医療情報の安全管理に関するガイドライン(「3省2ガイドライン」)を2023年に第6.0版へ改訂し、サイバーセキュリティ対策を医療機関に実質的に義務化しました。また、医療AIプラットフォーム技術研究組合は、「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」を2024年に公表し、生成AIの安全な活用に向けた具体的な指針を示しています。
さらに、介護施設向けには「介護テクノロジー導入支援事業(介護ロボット・ICT導入支援補助金)」が都道府県ごとに実施されています。導入費用の1/2〜3/4を補助する手厚い制度もあり、制度面と財政面の双方で医療・介護のAI活用を後押しする環境が整ってきています。導入を検討する組織にとって、取り組みやすい時期が来ています。
医療・介護でのAI活用の進め方

医療・介護の現場でAI導入を成功させるには、現場の課題を起点に、段階を踏んで進めることが大切です。大規模なシステムを一度に導入するより、小さな範囲で試して効果を確かめながら広げていく進め方が、現場の受け入れやすさを高め、失敗のリスクを抑えます。
導入ステップの全体像
AI導入は、大きく5段階で進めるのが基本です。「課題の整理」「活用領域の選定」「試験導入(PoC)」「本格導入」「運用定着」の順です。まず、現場の業務フローを洗い出し、どの業務にどれだけ時間がかかっているかを一覧にします。たとえば、医療事務では月間のレセプト点検工数を、介護施設ではケアプラン作成や記録入力の時間を計測しておくと、後のROI評価で比べやすくなります。
課題が明確になったら、AIで解決できる業務を絞り込みます。最初は、電子カルテの音声入力支援や送迎計画づくりなど、現場の抵抗が少なく効果を実感しやすい領域から着手するのが成功の鍵です。そのうえで、試験運用(PoC)を2〜3カ月程度実施し、現場スタッフの声を集めながら本格展開の是非を判断します。
よくある失敗パターンと回避策
よく見られる失敗は、大学病院向けの高機能システムを小規模な地域クリニックや介護施設にそのまま導入してしまい、操作が複雑すぎて使われなくなるケースです。自施設と同規模・同業態での導入実績が豊富なシステムを選ぶことと、IT操作に不慣れなスタッフでも直感的に使えるかを事前に確かめることが欠かせません。
また、既存の介護ソフト(ワイズマン・ほのぼの・カイポケ等)や電子カルテシステムとデータの互換性がない場合、二重入力が発生してかえって手間が増えてしまいます。導入前にAPI連携やCSV連携の可否を必ず確かめ、ベンダーに無料トライアル期間を設けてもらいます。現場スタッフが実際に触れる機会を確保できるかが、本格導入後の定着率を左右します。
失敗を避けるための進め方は、次の記事で詳しく解説しています。
医療・介護のAI活用事例

医療・介護の現場では、すでに多様なAI活用が実践されています。医療現場では診療記録の作成や問診、レセプト管理で、介護現場では送迎計画やケアプランの作成、夜間の見守りで活用が進んでいます。これらの現場では、事務負担の大幅な削減から利用者ケアの質向上まで、幅広い成果が報告されています。
医療現場での活用事例
医療現場では、診察中の音声を自動で文字起こしして電子カルテの下書きを生成するシステムの導入が進んでいます。その結果、診察後に医師が記憶を頼りに手入力する時間が大幅に減り、大学病院から地域のクリニックまで活用が広がっています。また、退院時看護サマリーにAIを活用した事例では、作成時間が平均約30%削減されたと報告されています。
問診でも、患者がスマートフォンや専用タブレットで症状を入力すると、AIが対話的に追加質問を行い、電子カルテへ自動で連携する仕組みが実用化されています。ある病院では、問診時間が約3分の1に短縮され、月200時間相当の業務時間が創出されたと報告されています。
レセプト管理分野では、AIが病名と治療行為・処方の整合性を瞬時にチェックし、年間数百時間規模の請求業務の削減につながった実証事例も出てきています。
介護現場での活用事例
介護現場では、送迎スケジュールを最適に組む作業にAIが使われ、従来は1日がかりだった計画作成が約15分(95%削減)で完了した事例が報告されています。また、ケアプラン作成では、アセスメントデータをもとにAIが過去の成功事例から最適なプラン原案を生成し、作成時間が1〜2時間から20〜30分程度に短縮されるとされています。
夜間の見守りでは、生体センサーとAIカメラを連携させ、利用者の呼吸・睡眠深度・体動をリアルタイムで監視しています。AIが「熟睡中」と判断した利用者には、定時の訪室を省略する運用が進んでいます。この結果、夜間巡回回数が約50%削減され、同時に入居者の睡眠の質も向上したという効果が確認されています。
看護管理業務では、RPAとAIを組み合わせた自動化により、月3〜4時間かかっていた人員データの集計・転記作業が月5分程度まで短縮された事例もあります。
事例の詳細は、次の記事で解説しています。
医療・介護のAI活用に強い開発会社・ベンダーの選び方
医療・介護向けのAIシステムを開発・導入するベンダーを選ぶときは、一般的なシステム選定よりも厳格な評価が求められます。医療情報は「要配慮個人情報」に当たるため、セキュリティ基準への準拠と、適切なデータ管理の体制が整っているかを確かめることが特に大切です。
ベンダー評価の5つの基準
ベンダーを比べるときは、複数社を同じ基準で比較することをおすすめします。導入後に現場で困りやすい点を、5つの観点から確かめます。各観点で見るポイントを、順に挙げます。
- 操作性とアクセシビリティ:IT機器に不慣れな現場スタッフでも直感的に使えるUIか、スマートフォン・タブレット・ウェアラブル端末との連携性。
- 既存システムとのデータ互換性:導入済みの電子カルテや介護ソフト(ワイズマン・ほのぼの・カイポケ等)と連携できるか、二重入力が起きない設計。
- 安全基準への準拠と認証:医療情報を扱う基準を満たしていることを、資料で示せること。
- サポート体制の充実度:トラブル時の対応窓口の明確さと、導入後の定着支援(カスタマーサクセス)の有無。
- 試用(PoC)期間の提供:無料のトライアル期間と、現場スタッフが実際に触れて評価できる環境。
セキュリティ・ガイドラインへの準拠は、3省2ガイドライン(Ver 6.0)への準拠を証明するISMS(ISO 27001)等の認証を取得しているか、MDS/SDSの提出が可能かで確かめます。
3省2ガイドラインと生成AIガイドラインへの準拠確認
医療・介護向けのシステムを提供するベンダーは、「3省2ガイドライン(医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版)」への対応状況を明確に示せることが基本条件です。特に、二要素認証の実装、私用端末(BYOD)の排除、クリーンバックアップの定期実施といった具体的な対策について、証跡書類(ISMS認証書・MDS/SDS)を出せるかを確かめておきます。
生成AIを使うシステムでは、入力データがAIの再学習に利用されない契約(オプトアウト)になっているかを確認します。あわせて、データを処理するサーバーが日本国内、または国内法の適用を受ける場所に設置されているかも、重要な確認点です。ベンダー選定の段階でこれらを確かめておけば、導入後のガバナンス上のリスクを事前に排除できます。
開発会社の選び方は、次の記事で詳しく解説しています。
医療・介護のAIによる業務効率化・自動化
医療・介護の業務効率化で、AIが特に効果を発揮するのは、繰り返し発生する定型的な記録・集計・スケジュール作成などの間接業務です。こうした業務を自動化すると、職員が対人ケアや医療行為に充てられる時間が増え、サービスの質向上と離職防止の両立を目指せます。
AIで効率化できる主な業務
医療・介護では、記録、請求、シフト作成などの事務負担を、AIで軽減できます。
- 診療・介護記録の音声入力:話した内容を記録の下書きに変える。
- 退院サマリー・ケアプランの下書き生成:蓄積されたデータから文書の原案を自動で作り、担当者が確認・修正するだけで完成できる。
- レセプト点検・診療報酬算定漏れの防止:病名・処方・治療行為の整合性を自動で確認し、請求前のエラーを減らす。
- 送迎スケジュール・シフトの調整:利用者の条件や車両の制約、職員のスキルや希望をまとめて処理し、効率的な計画を短時間で作る。
- 夜間見守り・転倒リスク予測:センサーデータを継続して分析し、異常が検知されたときだけアラートを出すことで、夜間巡回の負担を軽減する。
電子カルテや介護記録の音声入力では、診察中や介護サービス提供後に音声で入力すると、AIが文字起こし・要約・整理を行います。記録にかかる時間を大幅に減らしながら、即時性も向上します。
費用対効果と補助金の活用
AI導入の投資対効果(ROI)を評価するときは、初期のライセンス費用だけでなく、月額利用料・端末代・研修費用を含めた「総所有コスト(TCO)」を3〜5年間で試算しておくことが大切です。そのうえで、AI活用で削減できる残業人件費や、請求漏れの解消による診療・介護報酬の増加分を算出して比べると、客観的なROI評価につながります。
介護施設は、都道府県が実施する「介護テクノロジー導入支援補助金」を使うと、導入費用の1/2〜3/4を補助してもらえます。補助金の上限は、介護ロボット枠で30〜100万円、ICT製品枠で100〜250万円です。
さらに、ロボット・ソフト・タブレットをパッケージ化した場合は、400〜1,000万円まで拡大されます。補助金を申請する際は、都道府県から「交付決定通知書」を受け取る前に契約・発注を行うと補助対象外になるため、手続きの順序を必ず確認してください。
効率化と成果の出し方は、次の記事で詳しく解説しています。
医療・介護AIに求められるセキュリティと法令対応

医療・介護情報は、病歴や身体的特徴、認知能力に関わる「要配慮個人情報」です。万一、漏洩やランサムウェア攻撃が起きれば、患者・利用者の生命を脅かすおそれがあります。そのため、一般的なITシステム以上に厳格なセキュリティ対策と法令遵守が求められます。
3省2ガイドラインの要点
通称「3省2ガイドライン」は、医療情報システムを安全に管理するための基本規範です。2023年にリリースされた第6.0版では、機密性・完全性・可用性を確保するための具体的な要件が定められています。
主なポイントは、ログイン時の二要素認証(指紋・顔認証等)の推奨と、私用端末(BYOD)による医療データアクセスの禁止です。ランサムウェア対策としては、隔離バックアップの定期実施と復旧訓練(年1回以上)が挙げられます。
2023年4月の医療法施行規則改正により、医療機関は、サイバーセキュリティ対策が実質的に義務化されました。このため、システム提供ベンダーにMDS/SDS(製品のセキュリティ仕様を示す文書)の提出を求め、それを保管しておくことも医療機関に求められています。
生成AI利用ガイドラインの組織内実践
2024年に公表された「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」は、組織内の体制づくりを推奨しています。具体的には、生成AI管理部署の設置と、部門別の利用事前申請制度の整備が挙げられています。さらに、利用ログの完全記録と、半年に1回の利用監査の実施も示されています。
医師や介護職員が日常業務で生成AIを使う場合でも、入力内容に患者の個人情報が含まれないよう徹底する必要があります。そのうえで、最終的な判断と承認は必ず人間が行う「Human-in-the-Loop(人間主導の監視)」体制を整えることが欠かせません。
生成AIの出力には、ハルシネーション(事実に反する内容の生成)のリスクが常に伴います。医療・介護では特に、AIが生成した診断サマリーや処方提案を有資格者の確認なしにそのまま使うと、医師法・薬剤師法に定める独占業務の侵害に当たるおそれがあります。そのため、AIは事務支援や下書き作成の道具と位置づけ、最終確認の責任は人間が担う体制を組織として定めておく必要があります。
まとめ:医療・介護のAI活用を着実に進めるための要点
医療・介護分野のAI活用は、深刻な人材不足と膨大な間接業務という二重の課題に応えるための選択肢として、急速に広がっています。電子カルテの音声入力や退院サマリーの生成、夜間見守りなど、活用できる領域は多岐にわたります。
成功の鍵は、現場の課題を起点にした段階的な導入と、既存システムとのデータ連携をしっかり確保することです。セキュリティ面では、「3省2ガイドライン」と「生成AI利用ガイドライン」への対応を前提にベンダーを選ぶことが欠かせません。
また、介護施設では補助金制度を最大限に活用することで、初期費用を大幅に抑えながら導入を実現できます。いずれの場面でも、最終判断と承認の責任は人間が担うという原則を組織として守ることが、信頼性の高いAI活用につながります。
この記事で触れた内容は、次の記事でさらに詳しく解説しています。
- ・医療・介護のAI活用の進め方|導入ステップと成功のポイント
- ・医療・介護のAI活用に強い開発会社・ベンダー6選|選び方も解説
- ・医療・介護のAI活用事例|診断支援・記録作成・問診を変える実例
- ・医療・介護のAIによる業務効率化・自動化|成果を出す進め方
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
