RAG構築/開発の発注/外注/依頼/委託方法について

RAG構築の外注は、要件とデータを整理して発注先を選び、PoCで品質を確かめたうえで本番開発に入り、運用へ移るという流れで行います。

外注には専門知識や開発速度を得られる利点がある一方、知識移転や依存といった課題もあります。全体像はRAG構築/開発の完全ガイドもご覧ください。

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RAG構築を外注するメリット・デメリット

外注が合うかどうかは、自社の状況や目的によって変わります。導入を決める前に、外注の利点と、対策が必要な課題の両方を確かめておくと安心です。

外注のメリット

外注では、専門知識や開発速度を借りながら、社内の負担と技術リスクを分担できます。

  • 専門知識:経験のあるエンジニアが構築を担います。
  • 開発速度:類似案件の知見を生かし、短期間で進められる場合があります。
  • 社内リソース:担当者が本来の業務や他の重要案件に集中できます。
  • 技術リスク:精度問題や障害への対応を専門会社と分担できます。

RAGの構築には、Pinecone、Weaviate、pgvectorなどベクターデータベースの選定と設計が欠かせません。さらに、文書をどの単位で分けて検索させるかというチャンキング戦略も、決めておく必要があります。また、埋め込みモデルの選び方、LLMとの接続、回答精度の評価と改善にも、専門知識が求められます。

こうした知識を社内で育てるには時間もコストもかかるため、外注すると設計上の落とし穴を避けやすくなります。特に、初めてRAGを導入する企業にとっては、実績のある専門会社と組めることも心強い点です。

外注のデメリットと対策

外注には、費用や知識移転などの課題があります。課題ごとに、契約や設計でどう対策するかを決めておく必要があります。

  • 初期費用:PoC(概念実証)から始め、成果を見て本格開発へ進む形を取ります。
  • 知識移転:設計書の整備と定期的なナレッジ共有を契約に含めます。
  • ベンダー依存:プロバイダーに依存しない設計の提案を求めます。
  • 情報漏洩:NDA(秘密保持契約)を厳格に結び、データの扱いを定めます。

特定の外注先やLLMに頼り切ると、将来の変更や技術移行が難しくなります。そこで、LangChainやLlamaIndexなどの抽象化フレームワークを使えば、特定の製品への結びつきを和らげられます。

社内データを扱う場合は、匿名化したデータやサンプルデータの利用も検討します。さらに、必要に応じて、オンプレミス環境やプライベートクラウドでの開発要件を明確にしておきます。

ポイント

外注が合うかは、社内に専門知識が足りないかと、費用や知識移転の課題を契約や設計で対策できるかで考えます。どちらも当てはまるなら、外注の利点を生かしやすいといえます。

RAG構築の外注前の準備

外注前に確認する要件の言語化、データの棚卸し、社内体制の整備を3枚のカードで示した図。
三つの準備領域を依頼前にそろえる構成です。

準備が不足したまま依頼すると、要件の認識がずれたり、後になって問題が見つかったりします。そこで、依頼前に要件、データ、社内体制の三つを順に確かめておきます。

要件の言語化

用途と品質目標を決めておくと、必要な構成や見積もりの条件を、ベンダーに正しく伝えられます。

  • ユースケース:社内FAQ、契約書検索、サポート回答補助などの使い道を定めます。
  • 品質指標:Answer RelevancyやFaithfulnessで測る目標値。
  • セキュリティ:クラウド利用やデータ送信の可否。
  • システム要件:既存連携、同時接続数、応答時間を整理します。
  • 拡張計画:将来増えるドキュメント数などを見込みます。

ユースケースには社内ナレッジの共有などもあり、目的によって適切なアーキテクチャは変わります。品質は、「関連文書がある質問に何%正答するか」や「参照文書と矛盾しないか」といった観点で決められます。また、セキュリティでは、オンプレミス環境やプライベートLLMが必要かどうかも確かめます。

データの棚卸し

データの品質はRAGの性能に直結します。そこで、データの種類から機密性まで、中身を一つずつ確かめておきます。

  • 種類・形式:PDF、Word、Excel、Web、データベースの別。
  • データ量:件数、総ページ数、総文字数を把握します。
  • 更新頻度:日次、月次、静的データのいずれかを確認します。
  • データ品質:文字認識や書式の統一、情報の新旧を調べます。
  • 機密性:ナレッジベースに含めるデータを分類します。

データ量は見積もりやシステム設計に影響します。また、更新頻度によって、必要なインデックス更新の仕組みも変わります。

スキャンPDFや書式が不統一な文書、古い情報と新しい情報の混在も、確認が必要な対象です。課題を事前に把握しておくと、外注先はより正確な提案と見積もりを出せます。

すべてを含める必要はないため、機密性に応じて分けたデータの区分が、取り込み範囲を決める土台になります。

社内体制の整備

開始後の連携を滞らせないためには、意思決定から運用、情報提供の承認まで、担当の役割を先に決めておくことが欠かせません。

  • プロジェクトオーナー:意思決定を担う人を任命します。
  • 連絡窓口:技術確認に迅速に答えられる担当者。
  • 運用担当:運用、精度監視、データ更新を受け持つ人。
  • 社内承認:外注先への情報提供に必要な承認経路を整えます。

オーナーには、IT部門と業務部門の橋渡しができる人を選びたいところです。構築後も、運用管理や精度の監視、データ更新を誰が担うかが不明確だと、運用が停滞するおそれがあります。加えて、社内文書や業務データの提供ルートを整えておくと、開始後の情報連携がスムーズになります。

ポイント

依頼前には、要件、データ、社内体制の三つがそろっているかを見ます。どれかが欠けたまま発注すると、見積もりや提案の前提がずれやすいため、発注の前に埋めておきます。

ベンダー選定のポイント

ベンダー選定の確認事項を技術力・実績、セキュリティ・コンプライアンス、提案依頼書の3パネルに整理した図。
三つの観点を並べて候補を見比べられます。

ベンダー選びは、プロジェクトの成否を左右します。そのため、技術力、セキュリティ、提案内容を具体的に確かめておきます。

技術力・実績の確認方法

RAGの構築経験や精度改善の進め方は、実績の説明や質疑応答から確認できます。

  • 開発実績:件数、業種、用途、本番稼働中の案件を尋ねます。
  • 技術スタック:LLM、ベクターDB、各種フレームワークを確認します。
  • 精度評価:指標を使った改善サイクルの経験。
  • 技術発信:RAGやLLMの記事を継続的に発信しているかどうか。

技術スタックの例は、GPT-4、Claude、Geminiなどです。オープンソースモデルも例に含まれます。データベースでは、Pinecone、Weaviate、Chroma、pgvectorなどへの理解を確かめます。

LangChain、LlamaIndex、Semantic Kernelなどの理解度は、質問を通じて見極めます。精度評価では、Answer Relevancy、Faithfulness、Context Precisionの活用経験を尋ねます。

技術記事を定期的に発信する会社は、現場での経験を持つ可能性が高いといえます。さらに、類似案件の説明を受けて技術的な質疑応答を行うと、実力を判断する材料になります。

セキュリティ・コンプライアンス対応

機密情報を扱うため、認証、API利用時のデータ処理、開発時の管理方法を確認します。

  • 認証:ISO 27001、ISMS、プライバシーマークの取得状況。
  • API利用:学習利用の有無と処理サーバーの地域を確認します。
  • 実行環境:オンプレミスやプライベートLLMの実績を尋ねます。
  • データ管理:開発時の利用データや保管・廃棄方針を決めます。

OpenAI APIやAnthropic APIを使う場合は、データが学習に使われるか、どこで処理されるかを押さえます。クラウドLLMの利用が難しい場合は、LlamaやMistralなどをオンプレミスまたはプライベートクラウドで動かした実績を確かめます。

匿名化やサンプルデータで開発できるかを確認し、本番データの保管・廃棄方針についても合意します。

提案依頼書(RFP)の書き方

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)には、比較に必要な条件をそろえて記載します。

  • 背景・目的:現状の課題とRAGで解決したいことを書きます。
  • 用途:利用者、質問、利用場面を具体的に示します。
  • 対象データ:種類、件数、形式、更新頻度、機密性を記載します。
  • 技術要件:LLM、ベクターDB、セキュリティ、既存連携の条件。
  • 品質・日程・予算:目標値、期限、予算感を記載します。

品質基準には、関連質問への正答率80%以上や応答時間3秒以内などを明記できます。スケジュールには、PoC完了日と本番稼働目標日を含めます。これらの条件をそろえておけば、完璧な文書でなくても提案の質は高められます。

ポイント

ベンダーは、RAGの実績と精度改善の経験、セキュリティの体制、提案内容を並べて比べると、選んだ理由を社内に説明できます。

契約・プロジェクト管理のポイント

RAG開発の5段階を、PoC・要件確定からテスト・精度改善まで所要期間付きで並べたタイムライン。
各段階の期間を並べて全体の進行を見渡せます。

契約形態と進行管理を先に決めておくと、費用や成果物について双方の認識違いを抑えられます。

契約形態(請負 vs 準委任)

請負と準委任は、要件の固まり具合や仕事の範囲に応じて選びます。

  • 請負契約:仕事の完成を義務とし、費用の上限を定めやすい契約です。
  • 準委任契約:作業時間・工数に対して費用を支払う契約です。
  • 組み合わせ:PoCは準委任、本番開発は請負とする方法があります。
  • 運用保守:月次保守費用の準委任契約で継続作業を扱います。

要件が固まっている場合、請負は費用の上限を確定しやすい一方で、変更があると追加費用の交渉が必要になります。RAG開発では、想定外のデータ形式への対応や精度改善によって、要件が変わることがあります。そのため、要件が流動的な案件やPoCでは準委任が適しています。

PoCで実現性と品質を確かめ、本番要件を固めてから請負へ移ると、双方が合意しやすくなります。月額工数の上限を設ければ、費用リスクも管理できます。

運用では、精度監視やデータ更新、モデル更新などの継続作業を、月次保守契約で扱うのが一般的です。

マイルストーン設定と進捗管理

各段階の完了条件とレビュー方法を決めてから、計画に沿って進めます。

  1. PoC・要件確定(2〜4週間):サンプルデータで試作し、動作と精度を見極めます。
  2. 設計・環境構築(2〜3週間):設計書、インフラ、ベクターデータベースを整えます。
  3. データ取り込み(2〜4週間):データを前処理し、分割・ベクトル化して検索索引を構築します。
  4. LLM連携・機能開発(3〜4週間):回答生成、プロンプト、画面の開発が中心です。
  5. テスト・精度改善(2〜4週間):品質基準に沿って評価と改善を行います。

PoCでは本番開発の要件も固めておき、最終段階ではAnswer RelevancyやFaithfulnessなどで評価します。そのうえで、各段階に明確な完了条件を設け、発注者がレビューして次の段階を承認する体制にします。

ポイント

要件が固まっているかどうかで請負と準委任を選び、PoCと本番開発の段階ごとに完了条件とレビューを決めておくと、費用や成果物について双方の認識がずれにくくなります。

失敗を防ぐための注意点

よくある失敗は、要件やデータ、評価基準などの準備が足りないまま依頼することから起きます。

  • 曖昧な要件:利用部門、利用者、データ、質問、品質を具体化します。
  • データ課題の見落とし:発注前に品質と更新状況を調べます。
  • 評価基準の欠如:指標と目標値、評価方法を事前に合意します。
  • API費用の見落とし:リクエスト数などから利用料を試算します。
  • 社内関与の不足:業務知識の提供と回答評価に参加します。

「社内の質問に答えるAI」という表現では、依頼内容が曖昧なままです。そこで、誰が何を尋ね、どの品質で答えるかを定めます。

スキャンPDFの文字認識、古い情報、重複データは、開発後に判明するケースが多くあります。また、品質の基準がないと、十分な精度かどうかが主観的になり、ベンダーとの認識がずれます。

Answer RelevancyやFaithfulnessの目標値と評価方法は、開発前に文書で合意しておきます。加えて、業務担当者が回答を評価し、ドメイン知識を提供すると、RAGの品質を高められます。

API費用は、開発費とは別に継続して発生します。そこで、想定リクエスト数と平均トークン数から試算を入手しておきます。

ポイント

失敗の多くは、発注前に決めておくべきことが曖昧なまま進むことから起きます。評価基準、API費用、社内の関与は、開発に入る前に文書で合意しておくと手戻りを減らせます。

まとめ

成功のためには、次の五つの点を押さえておくことが欠かせません。

  • 用途と品質:目的を明確にし、回答精度を数値で定めます。
  • データ:種類・量・品質・機密性を事前に整理します。
  • ベンダー:複数社の実績、セキュリティ、知識移転を比べます。
  • 進め方:PoCから始め、成果を確認して投資を広げます。
  • 社内関与:業務知識を提供し、データ管理に関与します。

RAGは、適切な構築と運用によって、社内の情報活用の効率を大きく高める可能性があります。正しい発注の方法を理解し、信頼できる専門会社と進めることが、成功への最短経路です。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。