Qlik Sense導入のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

Qlik Senseのようなパッケージ製品とフルスクラッチは、費用や開発期間を中心に、カスタマイズ性や運用負荷も比べて選びます。多くの企業ではパッケージが有力で、フルスクラッチが正当化されるのは特殊な要件がある限られたケースです。パッケージのまま要件に近づける方法もあるため、Qlik Senseの活用も含めて比べると、後悔の少ない導入判断につながります。

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Qlik Sense(パッケージ製品)とフルスクラッチの位置づけ

Qlik Senseを中央に置き、探索エンジン、関連データの発見、提供形態を注釈線で示した図。
中核の探索機能と提供形態を分けて捉えられます。

データ活用基盤を作る方法は、パッケージ製品を導入する方式と、ゼロから開発する方式に分かれます。Qlik Senseは前者のパッケージ製品で、データ接続からデータモデル構築、表示や探索までの機能を提供します。

利用者は機能を設定して使うため、短期間かつ比較的低コストで分析環境を整えられます。一方、フルスクラッチは、データ処理から画面、インフラまでを自社要件に合わせて設計・実装します。

両者は「作るか、使うか」というアプローチが異なり、それぞれに向き不向きがあります。そのため、位置づけを理解することが、適切な方式を選ぶ第一歩になります。

Qlik Senseはセルフサービス型のパッケージBI

Qlik Senseは、完成された分析機能をパッケージとして提供する製品です。

  • 探索エンジン:全データをインメモリで保持し、データ間の関連を全方向に保って計算する仕組みです。
  • 関連データの発見:選択値に関連するデータと関連しないデータを、瞬時に表示する機能です。
  • 提供形態:Qlik Cloudと、Windowsサーバー上で運用するClient-Managedがあります。
  • 周辺機能:Insight Advisor、Qlik AutoML、Qlik Data Integrationを利用できます。

この連想的な探索技術は、Qlik社が長年開発・洗練してきた独自技術で、同社製品の特徴を支える中心的な要素です。

利用者はエンジン自体を開発する必要はなく、データを取り込んでアソシエイティブモデルを構築すれば活用できます。

周辺機能では、Insight Advisorが自然言語検索とAIによるチャート生成を行い、Qlik AutoMLが予測分析を担います。Qlik Data Integrationを使えば、分析の前段となるデータ基盤も整えられます。

Qlik CloudはQlik Sense Enterprise SaaSです。導入形態を選ぶ際は、セキュリティ要件や運用方針を踏まえて検討します。

フルスクラッチ・オーダーメイド開発の概要

フルスクラッチは、既製品を使わず、自社要件に合わせて分析システムをゼロから開発する方式です。

  • 設計・実装の対象:データ処理から画面、インフラまでを作り込みます。
  • 自由度:業務フロー、UI、独自の集計アルゴリズムを、要件に合わせて設計できます。
  • 負担:開発費や期間、技術力がかかり、完成後の保守・運用も必要になります。

初期費用は一般に1,000万円から1億円以上、開発期間は6ヶ月から2年に及びます。また、完成後もインフラ維持や障害対応、機能改修を、自社または委託先が担います。

Qlik Senseのような高度な探索機能を自作する場合、開発の難しさとコストは計り知れません。

一方で、既製品の仕様に縛られず、データ処理や画面表示を自社の要望に合わせて設計できます。ただし、その自由度には、相応の費用、期間、運用リソースが伴います。

ポイント

判断の目安は、既製品の機能で要件を満たせるかどうかです。満たせるなら、費用と期間の小さいパッケージから先に検討し、足りない部分だけを開発の検討対象にします。

パッケージ(Qlik Sense)とフルスクラッチの比較

方式を選ぶ際は、費用、期間、カスタマイズ性、運用負荷の4つの観点から比べることが有効です。これらを並べると、自社に現実的な方式が見えてきます。

費用・期間・カスタマイズ性・運用負荷の比較

方式ごとの違いは、導入費用だけでなく、開始時期や運用体制にも表れます。

  • 費用:パッケージは月額数万円から数十万円程度です。
  • 期間:パッケージは即日から1ヶ月程度、フルスクラッチは6ヶ月から2年です。
  • 自由度:フルスクラッチは自由度が高く、パッケージは製品仕様の範囲内で設定します。
  • 運用負荷:パッケージは提供元が管理と更新を担い、フルスクラッチは自社での運用が必要です。

パッケージはサブスクリプション型のライセンス料が中心で、大規模な初期投資を要しません。一方、フルスクラッチの初期費用は1,000万円から1億円以上と大きくなります。

パッケージの導入は、設定とデータモデルの構築が中心になります。

複雑な独自業務ロジックは、パッケージでは対応が難しい場合があります。ただし、Qlik Senseはアソシエイティブエンジンによる柔軟な探索に加え、拡張機能やAPIも使えます。

パッケージは低コスト、短期間、低負荷で使える反面、カスタマイズには一定の制約があります。

それぞれのメリット・デメリット

メリットとデメリットを比べると、自由度と投資負担のどちらを優先するかが見えてきます。

  • パッケージの利点:早く始められ、初期投資と運用負荷を抑えられる点です。
  • パッケージの制約:製品仕様に依存し、利用者が増えるとライセンス費用が膨らみます。
  • フルスクラッチの利点:業務フロー、UI、独自アルゴリズムを自由に設計できます。
  • フルスクラッチの負担:費用と期間、人材確保が大きくなるうえ、完成後の運用負荷も重くなります。

Qlik Senseなら、高度なアソシエイティブエンジンを自社で開発せずに利用できます。さらに、インフラ管理や機能アップデートは提供元が担うため、利用者側で抱える作業は限られます。

フルスクラッチでは、自社の競争力の源になる独自の分析手法を、システムに反映しやすくなります。

一方で、費用と成果が釣り合わないリスクもあります。開発費用が10倍でも、成果がパッケージの1.2倍程度にとどまる例があります。

デメリットも含めて比べ、自社に必要な自由度と運用体制を見極めます。

ポイント

判断の目安は、費用と期間だけでなく、完成後の運用を自社で担えるかどうかです。運用体制が整わないなら、提供元が管理・更新を担うパッケージのほうが現実的です。

方式の判断基準

Qlik Senseのパッケージが向く4つのケースをチェックカードで並べた図。
導入目的や社内の体制に照らして候補を確認できます。

多くの企業にとっては、Qlik Senseのようなパッケージが有力な候補になります。フルスクラッチが正当化されるのは、特殊な要件をもつ限られたケースです。それぞれに向くケースは、次に挙げる具体的な判断基準で見分けられます。

Qlik Sense(パッケージ)が向いているケース

一般的なデータ活用や開発リソースの制約がある場合は、パッケージが候補になります。

  • 早く始めたい:低コストで、データを手早く見られるようにしたいとき。
  • 一般的な用途:売上や在庫、顧客の分析、経営ダッシュボードで使う場合。
  • 探索的に分析したい:分析軸を固めきれず、データを自由に見たいとき。
  • 開発体制が限られる:高度な開発リソースを持たない、または分析基盤に割けないとき。

Qlik Senseは標準で多次元探索に対応し、分析軸を事前に決めきれないニーズにも応えます。

フルスクラッチには専門的な開発・運用体制が必要です。一方、パッケージなら負担を大幅に減らせます。

まずは、パッケージ製品やAPIで要件を満たせるかを検証することが、データ活用の基本です。

Qlik Senseを適切に使えば、多くの分析ニーズをフルスクラッチなしで実現できます。低コストで早く始められ、低負荷で高度な探索もできるため、合理的な第一候補になります。

フルスクラッチが正当化される特殊要件

パッケージでは満たせない理由が明確な場合に限り、フルスクラッチを検討の対象にします。

  • 独自アルゴリズム:競争優位の核心となる分析ロジックを組み込む必要がある場合。
  • 外部送信の制約:法規制や契約により、データを外部に出せないケース。

たとえば、独自の需要予測や価格最適化が競争力の源泉で、実装が事業上重要なら、開発する価値があります。

法規制や契約でデータを外部に一切出せない場合は、自社環境で完結する開発も候補になります。

Qlik SenseにはClient-Managed(オンプレミス)構成があるため、フルスクラッチだけが解決策とは限りません。

「カスタマイズしたい」「自社専用なら安心」といった漠然とした理由で開発を選ぶと、費用10倍・成果1.2倍の失敗につながりかねません。そのため、特殊要件に本当に当てはまるかを冷静に見極める必要があります。

まずパッケージで実現できるかを確かめ、そのうえで満たせない理由がある場合に限って開発を検討します。

ポイント

判断の目安は、パッケージで満たせない理由を具体的に言えるかどうかです。理由が「カスタマイズしたい」といった漠然としたものなら、まずパッケージで検証します。

Qlik Senseを活かした「オーダーメイド的」アプローチ

Qlik Senseをハブとして、独自の表示、業務システムへの埋め込み、独自ポータルを結んだ図。
分析の中核を保ちながら、用途に応じて周辺を広げられます。

「パッケージでは要件に対応できない」と考えてフルスクラッチに傾く前に、Qlik Senseをパッケージのまま「オーダーメイド的」に活用する方法を検討できます。拡張機能やAPIを使えば、標準機能だけでは難しい要件にも対応できる余地があります。

この中間的な方法なら、多くのカスタマイズ要望をフルスクラッチなしで満たせます。

拡張機能・API・埋め込みによる独自要件への対応

独自要件の範囲に応じて、拡張機能やAPIを使い分けられます。

  • 独自の表示:Qlik提供APIやNebula.jsなどで、独自のグラフやUIを作れます。
  • 業務システムへの埋め込み:Webアプリ内で分析機能を提供する形です。
  • 独自ポータル:マッシュアップで分析オブジェクトを組み込めます。

埋め込み分析では、利用者がQlik Senseの画面を意識せずに済みます。

マッシュアップでは、自社独自のブランドやレイアウトで分析画面を提供できます。

難度と価値が高い探索エンジンはQlik Senseに任せ、周辺のUIや連携を個別に調整します。

この役割分担なら、莫大な費用とリスクを抑え、パッケージの堅牢さと自社要件への適合を両立できます。

カスタマイズが必要な場合は、まず拡張手段で実現できるかを確認します。

アソシエイティブエンジンの自作困難とQlik採用の合理性

フルスクラッチの判断では、見落とされがちなアソシエイティブエンジンの再現難度も考慮に入れます。

特に、このエンジンはQlik Sense最大の強みです。フルスクラッチで再現するには、極めて高い難易度とコストがかかります。

  • 保持と計算:全データをインメモリに保持し、関連を全方向に保つ仕組みです。
  • 自由な探索:選択に応じて、関連・非関連のデータを瞬時に計算します。
  • 採用判断:自由な多次元探索や関連データの発見が必要なら、Qlikが候補になります。

この技術はQlik社が長年の研究開発で築いたものです。そのため、一般的な開発チームが同等品を作るのは現実的ではありません。

自作に挑戦しても、膨大な費用と時間がかかり、性能や安定性がQlik Senseに及ばない可能性があります。

事前定義したクエリやドリルダウンに縛られない探索を求めることは、Qlik Senseを選ぶ理由になります。

高度な分析機能が必要なほど、完成品のパッケージを使うほうが合理的な場合があります。

周辺は拡張機能やAPIで補い、中核の探索エンジンはQlik Senseに任せる方法なら、費用、リスク、機能のバランスを取れます。

ポイント

判断の目安は、標準機能で難しい要件を拡張機能やAPI、埋め込みで補えるかどうかです。探索エンジンはパッケージに任せ、周辺のUIや連携だけを個別に調整すると、費用とリスクを抑えやすくなります。

まとめ

方式の位置づけ、費用や運用の比較、選択基準を見ると、多くの企業ではQlik Senseのようなパッケージが現実的な選択になります。

Qlik Senseは、全データをインメモリで保持し、事前定義したクエリやドリルダウンに縛られず多次元探索できるパッケージ製品です。

パッケージは低コスト、短期間、低負荷で使えます。一方、フルスクラッチは自由度が高いものの、初期費用1,000万円から1億円以上、期間6ヶ月から2年を要します。

独自アルゴリズムが競争力の源泉となる場合や、法規制や契約でデータを外部に出せない場合は、フルスクラッチが選択肢になります。

まずQlik Senseで要件を検証し、足りない部分は拡張機能、API、埋め込みで補います。この方法なら、費用とリスクを抑えながら自社要件に応えられます。

探索エンジンの自作は極めて難しいため、高度な探索が必要なほどパッケージ採用が合理的です。

導入方式に迷う場合は、複数の開発パートナーに相談し、パッケージで課題を解決できるかを検討します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。