アプリリニューアルの選定ポイント/選び方/種類

アプリリニューアルを検討し始めると、UIデザインの刷新に強い制作会社、ブランディングから設計する会社、既存システムとの連携まで含めて対応できる開発会社など、依頼先の得意領域はさまざまです。見た目の実績や制作事例の華やかさだけで選ぶと、実際の運用フェーズで想定していた効果測定や既存システムとの連携に対応できず、追加費用や手戻りが発生することも少なくありません。選定の出発点は、自社が今どの課題を解決したいのかを明確にすることです。

本記事では、アプリリニューアル着手前に整理すべき自社の課題、3つのアプローチ、発注先を比較する7つの評価軸、内製・外部委託・ハイブリッドの選び分け、RFPやプロトタイプ検証(PoC)の進め方を解説します。これから依頼先を探す担当者の方が、比較軸をそろえて自社に合う候補を絞り込めるように整理します。

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アプリリニューアル着手前に整理すべき自社の課題

アプリリニューアル着手前の課題を整理する担当者

最初に行うべきことは、制作実績の華やかな会社を探すことではなく、デザインの陳腐化、ストア評価の低下、ブランドイメージの不一致のどこに課題があるかを特定することです。課題を一文で説明できれば、比較対象に含める候補と不要な実績・機能が見えやすくなります。

デザインの古さとストア評価の低下を切り分けます

感覚的に「デザインが古い」と感じている場合と、実際にストアのレビューや評価点数、離脱率といった数値で裏付けられる課題がある場合とでは、必要な対応の深さが異なります。星評価が2から3に上がると獲得数が最大約300%増加するという調査もあり、評価の低下を放置すると新規獲得そのものが難しくなっていきます。まずは現状のレビュー内容や行動データを確認し、具体的にどの画面・どの体験に不満が集中しているかを洗い出します。

特に、リニューアル前の担当者が異動・退職していると、現在のデザインに至った経緯が分からないまま検討が始まることも珍しくありません。過去のリサーチ結果やユーザーからの問い合わせ内容が残っていれば、発注先と共有しておくと、同じ失敗を繰り返しにくくなります。

ブランドイメージの刷新と技術的負債を分けて考えます

経営層や事業部門が求めているのが、企業やサービスのブランドイメージを一新することなのか、それとも老朽化した技術基盤を解消することなのかによって、依頼すべき相手や進め方は変わります。ブランド刷新が目的であればデザインリサーチやブランディングに強い体制、技術基盤の刷新が主目的であればモダナイゼーションを扱う会社が適しています。両方が絡み合っている場合は、どちらを起点に進めるかを事前に決めておくと、比較検討がしやすくなります。

複数のブランドやサービスを展開している企業では、リニューアルを機にブランドガイドラインを統一するかどうかも論点になります。事業部ごとに異なるデザインルールを抱えている場合、統一する範囲と各事業部の裁量を残す範囲を先に整理しておくと、依頼先とのすり合わせがスムーズになります。

アプリリニューアルの3つのアプローチ

アプリリニューアルの3つのアプローチ

主なアプローチは、UI刷新特化型、UX再設計型、ブランド刷新を伴うフルリニューアル型の3つです。実際の依頼内容は複数の要素が重なることも多いため、分類名よりも、自社が最優先する成果を各アプローチで実現できるかを確認します。

UI刷新特化型

既存の情報設計や画面遷移は大きく変えず、配色、フォント、アイコン、コンポーネントのデザインを最新のトレンドに合わせて作り直すアプローチです。比較的短期間・低コストで着手できる一方、ナビゲーション構造そのものに課題がある場合は、見た目を変えても操作性の問題が解決しないことがあります。

短期間で着手できる分、成果が見えやすく社内の合意を得やすい半面、根本的な情報設計の課題を先送りしてしまうと、数年後に同じ規模のリニューアルを繰り返すことにもなりかねません。着手前に、今回はどこまでの課題を解決する位置づけなのかを明確にしておくことが大切です。

UX再設計型とフルリニューアル型

UX再設計型は、情報設計やユーザーの行動導線そのものを見直し、ワイヤーフレームの段階から作り直すアプローチです。ブランド刷新を伴うフルリニューアル型は、これに加えて企業やサービスのブランドガイドライン策定、デザインシステムの新規構築まで含めて進めます。自社に十分なデザインの型がある場合はUI刷新特化型を、ブランド自体を再定義したい場合はフルリニューアル型を検討すると絞り込みやすくなります。いずれのアプローチでも、評価項目や検証方法を決めなければ、依頼後の認識違いが生じやすくなります。

発注先を比較する評価軸(7つ)

アプリリニューアルの評価軸を整理する会議

候補となる発注先は、デザイン体制、リサーチ手法、開発体制、テスト工程、実績、料金体系とTCO、保守体制という7つの軸で比較します。同じ質問を各社へ提示し、提案内容と実績をそろえると、印象ではなく適合度で判断できます。

デザイン体制・リサーチ手法・開発体制を確認します

第一に、UI/UXデザイナーが専任で在籍しているか、外部のデザイン会社と連携する体制なのかを確認します。第二に、ユーザーインタビューやヒューリスティック評価、競合ベンチマークといったリサーチ手法を実際にどこまで実施するのかを確認します。第三に、フロントエンドとバックエンドの開発体制、既存システムとの連携経験の有無を確認します。「デザインに強い」という説明だけでなく、具体的にどの工程を誰がどのように担当するのかを提案書で明確にしてもらうことが重要です。

テスト工程・実績・TCO・保守体制を確認します

第四に、ユーザビリティテストやA/Bテストをどの段階で実施するのか、その工程が見積もりに含まれているかを確認します。第五に、公開されている制作実績が自社と近い業種・規模かを確認します。第六の料金体系では、要件定義から運用保守までの総費用(TCO)を提示してもらい、追加費用が発生しやすい条件を確認します。第七の保守体制では、リリース後のUI改善やデザインシステムの運用を継続して支援できるかを確認します。比較結果は「提案書で確認」「デモで確認」のように根拠を残し、未確認の項目は点数を付けずに保留することで、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

内製・外部委託・ハイブリッドの選び分け

内製と外部委託とハイブリッドを比較する担当者

自社にデザイナーやエンジニアがいる場合は内製、専門性やリソースが不足している場合は外部委託、両方を組み合わせるハイブリッドという選択肢があります。判断基準は、担当者のスキルではなく、継続的にUI改善を回せる体制を維持できるかどうかです。

内製と外部委託の判断基準

内製は、自社の事業理解を生かしながら継続的に改善を回しやすい一方、UI/UXデザインやブランディングの専門知識、最新のプロトタイピング手法への習熟度に差が出やすいという面があります。外部委託は、デザインリサーチや高忠実度プロトタイピングの専門知見を活用できる一方、要件や好みの伝達に時間がかかると、意図した体験からずれてしまうこともあります。どちらが優れているかではなく、自社にどの専門性が不足しているかで判断します。

ハイブリッドでは役割分担を明確にします

リニューアルの初期設計やブランドガイドライン策定は専門会社に依頼し、その後の日常的なUI改善やA/Bテストの運用は自社のチームが担うハイブリッド型を選ぶ企業もあります。この場合、デザインシステムやコンポーネントのルールをどちらが正として管理するか、改善提案の承認フローを誰が持つかを事前に決めておく必要があります。役割分担があいまいなまま進めると、リニューアル後にデザインの一貫性が崩れやすくなります。

特に、複数のプロダクトを展開する企業では、共通のデザインシステムを外部の専門会社と構築し、各プロダクトチームがそのシステムの範囲内で独自のUI改善を進める形も考えられます。共通ルールの改定権限をどこに置くかを決めておくと、プロダクトごとにデザインが分裂することを防げます。

提案依頼(RFP)とプロトタイプ検証(PoC)の進め方

アプリリニューアルのRFPとPoCを進めるチーム

比較表や提案依頼書(RFP)では、実績の有無だけでなく、実際の業務シナリオと合格条件を示します。プロトタイプ検証は説明を聞くだけで終わらせず、自社の顧客像に近いユーザーに実際に操作してもらいながら確認します。

RFPには現状課題とゴールを具体的に記載します

RFPには、対象アプリの現状、想定ユーザー、解決したい課題、参考にしたいブランドイメージ、既存システムとの連携範囲、想定スケジュールと予算感を記載します。要望を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けておくと、すべてを必須として候補を失う事態を避けられます。デザインの好みだけを伝えるのではなく、なぜそのデザインを求めるのかという背景も共有すると、提案の精度が上がります。

あわせて、既存のブランドガイドラインやデザインシステムが存在する場合はその資料を提供し、どこまでを踏襲し、どこから刷新するのかという方針も明記します。方針が曖昧なまま提案を募ると、各社の解釈がばらつき、比較そのものが難しくなります。

プロトタイプ検証では実在のユーザーに近い層で試します

PoCでは、実際に想定している顧客層に近いユーザー数名に協力してもらい、高忠実度のプロトタイプを操作してもらいます。コアタスク(会員登録、検索、購入など)を設定し、タップ数や所要時間、迷った箇所を記録することで、デモでは見えない使い勝手の差を比較できます。競合アプリや現行アプリとの比較も同じシナリオで行うと、改善の方向性を客観的に判断しやすくなります。

あわせて、フリーランス人材や協力会社ではなく、実際にアプリを日常的に利用している既存顧客数名に協力してもらえると、より実態に近い反応を確認できます。謝礼や協力の依頼方法まで含めて、検証計画にあらかじめ組み込んでおくとスムーズです。

アプリリニューアル選定の失敗を避ける方法

アプリリニューアル選定の失敗を回避する担当者

よくある失敗は、見た目の実績だけで発注先を決め、効果測定の仕組みや運用体制を確認しないことです。導入目的と責任者を明確にし、デザイン、開発、マーケティング、既存システムの担当部門の視点を選定に反映します。

制作実績の華やかさだけで決めないようにします

見た目が魅力的なポートフォリオを持つ会社でも、自社が抱える課題(離脱率の改善、既存システムとの連携など)への対応実績が乏しければ、期待した効果を得にくくなります。評価点を単純に合計するのではなく、必須要件を満たさない候補は除外し、残った候補をTCOと運用体制で比べます。具体的な検討の進め方は、アプリリニューアルのパッケージ・クラウド製品一覧もあわせて参考にしてください。

また、制作実績の多くが新規開発であり、既存アプリの改修・リニューアル実績が少ない会社では、既存の設計やデータ構造を踏まえた提案が弱くなることがあります。実績を確認する際は、新規開発の実績とリニューアルの実績を分けて確認することをおすすめします。

効果測定の準備と社内の責任者を決めます

リニューアル前のKPIを計測していないと、完了後に効果を説明できず、追加投資の判断も難しくなります。また、リニューアル後のUI改善を誰が担当し、デザインシステムの一貫性を誰が保つのかを決めておかないと、時間の経過とともにデザインがまた散らかっていきます。削減効果や改善効果はベンダーの一般的な事例をそのまま使わず、自社のストア評価や継続利用率、CVRの実測値で確認することが重要です。

導入範囲を最初から全アプリ・全画面に広げることも失敗の原因になります。課題が明確な画面や機能から着手し、効果を確認してから対象を広げる進め方であれば、想定外の手戻りが発生しても被害範囲を限定できます。

アプリリニューアルの選び方で確認しておきたいポイント

アプリリニューアルの選び方に関する質問を確認する担当者

候補を絞った後は、費用の総額だけでなく、既存システムとの連携やブランドガイドラインの引き継ぎ方法まで確認します。比較表の実績欄だけでは見えにくい条件を事前に検証することで、着手後の認識違いを防げます。

小規模な改修でも整理して判断します

アプリの規模が小さくても、ストア評価の低下や離脱率の高さが具体的な数値で確認できる場合は、リニューアルの検討価値があります。一方、感覚的な「そろそろ古い」という理由だけであれば、UI刷新特化型など小さな範囲から始める選択肢もあります。

社内にデザイナーが1名しかいない、あるいは専任者がいない企業では、リニューアル後の運用まで見据えて、外部委託先に一定期間の伴走支援を依頼する方法も検討に値します。

外部委託でもブランドガイドラインの引き継ぎを確認します

外部の制作会社にリニューアルを依頼した場合、完成したデザインシステムやブランドガイドラインを自社側でも編集・拡張できる形式で受け取れるかを確認します。ファイル形式や権限の範囲を事前に確認しておかないと、次回の改善時に同じ会社へ依頼せざるを得なくなることがあります。

まとめ

アプリリニューアルの選び方をまとめるチーム

アプリリニューアルの選定では、デザインの陳腐化、ストア評価の低下、ブランドイメージの不一致という自社課題を特定し、UI刷新特化型、UX再設計型、ブランド刷新を伴うフルリニューアル型から方向性を選びます。そのうえで、デザイン体制、リサーチ手法、開発体制、テスト工程、実績、TCO、保守体制の7つの評価軸で候補を比較し、実際のユーザーに近い層によるプロトタイプ検証で使い勝手を確認することが重要です。

内製・外部委託・ハイブリッドは体制の継続性で選びます

内製、外部委託、ハイブリッドのいずれを選ぶかは、専門性の有無だけでなく、リニューアル後もUI改善を継続して回せる体制を維持できるかによって判断します。既存システムとの連携やブランド刷新まで含めた要件が複雑な場合、無理に体制を合わせようとすると現場の負担が残ります。

現状の課題を可視化することから始めます

まずは、ストア評価やユーザーの行動データ、社内で認識しているブランドイメージ上の課題を洗い出してください。既製のUIキットやテンプレートで効率的に刷新する方法に加え、独自のブランド体験やデザインシステムの構築、既存システムとの深い連携が必要な場合は、フルスクラッチ開発も選択肢になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、UI/UX設計から既存システム連携までを含めたアプリリニューアルの体制構築を支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。