アプリケーションのモダナイゼーションの選定ポイント/選び方/種類

選定では、技術的負債と事業上の優先度に合う方式を選びます。課題の範囲に応じて、リファクタリング、リプラットフォーム、リビルドを比べます。

まず課題を把握し、刷新方式・実行体制・評価条件を順に整理します。RFPで要件をそろえ、PoCやMVPで効果を確かめると、自社に合う進め方を絞れます。

▼全体ガイドの記事
・アプリケーションのモダナイゼーションの完全ガイド

選定前に整理すべき自社の課題

刷新方式を選ぶ前に、現在のアプリケーションのどこで問題が起きているかを特定します。

課題が表示速度に集まるのか、UI/UXの古さや保守コスト、スケーラビリティに集まるのかで、適した手法は変わります。

表示速度とUI/UXの陳腐化

モノリシックな構成のまま機能を積み重ねてきたアプリケーションは、画面表示が遅くなったり、スマートフォンでのレイアウト崩れが起きたりしやすくなります。

離脱率やアクセス解析上の直帰率が悪化している場合は、フロントエンド側の刷新を優先領域として検討します。反対に表示自体に大きな問題がなければ、裏側のアーキテクチャ課題を先に確認するほうが合理的です。

表示速度は担当者の体感だけで判断せず、ページの読み込み時間を記録します。主要な操作に必要なクリック数も記録すると、刷新後の変化を比べられます。また、営業担当や顧客対応部門から「画面が重い」「入力項目が多い」といった声が続いている場合も、UI/UXの陳腐化を裏付ける材料になります。

保守コストとスケーラビリティの限界

機能を修正するたびに全体への影響確認が必要なら、変更の影響範囲が広い状態です。アクセスが集中する機能だけを個別に拡張できない場合も、モノリスの制約を示すサインです。

保守・運用費用が初期開発費の年間15〜20%程度を超えて増加し続けている場合や、担当できるエンジニアが限られている場合も、刷新を検討すべきサインです。

古いフレームワークやサポート期限が近づいている言語で書かれた部分が残っている場合は、対応できる人材の確保がますます難しくなります。退職や異動で仕様を把握する担当者が減る前に、技術的負債の棚卸しと刷新の優先順位付けを進めておくことが、将来の保守リスクを抑えることにつながります。

ポイント

まず、課題がどの領域に集中しているかを見極めます。その結果によって、フロントエンド側から手を付けるか、裏側の構造から見直すかが決まります。

モダナイゼーションの3つのアプローチ

リファクタリング型、リプラットフォーム型、リビルド型を刷新範囲と方法で並べた図解。
手を入れる範囲が、コード構造から実行基盤、アーキテクチャへと広がります。

刷新の進め方は、大きくリファクタリング型、リプラットフォーム型、リビルド型の3つに分けられます。分類名にこだわるより、自社が抱える課題をどこまで解消したいかで選び分けます。

リファクタリング型:構造を保ったままのコード整理

既存のアーキテクチャや言語を大きく変えず、内部のコード構造だけを整理する方法です。比較的短期間・低コストで着手でき、表示速度の改善や保守性の向上など、限定的な効果を狙う場合に適しています。

根本的な技術的負債はそのまま残るため、将来的により大きな刷新が必要になる可能性もあります。

また、静的解析ツールやテストコードの整備をあわせて進めると、リファクタリングによる副作用を早期に検出できます。コード整理そのものを目的にせず、どの画面や機能の保守性をどこまで改善するかという目標値を事前に決めておくと、投資対効果を判断できます。

リプラットフォーム型:実行基盤の移行

アプリケーションのロジックを大きく書き換えずに、コンテナ化やKubernetesへの移行など、実行基盤を刷新する方法です。

対象を絞れば4〜10ヶ月程度で移行でき、環境差異による不具合の削減やデプロイの自動化を進められます。ただし、移行後の運用監視体制は新たに整える必要があります。

実行基盤を移すだけでも、コンテナイメージの設計や既存の設定値の見直しが必要になり、想定より作業量が増えることがあります。そこで、開発環境と本番環境で設定値がずれていないかを移行前に洗い出しておくと、切り替え後の想定外の不具合を減らせます。

リビルド型:フロントエンドとアーキテクチャの作り直し

SPA化・レスポンシブ対応や、モノリスからマイクロサービスへの分割など、アーキテクチャそのものを作り直す方法です。

リビルドは刷新効果が大きい一方、期間と投資の見極めが欠かせません。小〜中規模のフロントエンド刷新は3〜6ヶ月、マイクロサービス化を伴う場合は8〜18ヶ月程度が目安です。想定期間と得られる効果を着手前にすり合わせ、投資規模が目的に見合うかを確認します。

リビルド型では、画面デザインの一貫性を保つためのルールもあわせて整理しておくと、複数の開発担当者が関わっても表示崩れやトーンのばらつきを抑えられます。また、作り直しの範囲が広いほど、途中で仕様を変えると手戻りが大きくなるため、着手前に対象画面と優先順位を固めることが重要です。

ポイント

分類名よりも、自社の課題をどこまで解消したいかで方式を選びます。課題が限定的ならリファクタリング、基盤の移行が目的ならリプラットフォーム、アーキテクチャ全体の見直しならリビルドが候補になります。

比較すべき6つの評価軸

技術と移行、費用と体制、効果と実績の3組で評価観点を整理した図解。
費用面では初期費用と運用費用を一緒に見る構成です。

方式を比べるときは、技術面・費用・実行体制・期待効果を同じ条件で評価します。次の3組、計6軸は、移行範囲からベンダー選定までをつなぐ判断材料になります。

  • 技術と移行:負債の深刻度と、課題に合う移行範囲
  • 費用と体制:初期費用と運用費用、社内外の役割分担
  • 効果と実績:UXや性能の目標、ベンダーの経験と支援範囲

技術的負債の深刻度と移行手法の適合性

現行アーキテクチャがどこまで限界に近いかによって、リファクタリングで十分か、リビルドが必要かが変わります。

たとえば、特定機能のみが課題であればその部分だけを切り出す段階的な移行が適し、全体的な老朽化が進んでいる場合はより広い範囲の刷新を検討します。

コスト・TCOと体制・スキル

初期の開発費用だけでなく、コンテナ基盤の運用監視やCI/CDの維持にかかる継続コストまで含めたTCOで比較します。

マイクロサービス化やコンテナ化では、インフラ維持費が刷新前の1.5〜2倍程度になる場合があります。あわせて、自社でSREや運用を担えるか、外部委託が必要かを確認します。

クラウドサービスの利用料は為替や料金改定の影響を受けやすく、契約時点の見積もりがそのまま数年間続くとは限りません。また、既存担当者のコンテナ運用スキルを棚卸しし、不足する領域は外部支援やトレーニングで補う方法も検討します。

UX・パフォーマンス目標とベンダーの実績

刷新後にどの程度の表示速度やコンバージョン率を目指すのか、数値目標を事前に設定しておくと、効果測定がしやすくなります。

ベンダーに委託する場合は、類似規模のモダナイゼーション実績や、移行後の運用支援まで対応できるかを確認することが、選定の精度を高めます。

目標値は担当者間の感覚合わせにとどめず、経営層への報告にも使える具体的な数値として共有しておくと、追加投資の判断材料になります。

ポイント

技術面・費用・実行体制・期待効果を同じ条件で評価し、方式どうしを並べて比べることが基本です。費用は初期費用だけでなく、運用を含むTCOで比べます。

内製・外部ベンダー・ハイブリッドの選び分け

刷新の実行体制は、自社エンジニアによる内製、外部ベンダーへの委託、両者を組み合わせたハイブリッドの3パターンに整理できます。

内製が向くケース

顧客体験の差別化が事業競争力に直結し、継続的に手を入れ続ける必要がある画面は、内製で開発ノウハウを社内に蓄積する価値があります。

コンテナ運用やマイクロサービス設計など専門性の高い技術領域では、社内に十分なスキルを持つ人材がいるかを見極める必要があります。

内製にこだわりすぎると、採用や育成に時間がかかり、刷新の着手そのものが遅れることもあります。そこで、まずは優先度の高い領域だけを内製で進め、専門性の高い基盤刷新は外部の知見を借りながら、徐々に社内へノウハウを移していく進め方も、現実的な選択肢です。

外部ベンダー委託とハイブリッド構成

専門的な移行技術が必要な場合や、短期間での刷新が求められる場合は、外部ベンダーへの委託が現実的です。

自社の開発チームがコア画面を担い、基盤刷新など専門性の高い部分だけを外部に委託する、ハイブリッド構成も広く採られています。

いずれの体制でも、刷新後の保守を誰が担うのかを契約前に明確にしておくことが重要です。

ポイント

実行体制は、領域ごとに内製と委託を分けて考えます。継続的に手を入れる画面は社内に残し、専門性の高い基盤刷新は外部の知見を借りるといった分け方が一例です。

RFPとPoC・MVPの進め方

RFPで要件を明確にし、PoC・MVPで効果を検証してから本格着手する順序図。
小さく検証する段階を、本開発へ進む前に置きます。

方式と体制の方向性が固まったら、RFPで要件を明確にし、PoCやMVPで実際の効果を検証してから本格着手する流れが望まれます。

RFPに記載する現状の課題と非機能要件

RFPには、対象となる画面や機能と、現行の技術的負債を記載します。加えて、目指す表示速度やUX目標を示し、想定利用者数や対応デバイスも書き添えます。

非機能要件では、可用性とセキュリティ、将来のスケーラビリティに求める水準を明記します。運用監視体制への要求も含めると、ベンダーからの提案を同じ条件で比べられます。

各要件を「必須」「望ましい」「将来検討」の3段階に分けておくと、すべてを必須として候補を狭めすぎる事態を避けられます。そのうえで、提案を受け取る際は見積もりの規模や条件を確認し、各社に同じ形式で提出を依頼すると、比較時の手戻りを抑えられます。

PoC・MVPで対象を絞った効果検証

全画面を一度に刷新する前に、影響の大きい一部の機能や画面に絞ったPoC・MVPで効果を検証するのが有効です。

ノーコード・ローコードの検証は、1〜3ヶ月、50万〜300万円程度で行える場合があります。さらに、フル開発と比べると、初期費用を50〜70%程度抑えられることもあります。

UI/UXは、デザインツールで操作できるモックアップを作り、利用者に試してもらいます。そのため、本開発前に操作上の問題を見つけやすくなります。

選定の失敗を避ける方法

よくある失敗は、対象範囲を広げすぎたビッグバン方式や、効果測定の指標を決めないまま刷新を進めてしまうことです。

ビッグバン方式による一斉刷新の回避

すべての画面・機能を同時に刷新しようとすると、不具合が発生した際の影響範囲が広がり、切り戻しも難しくなります。

既存機能を維持しながら一部だけを新しいアーキテクチャへ段階的に置き換える進め方のほうが、リスクを抑えながら効果を確認できます。さらに、一部の利用者だけに新しい画面を公開し、問題がなければ対象を広げていくと、不具合の影響を限定しながら本番環境での挙動を確かめられます。

切り戻しの手順とタイミングをあらかじめ決めておくことも、ビッグバン方式を避けるうえで欠かせない準備です。

導入前後の指標を同じ条件で計測

刷新前に、表示速度や離脱率、機能追加にかかる時間を基準値として記録します。導入前後を比べることで、投資対効果を判断できます。

他社事例の数値は参考にとどめ、自社の指標で効果を確かめます。結果は、次の投資や展開を判断する材料になります。

候補製品やサービスを比較する際は、アプリケーションのモダナイゼーションのパッケージ・クラウド製品一覧も参考になります。

ポイント

よくある失敗は、対象を広げすぎたビッグバン方式と、指標を決めないまま進めることです。一部ずつ置き換え、導入前後の指標を同じ条件で記録しておくと、切り戻しや効果の判断がしやすくなります。

アプリケーションのモダナイゼーション導入前に確認しておきたいポイント

刷新方式を最終的に決める前に、判断に迷いやすい点を整理しておきます。たとえば、規模の小さいアプリケーションでも検討する価値があるか、フルスクラッチが必要かといった点です。

小規模なアプリケーションの部分刷新

小規模なアプリでも、利用頻度の高い画面や離脱の多い機能に絞れば、全面刷新をせずに投資対効果を見込める場合があります。

まずは影響の大きい範囲から着手し、効果を確認しながら対象を広げる方法が現実的です。

担当者が一人しかいないような小規模な体制でも、対象範囲を絞り込めば、外部ベンダーへの部分的な委託と組み合わせて無理なく進められます。

フルスクラッチの要否とUI/UXの独自性

標準的な画面はパッケージやローコードで対応できます。一方、顧客体験が競争力に直結する画面は、独自のUI/UXを作り込む価値があります。

ローコードは規模拡大時のライセンス費用がスクラッチの費用を上回る場合があるため、将来の利用規模も踏まえて判断します。

運用体制が整うまでの移行範囲

運用や監視を担う人材が少ない場合、移行範囲を小さく始めます。そのうえで、体制を整えながら段階的に対象を広げると、運用負荷を抑えられます。

並行して、外部の運用支援サービスやトレーニングを活用し、社内担当者が自走できる範囲を計画的に広げていくと、将来の刷新範囲拡大にも備えやすくなります。

まとめ

選定では、表示速度、UI/UX、保守費用、拡張性の課題を洗い出します。そのうえで、課題に合う刷新方式を選びます。

候補は、技術的負債と移行手法、コストと体制を中心に比べます。UXや性能の目標とベンダーの実績も、同じ条件で見ます。

PoCやMVPで効果を確かめてから、本格的な刷新へ進みます。

体制の選び分けと投資対効果

内製・外部ベンダー・ハイブリッドのどれを選ぶかは、機能数よりも、自社が継続的に手を入れたい領域と、専門性の高い基盤刷新をどこで分けるかで決まります。

既製のパッケージやローコードでは複雑な基幹システム連携やUI/UXの独自要件に対応できない場合、無理に合わせると現場の作業が増える結果になります。

現状のアーキテクチャ診断

riplaは、方式選定前の課題整理や既存アプリの診断を支援します。独自のUI/UXや基幹システム連携に合わせた個別開発にも対応しています。

▼全体ガイドの記事
・アプリケーションのモダナイゼーションの完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。